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NEXCO西日本、新名神 神戸JCT~高槻JCT間は2016年度中完成を目指し順調と発表

東九州道 椎田南IC~豊前ICは2016年春開通で全通へ

2015年11月5日 発表

 NEXCO西日本(西日本高速道路)は11月5日、記者会見において同社の事業方針について述べたほか、建設中の新名神や東九州道などの進捗状況など、事業概要が説明を行なった。

 2018年度の完成目標を前倒し、2016年度の完成を目指している、新名神高速道路 神戸JCT(ジャンクション)~高槻JCT間は、用地取得率と工事着手率はともに100%となり、工事は順調に推移している。また、東九州道のうち、唯一残された未完成区間である椎田南IC~豊前ICは、2016年春に開通できるとの見通しが示された。

西日本高速道路株式会社 代表取締役社長 石塚由成氏

 西日本高速道路 代表取締役社長 石塚由成氏は会見の冒頭で次のように述べた。「高速道路は24時間365日安心して利用できるというのが求められております。いつでも高速走行ができることにより、物流の生産性が向上し、新工場の進出、農水産業の活性化、観光作業の拡大に繋がり、日本経済の成長を支えるインフラのひとつです。当社は、間断のない高速道路サービスを提供のために、100%の安全・安心を目指し、お客様の満足度を高め、地域の発展に寄与し、社会に貢献するという企業グループの理念のもと、業務を遂行しております。大規模更新・大規模修繕に関しては、2015年より第1歩を踏み出しております。東九州自動車道につきましては2016年春開通に向け、また新名神につきましては、2016年度開通目標区間で工事の正念場にあります。一言付け加えますと、新名神のIC(インターチェンジ)近辺には、物流基地の新設の予定を聞いております」

NEXCO西日本の概要
2015年度の事業費の内訳
2015年度の高速道路事業の内容
2015年度の高速道路以外の事業の内容
西日本高速道路株式会社 取締役常務執行役員 経営企画本部長 芝村善治氏

 次に取締役常務執行役員 経営企画本部長 芝村善治氏は、「NEXCO西日本は、東は滋賀県から南は沖縄県まで24府県において事業を行なっております。現在、高速道路は3453kmの営業、新設102kmの建設事業などを行なっています。2015年度の事業計画としては、高速道路事業の事業費6635億、高速道路事業以外の事業費を含めまして全体として6902億の総事業費で進めています。高速道路事業につきましては、高速道路の新たな新設・改築事業に約3600億円、新設は新名神高速道路など、102kmの新設を行なっています。また、暫定2車線区間の4車線化事業として96kmの事業を行なっています。営業中の高速道路の維持修繕費用は年間3067億となっています。高速道路以外の事業としては、主にSA(サービスエリア)・PA(パーキングエリア)の事業運営の建設管理で年間約102億円の事業費となっています」と、同社の事業概要について述べた

 新名神の建設状況については、「NEXCO西日本で進めいる最大のプロジェクトが新名神高速道路です。これは関西地域の高速道路のネットワーク、京都~大阪~神戸間を結ぶ主な都市間高速道路としては、名神と中国自動車道の1本しかありませんでした。そのため、多くの渋滞が発生しているのが現状です。特に中国自動車道の宝塚エリアでは、全国の高速道路渋滞ランキングの4位となる、関西最大の渋滞が発生しています。この慢性化している名神・中国道の抜本的な渋滞を解消するために、新名神高速道路の建設に取り組んでおります。また、渋滞の解消だけではなく、内陸型地震発生時に高速道路のリタンダンシー(冗長性)の確保、多重化という点でも新名神の役割は重要です。2012年の集中豪雨では、京都府南部地域などで名神はじめ多くの高速道路が長時間に渡って通行止めとなりました。このように地震や天災などに備えるという観点で新名神高速道路の役割は重要です」と整備する重要性を説明。

新名神の現状
新名神の果たす役割

 新名神の工事進捗状況については、「新名神高速道路は、大津~神戸までの区間、約80kmの区間で整備を進めております。このうち、八幡~高槻間、城陽~大津間の区間については、民営化時点で一旦凍結になっておりましたが、2012年4月に凍結が解除され工事を再開しております。これらの区間については、用地の取得率が10%程度となっており、2023年度の完成を目指して事業を進めています。一方、民営化以降に精力的に建設を進めてきました、神戸~高槻間と、八幡~城陽間については2016年度の開通を目指して急ピッチで最後の仕上げをしております。両区間とも2015年度に用地の取得率が100%に達しました。また、工事についは全線100%の着手をしております。例えば、高槻ジャンクションは工事の進捗率70%となっております。新名神高速道路は、山間部を通過することからトンネルが多くなっていますが、大津~神戸間で最も長い箕面トンネルでも両サイドから掘削を進め、約60%の進捗率となっています。また、新名神高速道路の整備に併せ、様々な開発が進んでいます。特に彩都地区の茨木IC周辺に大手デベロッパーによる大型物流施設の建設が2015年になって進んでおります。まさに新名神高速道路を核とした開発が進められている状況です」と現状を語った。

新名神の区間別完成目標年度
新名神の整備効果
新名神の工事進捗状況

 次に、供用中の高速道路の老朽化について「NEXCO西日本が供用する橋梁のうち、2015年現在で30年以上の経年となっているものは4割となっています。これが10年後には7割になる見込みです。経年劣化に伴う老朽化は今まさに進行しつつあり、主に交通を支える床板にかなりの痛みがみられます。この整備財源として、高速道路の料金徴収期間を10年延長させていただいて、新たな特定更新工事に着手いたしました。事業規模はNEXCO 3社で約3兆円、うちNEXCO西日本は大規模更新と大規模修繕の費用を合計して1兆1221億円になります。この事業については、従来の高速道路の維持管理や修繕工事とは別に新たに『特定等更新工事』という項目の事業費で整備を進めていきます。2015年に着手し、2030年度の15年間で逐次進めていきます」と述べた。

NEXCO西日本管内の高速道路の経過年数
大規模更新・大規模修繕の財源確保のため高速道路の料金徴収期間を10年延長
大規模更新・大規模修繕工事について
特定更新など工事の追加に伴う事業費の推移

 SA(サービスエリア)/PA(パーキングエリア)の事業に関しては「NEXCO西日本グループ直営店舗にて『モテナス』ブランドを23個所のエリアで展開しています。また、地域に開かれたSA・PAにするということで、地域活性化イベントの場所の提供やテナントと共同で地域物産展の開催などの取り組みを行なっています。また、インバウンド対応として、関西エリアでは初めての免税店を岸和田PAで11月1日より開始しました」と述べた。

 海外事業の取り組みとして「海外事業は、NEXCO西日本の単独と高速道路5社で協同出資した『JEXWAY』の2本柱で取り組んでいます。NEXCO西日本の取り組みとしては、インドネシアのPPP事業に運営・参画をしています。また、米国に橋梁点検のための子会社『NEXCO-West USA』を2013年1月に設立し、点検業務を受注しております」

SA/PA事業の取り組み
海外事業の取り組み

 記者会見の会場には、SA/PAのトイレの清掃に活用されているウルトラファインバブル生成装置「バヴィット」や、橋桁などのコンクリートの劣化状況を検査できる「Jシステム」が展示された。

 バヴィットは、「ウルトラファインバブル」と呼ばれる1μm以下の気泡を水中に発生させる装置。この気泡は、界面活性作用や電気的な吸着作用、気泡の破裂による衝撃圧力作用といった特性を持っており、この気泡が含まれる水を使えば、洗剤を使ったのとほぼ同じ効果で汚れを落とすことができる。有機的な汚れは若干苦手とするケースもあるが、NEXCO西日本ではSA・PAのトイレの清掃に本装置を採用。従来の洗剤を使っていた作業に比べ、本気泡が含まれている水を噴霧し、それを糸モップで拭き取るだけで清掃効果が得られるため、作業時間の短縮と、水の使用量を100分の1に削減する効果をあげている。今後は、植物の生育向上や医療現場での利用といったシーンへの活用が期待されている。

ウルトラファインバブル生成装置「バヴィット」
NEXCO西日本ではSA・PAのトイレの清掃にウルトラファインバブルを採用

 Jシステムは、赤外線カメラを利用したコンクリートのリアルタイム調査装置。コンクリートの内部破損を調査するのが目的。従来は目視とコンクリートを叩いて音で内部破損がないか調査していたのを、本システムにより赤外線カメラでスキャンして、温度差を見つけることにより、コンクリートが破損して空洞ができている場所を発見できる。これにより、より早く性格に破損個所を特定して対処が行なえるようになった。

コンクリートの劣化状況を検査できる「Jシステム」の赤外線カメラ
画面の灰色の一部に赤く色がついた部分がコンクリートが破損し空洞ができていると思われる場所
点検・調査技術の技術開発の推進

(編集部:柴田 進)