ニュース

外務省職員による「添乗員のための海外安全対策セミナー」

日本添乗サービス協会と日本旅行業協会が協力。「たびレジ」やデューク東郷による海外安全対策マニュアルなど

2017年6月22日 開催

外務省、TCSA、JATAは「添乗員のための海外安全対策セミナー」を開催した

 外務省、TCSA(日本添乗サービス協会)、JATA(日本旅行業協会)は6月22日、東京・霞が関の外務省中央庁舎において、「添乗員のための海外安全対策セミナー」を開催した。

「添乗員のための海外安全対策セミナー」は、世界各地で頻発するテロや自然災害、感染症の流行など、海外旅行における多岐にわたるリスクに対し、旅行者を引率する立場にある添乗員向けに企画された勉強会で、添乗員、旅行会社の危機管理担当者、添乗員派遣会社社員など計144名が参加した。

 2時間にわたって行なわれたセミナーのうち、報道には冒頭のみ公開されたので、その様子をレポートする

セミナーは東京・霞が関の外務省中央庁舎において開かれた
一般社団法人日本旅行業協会 海外旅行推進部長 權田昌一氏

 セミナーの前に主催者を代表してJATA 海外旅行推進部長の權田昌一氏が登壇し、参加者や共催者に感謝を述べたあと、日本人出国者数の推定値が、4月は前年比マイナスだったものの、5月は前年比6.6%増であり、全体的に「増加傾向は継続している」ものの、大手旅行会社のパッケージ海外旅行の取扱高は比例した伸びを見せておらず、OTA(Online Travel Agent:インターネット上の旅行商品販売業者)やダイナミックパッケージ(往復の移動手段、宿泊先などを利用者が独自に組み合わせるもの)を利用したFIT(Foreign Independent Tour:個人旅行)が伸びていると指摘。

 そのなかでJATAは2017年を「旅行会社の真価の発揮」と位置付けて、旅行会社の「斡旋力」「企画力」「旅行先での安心・安全」の伸長にさらに力を入れて、旅行者が安心して海外旅行を楽しめる環境を整える、OTAなどと差別化を図るための取り組みの一環としてのセミナーであると説明した。

 そして「旅行者の安全を守り、旅を楽しんでいただくためにこのセミナーで学んでいただいて、安全に役立てていただきたい」と挨拶を終えた。ちなみに、9月21日から24日まで開催予定の「ツーリズムEXPOジャパン2017」では、外務省も旅の安全についてプロモーション活動を行なう予定であるという。

一般社団法人日本添乗サービス協会 会長 三橋滋子氏

 続いてTCSA 会長の三橋滋子氏は、「世界各地で予測しえない事件、事故が頻発する昨今、海外旅行をするお客さまの安心と安全のために、日頃心を砕いている添乗員、関係者の方々にお集まりいただきましてありがとうございます。

 こうして外務省の皆さまから直接お話を伺える機会を得られて、感謝しております。海外旅行でのいろいろな場面で大使館、領事館の皆さまにはお世話になりますので、今後ともご支援、ご指導のほどよろしくお願いいたします」と挨拶した。

外務省 領事局長 能化正樹氏

 セミナーではまず外務省 領事局長の能化正樹氏が登壇し、「今回のセミナーには定員を上回る応募があった」と参加者に感謝を述べ、外務省にとって「添乗員向けに安全対策セミナーを開催するのは初めての取り組み」であると説明した。

 2016年7月1日、バングラデシュの首都ダッカでカフェレストラン「ホーリー・アルティザン」が襲撃されたテロ事件や、ここ数年世界で起きているテロ事件を紹介し、「テロリストが多くの一般人が集まる場所をターゲットにするようになり、海外旅行において安全対策がとても重要なものになった」と強調。

 また、テロの危険性はもちろん一般犯罪、地震、火事、水害、感染症、交通事故など、添乗員が旅行者とともに遭遇するアクシデントはさまざまにあり、今回のセミナーで提供する情報を活用してほしいと話した。

 そして「安全対策のプロへの3つのステップ」として、「1.連絡先の登録」「2.海外安全HPからの情報収集」「3.具体的な安全対策の理解」を掲げた。

「1.連絡先の登録」で活用してほしいというのが「たびレジ」。これは外務省が提供する海外旅行者向けの登録サービス。旅行先、期間、メールアドレスなどを登録すると、外務省から安全についての最新情報がメールで配信されるというもので、万が一の事態には、登録した情報をもとに安否確認にも活用する。

「たびレジ」は同行者の人数も登録できるので、添乗員がツアー参加者の人数を登録すると、外務省も何人グループがどのエリアにいるのかを把握しやすいので、添乗員は「たびレジ」を通じて外務省に旅行者情報を登録してほしいと呼びかけた。

 また、パッケージ旅行でも参加者が自由行動することもあるので、できれば旅行者一人一人が登録することや、個人旅行者も登録を勧めると話した。

「2.海外安全HPからの情報収集」は、「たびレジ」は登録すると自動的に情報を受信するようになる受け身のサービスだが、能動的にも情報を収集してほしいという意図が込められているとして、外務省の「海外安全ホームページ」を活用してほしいと紹介。世界地図から訪問先を選ぶと、各地域の危険レベルであるとか、スポット情報など注意すべき事柄などを確認できるようになっている。

「3.具体的な安全対策の理解」では、「具体的な安全対策を理解して、身に付けてほしい」という。外務省では「海外安全 虎の巻」という冊子を印刷物でもWebサイトでも公開している。

 2017年版では最初にテロについての説明が特集的に設けられ、以降は一般的な知識・注意事項がまとめられているそうで、クルマが突入して来たら、コンサート会場でアクシデントがあったら、爆弾テロに遭遇したら、といった場合の具体的な注意点や対処について書かれているので、勉強に役立ててほしいと紹介した。

 また、マンガ「ゴルゴ13」とコラボレーションした「ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル」では、デューク東郷が海外の日本人に対して「最低限必要な安全対策」を指南するための任務を行なうという劇画仕立てになっていて、楽しみながら役立つ参考資料として勧めていた。

海外旅行におけるリスクを紹介するスライド
「安全対策のプロへの3つのステップ」
外務省が提供するメール配信サービス「たびレジ」
外務省のWebサイトでは世界各地の安全情報を掲載している
各国の各地域ごとの危険レベルやトピックを紹介
具体的な対処法を記した「海外安全 虎の巻」
在韓国日本国大使館が作成した「安全マニュアル」も外務省のWebサイトで閲覧できる
ゴルゴ13の中堅・中小企業向け海外安全対策マニュアル