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日本の農産物を世界へ輸出。JALが北海道の事業者らと提携した初便出発
「安心、安全、美味しい」野菜を十勝・芽室町から香港へ届ける
2017年8月30日 13:16
- 2017年8月29日 実施
JAL(日本航空)は8月29日、北海道の事業者などと提携し、十勝の農産物を香港などに空輸する輸送事業を開始した。
帯広市近郊にある芽室町に新たに設置された集荷場で、輸出するスイートコーン約100kgを含む計1トンの農産物をトラックに積載し、とかち帯広空港へ運んで航空便で送り出す様子を公開。第1便は羽田空港を経由し、関東市場向けの野菜を降ろしたあと、スイートコーンは香港へ向かった。
「若手農業者にチャンスを与えられる素晴らしい仕組み」
今回の航空便を用いた輸送事業は、十勝・芽室町で畑作を手がける13の若手農家が組織化して設立した(現在は15軒)「なまら十勝野(とかちや)」、農産物の物流プラットフォームを手がけ“農家の直売所”を全国展開する「農業総合研究所」(和歌山県和歌山市)、海外へ販売ネットワークを展開する「世界市場」(東京都港区)の3社と共同で行なうもの。
出荷を記念し、芽室町に新設された集荷場で実施されたセレモニーでは、JAL 北海道地区 支配人の中島氏が挨拶。「今回の取り組みは最初の第一歩。北海道には美味しい農産物がたくさんある。日本航空の航空輸送のノウハウを活かして、海外に積極的に空輸していければ、地方(創生)の貢献につながると思う」と話した。
農業総合研究所 取締役副社長の堀内寛氏は「海外へは2年半前からトライアルで輸出していて、香港まで届ける体制が整ったのがちょうど本日。日本国内に(農家の直売所が)ちょうど1000店舗目という区切りで香港への輸出もでき、日本航空さんには深く感謝している。物流をどんどん増やして、日本国内のみならず、香港を皮切りに世界各国の生活者の口に(農産物を)届けたい」と述べた。
農業総合研究所となまら十勝野を引き合わせ、事業化につなげた北海道銀行の芽室支店長 藤井雅俊氏は、「(北海道銀行は)地元のなまら十勝野様の積極的な取り組みを支援する役割、首都圏に多様な販路を持つ農業総合研究所さまを北海道に誘致・サポートする役割、双方の役割を担ってこそ、地域金融機関として地方創生を具体的に進めることにつながると考えている。北海道の基盤産業である農業の継続的な生産性の維持や、担い手のモチベーション向上を後押しできると確信している」と話した。
最後に挨拶したなまら十勝野 代表取締役の小山勉氏は、「農業総合研究所と4月に初めてお話したときに、一生産者として衝撃を受けた。マーケットはある。美味しい野菜を作って、農業総合研究所の物流に乗せて、日本全国、そして世界の方々に野菜を食べていただけるということで、急ピッチでここまでくることができた。
若手の農業者に野菜をどんどん出荷するチャンスを与えられる素晴らしい仕組み。安心、安全、美味しいを当たり前にするというのが僕らのミッション。やる気のある生産者を集めてこの集荷場を大きくしていきたい」と力強く語った。
JALは輸送単体で事業を成り立たせることよりも、今回の取り組みをきっかけに、北海道や十勝、あるいは芽室町への世界からの関心を高め、地方の活性化を支援することで、観光目的の旅客拡大を狙う。収穫期となる8月から11月頃にかけ、今後も継続的に航空便を利用し、国内外への農産物の輸送を行なっていくとしている。
農業総合研究所の担当者によると、香港でも北海道の農産物の人気は高く、そのなかでも今回は「芽室町の美味しいもの」であるスイートコーンを第1便に選んだという。
香港では北海道の農産物が日本国内における販売価格の5~6倍の値段で売れる状況で、現在は高所得者層のみが入手できる限られたものになっている。今回輸出するものについては8箱、計約100kgという量ではあるものの、2~3倍程度の値段に抑え、「ミドルハイ(の所得者層)を狙って、もう少し手軽に入手できるもの」にしていくという。