旅レポ

開通50週年を迎えた天草五橋を渡る

天草本島へ向けて架かる5つの橋と立ち寄りスポットを紹介

 熊本応援企画の第4回は、前回の「三角西港(みすみにしこう)」がある九州本土側から天草諸島へ渡る際に必ず通過する5つの橋「天草五橋」を紹介しよう。

 天草エリアは、上島と下島の大きな2つの島を中心に成り立っているが、大矢野島(上天草市)という手前の島へ渡る橋が1つ、上島へ渡るための4つの橋の計5つの橋を経由するのが前提となる。今回は、橋そのものと周辺施設も写真で紹介していく。

今回のルートマップ

天門橋(1号橋)から天草パールラインを進み天草方面へ

世界遺産に登録された三角西港(熊本県宇城市三角町三角浦)から見える1号橋。手前に見えるのは建設中の新天門橋(仮)

 天草五橋は1966年に完成し、2016年で開通50週年を迎えた、九州本土と天草諸島を結ぶルート上に架かる5つの橋の総称をいう。

 熊本県宇城市三角町から天草方面に向かうと、まず大矢野島(おおやのじま)に渡ることになる。そこに架かる1号橋が「天門橋」。502mと、五橋のなかでは最も長い橋長の連続トラス構造の橋だ。ここから、国道266号沿いを走り、大矢野島から上島に渡ることになるが、残りの4つの橋は大矢野島の出口から上島に渡るまでの間に密集している。この周辺は真珠の養殖が盛んであることから、国道266号に“天草パールライン”と名付けられている。

 天門橋の隣には「新天門橋」が建設中。こちらは熊本都市圏と県内の主要都市を90分で移動可能とする「熊本天草幹線道路」プロジェクトの一部として利用される予定。完成すれば、ソリッドリブ形式のアーチ橋としては国内最大の橋梁になるとのこと。取材時は、両岸からアーチが伸びている途中だったが、工事途中の貴重な風景といえる。

天門橋の入口付近
天門橋よりも、建設中の新天門橋の存在感が大きい
天草側からみた建設中の新天門橋。両岸からアーチが伸び、じきに結合される

大矢野橋(2号橋)を渡り永浦島にある天草ビジターセンターに立ち寄り

2号橋である大矢野橋を宇城市側から見たところ

 天門橋から天草パールラインを南下していくと、大矢野島の南端にたどり着く。すると、2号橋である「大矢野橋」が現われる。橋の長さは249.1m。ここまでは距離にして12km弱といったところ。島の内陸を走るかたちとなるが、その途中には「天草四郎メモリアルホール」や「藍のあまくさ村」といった資料館や土産物店もある。

 最初の立ち寄りポイントだが、大矢野島から永浦島に渡り、3号橋を通過する前に天草の自然や生態系を学習できる「天草ビジターセンター」(熊本県上天草市松島町合津6311-1)に立ち寄ってみてはいかがだろうか。水辺に生息する動物や地形の特徴など、幅広い情報を得られるので、親子の自由研究テーマなどにもピッタリだろう。併設しているカフェでひと休みしつつ、展望広場から天草の島々を眺めることもできる。

大矢野橋を天草側から見たところ
天草ビジターセンター
館内は天草の豊かな自然や生態系について学習できる
庭に出ると永浦島の南西方面の海を一望できる
周囲の地形を表わすジオラマが展示されており、ちょうど中央部が現在地となっている
隣の棟は休憩スペースとなっており、カフェとして利用が可能

3号橋と4号橋を渡り、前島の観光スポットへ寄り道

3号橋の「中の橋」。写真は南方へ渡りきったところから北を向いて撮影したところ
車両を停められる休憩所が設けられている

 天草ビジターセンターをあとにすると、すぐに大矢野島から次の大池島に渡る「中の橋」が現われる。大池島は島の縦幅が200mもないほどの小さい島だ。しかし、駐車場が整備されているので、そこから目の前に広がる、八代海に浮かぶ島々をチェックしてみるのもオススメだ。ちなみに大池島は隣の池島と、ほぼつながっている地形をしているので、その先の前島とつながる橋を次の4号橋としている。

 橋長510.2mの4号橋「前島橋」を渡っていると、左側に複数の建物が見えてくる。海上に突き出た浮遊物のような建築物に興味がわき立ち寄ることにしてみた。前島に入ると入口付近は旅館やホテルが集まっているエリアとなっており、天草に入る前の中継ポイントとして機能していることが理解できた。

 先ほど気になった橋の上からの風景の箇所まで行ってみることにしよう。

4号橋の「前島橋」
島を渡った広場に入っていくと、いくつかのシークルーズの発着場所が確認できた
奥に進むと、天草四郎の銅像が
さらに奥に進むと、天草パールセンターという建物を発見。真珠製品をはじめとする特産品などのお土産が販売されている。建物全体の形状がアコヤ貝と真珠がモチーフになっている

 前島橋を渡りすぐ左折すると、シークルーズの船着き場、カフェやレストランの複合施設、特産品である真珠を取り扱う土産店、そして水族館や郷土資料館と、派手さこそないが、なかなか見応えのあるリゾートエリア風な雰囲気。

 今回は、一番奥にある「わくわく海中水族館シードーナツ」と、「天草パール・マリア館」におじゃましてみた。

わくわく海中水族館シードーナツ

 わくわく海中水族館シードーナツは、円形で水深3mもの深さにいけす状の水槽があり、さまざまな海水魚を見学することが可能だ。そのほか体験型のアトラクションもあり、海洋生物ファンにとっては見応えのある内容となっている。

 取材時(10月)は、イルカの調教を行なっている時期であり、一般向けの体感プログラムは、もう少し先になりそうとのことだった。そのほか、アマゾンなどの熱帯に棲む海洋生物といった外国の生態系を再現した水槽も数種類用意されている。

 入場料は、大人1300円、中高生800円、小学生500円、3歳以上の幼児400円、さらに15名以上からの団体割引料金も用意されている。

日本では珍しい海に浮かぶ水族館「わくわく海中水族館シードーナツ」
シードーナツに行くまでの通路脇に、海上自衛隊から貸与されたPS-1型飛行艇が展示されている。間近で見るとその巨大さに驚く
内海とあって波のない穏やかさが特徴
入場ゲートからは歩いて400mほどでシードーナツに到着する。その途中にも海洋生物が水槽内に展示されている
いよいよ、シードーナツに到着。この通路を渡ると円形で水深3mの海中水槽を楽しむことができる
円形の場内。右奥に見える入り口から階下に降りることができ、海面よりも下に泳ぐ魚たちを窓から眺めることができる。また、展示系も充実しており、アマゾン・オーストラリアといった外国の生態系を再現した水槽もある
ドーナツの中央は鯛のいけすとなっており、餌やり体験が可能(1回100円)
鯛に向かって餌を放り投げると、ものすごい勢いで餌を奪い合う様子が見られる
取材時はイルカの調教中で一般向けにはアトラクションを行なっていなかった。飼育員と打ち解けるまでには、かなりの時間を要するとのこと
海中水族館への入口
海中水族館の入り口を降りていくと、さまざまな海中生物が出迎えてくれる
円形の海中水族館の壁面には、周囲を泳ぐ魚たちを見られる
世界中のさまざまなエリアに生息している魚の住環境までを再現している館内
水族館の展望デッキからは前島橋を眺めることができる

天草パール・マリア館

 入場ゲートの裏には、キリスト資料館「天草パール・マリア館」がある。隠れキリシタンの歴史を辿る「キリシタン資料室」、さらに「真珠資料室」では日本有数の産地でもある天草エリアの真珠の歴史を学習できる。なお、入場料はシードーナツの料金に含まれている。

天草パール・マリア館の入口
入場してすぐにマリア像に祈りを捧げる天草四郎の像が目に飛び込んでくる
江戸時代初期にポルトガルより伝来したバラモン凧が展示されている
2階のキリシタン資料室には、天草エリアから出土した木彫のマリア像など、禁教令下にあった隠れキリシタンたちの心の拠り所となった資料が数多く展示されている
同じく2階の真珠資料室。真珠の養殖に最適な気候と地形をもつ天草で育てられる真珠産業の時代の遷り変わりを学習することができる

リゾート気分を味わえるオシャレスポット「リゾラテラス」

 天草パールセンターの隣には、これまでのちょっとレトロな印象からは、かなり雰囲気の異なる施設がある。この「リゾラテラス天草」と名付けられたショッピングモールは、20~30代女性向けといってもよいオーシャンビューのカフェやレストランが立ち並ぶモールだ。

 この、「リゾラテラス天草」を写真で紹介していこう。今回は紹介していない「リゾラマーケット」というゾーンでは、オリジナルスイーツ「黒糖ばなな」をはじめとするスイーツや、天草の海産物が販売されている。さらに全席オーシャンビューのレストラン「プレートカフェリゾラ」では、天草の厳選素材によるワンプレートランチを楽しめる。そのほか、子供向けのキッズ広場や、リゾラビーチバーなど、幅広い年齢層の旅行者に対応した施設となっている。

敷地内の配置図。通りを挟んで駐車場がある
カフェの「アイランドスタンド」へ向かう途中。ビーチリゾートの雰囲気
シークルーズのデッキと直結しているので、テラスで船の発着を眺めつつ食事を楽しめる
「アイランドスタンド」で一番の売れ筋「スムージーマンゴー」(420円)
ビーチ側からテラス席を見たところ。プレートカフェリゾラ(写真右側)のテラスで使用されているソファは身体全体を預けて着席できるほどの大きさ

最後の5号橋を渡り天草市へ向かう前に立ち寄りたい絶景ポイント「高舞登山」

天草五橋の最後の橋である「松島橋」

 前島にあるシードーナツやリゾラテラスに立ち寄ったあとは、天草五橋最後の橋となる「松島橋」を渡り、上島に上陸することとなる。ここから天草の中心部となる下島の本渡エリアまでは、松島有料道路を経由していくかたちとなる。

 5つの橋を渡りきって天草へ向かう前に島原湾を一望できる絶景ポイント「高舞登山(たかぶとやま)」から天草の島々を眺めた様子を紹介する。

高舞登山の山頂にある展望台
展望台に設置されている位置関係を示すパネル
展望台からの風景。画面中央に見えている橋は4号橋の前島橋
先の写真左側をクローズアップすると、5号橋の松島橋が見える。唯一、赤くカラーリングされたパイプアーチ橋だ
4号橋の前島橋を拡大したところ。写真右端にはシードーナツが見える
3号橋の中の橋
2号橋の大矢野橋

見ごたえある穏やかな海と島々

 熊本市中心部から天草方面への移動は、目的地にもよるが宿泊プランも想定して旅程を組むことをオススメする。天草空港を拠点とする天草エアラインも利用できるが、実際はレンタカーなど乗用車での移動がほとんどとなるだろう。そこから、下島の南側である崎津エリアや、牛深エリアへは、ひたすら一般道を走ることとなるので、時間には余裕をもってドライブを楽しんでいただければと思う。

松島有料道路を走りきり、上島の西側にでてくると国道324号を南下し天草市に辿り着く

赤坂太一

福岡市在住のライター。トラベル Watchでは、九州・山陽エリアの取材を担当することが多い。自動車誌をはじめとする乗り物系媒体に寄稿しているが、最近では一般紙から新聞の取材も。東京から福岡に移住して5年目をむかえた札幌生まれ。ブログはhttp://taichi-akasaka.com/