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新名神 城陽JCT・IC~八幡京田辺JCT・IC、開通前の内覧会レポート
橋梁架設工事や料金所の平面監視システム、新しい情報板などを解説
2017年5月1日 21:52
- 2017年4月20日 内覧会開催
- 2017年4月30日 開通
NEXCO西日本(西日本高速道路)が建設を進めてきた新名神高速道路の城陽JCT・IC(ジャンクション・インターチェンジ)~八幡京田辺JCT・IC、延長3.5kmが、4月30日15時に開通したが、この開通に先駆けて報道関係者を対象にした内覧会が4月20日に開催されたので、その様子をレポートする。
新名神は、名古屋市を起点として神戸市まで伸びる174kmの高速道路。NEXCO西日本の管轄区域は、2008年に開通した甲賀土山ICから大津ICまでの約30km、建設中の高槻から神戸までの約80km。4月30日の開通区間は、八幡京田辺JCT・IC~城陽JCT・ICの3.5km。
2012年4月に着手した大津~城陽の25km、八幡京田辺~高槻の10kmは、2023年の開通を目標としている。高槻~箕面間の18km、箕面~神戸間22kmの整備状況は、ほとんどの部分が舗装・施設などの最終的な施工に至っている。高槻~川西間は、秋ごろの開通、川西~神戸間は2018年3月までの開通を目指して建設を進めている。
新名神と新東名高速道路、名神高速道路と東名高速道路というダブルネットワーク化が進み、渋滞を分散することによる高速走行での所要時間の短縮や、事故や災害時の代替路としての役割が期待されている。
現在の交通量、渋滞については、吹田JCTから神戸JCTにかけて、特に宝塚周辺を中心に日々渋滞が発生している。2014年実績の交通量としては約9万台/日。渋滞回数は674回にもなる。
大山崎JCT~吹田JCTは、渋滞回数は253回と吹田JCT~神戸JCTに比べ少ないものの、交通量は11万2000台/日と大きく上回る。この近辺は、全国でも有数の交通量、渋滞回数となっている。新名神の特に高槻から神戸の区間が開通すると、吹田から神戸の間で起こっている渋滞が軽減されると期待されている。
事故や災害時については、東日本大震災の際、幹線道路を結ぶ連結道路、いわゆる「くしの歯」型道路が緊急輸送や復旧活動において重要な役割を果たした。西日本においても新名神が整備されることで、迅速な道路啓開(被災時の応急復旧)や非常時の代替路としての道路機能が期待される。
八幡京田辺IC料金所
内覧会で最初に訪れたのは、八幡京田辺IC料金所。ここではまず、新名神と同時に開通する府道八幡京田辺インター線について、京都府 山城北土木事務所 技術次長の野田泰弘氏より説明があった。
府道八幡京田辺インター線は、第二京阪道路の京田辺市松井から山手幹線に接続する延長1860mの都市計画道路「内里高野道線」。完成幅員は25mの4車線だが、新名神の城陽~八幡京田辺間の開通に合わせ、各3.25mの2車線、幅員11mで開通する。
2007年から整備を進めており、荒場北交差点から内里河原交差点までの内里高野道線480mは2016年3月3日に開通している。残り1380mが、新名神開通に合わせて開通する。
NEXCO西日本 関西支社 新名神京都事務所 所長の西岡大造氏が、新名神 城陽~八幡京田辺間の事業について説明した。今回開通する区間3.5kmのうち、土工区間が0.6km、橋梁区間は2.9kmと、8割近くが構造物区間となっている。ランプの延長は、第二京阪と府道八幡京田辺インター線と接続する八幡京田辺JCT・ICが4.6km、京奈和自動車道と国道24号と接続する城陽JCT・ICが2.9kmの合計7.5kmと、立体接続などもあるため本線に比べて長くなっている。
今回の開通によって、京都府の高速道路ネットワークは、南端の木津ICから北端の京丹後大宮ICまで、約140kmがつながることになる。それにより、地域の活性化や観光誘致にプラスになることが期待されている。
続いて、施設工事区 工事長の武田希氏が、料金所の新たな設備「平面監視システム」の導入について説明した。平面監視システムは、料金所の状況を複数のカメラでとらえた映像から合成して、上空から見る1つの画面のように監視できるシステム。料金所前後で起きるトラブルなどに、いち早く対応できるとしている。
現在の高速道路の利用は、9割がETCを利用している。ETCレーンを通過する際、カードの挿入忘れや有効期限切れなどで、料金所を正常に通過できずに止まってしまった場合、これまでは、横の料金所で複数のカメラを切り替え、停止している車両の状況を把握し、料金所の中からインターフォン対応や、現地に行って対応していた。そのため複数のカメラの切り替えやカメラの移動など、対応に時間がかかってしまい、後続車を待たせる必要があった。
画像合成技術を使い、料金所エリア全体を死角なく把握できる平面監視システムなら、トラブルなどが発生しても、料金所で即座に状況を把握して対応できるという。
八幡京田辺JCT
八幡京田辺IC料金所から、新名神と第二京阪が連結する八幡京田辺JCTのAランプ2号橋の上に移動。八幡京田辺JCTでは、将来的に高速道路本線が第二京阪の下を通過して東西に延びることになっている。JCTの構造として、新名神と第二京阪とは上下線ともそれぞれ接続しているが、先ほど進入してきた八幡京田辺インター線から入ってくる八幡京田辺IC料金所は新名神の出入り機能しか持たず、第二京阪に出入りすることはできない。
交通量の多い第二京阪にランプを掛ける工事については、夜間に通行止めをして橋梁の架設をしたと説明があった。料金所の脇にあるヤードで橋桁の組み立てを行ない、大型の多軸台車で橋梁の桁を乗せ、夜間通行止め中に移動して、橋脚の上に落とし込むという方法をとり、1夜間で工事を終わらせた。
橋梁の桁の色について、八幡京田辺JCTは周辺の商業施設やベッドタウンに溶け込むように青鈍色(あおにびいろ)を採用。城陽JCTと新名神木津川橋は、周辺の木々や茶畑の環境に合わせて千歳緑を採用している。
施工における工夫として、橋梁同士の継ぎ目(ジョイント)を少なくすることで、騒音や振動などを軽減し、走行性の向上を図っている。JCT部では鋼橋とコンクリート橋を連続した複合上部工とすることでジョイント数を削減。京田辺高架橋では、多径間の連続したコンクリート橋とすることでジョイント数を削減している。
新しい設備として路側情報板にも説明があった。従来の本線道路情報板はICやトンネルの手前、JCTの手前で情報提供を行なっていたが、それに加えて1kmピッチで情報板を設置することにより、落下物や故障車、渋滞情報など直近の情報提供が可能となった。この路側情報板は、全国で初めて新名神に導入された。動画機能を有し、日本語が読めない外国人にも映像で情報を伝えることができるとしている。
路側情報板は、今回開通する城陽~八幡京田辺間は区間が短いため、上下線に1基ずつの設置となる。設置されているのは横型だが、それ以外に縦型の路側情報板もあるという。縦型か横型かは、現地の状況に合わせて対応する。今後開通する高槻~神戸間、現行の名神高速や中国自動車道などにも路側情報板を1kmピッチで整備し、より細かい情報提供を行なっていくとのことだ。
本線道路情報板も従来のものより大型化し、上段と下段で、同時に2つの事象を表示できるようになっている。規定のフォーマットはなく、好きな文字や画像を表示することが可能だ。
照明設備は、低位置照明設備が採用されている。高速道路上では料金所周辺やランプ部などに照明が設置されているが、これまでポールタイプの照明を基本的に採用していた。
今回、壁高欄上に直接取り付ける構造を採用。高架部に設置するポールタイプは、車両の接触などによりポールが損傷し、落下する危険があった。また、ポールタイプでは点検などに高所作業車が必要になる。安全面やメンテナンス性を考慮し、高架部には低位置照明設備を採用した。光源は、消費電力が低いLEDとなっている。
舗装については、表層のアスファルトの下に連続鉄筋コンクリート舗装板の層を設けることで、耐久性を上げ、長寿命化を図っている。連続鉄筋コンクリート舗装板の厚みは28cm。内覧会時点ではまだ表層の舗装が済んでいない部分も見受けられたが、内覧会が終わり次第舗装をするとのことだった。
京田辺高架橋・新名神木津川橋
京田辺高架橋は、約1.6kmのコンクリートの橋梁で、大型移動支保工による架設を行なった。橋梁のコンクリートを作成するときの支保工(仮に支える構造物)に、移動式のものを採用。従来の固定式支保工では、下から組み上げ、終わったら解体するという工程が必要だったが、移動式支保工を活用することで工期の短縮を図った。
どんな橋梁でも大型移動支保工が使えるというわけではなく、京田辺高架橋は橋脚の間隔が均等なため、大型移動支保工が有効だったという。
京田辺高架橋はコンクリートの橋だが、新名神木津川橋は鉄の桁を有するプレキャスト床板を採用した橋梁となっている。この区間は木津川の上に橋梁をかけなくてはならないため、非出水期の10月中旬から翌年6月までに工期が限られている。プレキャスト床板を大型クレーンで架設することで、効率的に施工できたという。また、工事の進行に合わせて瀬替え(河川の流れを人工的に変更する)をしながら施工した。
高速道路橋梁点検訓練のデモンストレーション
新名神木津川橋には点検車両が並んでおり、続いて高速道路橋梁点検訓練のデモンストレーションが行なわれた。デモンストレーションに先立ち、NEXCO西日本 関西支社 建設事業部 技術計画課 課長代理の水野希典氏から、同社管内の高速道路の現状説明があった。
NEXCO西日本管内の高速道路の延長は全体で3453km。関西支社はそのうちの約850kmと、NEXCO西日本管内の約25%を管理している。同支社において、経過年数が50年以上経っている路線が850km中に約1割もある。
10年後には、30年以上の路線が7割を占め、老朽化が進んでいるという。関西地区の高速道路の平均経過年数は30年。NEXCO西日本としては、「100年後も安心して利用できる高速道路」を目指して、点検に基づく診断、補修、記録という事業サイクルを進めている。
その事業サイクルを回すにあたり、起点となる点検のデモンストレーションについて、グループ会社の西日本高速道路エンジニアリング関西 大阪点検事務所 副所長の石堂伸二氏から説明があった。
西日本高速道路エンジニアリング関西は主に、関西地区の高速道路本体や施設、設備の調査、施工管理、一部補修、情報管理、点検などの役割を担っている。点検が必要な道路区間は主に、土工部と橋梁部、トンネル、情報板などで、今回紹介するのは、点検業務の一部である橋梁点検。
橋梁点検は基本的に、設備されている検査路を使って実施するが、すべての橋梁で設備が整っているわけではなく、多種多様な点検車両や、特殊技術、架設移動足場などを用いて人力によって点検を実施している。
また、道路法施工規則が2014年7月に改正され、構造物点検の方法や頻度が定められた(最終改正は2016年10月28日)。それにより、国内での点検車両の手配がスムーズにいかず、工程調整の調整が必要になるなど、問題が発生しているという。緊急点検時の早急な対応なども考慮し、西日本高速道路エンジニアリング関西では点検車両を自社車両として保有することになったという。
本来の保全点検ならば、交通規制を実施してから点検車両を設置するが、今回は開通前の路線のため、初動設置後からの点検車両の機能、点検状況を見学することとなった。
デモンストレーションで用意された点検車両は、4種類5台。見学や撮影用として、トンネル点検車「TZ-12A」が2台用意された。TZ-12Aは、トンネル覆工や設備点検で使用する高所作業車で、積載荷重1000kgのデッキが最大地上高12mまで伸びる。参加者はトンネル点検車に乗り込み、橋梁の外側から点検の様子を見学した。
橋梁の点検は基本的に下から行なうが、川の上だと下には入れないため、橋梁点検車が必要となる。点検は近接目視として、橋梁健全性を判断できる距離まで近づいての目視や、ハンマーで叩いての打音の確認をする。ボルトやナットを触診で点検することもある。
橋梁点検車「BT-110」は、バスケットの積載荷重200kg、最大地下深7.3m、最大地上高6.8m、最大差込5.6m。BT-110よりも高スペックの「BT-400」は、バスケット積載荷重300kgまたは3名、最大地下深17.4m、最大地上高16.1m、最大差込15m。この2台の橋梁点検車を使い、橋梁の上から新名神木津川橋の下側に潜って点検するデモンストレーションを行なった。また、最大地上高30.4mの高所作業車「AT-300CG」の展示も行なわれた。
城陽JCT
最後に訪れたのは、城陽JCT。城陽JCTの橋梁の色は千歳緑となっている。この場所は元々、京奈和道と国道24号とが直結していた。その先に将来必要となるICを作るということで、いったん京奈和道に仮の出入口を作って施工を進めた。その後も出入口を何度か変更しながら、2月11日には国道24号と京奈和道の立体接続が完了。今回の開通で、さらに新名神のランプが追加されて接続することとなる。八幡京田辺JCTと違い国道24号からは、京奈和道にも新名神にも行けるようになっている。
城陽JCT・IC付近では、新名神の開通に合わせて物流や産業の新拠点として新市街地整備事業が進められている。区画整理と企業誘致が進み、12区画すべてに企業立地が決定している。新たな雇用創出や地域の活性化につながると期待されている。