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JATA、「出国税」について観光庁からのヒアリングに回答。「定額制で訪日外国人旅行者を対象に」

臨時会見で報告。日本版ESTAでインバウンド/アウトバウンド施策へ

2017年10月10日 開催

JATA、「出国税」について観光庁からのヒアリングに回答。「定額制で訪日外国人旅行者を対象に」

 JATA(日本旅行業協会)は10月10日、東京・霞が関の本部において臨時会見を開き、10月5日に観光庁が実施した第3回「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」にJATAが出席し述べた意見について、報道陣に説明した。

「次世代の観光立国実現に向けた観光財源のあり方検討会」は「増加する観光需要に対して高次元で観光施策を実行するために必要となる国の財源の確保策について検討」することを目的に観光庁で9月に発足したもので、いわゆる「出国税」と呼ばれる新しい課税の方法や額などについて有識者による検討を進めている。

 9月15日の第1回検討会で発足、9月28日の第2回検討会で主に航空業界からのヒアリング、10月5日の第3回検討会で地方自治体、旅行業界、宿泊業界、海運業界からのヒアリングが行なわれた。

JATA、「出国税」について観光庁からのヒアリングに回答。「定額制で訪日外国人旅行者を対象に」 一般社団法人日本旅行業協会 理事長 志村格氏
一般社団法人日本旅行業協会 理事長 志村格氏

 第3回検討会には、JATAを代表して理事長の志村格氏と、事務局長の越智良典氏が出席しており、臨時会見では志村氏がそこで述べた意見を報告した。

 まず大前提として6月9日に閣議決定された「未来投資戦略2017」に「他の観光先進国の取組も参考にしつつ、観光立国の受益者の負担による方法により、観光施策に充てる財源を確保する」という文言が盛り込まれており、政府としては観光政策に新たな財源が必要であると認めていることになる。

 JATAとしてはこの方針に反対ではないが、その新たな財源に対して行なうべき施策として、下記のような意見を述べている。

・新財源導入を機に、各省庁にまたがる観光関連予算を一元的に管理し、国全体の観光政策を体系的に進めるために、観光省へ格上げを行なうことを要望する。
・「観光先進国」作りのためには、日本の各地に外国人がリピーターや長期滞在として訪れる地方分散が求められる。鍵を握るDMOの自立のための人材育成、効果的なマーケティング活動や国際活動への支援に活用していただきたい。
・加えて日本各地の各世代が世界各地に出かけ、海外を知り、双方向交流を推進することが観光先進国の実現のためには必須である。日本の地域によっては、出国率やパスポート取得率が低いところがあるため、学校教育における観光や双方向交流の意義の啓発に対しても活用していただきたい。
・なお、消費増税と観光税が同時期に導入されることになれば、特に日本人旅行者にとっては負担感の増大による需要減退につながることが大いに懸念される。

 有識者会議からの質問とJATAの回答内容についても報告された。

 負担額については定量制(定率制)と定額制であれば定額が明快であると回答。ちなみに観光庁、有識者会議からは「定額であれば1000円から2000円」を基本線とした設問が用意されていたとのこと。この負担額について、例えば韓国・ソウルへ安価に旅行しようとすると、あるWebサイトで9月28日に調べたところ1万8170円になる。それに1000円を加えると5.5%の負担増となり、LCCを利用したツアーが一般的になっている現代では影響が大きいのではと回答した。

 課税の対象者については、訪日外国人旅行者を対象とすることを要望した。イメージとしては、アメリカへの渡航時に必要なESTA(電子渡航認証システム)のように、支払額14ドルのうち4ドルをセキュリティ関連と出入国の予算に、10ドルを観光振興予算に、といったように徴収し、ビザ免除国からの訪日外国人には簡素化された出入国手続きの提供をと、日本版ESTAを提案した。これを日本人のアウトバウンドにも課税するとなれば、日本人出国者にもメリットを感じられるものにしなければならないのではとも付け加えている。

 また、もし空港での出国税や空港使用料などに合算した場合の負担額とすると、成田空港では2610円、羽田空港では2670円、関西国際空港では3040円の負担額に1000円を増額することになり中国(約1530円)、韓国(約2770円)、台湾(約1850円)、タイ(約2700円)など近隣諸国と比べてもかなり高額になると伝えた。

 新しい財源から想定される具体的な使途については、訪日旅客にとっては日本を旅行する際の環境整備であり、多言語表記、Wi-Fi整備、出入国手続きの簡素化、外国人向け観光案内所の充実などが挙げられる。

 課税対象者を日本人に広げた場合として、18歳時点でのパスポート発行の無償化や補助制度といった日本の若者の海外旅行促進、外務省が提供する海外旅行者向けの登録サービス「たびレジ」と旅行会社とのシステム連携の強化などの日本人旅行者の安全確保などを提案した。

 実務面での課題は、もし課税が旅行会社での決済時となれば、旅行会社のシステム改修にかかる費用は「1社3000万円」とも言われており、パンフレットなどの印刷物の対応なども含め、コストとリードタイムが必要であると意見した。

 飛行機の国内線や、国内の宿泊施設への一律課税については、妥当ではないと回答した。

 これらのヒアリングを経て、観光庁では2017年秋にも「次世代の観光立国実現のための財源」について中間とりまとめを行なうとしている。