旅レポ
ジェットスターの成田~熊本便を使って1泊2日の熊本旅を楽しんだ(前編)
(2015/6/29 11:45)
今年4月8日に供用が開始された成田国際空港第3ターミナル。このターミナルで最多の便数を発着させているのがジェットスター・ジャパンだ。国内線だけでも北は新千歳(札幌)、南は那覇(沖縄)まで9カ所に就航。2015年6月には国際線の運航も開始し、香港便を開設した。
この中でも比較的新しい路線が熊本便で2014年10月26日に就航した。1日2便を運航している。ちなみに同日には関空~熊本線、中部(セントレア)~熊本線も開設しており、熊本にフォーカスする姿勢が見える。
そのジェットスター・ジャパンが、成田~熊本線を使って1泊2日で熊本の観光地を巡る報道関係者向けツアーを企画した。そのレポートをお届けしたい。ちなみに、同ツアーは4月後半に行なわれたもので、本稿掲載時とは季節感などが多少異なることをあらかじめご了承いただきたい。また、記事内の価格などは、いずれも取材時点のものである。
成田空港第3ターミナルから出発
往路は成田空港第3ターミナル発のGK611便を利用した。同便のスケジュールは、成田8時30分発~熊本10時25分着で、4月6日~4月30日、5月7日~7月16日、9月24日~10月24日の期間中、火・水・木曜日は7時40分発~9時35分着となる。
取材日は水曜日だったので7時40分に出発。かなり早朝の出発と言えるが、昨今の成田空港はLCCの隆盛もあって意外に早朝アクセスが充実している。
例えば、7時までに到着する公共交通機関を探してみると、京成バスが運行する「東京シャトル」は、東京駅八重洲口前4時15分発~成田第3ターミナル5時15分着を皮切りに、成田第3ターミナルに5時30分、6時15分、6時35分、6時55分に到着する便が用意されているほか、東京/銀座発のバス「THEアクセス成田」は銀座駅4時05分発~東京駅4時10分発~成田第3ターミナル5時15分着、銀座駅5時30発~東京駅5時40分発~成田第3ターミナル7時着といった便がある。横浜など遠方からのアクセスとなると深夜に移動しておいた方がよいが、東京都内を0~1時台に出発して、2~3時台に到着するなどのバスもあり、負担は最小限に抑えられるだろう。
鉄道でも、京成スカイライナー1号は上野駅5時58分~日暮里駅6時03分~空港第2ビル6時39分着というスケジュールのほか、成田空港行き、東成田行きを含めて在来線という選択肢もある。なお、第3ターミナルには鉄道の乗り入れがないため、第2ターミナルから移動する必要があり、15分ほど余分にかかると考えておく必要がある。
またバスについても注意が必要で、深夜/早朝はLCC利用者向けの便ということもあって第3ターミナルに最初に到着し、そのあとに第1/第2ターミナルを巡る。一方、日中の便は第2ターミナルに着いたあとに第1/第3ターミナルを巡るルートとなる。この日中便のコースでは、第2ターミナルに着いてからの第3ターミナルへのバス移動が15~20分程度と意外に時間がかかる。時間に余裕がない場合、いっそ第2ターミナルで降りて“全力で走る”という選択肢も検討した方がよい。
さて、ツアー当日、記者は6時ごろに第3ターミナルに到着。ジェットスター・ジャパンのチェックインカウンターにずらりと並んだ自動チェックイン機を使ってチケットを発券。荷物はバックパック1つにまとめていたので、預けるものもなくセキュリティチェックへ進んだ。ちなみに持ち込み手荷物の制限重量は7kgとなっており、今回は一眼レフカメラとノートPC、ACアダプタを含めて、ギリギリ制限内に収めることができた。
成田空港第3ターミナルは供用開始時に取材していたものの、実際に利用したのはこのツアーが初めて。入り口から少し奥へ進むとチェックインカウンター、チェックインを済ませてさらに奥に進むとショップやフードコード、そこからさらに奥に進めばセキュリティチェック……と、右へ行くべきか左へ行くべきか、といったこと考える必要のない、直感的な動線ができている印象を受けた。セキュリティチェックまでに歩くべき距離も短く、よい意味でコンパクトなターミナルだ。
同社が運航するエアバス A320-200型機の機内は3-3の6アブレスト。シートピッチは席により異なるが、下記の写真で掲載した記者が座った席は、おそらく29インチほどだと思う。しかしながら、機内の安全のしおりなどの書類が上部に収納されており、膝部分に置かれていないので、見た目よりも足元はずいぶんと広く感じられる。ここに物がないだけで2インチ分ぐらいはトクをしているのではないだろうか。
そんなわけで、往路は機内食でホットドッグ(350円)を食べたり、ウトウトしたりしているうちに、2時間弱のフライトがあっという間に終了。
ちなみに、ジェットスター・ジャパンの成田~熊本線の運賃は、もっとも安価な「Starter」運賃で5790円から。この5790円という数字はセール価格などではなく、通常販売されている航空券の最低価格だ。
「Starter」運賃以外には、標準座席の座席指定や500円分の機内バウチャー、規則上可能な便変更などのオプションを含む「Plus」運賃。20kgまでの預け入れ荷物や全席の座席指定、出発地/到着地変更など含む予約変更などのオプションを含む「Max」運賃がある。
例えば、Plus運賃は、Starter運賃から1480円増となるが、ここに500円のバウチャーが付き、さらにジェットスター・フライトバウチャーが400円分付く。単純なバウチャー分の差し引きだけでも、差額は580円。加えて、Starter運賃では標準席(スタンダード・シート)の座席指定が460円、予約変更が必要になった場合は3240円が必要になるが、Plus運賃ならこれらが無料になる。こうしてまとめると、予約変更をしない場合はStarter運賃よりも割高になるが、バウチャー+座席指定を差し引いた120円を、予約変更の必要が生じた場合に発生する3240円に対する保険として考えると、特に忙しい合間を縫って旅をするような人には便利な運賃ではないだろうか。
その運賃の額については、空席連動型となっており、まず最低運賃からスタートし、席が埋まるに連れて運賃が上がる仕組みとなっている。つまり、需要が多い便は高め、需要が少ない便は安めと、便単位で資本主義経済が回っているわけだ。
当然ながら、安価な便の狙い目はローシーズンの平日便や、深夜早朝で空港へのアクセスが限られる便、直近でない日付の便、ということになる。連休や目立ったイベントがある時期を除けば、1~2カ月程度先の週末でも十分に安価と言えるレベルで収まっていることが多いようだが、先々の予定を立てることが許される人であれば、航空券を売り出し始めた時期に早めに購入してしまうのが吉。現在は10月24日までの航空券が販売されているので、通例では8月後半~9月上旬に発表される、10月25日からの冬スケジュール発表にアンテナを張っておくとよいだろう。
ジェットスターに限らずLCC全般に言えることだが、一般的に1度の旅行に使える総費用には限りがあるので、この中で航空券に使う費用割合を減らせば、その余剰分をほかのことに使えるのがLCCのメリットである。ホテルのグレードを上げたり、アクティビティを増やしたり、ちょっとリッチなグルメを選んだりと旅先での過ごし方の幅が広がる。少しでも安い運賃を選ぶということは、結果的に旅の満足度アップにつながるはずだ。
火山活動で生まれた空想的な風景が広がる阿蘇
ということで、いよいよ熊本観光のスタートである。今回のツアーでは、熊本県の方のガイドで、各地の説明を伺いながら旅をした。ちなみに、熊本はいま、韓国人旅行者が多いとのことで、6月9日に発表された観光白書でも、九州ブロックは韓国からの宿泊客が37%でもっとも比率が多くなっており、数字でもその傾向を見て取れる。
まず向かったのは阿蘇の外輪山である。阿蘇といえば火山活動で生まれた巨大なカルデラが知られるが、その周囲が外輪山である。牛や馬が放牧された牧場も多く、なんとも牧歌的な雰囲気だ。この土地は野焼きを年に1回行なって、草原を保っているのだという。このワインディングロードを自身の運転で走ってみたいという気持ちを抑えつつ、今回はバスからの眺めをのんびりと楽しませてもらった。
その阿蘇外輪山での最初の目的地は「ラピュタの道」だ。数年前から話題になることが増えたというスポットで、手前から突き出た土地に走る道路が、天空へつながるかのような雰囲気であることから、ラピュタの道という通称で親しまれている。早朝などに低い雲が立ちこめると、このラピュタの道が雲海の上に浮いたようにも見えるそう。この日はお昼近い時間ということもあって絶景とはいかなかったが、奥に広がる田園風景に、「これはこれでよいではないか」などと独りごちたりしながらその場をあとにし、次のポイントへ。
次は外輪山からの展望スポットとして定番中の定番である「大観峰」だ。北外輪山の最高地点で、売店や駐車場を設置して展望スポットとして整備されている。ここからは、カルデラの盆地や阿蘇五岳などを一望できる。定番スポットだけあって素晴らしい眺めなのだが、なによりカルデラ全体の地形をなんとなく把握でき、興味がそそられる光景だった。
この日は平日にも関わらず、売店前の駐車場が半分近く埋まっていて意外に人が多い印象を受けたのだが、冨安氏によればこれでも少ないそう。週末は少し下ったところにある駐車場まで埋まることもあるほか、繁忙期には道路渋滞もするそうで、逃げ場が少ない一本道が続く場所だけに注意したいところだ。
横参道が延びる阿蘇神社で「あか牛」に舌鼓
続いて向かったのは、阿蘇の北外輪山を下りた阿蘇市内にある「阿蘇神社」。阿蘇開拓の神を祀った神社で……などという話はここではさておき、一般的には神社の正面にまっすぐ伸びることが多い参道が、ここは横に伸びるという特徴がある。これは信仰の対象である阿蘇の火口に向かって参道が伸びているそうだ。
もちろん、参道にはお店が並んで賑わっている。また、神社内の「神の泉」と同じ水脈の湧き水が出る「水基」が随所にあるのだが、それぞれの瓶の形や雰囲気が異なっていて面白い。のんびりと歩いて水基を探すだけでも楽しめそうだ。
そして、この響きを耳にして無視できる男性はいないであろうスポットが「旧女学校跡」。ここは明治35年に設立された洋裁女学校の跡地とのこと。ハイカラな女学生さんが、今は色あせたエメラルドグリーンの木造校舎で洋裁を勉強している姿を思い浮かべると文明開化の音が聞こえてくるが、訪れてみるとあいにくの休業日。いつか中に入ることを夢見つつ、外から観賞して終了。ちなみに、この校舎は博物館などではなく、雑貨屋さんやカフェとして利用されている。
さて、朝から飛行機移動、阿蘇外輪山と巡ってきたが、阿蘇神社に到着したのは、そろそろ正午を過ぎようかという時刻。「まだお昼か」と思うほど当日の午前中から観光をフルに楽しめるのは早朝便だからこそのよさだが、そろそろお腹も空く頃である。
昼食は、阿蘇神社の横参道にある「郷土料理 お食事処 はなびし」でいただくことになった。ここは熊本の郷土料理、熊本の素材を活かした料理を味わえるお店で、「あか牛」を使ったメニューが多く揃っている。
「あか牛」とは褐毛(赤毛)和牛のお肉である。赤身が多めで、その味わいを楽しめるという。熊本は「あか牛」をブランドとして売り出している一方で、お隣の鹿児島県は「黒」をキーワードに「黒牛」「黒豚」などを売り出しており、この構図はなかなか面白い。
このあか牛のメニューから、記者はこの日、「あか牛 牛カツ重」(1890円)をいただいた。レア状態のカツはとてもジューシーで、しかも柔らかい。赤身が特徴と聞いていたので、もっと固いお肉を想像していたのだが、それはよい意味で裏切られた。お肉はわさび醤油を付けていただくのだが、そもそも肉自体がしっかりとした味で、醤油とわさびはのうまみをより引き立たせてくれる。
さらに、郷土料理の「だご汁」も美味だった。「だご」とは団子のことで、米粉で作られた団子を味噌汁でいただくもの。味噌のほか、中に入っている野菜も地元産とのことだ。
そして欠かせないのが食後のデザート。水がきれいなところは和の冷菓が美味しいと相場は決まっているので、ここでは菓舗さとうの「aso寒ざらし」(550円)をいただくことにした。菓舗さとうにはYokosando-Cafe(横参道カフェ)が併設されており、腰を下ろしてのんびりスイーツを楽しめる。
寒ざらしとは要するに米粉の寒ざらしして作った団子。菓舗さとうの「aso寒ざらし」はミルクアイスに寒ざらしを添え、きな粉と黒蜜をかけた王道の和スイーツだ。昼下がりのスイーツに満足し、次の目的地へと向かった。
豊かな自然に包まれた黒川温泉
次の目的は「黒川温泉」だ。この日の宿泊地でもある。
黒川温泉は阿蘇市の北、大分県との県境に近いところにある自然豊かな温泉郷で、国道442号でアクセスできる。浴衣でエリア内を歩け、郷内24カ所の露天風呂から3カ所に入れる「入湯手形」が1300円で販売されているので、温泉巡りが好きな人にお勧めできるスポットだ。
ちなみに、記者は温泉への興味が強い方ではないのだが、自然との調和がとれた街の雰囲気がとてもよく、明るい時間に2時間ほど、暗くなってから1時間ほど、ずっと散歩していた。また、“足湯のみは無料”というところがあり、途中で足を休められたのもうれしかった。
この日の宿は、24カ所の露天風呂のうちの1つでもある「旅館 壱の井」だ。一見すると緑に包まれたペンションのようにも見える外観だが、純然たる和風旅館。露天風呂は森林の中に作られている。壱の井は温泉郷の中心から少し離れ、坂を上った先にある旅館ということもあって、秘湯のような雰囲気で楽しめる露天風呂という印象だ。
また、料理も彩り鮮やかで、茶碗蒸しが巾着袋に収められているなどおしゃれ。聞くところによると、同旅館の経営者ご家族はみんな料理人なのだそう。フロントスタッフによれば、女将さんも厨房に入っていることが多いとのことで、結局最後までお目にかかることができなかった。
夕食はどの料理もしっかりとした味付けで食べ応えがある一方、朝食はさっぱりめで素材の味をそのまま味わうようなメニュー。個人的には川魚の刺身が好きということもあって夕食に鮎の刺身が出てきたことや、朝食のベーコンエッグをその場で焼くスタイルに感動しながら堪能した。
さて、女性に人気の温泉地は、実は美味しいスイーツを楽しむことができるスポットでもある。ということで、前編の最後に、黒川温泉で味わった甘味を紹介しておきたい。