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観光事業向けの翻訳サービスや自動運転の周辺技術を展示する「CEATEC JAPAN 2017」レポート
2017年10月4日 15:47
- 2017年10月3日~6日 開催
10月3日~6日に千葉・幕張メッセで「CEATEC JAPAN 2017」が開催されている。以前は“家電の見本市”の印象の強いイベントだったが、2016年の開催からは、物理世界から収集した情報をビッグデータ解析やディープラーニングによって分析し、得られたフィードバックを家庭生活の改善や社会問題の解決に役立てる取り組み、いわゆる「CPS/IoT(Cyber Physical System/Internet of Things)」を主要テーマに据えて、最先端技術の複合展示会として実施している。
ここでは、旅行や観光、交通インフラに関連した展示を紹介する。
JTBパビリオン
JTB(ジェイティービー)は、JTBコーポレートセールスなどが参画して立ち上げた「観光予報プラットフォーム」と、旅行者の情報、国が推進する訪日外国人観光客データベースを統合した「手ぶら観光サービス(LUGGAGE-FREE TRAVEL)」を展示。
訪日外国人が出国前に事前申し込みを行なうと、空港やホテルで日本語/英語併記の送り状が発行され、そのあとは手ぶらで観光できる、というもの。送り状に記入する手間がなくなるほか、同社の指紋認証ソリューション「Touch&Pay」を組み合わせれば、ホテルのチェックイン時の記帳や荷物の預かり時の記入、免税手続きでの記入なども省くことができる。もちろん、決済情報との連携でキャッシュレスの支払いにも対応している。
NTTパビリオン
NTTグループでは、NTTドコモがAI運行バスのソリューションを展示。ドライバーと乗客それぞれがアプリを使用して、乗客からの複数の異なる乗車要求(乗車地点)と目的地をAIが判断し、最適な配車をドライバーに通知。各バスの走行ルートも、乗車地点と目的地をAIがリアルタイムに組み合わせて選択していく。
高齢化や過疎化などで定時運行が難しい地域や、京都のような渋滞の発生しやすい観光地での利用を見込んでいる。すでに実証実験は進んでおり、2017年度内にソリューションをバス運行会社に提供できるという。
また、NTT東日本のAI翻訳サービス「ひかりクラウド cototoba」を導入した、凸版印刷の観光事業者向けインバウンド専門翻訳サービス「ジャパリンガル」も展示。
7月から提供を開始しているひかりクラウド cototobaは、文化・観光分野に特化した学習データをAIで蓄積し、エンドユーザー固有の言い回し(例:新宿御苑→Shinjuku Gyoen National Garden)を加味して機械翻訳を行なう。ジャパリンガルはそのうえで人間の翻訳者が訳文を校正するため、短納期・低価格を実現している。
日本独自の文化が多く見られる博物館や美術館、歌舞伎や狂言、能といった分野での利用を想定している。
NECパビリオン
NEC(日本電気)は、訪日外国人観光客の接客のための多言語翻訳サービスを展示。タブレットを使用して、音声入力をクラウドで変換、テキスト化して表示する。メッセージ/チャットアプリのように吹き出しを交互に表示するインターフェースなので、会話の進行が分かりやすい。翻訳エンジンは観光における会話をベースとしており、日英中韓に対応する。商品名など固有の単語を追加登録することもできるという。なお、参考出展としながらも、ウェアラブルな小型端末も展示している。
CEATEC AWARD 2017の経済産業大臣賞を獲得していたのは、顔認証を利用した決済サービスだ。政府や自治体(パスポート、マイナンバー)、金融機関(キャッシュカード、クレジットカード)、医療機関(診察券、お薬手帳)、小売(プリペイドカード)、コンビニ(ポイントカード)などの認証・決済を顔認証に統合することで、空港やホテル、レストラン、病院などでの個人認証と決済を簡便化する。すでに三井住友カードの社員食堂などで導入が始まっているという。
情報通信研究機構パビリオン
NICT(情報通信研究機構)のブースでは、同機構の多言語翻訳技術と、それを利用した無料のスマートフォン/タブレットアプリ「VoiceTra」(Android/iOS)を紹介している。
音声入力をクラウドで翻訳、テキスト化して表示するアプリで、訳文を再翻訳して画面下に表示するのが特徴。この再翻訳結果を見ることで、相手にどんなニュアンスで伝わっているかを確かめることができる。対応言語は31で、音声入力に対応するのは22言語、音声が出力できるのは16言語、そのうちいくつかは試用版としている。
クラリオンブース(日立グループパビリオン)
日立グループパビリオンの奥にあるクラリオンブースでは、自動運転のための統合HMI(Human Machine Interface)ソリューションとして「Smart Cockpit」を展示している。シートはもちろん、ハンドルや複数のディスプレイからなる簡易的なシミュレータになっており、実際に座って数分間、いくつかのシーンを体験できる。
この展示は自動運転そのものの技術ではなく、自動運転中のドライバーに情報提供や注意喚起などを促すインターフェースで、例えば進路前方に飛び出してきそうなクルマが見えたり、後ろから追い越してくるクルマがあったりすると、シートが振動して知らせてくれる。振動する箇所も状況によって背中と座面を使い分けるので、直感的で分かりやすい。車間が詰まるとその距離に応じて振動が強くなるといった仕組みもある。
また、展示ではプロジェクタによる画面投射だったが、時速やナビの方向案内などHUD(ヘッドアップディスプレイ)はフロントガラスに直接表示する仕組みになるとのことで、車線変更時もHUDで予告してから動作を始める。クラリオン担当者によると、2020年までに製品化したいとのこと。
三菱電機パビリオン
三菱電機はVRゴーグルを使った自動運転体験を行なっているほか、モービルマッピングシステム(MMS:Mobile Mapping System)と高精度3次元地図によるダイナミックマップ作成のパネル展示や、それによる自動運転の交通インフラ基盤のパネル展示を実施している。
後者は関連記事「首都高、定例会見で2017年度工事進捗と新技術を説明」で紹介している「スマートインフラマネジメントシステム(i-DREAMs)」などでも使われている技術(同社以外の技術も使われている)で、点検車に装着したMMSユニット「MMS-G220ZL」などで計測した3次元レーザー点群から、ダイナミックマップ作成・更新の情報を抽出するもの。