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跡見学園女子大学と日本旅行業協会、「旅行業界への就職!女子大生本音の意見交換会」を実施
旅行会社10社と女子大生80名が参加
(2016/1/15 18:18)
- 2016年1月14日 開催
跡見学園女子大学は1月14日、東京都文京区にある文京キャンパスにて、日本旅行業協会(JATA)関東支部との共催で、観光コミュニティ学部の学生約80名(3年生約40名、4年生約40名)とJATA(日本旅行業協会)に所属する10社12名による「旅行業界への就職!女子大生本音の意見交換会」を開催した。
観光系大学入学者は当初、旅行業界への就職希望を強く持っているが、最近の傾向として卒業時にはその数が激減してしまうという。観光マネジメント学科(2015年4月より、マネジメント学部観光マネジメント学科を改組し、観光コミュニティ学部が設置された)の2014年度卒業生実績では、旅行業界への就職者は、同学科の就職した学生全体の3.4%だという。
業界情報の不十分さや誤解、業界への魅力が十分に伝わっていないことをその要因と考え、新たな観光人材の育成を急務とする旅行業界とのギャップを埋めるべく、双方の本音を語り合い、相互理解を高める新しいタイプの旅行業界と大学の交流企画として開催された。企画したのは、30年間旅行業界に勤務し、JATA関東支部でも長らく活動をした実績を持つ観光コミュニティ学部の篠原靖准教授。
意見交換会は、専門的な業務に携わる担当者から、業界の仕組みを聞く第1部「そこが聞きたい旅行会社の仕組み」、学生個人としては聞きにくい内容を、代表質問形式で投げかける第2部「旅行業界10社と女子大生の本音トーク!」の2部構成となった。
開会に先立ち、跡見学園女子大学 観光コミュニティ学部長の小川功氏が挨拶。「旅館やホテル、テーマパークなどと違い、“旅行業”は形がないため教員も、その素晴らしさを十分伝え切れていない。今回、このような機会を設けることで、それらが学生にうまく伝わることを期待している」と語った。
最初に、JATA関東支部 国内旅行委員会委員長の木下雅基氏から、「旅行業界でよく目にするのは店頭の販売。ほかにも、団体の販売、それぞれの商品を作る造成、それらを手配する担当などの職種がある。今日はそれぞれの本音を話していきたい」と挨拶があった。
木下雅基氏は、近畿日本ツーリストで団体販売の仕事をしている。その仕事に就いたきっかけとして、「旅行業界に入るつもりはなかったが添乗員のアルバイトをした際、最後に楽しかったといわれたひと言がうれしく、旅行会社に入った」とエピソードを語った。
JATA関東事務局 事務局長の鈴木伸一氏からは、JATAの組織について説明があり、続いて登壇している各委員の紹介があった。
第1部「そこが聞きたい旅行会社の仕組み」として、まずは、ビッグホリデーの並木和夫氏から、個人旅行の商品の企画造成について、実際のパンフレットをサンプルとして、「フォーマットや制約があるパンフレットの中で、企画担当者の裁量によって決められるのは3つの商品だけで、24ページ中3ページしかない。会社としての制約がかなり多く、取り引きがある多くの宿泊施設からの期待を受けながら、多くのお客様に対する思いを込めた商品造成は、責任は重いが、やりがいのある仕事」と説明があった。
次に、オリオンツアーの石黒昌彦氏から個人旅行の販売について「販売方法はパンフレットなどの紙を使った商品、パソコンやスマートフォンなどを利用したネットでの商品がある。近年、紙を使った商品が減ってきている。しかし、紙は紙の良さ、ネットはネットの良さがある。ネットを見て、その商品のパンフレットが欲しいというお客様もいる。しばらくは紙とネットは共存していくと思う」と説明した。
続いて、国内団体旅行の業務説明として、一般団体旅行について京成トラベルサービスの戸田裕之氏は、「営業マンは新規セールスで飛び込みをしたが、最近は受け付けで断られてしまう。取り引きのある顧客から紹介してもらうのが一番効率的。事前に電話でアポイントメントを取り、時期や規模、予算などを細かく聞いて見積もりを作成する。4~5社の相見積もりとなるが、そこで勝ち取るには、自社の独自のアピールを取り入れるのがポイント」と説明した。
東日観光の折笠雅浩氏は、教育旅行(遠足や修学旅行)について、「教育旅行は早めに業者選定があるので、年間の予算計画が立てやすい。また、中止になることがあまりない。集金が安心。航空機や新幹線など、ダイヤが乱れても優先的に扱ってくれる」などのメリットを挙げたあと、「少子化で学校数や生徒数が減っていき、販売が激化していく中、どのように販売していくか各社が模索している」と述べた。
日本旅行の佐藤みゆき氏は、旅行会社の店頭販売や女性の活躍について説明があった。「店頭業務は、旅行業の中で1番なじみがある。もともともある情報を伝える普通の受付や案内とは違い、旅行会社の店頭はお客様の要望に合わせたプランを提案する腕の見せ所で、やりがいと価値がある」と語った。また、女性の活躍については、「壇上には自分以外は男性ばかりだが、採用の段階では女性が多く、現場でも女性の存在が目立つ。出産、育児を経て現場に戻ってくる女性もいるし、女性に対して働きやすくなっている」と説明した。
第2部「旅行業界10社と女子大生の本音トーク」は、観光コミュニティ学部の篠原靖准教授が司会進行を務めた。篠原教授は「就活で企業訪問、OG訪問すると、時間も不規則で給与面もよくないと相談を受けるが、自分の好きな事や夢を仕事にできることは幸せなんだ、と強調している。何とか良い人材を旅行業界に送り出したい」と話し、学生からの質問を受け付けた。
最初に手を挙げた学生は、旅行会社における女性の待遇について、「“長時間労働と低賃金で家庭と仕事の両立が難しい”と旅行会社で働いている女性社員の方から聞きましたが、本音をお聞きしたい」と質問。日本旅行の佐藤氏は、「入社当時はそのような話も聞いたが、ここ数年は急速に働く環境が改善され、プライベートとの両立ができないということはない。逆にプライベートが充実していない人は仕事に成果が出せない」と回答。JATAの鈴木氏は、「JATA関東支部では、女性の管理職が集まりLADY JATA委員会というのがあり、各社に女性が快適に仕事をできるよう呼びかけている。また、各社もサポートを厚くしているので安心して欲しい」とした。
司会進行の篠原教授は「35年前に旅行業界に入った時、7割が男性だった。今は7割が女性。それだけ女性の活躍が旅行業界に望まれている。きめ細かな女性のサービスが求められている」とフォローした。
続いて学生からの質問は「現在、インターネット予約などが増えているが、このままでは、旅行会社が不要になってしまうのではないか?」との質問に、日本旅行の吉川泰史氏は「既存の旅行会社も有用性は認めているが、インターネットでは賄えない商品やサービスを提供しようと模索している。インターネットの無機質な予約の世界では味わえないものを提供していく」と回答した。また、「ネットだと価格を安くすれば稼働率は上がるがもうけがない。そのためネットの比率を抑える方向でいる」とした。
最後の質問は「欲しい人材像があれば教えてください」との問いに、京王観光の谷川透氏は「おもてなしの心を持って接客できる人。笑顔がなかなか作れない人が多い。笑顔は気持ちから生まれる。もてなす気持ち、心が作れないとだめ」と答えた。
今度は業界から学生への質問として、名鉄観光サービスの押山芳靖氏は、「昨今、若者の旅行離れが業界でも問題になっている。その理由は?」の問いに、学生たちは「旅行が好きでこの観光コミュニティ学部に入った。自分は旅行によく行っているので個人差もあるのではないか」「大学の授業が厳しい事や、アルバイトが忙しいなど、時間の余裕がなくなっているのでないか。金銭的には、スマホなどにお金をかけて、旅の予算を作れない。また、旅行に行かずとも、都内のレストランなどで国内外のおいしい料理が食べられる」などの回答があった。
ジャルパック 販売部 業務グループ 統括マネージャーの角井吉明氏は、「2020年に東京オリンピックが開催され、世界中から東京にお客様がやってくる。何を東京の売りにすればいいか、フレッシュなアイデアが欲しい」と質問し、学生たちは「ゴールデンルートに集中している訪日外国人観光客を、いかに地方に分散できるか。都内に地方のグルメや伝統工芸、観光情報を発信できる場所があればいい」「訪日外国人観光客に日本のどんなものに興味を持っているかを調査したところ、日本人の日常生活に触れたいとの声が多かった。原宿で働いている友人は、外国人観光客から、東京でどんなことが流行っているかと聞かれる。若者の間で流行っているお店などを求めているのではないか」と回答した。
日本旅行で採用を担当する総務人事部の内田朋子氏から、採用に関するメッセージの後、最後に観光コミュニティ学部准教授の村上雅已氏から「好きな言葉に“人は人と出会って人になる”というのがある。観光とは人と人とが出会ってなり立つもの。本日の企画は画期的な出会いとなった」と締めくくった。
意見交換会に参加した観光コミュニティ学部3年の学生は「授業で学んでいるだけではわからない知識を得ることができ、自分の幅が広がった」と有意義な時間を過ごせたようだった。また、別の学生は、「旅行会社に就職を希望している。今日はJATA加盟の10社から、トップで働いている方の実のある話を聞けて充実した時間だった。特に就職するうえで一番不安だった、女性の福利厚生や出産、育児に関しての疑問も解消された」と語った。