星野リゾートがこっそり伝える食の裏側

食べるバターと北海道ワインを秋風のファームで満喫!「食べるバターアペロ」(星野リゾート トマム)

トマム牛乳で作った「食べるバター」と北海道ワインに舌鼓

「星のや」「リゾナーレ」「界」「OMO(おも)」「BEB(ベブ)」と5つのサブブランドを中心に、国内外に施設を展開している星野リゾート。その知られざる食の魅力を深堀りしていく連載の第5回は、「星野リゾート トマム」(北海道勇払郡占冠村)で10月31日まで開催している「食べるバターアペロ」を紹介する。

 リゾート内のファームエリアで放牧している牛から搾った牛乳で作る“食べるバター”と北海道ワインを、秋風を感じる牧歌的なファームで楽しむという、心安らぐ至福のイベントだ。ちなみにアペロとは、夕食前の食前酒のこと。

 今回は、食べるバターの開発者である梶原萌さんに開発の裏話や企画の背景を聞いた。

――まずは梶原さんに“食べるバター”の開発の裏側をうかがいます。原料はトマムの牛乳なんですね。

ファームエリアは100ヘクタール。広大な敷地でストレスなく過ごしていることも、牛乳の美味しさにつながっている

 バターの原料は敷地内のファームエリアで暮らす牛から搾る牛乳です。フレーバーは10種類ですが、ベースのバターは共通。トマムでは春から秋まで牛を放牧で育てるので、季節によってエサとなる草の状態が変わり、牛乳の味も変化します。秋は脂肪分が蓄えられて風味が強め。牛乳の味の違いによって、バターの味も変わります。

白黒のホルスタインのほかに、茶色いブラウンスイスやジャージーも。各牛の搾乳量は毎日変わるので配合の違いで味も変わる

 バターというとずっしり重いイメージがあるかもしれませんが、この食べるバターはふんわり軽い口当たりです。一度、生クリームのように泡立ててから仕上げることで軽さを出し、スイーツのように仕上げました。

左列から右列へ上から順に、「カカオニブ」「りんご」「ピスタチオとホワイトチョコレート」「栗とメープルシロップ」「蟹と昆布」「かぼちゃ」「ハスカップとミルクジャム」「小豆」「鮭と柚子」「さつまいも」

――一口サイズでカラフルな本当にかわいいバターですね。

 フレーバーの種類は、「蟹と昆布」「栗とメープルシロップ」「鮭と柚子」「さつまいも」「ハスカップとミルクジャム」「りんご」「小豆」「かぼちゃ」「ピスタチオとホワイトチョコレート」「カカオニブ」(※チョコレートの原料であるカカオ豆を発酵、焙煎し、細かく砕いたもの)の10種類です。

 バターの風味と素材の味の両方が楽しめるようなバランスを考え、食材の混ぜ方を工夫しました。つぶしてペースト状にして混ぜたものもあれば、あえて食感を残したものもあります。

 たとえば「栗とメープル」に使っている栗の甘露煮は軽くつぶす程度にして食感を残し、さらにメープルシュガーを混ぜて、ざくざくした食感に。「りんごと紅茶」は、りんごはなめらかなジャムを使う代わりに、紅茶は茶葉をそのまま混ぜて粒感を残しています。

――開発に苦労したフレーバーはありますか?

何度も試作を重ねて食感や風味をブラッシュアップ

「鮭と柚子」ですね。スモークサーモンをすりつぶし、柚子の皮を入れて香りのアクセントにしています。風味がよく口当たりもなめらかで、サーモンピンクの色味もかわいいフレーバーです。

 北海道なので海の幸は使いたかったものの、開発は難航し、一時期「鮭は諦めようか」という話も出ていたほど。鮭は、刺身やサケフレークなどいろいろ試しましたがうまくいかず、ようやくたどり着いたのがスモークサーモンでした。

――梶原さんの個人的イチオシも知りたいです!

 イチオシのフレーバーは「ハスカップとミルクジャム」です。北海道名産のハスカップはブルーベリーのような見た目で、酸味をぐっと強くしたフルーツです。これにトマムの牛乳で作る「ミルクジャム」を合わせました。ミルクジャムは9月に売店で販売を始めた新商品です。甘さが強めのミルクジャムとハスカップの酸味がバランスよく調和し、すっきりした味わいに。ハスカップは北海道以外で食べる機会は、ほとんどないと思うのでぜひ食べてみてください。

乳製品のたんぱく質や脂肪分がワインの味わいをまろやかにし、渋みや酸味を柔らかくするといわれる

――食べるバターは、10種類の北海道ワインと合わせて楽しめるそうですね。

 最近は北海道でワインを造る生産者の方が増えていて、注目が高まっています。北海道は土地も広く、同じブドウ品種でも造り手さんや場所によって味わいがガラリと変わるのがおもしろいところ。もともと食べるバターはワインと合わせることを前提に開発しているので、相性は抜群。今回は北海道では定番の品種であるケルナー(白)やピノ・ノワール(赤)を使ったワインなど、全10種類をそろえました。バターと組み合わせると、100通りの楽しみ方ができます。

――企画のきっかけは何でしょうか?

紅葉が美しい秋のトマム

 トマムの秋は白樺の黄葉も美しく、とくに夕方に感じる秋風の心地よさは格別です。本州よりもだいぶ秋の深まりが早く、9~10月は本当に気持ちのよい季節です。そんな時期にこの場所を満喫してほしいという思いが発端となり、約1年前から計画してきたイベントです。

 イベントの会場は、約100ヘクタールのファームエリア「ファーム星野」です。「ファーム星野」とは、リゾートとして開発される前に約700頭の牛が暮らしていたトマムの美しい原風景を楽しんでほしいという思いから運営している約100ヘクタールのファームエリアです。緑豊かな牧草地には牛や羊、ヤギも放牧されており、のんびりと暮らす様子も眺められます。ワインやバターを持ち運べるバスケットを用意しているので、ぜひお気に入りの場所を見つけて気ままに楽しんでみてください。エリアによってはテーブルやイスも設置しています。

ホテルの前に牧草地が広がる光景はトマムならでは

――最後にメッセージをお願いします。

 ファーム星野で飼育する牛が増えて、バターやミルクジャムといった乳製品を安定して生産できるようになってきたことも本企画を後押ししました。バターを食べながら、ふと牛が目に入ったときに、「もしかして、この牛のミルクで作られたバターかも?」なんて、生産と消費のサイクルに思いを巡らせるきっかけになればうれしいですね。秋の北海道らしい、美しく幸せな時間を過ごしていただけたらと思います。

かわいい子牛も暮らすファーム星野

星野リゾート トマム「食べるバターアペロ」

実施日時: 2022年9月1日~10月31日 各日15時~17時30分
料金: 食べるバター1種400円~、バター食べ比べセット10種3000円、ワイン1杯1200円~
場所: 星野リゾート トマム(北海道勇払郡占冠村中トマム)ファームエリア
対象: 宿泊、日帰り客ともに利用可
Webサイト: 星野リゾート トマム「食べるバターアペロ」
※天候により開催期間や時間が変更になる場合あり。仕入れ状況により食材の産地やメニューが変更になる場合あり