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パナソニック、羽田空港に設置された顔認証ゲートを解説
誰でも1人で間違えることなく使えることを目指して開発
2017年12月16日 06:00
- 2017年12月15日 実施
羽田空港国際線ターミナルに、10月18日から先行導入され、日本人の入国手続きに活用されている「顔認証ゲート」。この顔認証ゲートを開発した、パナソニック システムソリューションズ ジャパンが、12月15日に都内で技術セミナーを開催し、顔認証ゲートの開発背景や技術的な仕組みなどを解説した。
パナソニックは、1950年代から約70年以上にわたって、公共インフラ分野での事業にも携わってきているという。実際に、観光庁や自治体、警察、道路分野にさまざまなシステムを導入してきた実績があり、防災行政無線システムや高機能型観光案内標識、パスポートリーダー、ETCなどのシステムでは高いシェアを誇っているそうだ。
そういったなかで、パナソニック コネクティッドソリューションズが開発した「顔認証ゲート」が、法務省入国管理局に採用され、10月18日より羽田空港に3レーンが先行導入されている。この顔認証ゲートは、厳格な手続きによる安心・安全の確保と、訪日外国人観光客の増加に対応するための迅速な手続きという、相反する要素を同時に実現するために、パナソニックが培ってきた画像処理技術や、家電製品のDNAをベースとしたUX視点のデザインを採用するなど、パナソニックの強みを活かして開発されたそうだ。
開発コンセプトは「“厳格”かつ“円滑”な出入国の実現」。パナソニックが持つパスポートリーダーや顔認証などの技術をベースとして、それらを融合させた新しいシステムを作るということで、開発を進めたという。
今回の顔認証ゲートの導入には、訪日外国人観光客の増加という背景がある。外国人の出入国審査手続きは複雑で、かつ有人で審査を行なう必要があるが、訪日外国人観光客が増加したことで、審査官の人数が足りなくなってきているという。そこで、日本人の出入国審査を自動化することで、それまで日本人を担当していた審査官を外国人審査に振り分けることで、スムーズな出入国審査を実現しようというわけだ。実際に羽田空港国際線ターミナルでは、3機の顔認証ゲートが設置され、10月18日より日本人の入国審査用として先行運用されている。
顔認証ゲートでの手続きは、パスポートリーダーで各種情報を読み出し、顔認証による本人確認を行ない、認証が取れればゲートが開いて通過可能、という流れとなる。パスポートリーダーで、パスポートに記載されている氏名や有効期限といった各種情報に加えて、パスポートに搭載されたICチップに格納されている顔写真のデータを読み出す。そして、顔認証ゲートに設置されているカメラで撮影した顔の情報と、パスポートから読み取った顔写真データを照合して顔認証を行なう。
現在運用されている指紋認証を利用した出入国審査自動化ゲートは、利用するために事前の申請が必要だが、顔認証ゲートでの認証はパスポートに保存されている顔写真データを読み出して行なうため、事前申請不要で利用できる。対応するパスポートは、ICチップを内蔵する日本発行のパスポートのみとなるが、現在発行されている日本のパスポートは、全数がICチップを内蔵しているため、つまり誰でも顔認証ゲートを利用した入国審査が可能だ。
顔認証ゲートの構造は、入り口部分に分かりやすい進入誘導/禁止サインが設置され、中央付近にパスポートリーダーと顔認証用のカメラ、その先に自動開閉式のゲートが用意されている。また上方には監視用の防犯カメラも設置されている。
パスポートリーダーは、自然な体勢で利用できる高さに設置。そして、パスポートを置くだけで画像処理によって自動的に読み取りが開始するとともに、パスポートを左右逆に置いたとしても問題なく認識する、新開発のものを採用している。これは、初めて使う人やお年寄りでも、間違えることなく1人で審査ができるように配慮してのものだという。
パスポートリーダーの上方にはハーフミラーが設置されており、各種情報を表示するディスプレイを内蔵するとともに、内部に顔認証用のカメラを複数設置している。これは、利用者がカメラを意識することなく自然に利用できるよう配慮してのものだという。顔認証のシステムは、身長が135~195cmの人を想定して設計しているという。また、ゲート本体は丸みを帯びたデザインとなっているが、これも厳格な雰囲気のある審査場で、気楽に使ってもらえることを狙っているそうだ。
そして、開発段階では、事前にさまざまな実証実験も行なったそうだ。実際に誰でも1人で問題なく使えるのか、どういったミスが発生するのか、といったことを検証するために、大学の心理学の先生の指導のもと、さまざまな実験内容を考えて実証実験を繰り返しつつ、得られたデータを分析し、開発を進めたという。そのうえで、お年寄りも含め、誰でも1人で間違えることなく、緊張感も少なくリラックスして使えることを確認したという。
このほか、横幅が1450mmとコンパクトな点も特徴だ。これは、限られたスペースに多くのゲートを効率よく設置できるようにするためで、レイアウトも横に並べた並列型のレイアウトだけでなく、ハの字に並べたフィッシュボーン型レイアウトにも対応している。事前の実証実験では、フィッシュボーン型レイアウトも含めた、さまざまな配置レイアウトでの検証も行なっているそうで、問題なく運用できることを確認しているそうだ。
今回は、羽田空港国際線ターミナルに設置されているものと同じ顔認証ゲートの実機を利用したデモも行なわれた。パスポートをパスポートリーダーに置き、情報が読み出されると、ディスプレイに顔認証を行なう旨を示すメッセージが表示される。そのメッセージに従って正面を向くと顔が撮影され、パスポートから読み出した顔写真データと照合し、認証が行なわれる。認証にかかる時間は非常に短く、顔を前に向けるとほぼ同時に認証が終わるといった感覚だ。そして、認証完了と同時にゲートが開き、先へ進めることになる。
ただし、帽子やマスク、サングラスを装着している場合には、正確な審査が行なえないため、ハーフミラーのディスプレイに、それらを外すようにメッセージが表示される。その場合には、マスクなどを外すと正常に顔認証が行なわれる。
また、発行から長期間経過したパスポートを利用した場合でも、相貌の経年変化を考慮した画像認識技術を駆使することで問題なく認証が行なわれることや、他人のパスポートを利用した場合には認証が下りずゲートが開かない、といったデモも行なわれた。特に、相貌の経年変化については、シワやシミが増えたりしても、それが影響しないような顔の特徴点を捉えるといったことによって、問題なく安定して認証できることを確認しているそうだ。