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日本政府観光局、日本の魅力を海外に発信する「Enjoy my Japan」キャンペーン
「富士山」「桜」「神社仏閣」だけじゃない!!
2018年2月7日 06:00
- 2018年2月6日 発表
JNTO(日本政府観光局)は2月8日に東京・銀座で記者会見を開き、新しいキャンペーン「Enjoy my Japan」のグローバル展開について説明した。
「Enjoy my Japan」は欧州、北米、豪州エリアを中心に存在する「海外旅行には頻繁に行くが日本を旅行先として認知・意識していない層」をターゲットに、「日本が、誰もが楽しむことができる旅行目的地」であることを、2020年に向けて複数年かけて世界に向けてアピールしていくもの。
従来の富士山、桜、神社仏閣といった典型的なイメージだけでなく、豊かな自然とアウトドアアクティビティ、日本食にとどまらない食の魅力、伝統芸術に加え世界から注目される現代アートなど、日本の観光資源を7つのカテゴリーに分けて、デジタル広告、キャンペーンWebサイト、テレビ広告を通じて世界に発信していく。
長期滞在しても飽きない「楽しい国、楽しい旅行先としての日本の真の魅力」をアピール
会見ではまず国土交通省 観光庁 長官の田村明比古氏が登壇し、「Enjoy my Japan」の企画経緯について説明した。
2017年の訪日外国人旅行者は2869万人、その消費額は4.4兆円と過去最高を記録、2012年と比較して約3.4倍の規模になっている。しかしその2869万人の約半分は中国人と韓国人で占められ、2869万人の約85%はアジア諸国からの訪日となっている。
一方で欧州、北米、豪州からの訪日は2017年で300万人と「まだまだ満足できるものではない」数字であり、これらの地域の人々がタイや中国へ行ってしまっているのが実情。「世界でも所得水準が高くて、旅慣れて、目が肥えている旅行者が多いこの市場で、選択してもらえるデスティネーションに日本がなることが、観光先進国を目指している日本にとって大変重要な課題」であり、そのためのキャンペーンであると背景を解説した。
そこでなぜ日本を旅行先として検討しないのか、ドイツ、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ、オーストラリアの6カ国で市場調査を行なったところ、「日本は独自の文化があり、重要な国ではあるものの、海外旅行先としては富士山と桜と神社仏閣だけの退屈な国で、わざわざ高い旅費と時間をかけて訪れるほどの魅力がないと考えている人が多い」ことが分かったという。
そこでこのようなイメージを打ち破るために、風光明媚な山や海をただ見るだけでなくて、サイクリング、ダイビング、ラフティング、トレッキング、大自然の中を走るトロッコ電車など、実に多種多様な楽しみ方が日本にはあり、長期滞在しても飽きない「楽しい国、楽しい旅行先としての日本の真の魅力」を映像などでアピールしていくことになった。
「Enjoy my Japan」では2つのテーマを重視している。1つ目は現地目線に立つこと。日本人が日本をどう見せたいのかではなく、海外の人に日本はどう見えているのか、日本の何に魅力を感じるのかを考え、入念な市場調査を行なうとともに、PR動画の制作には外国人監督を起用したとのこと。そしてこのキャンペーンのローンチイベントを、イギリスを皮切りに6カ国で行なっていく予定だという。
2つ目はデジタル技術をフルに活用すること。最新のテクノロジーを投入して、Webサイトの閲覧者の関心や志向を踏まえ、効果的に情報を提供する広告展開をしていく。また、観光庁や全省庁において、海外からの旅行者がストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備、観光資源の魅力の向上、旅行前や旅行中に必要な情報の入手性などに取り組み、観光先進国の実現を目指していくとした。
ここで「Enjoy my Japan」のロゴマークが紹介された。この「My Japan」には、外国人旅行者が自分にぴったりの日本の魅力を発見して、自分だけの「My Japan」を満喫してほしいこと、一方で日本人が自分の大好きな「My Japan」を海外の皆さんに楽しんでほしいという歓迎の気持ちを表わしているとのこと。そして「Enjoy my Japan」のために制作された動画を紹介して、スピーチを終えた。
海外の老若男女誰にとっても「楽しい国日本」をアピール
続いてJNTO 特別顧問 デービッド・アトキンソン氏が登壇して、キャンペーンの詳細を説明した。
全世界の観光客のアウトバウンド人口は12億4000万人といわれており、そのうちアジアは約25%の市場だという。逆に約75%の世界の市場があるわけで「そこに日本の大きな伸びしろがある、それが今回のキャンペーンの狙い」とターゲットを説明。
大規模な市場調査を行なった結果、日本側の情報発信を見ると約70%が歴史と文化のジャンルだったという。それらはもちろん大切にしつつも、ビーチや渓谷など、海外に知られていない日本の魅力はたくさんあり、それを旅行へのモチベーションが高い外国人にもっとアピールしていく必要がある。
そこでまず、外国人のモチベーションを「7つのパッション(興味関心)」にカテゴライズし、そのパッションに応える観光資源が日本にあることを紹介する「アクティビティムービー」(興味関心別ムービー)を作成。先に紹介した「コンセプトムービー」(基幹ムービー)とともにWebサイトでアピールしていく。7つのパッションは、「Tradition(伝統文化や歴史的遺跡・建築などを楽しむ)」「Cuisine(食事やお酒を楽しむ)」「City(大都市の刺激、エンタテイメントを楽しむ)」「Nature(豊かな自然を楽しむ)」「Art(アートやデザインを楽しむ)」「Relaxation(リゾートや宿泊施設での滞在を楽しむ)」「Outdoor(アウトドアアクティビティを楽しむ)」。
この動画を活用してドイツ、イギリス、フランス、アメリカ、カナダ、オーストラリアをはじめとして、YouTube/Facebook/Instagramなどのソーシャルメディア、現地のテレビなどを通じて広告を大規模に展開していく。
こういったプッシュ型広告を見て訪れるキャンペーンサイトでは、閲覧者の興味・関心に応じて100万種類以上のパターンで自動生成される「パーソナライズドムービー」を視聴できるほか、訪日旅行を疑似体験できるコンテンツを通じて、日本の豊かな自然、アクティビティ、食、芸術など多様性に富んで海外の老若男女誰にとっても「楽しい国日本」をアピールするという。
従来の日本のイメージ、固定観念を越えた日本の観光地としての新しい魅力を伝えるキャンペーン
続いて登壇したJNTO 理事長の松山良一氏は、このキャンペーンを「従来の日本のイメージ、固定観念を越えた日本の観光地としての新しい魅力を伝えるキャンペーンになる」と評価。
インバウンドが団体旅行から個人旅行に大きく変化しているなか、よりクチコミが重要になり、個人を対象にした情報発信が重要になる状況において、ビッグデータ、デジタル技術を駆使したこのキャンペーンを通じて、世界にプロモーションを拡大し、日本国内においては地方自治体、DMO、企業との連携を進め、日本の豊かな自然などを楽しむアクティビティなどのプログラムを外国人目線で磨き上げていきたいとした。
そして「2020年の訪日外国人旅行者数4000万人、8兆円の目標に向けて、ビジネスだけでない、バケーション先としての日本の魅力を訴えるこのキャンペーンを契機に、JNTO総力を挙げてこれからも取り組んでいきたい」と述べて挨拶を終えた。
デーブ・スペクターさんやナタリー・エモンズさんらがトークショー
会見では放送プロデューサー・タレントとして活躍するデーブ・スペクターさん、ホテル料金比較サイトのテレビCMへの出演で知られる女優・歌手のナタリー・エモンズさん、群馬県利根郡みなかみ町でキャニオリングなどのアウトドアツアーを催行するキャニオンズで代表取締役を務めるマイク・ハリスさんが、司会者やJNTOのデービッド・アトキンソン氏とともにトークショーを行なった。
日本のアクティビティには「美味しい食事」「安全」「おもてなし」が付随することが大きなアドバンテージ
アメリカ・イリノイ州出身のデーブ・スペクターさんは大学時代の日本留学がきっかけで、活動の拠点を日本に移し、放送プロデューサーやタレント、著作活動などを行なっている。
自己紹介では「かなり前なんだけど」とJNTOのアメリカ・シカゴオフィスで4年間働いていたことがあると語り、当時の名刺を披露。会場にどよめきが起こった。シカゴオフィスに務めていたころ、アメリカ人で日本に観光目的で行こうという人は少数派で、それも京都を見て、買い物をして、お寿司を食べたら、次は香港、というパターンが多かったという。それがここ数年で日本を訪れる外国人が増えて、リピーターも増えて「とてもうれしい」と語った。
そのリピーターを生み出している原動力には、東京/京都/大阪だけでなく、例えば北海道のスキー場であったりと日本の自然の魅力があり、また日本のアクティビティには「美味しい食事」「安全」「おもてなし」が付随することが大きなアドバンテージだと話した。
日本の自然の魅力を海外のみんなに教えてあげたい
アメリカ・カリフォルニア州出身のナタリー・エモンズさんは、最初の来日は仕事で関西方面をまわり、大阪城を見て、お好み焼きを食べて、京都の清水寺や伏見稲荷大社を見たそう。また、奈良公園では「シカがすごいフレンドリーで驚いた」と日本の観光の思い出を語った。
キャンペーン動画の最初に登場する砂浜や海のイメージが日本のものであることに驚いたので、「日本の自然の魅力を海外のみんなに教えてあげたいと思いました」と感想を述べた。
日本はワールドクラスの自然とアクティビティを備えている
ニュージーランド出身のマイク・ハリスさんは、大学時代に日本語を学んだことがきっかけで来日。2004年にキャニオリングなどのアウトドアツアーを催行するキャニオンズを群馬で設立し、国内外の観光客にアクティビティを提供している。
アクティビティ大国のニュージーランドと比較しても「日本はワールドクラスの自然とアクティビティ」を備えており、世界の観光のトレンドはアクティビティ、アドベンチャーツーリズムであることから、工夫すればニュージーランドに並ぶほどのポテンシャルが日本にはあると語った。
マイク・ハリスさんは外国人旅行者に接する機会が多いが、皆日本にこれほどの自然やアクティビティがあることに驚き、喜んでくれるそうで、欧米の人は体験型の観光を好む傾向があるので、このキャンペーンがよいきっかけになるのではと期待を寄せた。