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NEXCO西日本、2016年度のこれまでの取り組みを紹介、九州観光周遊ドライブパスは累計17万件突破

距離制を用いた近畿圏の新料金を2017年度導入予定

2016年11月2日 実施

 NEXCO西日本(西日本高速道路)は11月2日、東京都内で記者説明会を実施。2016年度のこれまでの取り組みと、今後取り組む施策などを説明した。

 冒頭、NEXCO西日本 代表取締役社長の石塚由成氏から、2016年度の主なトピックについて紹介があった。

西日本高速道路株式会社 代表取締役社長 石塚由成氏

 まず熊本地震については、被災した高速道路の本格復旧に全力で取り組んでいるだけでなく、将来の大規模災害に備えて耐震性の強化も実施。さらに被災地の観光復興支援で発売した観光周遊ドライブバス「九州観光周遊ドライブパス」は、申し込みが17万件を突破。「グループとして、引き続き震災の復旧、復興を応援する取り組みを続ける」との姿勢を示した。

 また、NEXCO 3社による高速道路のリニューアルプロジェクトへの本格着手がが2016年度から始まったこと、重量超過の違反車両の取り締まりを強化することを紹介。この2つの取り組みで、高速道路の長寿命化を図るとのこと。

 ネットワークについては、新名神高速道路の高槻~神戸間についで言及。2016年度末目標だった開通時期は、4月に工事現場の有馬川橋の橋桁落下事故を受け、工事中の安全管理を含めたリスクマネジメントなどを見直し、全体の開通を2017年度末目標に変更。

 このほか、4車線化事業や、スマートIC(インターチェンジ)の整備など、ネットワーク機能を発揮させていくとした。

西日本高速道路株式会社 取締役・常務執行役員 経営企画本部長 芝村善治氏

 続いて、取締役・常務執行役員 経営企画本部長の芝村善治氏により、各取り組みについての詳細な説明が行なわれた。2016年度の事業計画は7409億円の高速道路事業、SA(サービスエリア)/PA(パーキングエリア)事業など高速道路以外の事業は343億円で、計7753億円の事業を行なうことになっている。

 高速道路事業は、新名神の城陽JCT~八幡JCT、阪和自動車道と京奈和自動車道を結ぶ和歌山JCTなど10道路、102kmを新設。4車線化事業も107kmの区間で実施している。

 2016年度は東九州自動車道の椎田南IC~豊前IC間の延長7.2kmを4月24日に開通したほか、9月には宮崎県の山之口SAスマートICを開通。今後は、11月27日に大分自動車道の由布岳PAスマートIC、年度内に新名神 城陽JCT~八幡JCT、阪和道の和歌山JCT、東九州道の門川南スマートICが開通する予定となっている。

2016年度の高速道路事業
2016年度の高速道路以外の事業
2016年度の開通区間

 平成28年熊本地震については、震度7クラスの内陸直下型地震が短期間に2度発生した「観測史上初めての経験」であり、直後には507kmの区間を通行止めとしたが、九州道、大分道を段階的に応急復旧。発生から25日後の5月9日には応急復旧を完了。

 ただし、「あくまで応急復旧であり、開通はしているが橋梁などはかなり損傷している」とのことで、国の補正予算342億円を活用するなどして、本復旧作業に取り組む。

平成28年熊本地震に対する取り組み

 2016年度に開始したリニューアルプロジェクトについては、NEXCO西日本には1963年に開通した日本初の高速道路である名神高速道路のほか、建設から30年以上経過した区間が4割を占めており、特に橋の床版のコンクリート損傷が多いという。これにより、NEXCO 3社で総事業費約3兆円、うちNEXCO西日本が約1.1兆円をかけ、15年間にわたる大規模事業を進めることになっている。NEXCO西日本管内では中国エリアの道路から工事を開始した。

 加えて、法令違反車両の取り締まりを強化する。制限重量10トンのトラックが重量を2割超過し12トンで走行すると、道路に対しては10トントラック9台分の影響があると指摘。高速道路6社(NEXCO 3社、首都高、阪神高速、JB本四)が共同で重量超過違反車両に対する取り締まりを強化する。

 その要旨は2点。1点目は、これまで各社が所有していた違反車両の情報を6社で共有すること。2点目は、多頻度割引の停止措置の見直しとなる。後者は、これまで即時告発となった悪質な違反者に対して、有罪となった場合のみ停止措置を講じていたが、新たな規定では、有罪、不起訴などの結果に関わらず即時告発となった時点で一部割引停止となるなど、その罰則を強化する。

高速道路長寿命化にあたっての現状説明
橋梁の床版取り替えなど、大規模なリニューアルプロジェクトを進める
重量超過の違反車両に対して、多頻度割引の停止措置を見直すなど対策を進める

 新名神高速道路については、2016年度の開通を目指して工事が進められてきたが、4月22日に有馬川橋、5月19日に余野川橋で重大事故が発生したことを受けて一時工事を停止。安全管理担当部署の新設や、リスクマネジメントシステムの確立など対応策を確立したうえで、8月に工事を再開。

 大津から神戸の区間は、並行する中国自動車道、名神高速道路の区間は、全国の渋滞ワーストランキングのトップ10に2カ所が入るほど渋滞が多発する箇所であるため、渋滞解消、災害時の迂回ルートとしても早急にダブルネットワーク化をする必要がある。事故を受けて開通時期は遅らせるが、全線を2017年度末、一部区間は2017年度秋の開通目標として早期開通に取り組む。

新名神高速道路の建設状況
新名神の大津~神戸区間のダブルネットワーク化について
新名神の工事現場で発生した事故とその対応

 このほか、SA/PAでの地域活性化イベントや観光交流の取り組み、海外事業の紹介があった。観光交流については、7月に発売した九州の高速道路を定額で乗り降りできる周遊パス「九州観光周遊ドライブパス」は、販売が累計17万件を突破。過去最大の割り引き企画になっていると紹介した。

7月に発売した「九州観光周遊ドライブパス」が過去最多の申し込み件数となる17万件突破
SA/PA事業の取り組み。「開かれたSA/PA」として地域との連携を強化している
海外事業ではインドネシアでの道路技術試行導入を開始したほか、アメリカでは新たにダム点検のインフラ点検を受注したという

 最後に国土交通省の国土幹線道路部会において9月に基本方針案が示された、近畿圏の料金体系について言及。異なる料金体系が混在する料金体系の見直しが議論されてきたが、首都圏同様に対距離制として、料金体系をシームレスにした新料金が適用される予定となった。また、地方道路公社などの管理区間は高速道路会社での一元管理を検討するよう提言されている。

 均一料金と対距離制料金が混在しており、首都圏の新料金のように、大都市圏の料金水準に合わせてシームレス化した結果、場合によっては高くなることもあるとしたが、芝村氏は「料金の水準を上げるということではなく、分かりやすくするという想定」と説明。暫定的な上限を設ける可能性があるともした。

近畿圏新料金体系について