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日本旅行業協会、2030年に出国3000万人、訪日6000万人の実現に向けた提言書を観光庁に提出
「ツーウェイツーリズムによる交流大国」双方向交流9000万人を目標
2018年4月5日 06:30
- 2018年3月30日 実施
JATA(日本旅行業協会)は3月30日、定例会見を開き、3月16日に観光庁へ提出した「海外旅行に関する提言書」についてJATA海外推進委員会 副委員長の生田亨氏が説明を行なった。
この提言書は、前回(2013年)掲げたアウトバウンド2000万人、インバウンド4000万人、双方向交流6000万人の2020年達成に加え、2030年はアウトバウンド3000万人、インバウンド6000万人の双方向交流9000万人を目標に「ツーウェイツーリズムによる交流大国」の実現に向けた5つのテーマ、10の提言を記載したもの。
近年の日本の観光状況をみると、日本のビザの緩和、LCCの就航増加などに伴いインバウンドは堅調な伸びを見せている一方で、アウトバウンドは2013年に記録した1849万人から伸び悩む状況が続いている。今回の提言書ではインバウンドだけでなく、双方向交流拡大の視点からアウトバウンドに着目し、休暇制度の普及や若者の国際化支援などを含めている。
海外旅行における提言書
テーマ1「政府推進課題の解決へ向けての提言」内容
1. 働き方・休み方改革に向けて
a:年次有給休暇取得向上と計画的長期休暇取得の普及
日本は、先進諸国のなかでも有給取得率が低いというデータもあり、JATAとしても重要な観点として捉えている。政府は2020年までに有給休暇の取得率70%を掲げており、JATAでは率先して取り組むほか、JATA会員企業にも取得率10%改善を目標として掲げ、好事例などには表彰するなど普及を行なう。
b:ハッピーマンデー維持制度の継続
昨年来、「海の日」の趣旨を促すために「海の日」の固定化を進める動きもあるが、ハッピーマンデーがもたらす経済効果と、ハッピーマンデーによる3連休を核として長期休暇を取得する契機にもなるという観点から制度の継続維持を提言。
2. ユニバーサルツーリズムの推進・人生100年構想への貢献
a:ユニバーサルツーリズムの推進
ユニバーサルツーリズムとは、高齢者や障碍者、妊産婦、乳幼児連れ、外国人などすべての人がより旅行を楽しめる取り組みのこと。アウトバウンド・インバウンドの双方向に有効な施策であることからアドバイザー制度を導入することを提言。
b:人生100年構想への貢献
超長寿社会を迎える日本において、旺盛な旅行意欲を持つとされるシニア層に対して「シニアの学び直し旅行企画」などを提案するなど、旅行産業が人生100年構想に対して、どういった形をとっていくべきかを検討する。
テーマ2「双方向交流の促進」
3. MOU締結国や外交重点国を中心とした双方向交流の促進
a:査証相互免除の推進
日本からの渡航者が多い査証の必要な国(インド、ロシア、ブラジル、カンボジア、ミャンマーなど)は査証の免除・緩和による双方向交流拡大の可能性が高いことから、これらを提言。
b:観光交流の比重が高い小国の政府観光局のプロモーション代行支援
観光予算の限られている小国に対して、JATAで予算に応じた支援のほか、ツーリズムEXPOジャパンでの露出、セミナーやFAMツアーなどをとおして支援する。
4. 双方向交流促進による地方創生
a:地方を中心とした交流機運を醸成する地域イベントの開催
地方創生は重要なテーマである。地方の交流機運を促進する地域イベントの開催の推進の継続や、また地方からの出国率向上のための環境整備を行なう。
5. 輸送手段の拡大
a:航空座席の供給確保・拡大
国交省を中心に、2020年には6000万人の航空環境の整備が進められているが、島国「日本」にとっては、交流拡大には空路・海路の輸送手段・量の拡大が不可欠となる。このことから、継続的な定期路線の供給拡大と、成田空港/羽田空港におけるチャーター便規制の緩和、レジャー路線拡充のためのオープンスカイの拡充の規制緩和を求める。
b:東アジア周遊クルーズルートの開発・拡大
クルーズ路線の拡大は国同士の周遊になるため、東アジアクルーズ協議会への参加を含め日本へのクルーズ、寄港を増やしていく。
テーマ3「安心・安全」
6. 安心・安全・ストレスフリーな旅の提供
a:旅行安全情報などに関する情報プラットフォームの構築
安心安全情報などに関する情報プラットホームを基軸に、観光周辺情報を付加し利用価値を高めるなど、旅行会社を通じた旅行者の満足度を向上させる情報プラットフォームへと段階的に進化させる。
b:セキュリティガイドの育成
近年、世界有数の都市や観光地でテロ事件が発生しているという背景から、有事の際の民間レベルの初期対応を可能とするセキュリティガイドの育成。
テーマ4「旅行産業の価値向上・生産性の向上」
7. 商環境の整備
a:イコールフィッティングの確保
海外OTA(インターネット上だけで取引を行なう旅行会社)や国内IT産業のほか、これまで議論できていない拡大するUber(ウーバー)などのシェアリングエコノミーサービスなどの意義を検討する。
b:旅程保証制度の改善
国際交流の拡大に伴い、現在の旅程保証制度では客室の仕入れに支障をきたす恐れがあることから、上位ホテルへの変更保証金の見直しを図る。
8. 観光マーケティング機能の充実
双方向交流の拡大には、アウトバウンド・インバウンドともに新たな顧客クラスターの開発が必要不可欠なため、顧客分析を中心としたマーケティング機能の強化が必要。外務省の「旅レジ」に連動する仕組みや、税関申告書のフォーマット変更/活用、航空会社提供データの活用など、ビックデータの整備を要望する。
9. 旅行産業の生産性の向上、価値向上
a:新しいテクノロジの導入による生産性やサービスの向上
業界内における業務効率化による生産性向上と、消費者向けサービスの向上に資する新しテクノロジの導入に対して助成を要望する。
テーマ5「若者の国際化支援」
10. グローバル人材の育成
インバウンドで6000万人受け入れるために、日本の強み・よさをアピールできるグローバル人材を幅広く育成すること。また、これからの国際交流の担い手となる若者の海外旅行を促進を行なうこと。
具体的な取り組みとしては、パスポート手続きの簡略化や取得期間の短縮化や、観光学科の学生および、観光庁が認めた大学・専門学校生を対象に、観光人材育成の海外短期留学支援などを行なっている。また過去には、パスポート取得を目的としたキャンペーン(関連記事「パスポートを取得して成田から海外へ『旅立て若者! パスポート取得応援キャンペーン』で1万円をプレゼント」)なども行なっている。