旅レポ
お得にフライト、現地は豪華!な一生モノの体験。香港エクスプレスで行くアンコール・ワットの旅(その2)
“シェア”向けの絶景が広がる世界遺産、アンコール遺跡群めぐり
2016年12月21日 00:00
世界遺産として名高い、カンボジアの誇る遺跡「アンコール・ワット」。年間約500万人(うち外国人が210万人)が訪れるという世界的に有名な観光地だ。現地のガイドによると、ここ数年訪れる日本人観光客の年齢層に変化があり、20代がぐんと増えたという。現地で感じたのは、実はシェア向けの絶景が多いこと。香港エクスプレスが実施したプレスツアーのレポート第2回となる今回は、ツアーで訪れたアンコール遺跡群をまとめて紹介したい。
「アンコール・ワット」の日の出を目指して早朝スタート
カンボジアは東南アジアの中央、インドシナ半島のタイとベトナムにはさまれる位置にある。そのタイ寄りにあるのが、世界遺産として有名なアンコール遺跡群だ。889年に王都に定められてから1431年にシャム(現在のタイ)に攻略されるまで約500年間、王都として栄えた。日本史で言えば平安時代から室町時代までにあたる長期にわたって繁栄した巨大都市だ。
王都としての最盛期には、東京23区(619km2)と同じぐらいの広さがあったといわれ、現在はその2/3程度にあたる約400km2のエリアがまるごと世界遺産登録されている。アンコール遺跡群に多数の巨大遺跡があるのは、王が代わるたびにこれまでの遺跡を越えるさらに立派な遺跡を作って民衆に力を示す必要があったためだと考えられている。時代によっては前王の宗教すら否定する場合もあるため、アンコール遺跡群にはヒンズー教と仏教、それぞれの遺跡があるのも特徴だ。
この広大なアンコール遺跡群には100を超える遺跡があるが、今回のツアーではそのうち最も有名な3カ所「アンコール・ワット」「バイヨン」「タ・プローム」を中心に訪れた。
これらアンコール遺跡群の観光には「アンコール・パス」と呼ばれる共通の入場券が必要で、各遺跡の入り口でチケットチェックが行なわれる。1日券20ドル、3日券40ドル、7日券60ドルで(順に約2300円、約4600円、約6900円。1ドル=約115円換算)、11歳以下は無料。入場券は当日料金所で購入する(前日17時からも翌日分の購入が可能)。各遺跡の入場は基本的に朝5時30分~夕方17時30分まで。
この日はツアーに参加するメンバー全員を、マイクロバスで現地の日本語ガイドが案内してくれた。まずは「アンコール・ワット」の日の出を見るため、ホテルを4時45分に出発。5時にチケット売り場へ到着した。まだ真っ暗のなか、すでに売り場は大混雑だ。長い列に並び、15分ほどで自分の顔写真入りの入場券をゲットして急いでアンコール・ワットへ移動した。
朝日と回廊のレリーフに圧倒される「アンコール・ワット」
アンコール遺跡群の代名詞、「アンコール・ワット」は、12世紀初頭にスールヤヴァルマン二世が建立したヒンズー教の寺院だ。南北約1300m、東西約1500mの堀で囲まれている。マイクロバスはお堀の外までしか行けないので、まだ薄暗いなかを懐中電灯を頼りに参道を進む。寺院手前にある池からの写真が有名だが、ガイドさんによると、朝日自体はこの参道からがベストスポットだとのことでしばらく日の出を待った。
が、当然ながら毎日赤く染まるわけではなかった。この日は6時10分頃の日の出だったが、雲も多く残念ながらそれほど赤く焼けずに明るくなってきたので、定番スポットの池の前に移動。ただ、赤くは焼けなくても、もちろんアンコール・ワットの日の出は幻想的な雰囲気だ。まわりの観光客を見ると、スマホで撮影してその場でSNSに投稿している人もとても多かった。
ガイドさんによると日本人観光客は日の出を見たあと、朝食を食べるためいったんホテルに戻ることが多いそうだが、このままここでお弁当を食べた方が空いている午前中にアンコール・ワットの観光ができるという。ガイドさんのアドバイスに従って近くの食堂で場所を借り、ホテルが用意してくれた朝食を食べてから、7時30分頃から早速アンコール・ワットの寺院内の観光をスタートした。
世界最大の石造寺院として世界遺産登録されているアンコール・ワットは、長方形の回廊が「世界の中心山」である中央の塔を3重に囲んでいる構造。回廊は見事なレリーフで埋め尽くされている。
まずはガイドに連れられ第一回廊でインドの古代叙事詩「ラーマーヤナ」や、王位を巡る戦闘の悲劇を題材にした「マハーバーラタ」などのレリーフを鑑賞。隅々まで彫り込まれたレリーフが数十m続くさまに圧倒される。創建当時のアンコール・ワットは朱色に塗られ、金箔(きんぱく)も多用されていたという。これだけ見事なレリーフにさらに彩色や金箔が貼られた光景を想像すると、めまいがしそうだ。
アンコール・ワットのレリーフ #theta360 -Spherical Image - RICOH THETA
さらに回廊を進み、第一回廊と第二回廊の間に位置する十字回廊へ。当時の彩色が確認しやすい場所だ。ここには沐浴の池や、1632年に日本人で最初にアンコール・ワットを訪れた、森本右近太夫一房の墨書の落書きも見られる。
第二回廊に進み「ラーマ-ヤナ」のレリーフや、柱に残るすばらしい透かし彫り、さまざまなデバター(女神)を見学。デバターには一人一人モデルがいたそうで、体形からアクセサリー、髪型、服装なども1体ずつ違いがあって見応えがある。
アンコール・ワットの十字回廊 #theta360 -Spherical Image - RICOH THETA
第三回廊への階段を上ると見事な景色とデバターのレリーフが
第三回廊へは上り下りする専用の階段が設置されている。一度に上り下りする人数に制限がかけられているため、午後の混雑する時間帯は数十分待つそうだ。また、もともと、寺院にはひざが見えるショートパンツや、肩が見えるタンクトップなどでの入場はできないが、第三回廊は特に神聖な場所とされているためこの階段入り口で止められる場合もある。また、階段はかなり急で危険なため、11歳以下は入場できない。階段のあまりの急さに、上るのを諦めて階段の下で同行者を待っているらしい老齢者もかなりいた。
かなり急で怖い階段をなんとか上ると、眼下に緑あふれる絶景が見える。アンコール・ワットのシンメトリーな参道の光景もすばらしい。柱や窓枠ごしに見える風景もすばらしく、自撮りに映えるスポットだらけだ。
迫力ある中央棟を間近で見たり、デバターのレリーフを堪能したりしたあと、階段を下りて第一回廊に戻った。神と阿修羅(あしゅら)が不老不死の妙薬を作るため大蛇を引き合うというヒンズー教の神話「乳海攪拌」のレリーフを見てから、裏参道から外に出てアンコール・ワットをあとにした。
徒歩で堀を越え、裏手にまわってくれていたマイクロバスに乗っていったんホテルへ。かなり駆け足で見てまわった印象だが、それでも約2時間かかった。見どころだらけでまるごと美術館のような遺跡なので、ていねいに見てまわれば何時間でもいられそうだ。
ただ、子供も一緒に来られるかと考えるとかなり気をつかいそうだ。日の出自体も真っ暗ななかを、手すりのないお堀に落ちないよう気を付けながら徒歩での移動になる。少なくとも小学生ぐらいでないと心配になる。
また、そもそもアンコール・ワットの内部はバリアフリーとはほど遠く、基本的にピラミッド構造のため階段の上り下りが必要。第三回廊は11歳以下は入場できないし、回廊のなかは大人でも迷子になりそうな広さだ。私なら動きが予測できない幼児を連れて行く勇気はまったくない。自分で地図が読める、できれば小学生の高学年ぐらいになってからの方がよさそうだ。
個人的には、11年前にアンコール・ワットに来たときは、実は朝焼けに染まるアンコール・ワットを見た。それはそれは一生忘れられない衝撃的な美しさで、三脚すら持たずに軽い気持ちで訪れてしまって後悔したので、今回は前よりキレイに日の出のアンコール・ワットを撮りたいというリベンジの気持ちが強かった。個人旅行なら滞在期間中、毎朝通っていたかもしれない。ガイドさんによると美しい朝日を見るなら乾期の1月~2月がベストだとのこと。LCCで気軽に来られることも知ったので、ベストシーズンになってから、またトライしたい。
四面塔が並ぶアンコール・トムの中央部「バイヨン」
ツアーは10時頃ホテルに戻り、少し休んでからホテルでゆっくりランチをとった。そして、13時30分に再びマイクロバスに乗って午後の観光をスタート。次は12世紀後半にジャヤヴァルマン七世によって作られた「アンコール・トム」に向かう。アンコール・トムは一辺約3kmの城壁を持つ巨大な王都で、アンコール・ワットの北に位置する。城壁内には多数の遺跡が残るが、「バイヨン」はその中心に位置する四面塔で有名な大乗仏教の寺院だ。
アンコール・トムの南大門は、四面仏が見事な門として有名だ。午前中は非常に混雑していて、ここで渋滞がおきることもある。堀にかかる橋には「乳海攪拌」をモチーフにした迫力ある欄干がかけられており、ここでバスを降りて門を見学。再びバスに乗り中心部へ向かった。
バイヨンは中央祠堂を第一回廊、第二回廊が囲む構造をしている。特に第一回廊を埋め尽くすレリーフがとても見事だ。アンコール・ワットと違って回廊には屋根が残っていない部分が多いが、風雨にさらされながらここまで見事にレリーフが残っていることに驚きだ。レリーフからは戦闘の様子や、当時の王宮内の様子もよく分かる。最下段には庶民の日常生活も生き生きと描かれていて、見ていてとても楽しい。精細だがデフォルメされていてどこかコミカル。絵が好きな人なら何時間でも見ていられるのではないだろうか。
第二回廊に進むと、中央祠堂を囲むテラスがぐるりと四面塔で囲まれている。どこを向いても観音菩薩の優しいほほ笑みであふれている空間だ。訪れたのは空いていると言われる午後だったが、それでも観光客で混雑していて、フォトスポットでは行列ができていた。間近に観音菩薩の顔があるためトリックアートが作りやすく、凝ったアングルで写真を撮る若者を多く見た。SNS的にとてもフォトジェニックな場所のようだ。
デバターや乳海攪拌などのレリーフはヒンズー教の寺院であるアンコール・ワットとも共通しているが、49塔の祠堂に刻まれた観音菩薩は大乗仏教。繊細なアンコール・ワットと比べるとゆったり堂々とした雰囲気がある寺院だ。階段の上り下りは多少あるが、アンコール・ワットほどアップダウンが激しくない。足元も危険な場所は少ないので小学生ぐらいの子供が一緒でも観光しやすそうだ。観光の所要時間は約1時間。
アンコール・トム内の「バプーオン」と「ピミアナカス」
続いて徒歩で移動し、アンコール・トム内の主な遺跡を見てまわった。バイヨンの北西にある「バプーオン」はアンコール・ワットよりも前、11世紀中頃に建てられたヒンズー教の寺院で、約200mの長い空中参道があるのが特徴だ。とても雰囲気はあるが見学者は少なく、やや倒壊も進んでいるようだ。
周辺は整備されているが草木が生い茂る場所もあり、案内してくれたガイドさんが「これは頭痛に効く」などハーブをいくつも教えてくれた。こうしたハーブは民間療法でいまも使われているそうだ。
そのまま徒歩でその北にある「ピミアナカス」へ。これはさらに古い11世紀初頭に建てられたヒンズー教の寺院で、「天上の宮殿」という意味を持つ。この裏に王宮があったそうだが、石造りの神殿と違い王宮は木造だったため基礎しか残っていない。
さらに徒歩で進み、「ライ王のテラス」や「象のテラス」と呼ばれるレリーフで埋め尽くされた約350m続く広いテラスを見学。王族がテラスの上に立って自軍の兵を出迎えたり、外国からの来客を迎えたり、正月に行事をしたりするという、いわば王族公式の広場。そのテラスを埋め尽くすレリーフを近くで見学してから再びマイクロバスに乗り、最後の「タ・プローム」へ向かった。
自然の脅威を感じる神秘的な寺院「タ・プローム」
「タ・プローム」は、バイヨンを作ったジャヤヴァルマン七世が母親のために作った仏教寺院だ。のちにヒンズー教の寺院に作り替えられたため、ところどころでその改修の跡が見られる。アンコール・ワットやバイヨンに比べると名前はそれほど有名ではないが、アンジェリーナ・ジョリー主演の映画「トゥーム・レイダー」がここで撮影されたこともあり、「アンコール・ワットといえばこの光景」というべき世界的な有名スポットだ。
タ・プロームは1860年に発見されるまで長い期間森の中で忘れ去られていたため、隅々までガジュマルの木の浸食を受けているが、あえて木々を撤去せずそのままの状態で保存されている。遺跡修復の過程で薬剤で脱色されたというほかの寺院と比べ、緑のコケが残っているのも魅力的に写る。
四面仏が掘られた入り口の門を通り、中に入ると回廊を浸食する、迫力のあるガジュマルの木の根が方々に見える。太い根が巨大な手のように回廊を押し潰しそうになっていて、そのままでは崩壊するため鉄筋や重機で支えられている部分もある。
回廊の内側広場は観光客が非常に多く、常にごった返している。定番の撮影スポットで撮るには順番待ちが必須だ。回廊の内部は狭く暗いため通れない場所も多いが、のぞき見られる光景はどれも神秘的。仏教寺院として建てられたものの、後世ヒンズー教の寺院に作り替えられたらしく、建立当時に多数安置されていたと言われる仏像や、仏教をモチーフにしたレリーフは残念ながら残っていない。
観光のしやすさで言うとほとんど階段の上り下りがない平屋作りなので移動はとてもラクだ。混雑はするが小学生ぐらいの子供が一緒でも見てまわれるだろう。見学は1時間ほどで回れる。
タ・プローム #theta360 -Spherical Image - RICOH THETA
タ・プローム #theta360 -Spherical Image - RICOH THETA
ツアーでのアンコール遺跡の観光は以上の主に3カ所だったが、アンコール遺跡群には「東洋のモナリザ」と呼ばれる美しいレリーフが残る「バンテア・スレイ」や、夕日の美しさで知られる「プノン・バケン」など主要なスポットだけでもまだまだ多数ある。遺跡観光がメインなら、できれば3日券を使い尽くすつもりでゆっくり見てまわりたい。
普段、あまりなじみのないヒンズー教の神話やクメールの建築様式を大量に見ることになるので、渡航前に基礎知識をできるだけ詰め込んで観光すると、より楽しめるだろう。