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日本旅行業協会、旅行業者向けにインバウンドセミナー
訪日外国人8人分の消費額は国民1人の年間消費額に相当。人口減の日本に訪日観光施策は必須
2017年7月24日 12:20
- 2017年7月12日 開催
JATA(日本旅行業協会)関東支部は7月12日、「第6回 JATA関東支部 インバウンドセミナー」を東京都庁第二庁舎で開催した。
これはJATAの会員企業の実務担当者向けに開かれたもので、インバウンド市場の状況や、企業のインバウンド向けの取り組みなどを学び、自社の旅行商品や施策に活かすことを目的にしている。
「1都10県における観光連携協議会の取組みについて」
関東観光広域連携事業推進協議会 事務局長 後藤太郎氏
プログラムに入れ替えがあり、最初にプレゼンテーションを行なったのは、関東観光広域連携事業推進協議会 事務局長の後藤太郎氏。後藤太郎氏は2004年にリクルートに入社し、「ANAじゃらんパック」など旅行関連の業務を多く手がけてきた人物。関東観光広域連携事業推進協議会は2020年を見据え、「広域関東(福島、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、長野、山梨)」における外国人旅行者の受け入れ環境整備の推進、国際的な観光認知度の向上を目的にした団体。主な取り組みとして、外国人旅行者向けに広域関東の観光情報を提供するWebサイト「Tokyo & Around Tokyo」を運営するほか、「関東観光マップ」の作成、海外での旅行博への出展などで情報を発信している。
事務局が行なうのは自治体と企業の結ぶ付け。地域の要望や課題をリサーチし、企業の取り組みとマッチングさせているとのこと。取り組みの一例として、台湾向けに、サイクリングなどスポーツ体験に関心を持っている20~30代の個人旅行者・リピーター層をターゲットに設定した広域観光周遊ルート「東京圏大回廊PR」を取り上げた。台湾の旅行会社、自転車関連団体・事業者、メディアを日本に招いて、広域関東のサイクリング・ツーリズムに適したエリアを紹介したという。
「インバウンド施策というとどうしても京都や大阪が有利というイメージがあるかもしれないが、広域関東は優れた交通インフラ、豊富な観光スポットやグルメがあるので、魅力的な旅行商品を一緒に探していきましょう」と呼びかけて、プレゼンテーションを終えた。
「観光先進国に向けての政府の取組み」
JNTO インバウンド戦略部 次長 広瀬正彦氏
JNTO(日本政府観光局)インバウンド戦略部 次長の広瀬正彦氏は、「観光先進国に向けての政府の取組み」と題してプレゼンテーションを行なった。JNTOは世界21カ所に事務所を設置し、訪日プロモーションを展開。観光やMICE(Meeting:会議、Incentive Travel:報奨・研修旅行、Convention:国際会議、Exhibition/Event:展示会や見本市)の誘致・開催支援、市場分析などに取り組んでいる。
広瀬正彦氏は、インバウンド市場の概況について説明した。観光やビジネスで出国する日本人を、訪日外国人数が2015年に45年振りに逆転し、その差はさらに開く一方であるという。2015年の訪日外国人の総計は約1974万人。内訳は中国が25.3%、韓国が20.3%、台湾が18.6%、香港が7.7%となっており、さらにタイやシンガポールなど上位にはアジア圏の国々が続く。
しかし日本国内の旅行消費額のうち、インバウンドが占める割合は10%にも達しておらず、これはフランスの34%、イギリスの17%、韓国の47%などと比較してとても低いと指摘。これから日本の人口が減り、日本国民による建設業や生産業などの力が落ちる状況では、「観光立国」として日本がインバウンドに取り組むことがいかに重要で有効であるかを主張。日本国民1人の年間消費額は、訪日外国人8人分が日本で消費する額に値するとのことで、観光がもたらす経済効果の大きさを説き、旅行業界のインバウンドへのさらなる注力を訴えた。
「東京都の観光施策について」
東京都 産業労働局 観光部 シティセールス担当課長 前田千歳氏
東京都 産業労働局 観光部 シティセールス担当課長の前田千歳氏は、東京都がインバウンド向けに行なっている観光施策について、大きく6つに分けて紹介した。
1つ目は「外国人旅行者受入に係るサービス向上の支援」。インバウンド対応が遅れている宿泊、飲食、小売り業者を対象に、外国人旅行者対応へのノウハウを提供するセミナーを開催、アドバイザーを派遣している。
2つ目は「多言語のコールセンターサービスの提供」。英語、中国語、韓国語に対応できるコールセンターを設け、外国人旅行者との意思疎通が困難な場合に通訳を行なう。コールセンターは24時間対応。対象事業者は宿泊、飲食、タクシー、免税店で、4月現在で2672施設が登録しているとのこと。
3つ目は「観光経営力の強化に向けた支援」。中小の宿泊、飲食、小売事業者を対象に、生産性の向上に役立つ設備の導入、消費拡大に向けた取り組みを補助するというもので、補助率は予算の1/2、限度額は1500万円(マーケティングなどは500万円)。
4つ目は「インバウンド対応力の強化に向けた支援」。中小の宿泊、飲食、小売事業者を対象に、案内表示板などの多言語化、無料Wi-Fiの設置、トイレの洋式化などへの取り組みを補助するというもの。補助率は予算の1/2、限度額は施設に対しては300万円、団体に対しては500万円。
5つ目は「観光ビッグデータを活用した事業者支援」。外国人旅行者の観光や消費動向など、さまざまなビッグデータを収集、分析して、Webサイトを通じて観光事業者に継続的に情報発信していくというもの。首都大学東京と連携し今年度中に開始する予定だ。
「キャラクターを活用した地域振興・インバウンドへの取組みについて」
サンリオ 企画営業本部 シニアマネージャー 朝山真一郎氏
サンリオ 企画営業本部 シニアマネージャーの朝山真一郎氏は、「キャラクターを活用した地域振興・インバウンドへの取組みについて」と題してプレゼンテーションを行なった。
同社を代表するキャラクターである「キティ」は2008年5月に中国・香港で親善大使に就任、2011年度からJNTOによって世界28カ国において訪日プロモーションキャラクターとして活躍しているという。
SNSでは、「サンリオ」や「キティ」といったカタカナ表記よりも「Sanrio」や「Hello Kitty」といったアルファベット表記でのつぶやきや、コンテンツに対する「いいね!」が多いそうで、訪日外国人に向けては非常にキャッチ―な存在であると紹介。
キティなどをプロモーションへ起用したいといった相談は「ウェルカムな姿勢」だそうで、旅行業界でインバウンド施策にキャラクターを使いたいときには、気軽に声をかけてほしいと話した。同社のプレゼンテーションの内容はセミナー出席者以外には非公開のため、詳細な紹介は控えさせていただく。