旅レポ
熊本県荒尾市・万田坑で産業革命時の炭鉱の歴史をたどる
世界文化遺産に登録された三池炭鉱の中心的存在である竪坑跡から石炭産業の勃興を感じる
2016年8月16日 00:05
「いま行ける熊本」の第2弾は、すでに閉山している炭鉱跡。熊本市中心部から北へ40kmほど移動した有明海近くの荒尾市原万田にある「万田坑(まんだこう)」を紹介する。
明治時代初期に国内最大の炭鉱として発展を遂げた三池炭鉱において最大規模だった竪坑として、現在もその姿を残す万田坑。このエリアに数多くある坑口のなかでも、竪坑櫓(たてこうやぐら)やレンガ造りの関連施設が当時の姿そのままに残っており、観光地として多くの人を呼び込んでいる。今回は2015年の7月に、「明治日本の産業革命遺産」として世界文化遺産に登録され、より注目度を増したこの万田坑を紹介していこう。
有明海エリアに位置し、佐賀・福岡側からのアクセスも良好
万田坑までのアクセス方法は、JR鹿児島本線の荒尾駅から産交バスで8分ほどで到着するが、運行本数が少ないのと、駅から2kmほどと比較的近いので、タクシーを利用するのもアリ。レンタカーで旅行する場合でも駐車場が完備されているので安心だ。また、福岡県との県境近くに位置しているので、佐賀県や福岡県南部を旅行する際の見学ポイントとして、プランに追加してみるのもよいだろう。
現地に到着すると、入場券の販売や、資料室が用意されている万田坑ステーションという施設がある。映画「るろうに剣心・京都大火編」の撮影地としても使用されており、劇中に使用された衣装が展示され、違った見どころもあるのでステーションの中は、くまなく見てまわっていただきたい。
レンガ造りの建物や残された道具達がタイムスリップした気分にさせてくれる
万田坑ステーションから、万田坑の入り口までは徒歩数百mの距離がある。複数のレンガの建屋が立ち並んでいるが、こちらに常駐しているガイドが推奨している順序で紹介していくことにする。
2016年の5月より、フリーWi-Fiスポットを利用したスマートフォンやタブレットによる画像付きの音声ガイドも利用できるようになった。日本語のほかに、英語、中国語、韓国語に対応している。
それでは、各施設を見ていくとしよう。
第二竪坑櫓
1908年(明治41年)に完成した高さ18.9mの鉄製の櫓。炭鉱マンたちはここからケージに乗って現場まで移動していた。坑口から坑底までは264mという深さだが、そこまでの所要時間は約1分ほどを要していた。さらに坑内の換気や排水の役割も担っていた。
安全燈室と浴室
1905年(明治38年)頃は、扇風機を動かすための機械室だったが、閉坑された1951年(昭和26年)に安全燈室となり、炭鉱マンのヘルメットに装着される安全燈の充電器などが備え付けられていた。浴室は、仕事終わりですすだらけになった炭鉱マンたちのリフレッシュする場だった。
第一竪坑坑口
1899年(明治32年)当時、東洋一とされた大型の櫓が建設されてていた坑口跡。櫓の高さは30.7mと、第二竪坑の櫓よりも巨大だった。1954年(昭和29年)には、北海道の三井芦別炭鉱に移設された。現在は櫓の基礎部分だけが残っている。
土産屋や資料室にも立ち寄り、時間が許せば周辺グルメも
万田坑にいるあいだは現代の建築物が視界に入ってこないので、没入感のある歴史体験ができる。子供向けのアトラクションはないが、小学校高学年以上の家族構成であれば、社会科見学として見ごたえのある施設であることは間違いない。明治から昭和にかけて日本の産業革命を支えてきた国内最大の炭鉱跡を、熊本旅行のポイントに加えてみてはいかがだろうか。
繰り返しになるが、万田坑ステーション内には歴史年表が元号ごとに掲示され、映像コンテンツによる万田坑ストーリーが楽しむことができるので、立ち寄ることを強くお勧めしたい施設だ。
万田坑を中心とする周辺エリアでは、「石炭ゴロゴロ万田焼」という石炭をイメージした料理を提供するグルメスポットが数多く存在する。店ごとにメニューはまったく異なるが、その分、自分好みの店舗を選びやすいはずだ。提供されている店舗は全部で12店舗。荒尾市の公式Webサイトにてパンフレットがダウンロードできるので、万田坑に訪れる際には事前に荒尾市公式Webサイトの「石炭ゴロゴロ万田焼の認定店が12店舗に!」を確認してほしい。
熊本市へ向かうルートの追加ポイントにも
万田坑は世界文化遺産に登録される前から、日本国内においても重要文化財と国史跡に指定されており、機械や建造物が比較的良好な状態で保存されている。クルマで移動していると、のどかな田舎の風景のなかに突如として現われるレンガ造りの一角は、迫力満点で出迎えてくれる。
さらに周辺のグルメも充実しているので、熊本市中心部から、あるいは近隣県から熊本市へ向かうルートの立ち寄りポイントに万田坑を追加してみてはいかがだろうか。