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日本旅行業協会、2020年の訪日外国人旅行者数4000万人/消費額8兆円の目標に向けた提言書を観光庁に提出

3月の定例会見にて提言書の内容を説明

2018年3月6日 提言書提出

2018年3月22日 説明会見

一般社団法人日本旅行業協会 訪日旅行推進委員会 委員長/株式会社日本旅行 代表取締役会長 丸尾和明氏

 JATA(日本旅行業協会)は3月22日、東京・霞が関の本部において定例会見を開いた。

 会見ではJATA 訪日旅行推進委員会 委員長の丸尾和明氏が、3月6日に観光庁へ提出した「訪日旅行に関する提言書」について説明した。

2020年の目標達成と2021年以降の持続的成長に向けた訪日旅行に関する提言書

テーマ1「品質向上」

1. 旅行サービス手配業の登録区分
2. 品質認証制度の観光業界への拡大
3. リピーター向けのインセンティブ策
4. 日本をまだ扱っていない海外の旅行会社へのプロモーション
5. MICE(MI)におけるユニークベニューについて実用情報の集約提供

テーマ2「安心安全」

1. 緊急時における多言語情報提供システムの拡充
2. FIT旅行者向けのトラブル対応窓口・コールセンターの設置
3. 白ナンバーのバス・タクシーに対する取り締まり強化
4. 日本版ツーリストポリスの新設

テーマ3「地方誘客促進」

1. 二次交通の利便性向上に向けた周遊パスの造成促進
2. 日本版DMOの海外に向けたマーケティングの支援強化
3. 朝夕の魅力創出などにより「プラス1泊」を促進
4. 宿泊・飲食・観光施設向け通訳ホットラインの設置促進
5. 教育旅行の拡大促進
a. 訪日教育旅行の受け入れに対する助成
b. 地方自治体の教育旅行に関する情報発信機能の強化
c. 教育旅行の参加学生に対する査証緩和拡大
6. 地方部におけるスポーツツーリズムの促進
a. 参加型スポーツイベントの情報発信の一元化とワンストップ窓口の設置
b. 同行者・観戦者も楽しめるスポーツイベントの企画促進
c. 「ホストタウン」の継続的な国際交流に対する支援

「2020年の目標達成と2021年以降の持続的成長に向けた訪日旅行に関する提言書」は、日本のインバウンド施策について旅行業界からの意見を国土交通省 観光庁に提言するために2014年から始まったもので、2018年で5回目となる。

 提言書の主旨としては、日本の観光競争力の源泉は「品質向上」「安心安全」がベースにあるものとしつつ、2014年当初は爆発的な伸びを見せるインバウンドに対する日本の旅行業との需給ギャップを埋めるためのものであり、最近は訪日旅行者数の増加を継続するためのものへと、提言の内容は変わってきている。

 2018年の提言書では、日本政府が2年後の2020年に向けて掲げる「訪日外国人旅行者数:4000万人」「訪日外国人旅行消費額:8兆円」「外国人リピーター数:2400万人」「地方部での外国人延べ宿泊者数:7000万人泊」などの目標について、「品質向上」「安心安全」に加え、リピーターに東京・京都・大阪以外の日本を周遊・再訪してもらう「地方誘客促進」が必要であるとした内容になっている。

日本政府が2020年に向けて掲げる訪日外国人旅行者についての目標と現状

テーマ1「品質向上」における提言内容

1. 旅行サービス手配業の登録区分

 旅行サービス手配業(ランドオペレーター)の登録制度が1月4日からスタートしているが(関連記事「日本旅行業協会、『通訳案内士法』『旅行業法』の一部改正について説明。制限の緩和/厳密化で地方の観光業を活性化」)、並行して訪日外国人旅行者の手配旅行について、さらなる安心と安全の「見える化」が必要。そこで、旅行内容の質を向上できる(一定の質を担保できる)ランドオペレーターと、単に手配代理のみを行なうランドオペレーターを区分すること。

2. 品質認証制度の観光業界への拡大

 ニュージーラインドの政府観光局と自動車協会が設立した組織が運営する、宿泊施設に5段階評価を着ける「クォールマーク」、フランス政府の経済・財務省企業総局が管轄する、宿泊施設やレストラン、アクティビティなどを対象とする認定システム「カリテツーリズム」のような、国が基準を統一し、レストランや土産物店、宿泊といった各分野での品質基準認証制度の導入。

3. リピーター向けのインセンティブ策

 スイスで導入されている、一定回数以上訪問した旅行者にバッジを贈呈し、バッジ着用者へ優遇サービスを提供する「ツェルマット」のように、リピーターへ感謝を示し、再訪を促進するインセンティブ策。

4. 日本をまだ扱っていない海外の旅行会社へのプロモーション

 訪日外国人旅行者の誘客に向けては、JNTO(日本政府観光局)がB to C型のキャンペーン「Enjoy my Japan」のグローバル展開を始めているが(関連記事「日本政府観光局、日本の魅力を海外に発信する『Enjoy my Japan』キャンペーン」)、B to Bにおいても日本への旅行商品を扱っていない海外の旅行会社に対し、ファムトリップの実施やパンフレット制作費の支援などのプロモーションを行なう。

5. MICE(MI)におけるユニークベニューについて実用情報の集約提供

 MICE(Meeting、Incentive Travel、Convention、Exhibition/Event)の日本誘致に向けて、他国との選定ポイントの1つとなるユニークベニュー(独自色のある会場など)について、情報量の偏りを解消、利用手続きの簡素化を図る。

テーマ2「安心安全」における提言内容

1. 緊急時における多言語情報提供システムの拡充

 通常時の案内においては多言語化が進んでいるが、突発的な事態における案内が日本語のみとなることがまだまだ多いため、訪日外国人旅行者の不安を解消するためにも、緊急時における多言語音声データを数パターン用意すること。また、音声翻訳ツールの普及拡大への取り組み。

2. FIT旅行者向けのトラブル対応窓口・コールセンターの設置

 増加傾向にあるFIT(個人旅行者)とともに、ツアー商品にはないトラブルの増加も想定される。そういったFITなどに向けて、日本旅行時にトラブルに遭遇した際に相談できる窓口やコールセンターを設置すること。

3. 白ナンバーのバス・タクシーに対する取り締まり強化

 増加する無許可で有償の旅客運送を行なう白ナンバーのバスやタクシー事業者に対する取り締まりを強化し、訪日外国人旅行者がトラブルに巻き込まれないようにする。さらに白ナンバー事業者の代替となるサービスの提供のいち早い導入の検討も。

4. 日本版ツーリストポリスの新設

 2016年に新宿と渋谷の2カ所で、外国語に堪能な警察官が常駐する「外国語対応モデル交番」が指定されているが、訪日外国人旅行者の安心感、犯罪抑止のためにも、外国語の対応が可能な警察官が巡回するよう検討。

テーマ3「地方誘客促進」における提言内容

1. 二次交通の利便性向上に向けた周遊パスの造成促進

 地方の周遊を促進するためにも飛行機や新幹線を降りたあとの二次交通の整備は重要であり、各地での周遊バスや情報の多言語化などの整備。

2. 日本版DMOの海外に向けたマーケティングの支援強化

 日本には13の観光圏があり、そのうち11の観光圏では地域連携DMO(Destination Management Organization)がプロモーションを行なっているが、これらの海外向けマーケティングの強化支援を行なうこと。

3. 朝夕の魅力創出などにより「プラス1泊」を促進

 旅行者の消費額を増やすためにはロングステイが課題であり、旅行者に「もう1泊」してもらうために朝夕の観光コンテンツを造成、二次交通の整備と連携とともに促進、発信していくこと。

4. 宿泊・飲食・観光施設向け通訳ホットラインの設置促進

 多言語化対応が難しい宿泊・飲食施設のために、各エリアごとなどで24時間対応の通訳ホットラインを設置すること。

5. 教育旅行の拡大促進

a. 訪日教育旅行の受け入れに対する助成
 若い世代に対する教育旅行で日本を経験することはリピーターへの期待値が高いため、訪日教育力に対する助成制度を新設すること。

b. 地方自治体の教育旅行に関する情報発信機能の強化
 教育旅行に関する情報発信はJNTOが行なっているが、都道府県レベルなどでよりきめ細かい対応を行なうため、情報発信機能を強化すること。

c. 教育旅行の参加学生に対する査証緩和拡大
 インド、ベトナム、インドネシア、フィリピンなど今後教育旅行の実施増加が予想される国に対し、査証緩和を促進すること。

6. 地方部におけるスポーツツーリズムの促進

a. 参加型スポーツイベントの情報発信の一元化とワンストップ窓口の設置
 国内のマラソンやサイクリングイベントに訪日外国人旅行者の参加者が増えており、海外に向けて情報を発信するWebサイトや、海外からの相談を受けるワンストップ窓口を設置すること。

b. 同行者・観戦者も楽しめるスポーツイベントの企画促進
 スポーツイベントへの参加者以外の同行者、観戦者も楽しめる企画を用意することは、家族旅行などグループ旅行者やリピーターの獲得につながることから、それらを踏まえたスポーツイベントの企画促進に対する支援を行なうこと。

c. 「ホストタウン」の継続的な国際交流に対する支援
 過去には海外のスポーツチームの合宿受け入れを行なった「ホストタウン」が、その後も継続的に交流が続く事例があることから、2019年ラグビーワールドカップ、2020東京オリンピック・パラリンピックに向けて、地方都市と海外との交流について指導や助成を行なうこと。