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日本旅行業協会、自民党二階幹事長を団長にした「日露経済・観光交流ミッション」を報告

働き方・休み方改革やダイバーシティ推進の表彰企業を発表。5月の定例会見

2018年5月24日 開催

一般社団法人日本旅行業協会 海外旅行推進部 部長 權田昌一氏

 JATA(日本旅行業協会)は5月24日、東京・霞が関の本部において定例会見を開いた。

 JATA 海外旅行推進部 部長の權田昌一氏が「日露経済・観光交流ミッション」について、総務部 部長の長田勇二氏が「平成29年度 旅行業高齢者雇用推進事業」について、事務局 次長の渡辺正樹氏が「2017年度『働き方・休み方改革、ダイバーシティ推進』に関するJATA会長表彰」について説明した。

自由民主党 幹事長の二階俊博氏を団長に「日露経済・観光交流ミッション」を実施

 權田昌一氏は、JNTO(日本政府観光局) 海外プロモーション部 部長 大石英一郎氏とともに、ロシアで4月27日に実施された「日本・ロシアフォーラム2018」「訪日観光促進観光交流会」などについて報告した。

 2018年は「ロシアにおける日本年」「日本におけるロシア年」であり、観光分野では2016年12月にJNTOモスクワ事務所が開設され、サッカーワールドカップロシア大会が開催されるなどさらなる交流拡大が期待され、両国のアウトバウンド、インバウンドの機運が高まっている。

 そこで自由民主党 幹事長の二階俊博氏を団長にしたロシア訪問団が、「日露経済・観光交流ミッション」として4月26日から4泊6日の日程で現地を訪れた。団員は国会議員、県知事をはじめ経済界や各種観光関連団体・企業などの代表者から構成された総勢202名。JATAからは会長の田川博巳氏らも参加している。

 モスクワ市メトロポール・ホテル・モスクワで開催された日本・ロシアフォーラム2018では、日本側からは二階幹事長、日本経済団体連合会 日本ロシア経済委員会 委員長の朝日照男氏らが講演。駐ロシア日本国大使の上月豊久氏が安倍晋三内閣総理大臣のメッセージを代読した。メインフォーラム後には二階幹事長はロシアのメドベージェフ首相と会談したとのこと。メインフォーラムや各セッションにおいては、ロシアと日本のアウトバウンド・インバウンドの観光促進について活発な議論が交わされたという。

 日本からロシアへのアウトバウンドの状況は年間約8万人で、そのうち8割がビジネス需要であり、ロシアの歴史、文化、世界遺産、美術館・博物館など豊富な魅力を日本の旅行業界としてあらためてしっかり伝えて、観光需要を喚起していきたいとした。

日本政府観光局 海外プロモーション部 部長 大石英一郎氏

 日本・ロシアフォーラム2018に続いて実施された訪日観光促進観光交流会は、JNTOが主催。ロシアからは2017年に約7万7000人が訪日しており、これは約40%の対前年比で伸びているが、「まだまだ伸ばしていかなければならない数字」であり、会場に集まった約100名の現地旅行業者・メディアに向けて、日本の観光の魅力をアピールした。

 17時~18時にはセミナーが開かれ、JNTOは全体的な説明とグローバルキャンペーン「Enjoy my Japan」などの紹介、広島県、茨城県、和歌山県はそれぞれの地域をアピールする観光プレゼンテーションを行なった。セミナーのあとにはネットワーキングとレセプションが実施され、両国の活発な情報交換・交流があったとのこと。

旅行業の労働力の確保・高齢者雇用のためのガイドラインを策定

一般社団法人日本旅行業協会 総務部 部長 長田勇二氏

 日本では労働力人口の減少が問題になっており、旅行業ならではの労働力の確保・高齢者雇用のためのガイドライン策定について、JATAでは2017年度~2018年度に2カ年事業として「旅行業高齢者雇用推進事業」を推進している。その1年目にあたる2017年度について、長田勇二氏が報告した。

 2017年度はJATAの正会員企業に向けて、アンケート・ヒアリング調査を行なっている。アンケート対象者は各企業の総務・人事担当者、定年年齢以上か60歳以上の「シニア社員」、50歳以上定年年齢未満か50歳代の「プレシニア社員」。

 調査の結果、定年年齢は60歳。再雇用制度による65歳までの再雇用が一般的であり、定年前とほぼ同じ業務を、責任の範囲を小さく、賃金も少なくしたうえでのフルタイム勤務で再雇用しているケースが多いとのこと。旅行業界の傾向として、調査現在で従業員全体に占めるシニア層の比率は低く、高齢者雇用を喫緊の課題とする企業は多くないそう。しかしバブル期入社世代、現在40歳後半から50歳前半の比率はとても高く、この世代への準備は大手も中小企業も重要なものになっている。

 これらの調査結果を踏まえ、2年目の2018年度は9月ごろを目標にガイドラインを発行し、労働力減少を見据えたシニア人材活用の必要性の周知啓発、企業が講じるべき具体的な施策を提示。10月からはJATA会員企業を対象に、ガイドライン普及セミナーを開催したいとした。

旅行業界における働き方・休み方改革やダイバーシティ推進を表彰して広く周知

一般社団法人日本旅行業協会 事務局 次長 渡辺正樹氏

 働く人それぞれの事情に応じて、多様な働き方を選択できる社会の実現を目指す「働き方改革」が国を挙げての課題となっているが、JATAでも会員各社の優れた取り組みを広く周知し、業界全体の長時間労働・過重労働を是正して、有給休暇の取得を推進すること、女性や高齢者を含む多様な人材を一層活用することを狙いとして、「2017年度『働き方・休み方改革、ダイバーシティ推進』に関するJATA会長表彰」を行なった。

 2017年から始まった取り組みであり、第1回の審査対象期間は2017年1月から12月まで。JATA正会員の旅行会社の自薦・他薦で、部門は「働き方・休み方改革部門」と「ダイバーシティ推進部門」の2つ。「働き方・休み方改革部門」には9社10件、「ダイバーシティ推進部門」には3社3件の応募があった。

 審査ポイントは「改革度合い(前後の職場環境・雰囲気、上司・社員意識の違いは)」「再現・影響度合い(他部署、ほかの会員会社でも再現可能か、他部署・パートナー企業へよい影響を与えたか)」「継続度合い(改革に無理はないか、今後も無理なく継続できるか)」で、2部門それぞれに「大賞(各1社)」「審査員特別賞(数社)」「奨励賞(数社)」が設けられ、表彰された。

「働き方・休み方改革部門」には、どうやったら時間外労働を削減できるのか、社員の定着率の向上、健康増進、社員の満足度の向上、社員のワークライフバランス・クオリティオブライフ・生活の質の向上に対しての取り組みについての応募が、「ダイバーシティ推進部門」にはICTや外注を活用した時間の創出、フレックスタイムの導入、営業時間の変更、テレワークの実現などについての応募が多かったとのこと。

2017年度「働き方・休み方改革、ダイバーシティ推進」に関するJATA会長表彰

働き方・休み方改革部門
大賞:株式会社日本旅行 ソリューション営業本部
審査員特別賞:沖縄ツーリスト株式会社、株式会社JTB 福山支店(旧 株式会社JTB 中国四国 福山支店)、株式会社ジャルパック
奨励賞:ANAセールス株式会社、ベルトラ株式会社、九電産業株式会社(九電旅行サービス)、株式会社JTB グローバルアシスタンス、株式会社JTB(旧 株式会社JTB 関東)

ダイバーシティ推進部門
大賞:株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベル
奨励賞:沖縄ツーリスト株式会社、ベルトラ株式会社

「働き方・休み方改革部門」の大賞には、「日本旅行 ソリューション営業本部」が選ばれた。講評は「多岐にわたりユニークな取り組みが行なわれている。現場女性の取り組みからムーブメントを起こし、経営陣と一体となり会社のブランドにも好影響を与えた。現場の想いと経営陣の想いが合致して大きな流れを作り出し、他社にも活動が普及し、今後の継続性に関しても非常に期待できる点を高く評価。ぜひ、このまま継続していただき、見本としてもらいたい取り組みである」とのこと。

「ダイバーシティ推進部門」の大賞には、「JTBグローバルマーケティング&トラベル」が選ばれた。講評は「さまざまな立場の方に配慮した取り組みを行なっている点で非常に評価が高かった。特に障がいを持つ方への取り組みを入れている点など、より幅広い取り組みをされている。また。9つのパターンでの変形労働時間を用意しており、実用的であるという点も高く評価した」とのこと。

株式会社日本旅行 ソリューション営業本部 CSプランニングチーム 鈴木志保氏

 大賞を受賞した2社からそれぞれ代表者が会見に参加し、取り組みについて紹介した。日本旅行 ソリューション営業本部 CSプランニングチームの鈴木志保氏は、2015年9月ごろから女性社員同士が本音で語り合う場として始めた「PJ☆SOL(ピージェイソル)」を説明した。

 PJ☆SOLは「プロジェクト」の「PJ」、「ソリューション」の「SOL」、そして「輝く」想いを込めて「☆」を付けて命名したもので、会社の業務ベースではなく、有志による会がスタートとなっている。

 2カ月に1回のペースで、昼食時間を利用してミーティングを行ない「子育てによる時短勤務の社員の実情や、若手女性営業の将来のワークライフバランス、ベテラン社員の悩みなど、日頃から抱えている問題や疑問をざっくばらんに語り合う会」として機能している。

 業務改善の取り組みと成果としては、無駄な仕事や時間、時間がかかる効率のわるい仕事を洗い出し、自ら解決できること、チームや部署で解決に向け取り組むこと、営業本部や本社で解決することなどに分類・整理して解決に取り組み、業務標準モデルの策定、セールス・アシスタントの新設、業務外注化の促進を実施したという。これにより営業本部内のコミュニケーションが飛躍的によくなり、仕事に対するモチベーションが上がり、営業成績が上がる社員もでたとのこと。

株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベル 総務部 総務担当マネージャー 大森真美子氏

 JTBグローバルマーケティング&トラベル 総務部 総務担当マネージャー 大森真美子氏は、同社のダイバーシティへの取り組みについて説明した。

 JTBグローバルマーケティング&トラベルは、社員の9人に1人が外国籍、4割近くがキャリア入社と、多様なバックグラウンドを持つ社員が多く在籍している。産休・育休から復帰し、子育てをしながらはたらく女性社員も多く、それぞれのニーズや価値観、生き方などを可能な限り尊重する組織作りが不可欠になっているという。

 そこでJTBグローバルマーケティング&トラベルでは、「ダイバーシティ&インクルージョン(受容)」を目指し、下記のような取り組みを行なっている。

JTBグローバルマーケティング&トラベルのダイバーシティ推進に向けた2017年度の取り組み事例

1. 社員同士のダイバーシティネットワーク「パパママ社員ネットワーク」「外国籍社員ネットワーク」「キャリア入社社員ネットワーク」の立ち上げ
2. 主に外国籍社員が主体となったコミュニケーションイベントの実施
3. 多様な社員の能力発揮、人財育成、風土改革のキーとなるミドルマネジメントの意識変革に向けた「組織運営職のための風土改革研修」の実施
4. 多様な働き方推進に向けた各種制度(変形労働時間制、在宅勤務など)の導入
5. 社員・家族・会社の交流を促進する「GMT夏休み子供参観日」「GMTファミリーディ」の実施
6. 障がいを持つ社員のさらなる活躍に向けた合理的配慮(より精度の高い補聴援助機器の導入など)

 JTBグローバルマーケティング&トラベルでは、個々の多様な能力を最大限に活用し、組織の成果につなげていけるよう、次のステージに向けて引き続き全社一体となって活動を推進していくとしている。