旅レポ
ジェットスターの成田~熊本便を使って1泊2日で熊本旅を楽しんだ(後編)
(2015/7/1 12:00)
前編に引き続き、ジェットスター・ジャパンが企画した、成田~熊本線を使って1泊2日で熊本の観光地を巡る報道関係者向けツアーのレポートの続編をお届けする。改めて、同ツアーは4月後半に行なわれたもので、本稿掲載時とは季節感などが多少異なることをあらかじめご了承いただきたい。また、記事内の価格などは、いずれも取材時点のものであることをお断わりしておく。
前編はこちら
飛行機の旅の目的地で鉄道の旅
後編、すなわち1泊2日の旅の2日目のスタートとなるのが豊肥本線の宮地駅だ。宮地駅は初日に訪れた「阿蘇神社」の最寄り駅で、阿蘇市中心地からやや東寄り場所にある。
赤い屋根が鮮やかな駅舎で、むき出しの丸太が軒を支え、構内には木造のベンチが並ぶなど風情がある。電化されていない区間なので見晴らしもよい。一見するローカルの一駅という雰囲気だが、ここでは列車の交換(すれ違い)も可能なほか、SLのための転車台もあり、同路線にとって重要性は高そうな駅だ。
そして、ここからはJR九州が運行する「九州横断特急」に乗車する。飛行機による空の旅で熊本へ来ているが、ここでは鉄道旅、つまりフライ&ライド……という言葉はあまり耳にしないが、そのようなイメージの旅の行程だ。
乗車するのは熊本行きの九州横断特急1号(宮地駅9時53分発)だが、それを待っていると、ほぼ同時刻に反対側のホームにも九州横断特急が入線。交換の瞬間に立ち会うことができ、ちょっとトクした気分を味わう。
列車はディーゼルエンジンを積んだ気動車で、赤を基調に黒をアクセントと使われており、外観だけでもこれに乗車できるうれしさがこみ上げてくるデザインだ。そして、JR九州の観光列車ではおなじみの水戸岡鋭治氏がデザインした内装は“和”の雰囲気があり、車窓に流れる阿蘇五岳や球磨川の風景も味わい深い。一方で、立野駅付近では急勾配を列車が前後しながら進むスイッチバックも行なわれ、今や珍しい運転方法にワクワクする。安らぎと興奮をまとめて楽しめる列車といったところだ。
熊本駅到着後は「くまモンスクエア」へ。その名の通り、くまモンの活動拠点で、くまモンのお土産物の販売やイベントの開催、そして執務室も置かれ、著名人と一緒に撮影した写真などが飾られている。土産話のネタにもなるし、くまモンファンならずとも立ち寄っておきたい場所だ。
このくまモンスクエアは、東急ハンズ熊本店などが入るテトリアくまもと鶴屋東館の1階にある。JR熊本駅からは、市電を使ってのアクセスが便利だ。熊本市交通局が運行する市電路面電車で、A系統とB系統の2系統が運行されており、両系統が停車する水道町電停がテトリアくまもと鶴屋東館の目の前にある。熊本駅からはA系統に乗れるので、水前寺公園・健軍町方面に乗れば20分足らずで着ける。
運賃は大人150円の均一運賃。料金箱は釣り銭に対応していないので、ちょうどの金額を持っていない場合は車内の両替機で事前両替を行なう必要がある。また、西鉄(西日本鉄道)を中心に利用できる「nimoca」のほか、全国相互利用ICカードに対応している。関東圏からの旅行者も、「suica」や「PASMO」をそのまま使えるので気楽だ。
余談ながら、電停に停車するたびに料金所をずっと観察していたのだが、ICカードを使う人がそれほどいないのが印象的だった。おおむね、10~15人に1人といったところだろうか。あまりに使用率が低いと不思議に思っていたのだが、あとで調べてみると市電がICカードを導入したのは2014年3月28日とのことで、まだ普及途上なのかもしれない。
ちなみに、今回、成田~熊本間で利用したジェットスター・ジャパンが、熊本線を一挙に3路線開設したのは2014年10月26日のこと。市電のICカード導入で熊本市内観光がちょっと便利になってからの就航だったことになる。これを同社が狙っていたかは分からないが、低価格なLCCで気軽に熊本へ行って、熊本市内はICカードで気楽に巡れる、というのは、わりと重要なポイントだと思う。
このほか、市電専用の1日乗車券も大人400円で用意されている。観光客向けの切符で、熊本城など市内の観光施設の割引クーポンも付いている。熊本市内観光を丸1日行なうなら、こちらを購入してもよさそうだ。
市電の話はこのぐらいにして目的地である「くまモンスクエア」の話。ここからは、熊本県の橋口氏にご案内いただいた。
くまモンスクエアは先述の通り、同県の営業部長代理(取材当時、“代理”への降格は2015年6月末まで)を務めるくまモンの活動拠点として2013年にオープンした施設だ。入り口から場内までくまモン一色で、くまモンの執務室や著名人との写真や、数々の賞を受賞した際の記念品などがところ狭しと並べてある。過去に作られたコラボグッズも揃っている。
また、物販コーナーには、地元の手作り工芸品なども含めたくまモングッズが並べられている。ここでしか購入できないオリジナル商品もあり、お土産を購入するために立ち寄るのもいいだろう。
注意したいのは、ここに来たからといってくまモンに会えるとは限らないことで、訪問日はあいにく不在日で会うことは叶わなかった。くまモンに会える日について、詳しくはくまモンスクエアのホームページをご参照いただきたいが、基本的には週末前後や休日に在室しているようだ。
熊本市民のソウルフード「太平燕」にチャレンジ
2日目の昼食は、“熊本市民のソウルフード”である「太平燕」(タイピーエン)をいただいた。太平燕は春雨を使った元々は中華料理だが、熊本では春雨スープに魚介や豚肉、野菜などの五目炒めを載せたものが長年食され、給食などにも出るとのことだ。面白いのは、熊本県内でも特に熊本市を中心に愛されてきたそうで、かなりピンポイントなご当地グルメのようだ。
この日は、1934年の創業以来、太平燕を80年以上も提供し続けているという「紅蘭亭」へ伺った。いただいたのは、メニュー名もズバリ「太平燕」(780円)だ。
スープは鶏ガラと豚骨とのことだが、さっぱりした味わいで、たくさんの具材は風味がそのまま口の中に広がる。麺料理のような雰囲気ではあるが、春雨をアクセントにスープを楽しむのがよさそう。さっぱりした味だが、具材が多いので、食べたあとには満腹感もあった。
黒い板張りがかっこいい熊本城
お腹を満たしたところで次に向かったのは熊本城。その道中、2011年に観光交流施設としてオープンした「桜の馬場 城彩苑」に立ち寄った。熊本城へ向かう行幸橋の先にある城彩苑は、観光案内所やお土産屋さん、お食事処が並ぶ施設だ。熊本城の入り口への無料シャトルバスもあるので、熊本城を訪れる前後に立ち寄ってみるのもよいだろう。記者は、ちょうどお昼を食べたあとだったこともあり、食後のデザートを楽しんだ。
さて、いよいよ熊本城へ向かう。熊本城では、地元のガイド団体「くまもとよかとこ案内人の会」の生田繁利さんにご案内いただいた。同会は熊本市内とその周辺を案内してくれるボランティアガイドの団体で、ガイドさんの交通費負担のみでガイドを引き受けてもらえる(事前申し込みが必要なので、詳しくは同会ホームページで確認を)。
その熊本城は日本三名城に数えられることが多く、黒い板張りで覆われた外観が特徴だ。日本のお城と言えば、2015年は姫路城の改装オープンが話題だが、姫路城は漆喰を前面に見せた“白鷺城”とも称される白い城壁が目立つ外観であるのに対し、熊本城は板張りの黒を中心にした外観で、まるで鎧武者のような強さを感じさせる。
残念なのは、西郷隆盛を中心とした旧薩摩士族による士族反乱である明治10年の西南戦争において、大天守、小天守をはじめとする多くの建物が焼失し、現在の天守閣は戦後に再建されたものであるという点。内部はコンクリート製で若干興ざめもするが、その板張りの外観や独特の石垣、そして天守閣からの眺めは一見の価値がある。
また、2007年に再建された本丸御殿は、当時もそうだったのであろう絢爛さが再現されていて見応え十分。建造当時の姿を残す宇土櫓のように歴史的価値の高い建物も残されており、再建されたものゆえの良さと、歴史的な重みの両方を楽しめるスポットと言えそうだ。
旅の最後に南阿蘇を巡る
くまモン→熊本城のコンボで“熊本に来た感”が最高潮に達したところで、続いては南阿蘇方面へ向かった。その名のとおり阿蘇山の南側。ここは熊本空港にほど近いエリアなので、特にレンタカーを借りて移動する人は、帰りにちょっと時間に余裕がありそう、といったときに、この付近の観光スポットを1つ2つ回って時間調整するのもよいと思う。
まず向かったのは「山田さんちの牧場 ミルクの里」だ。ここは特に空港から近く、クルマなら10分程度で行ける場所にある。ここでもソフトクリーム(320円)をいただいたのだが、ただ濃厚なだけでなく、あまり味わったことのない風味……おそらく牛乳の良さなのだと思うが、印象に残るソフトクリームだった。コーンはワッフルコーンだが、そうでなければ負けてしまうのではないかと思うぐらいソフトクリームの味の主張が強く、とにかく絶品という言葉がぴったりの美味しいソフトクリームだった。
また、「手作りジェラート」(320円)も有名だそうで、お腹に余裕があれば両方食べてみるといいだろう。
さらに言えば、このミルクの里は“山田さんちの牧場”のど真ん中にあるわけではないのだが、脇の小さな放牧場に子豚や子ヤギが放されている。そのかわいい姿に癒やされつつ、ソフトクリームを味わうという至福の時間を過ごすことができる。
そして、この旅最後に訪れたのが「あそ望の郷 くぎの」。南阿蘇村久木野地区にある観光施設で、お土産物屋さんや、南阿蘇村の観光案内所などがある。
ここは何より、阿蘇五岳の眺めが素晴らしい。ただ麓に近いだけでなく、すぐ目の前が広場になっていることもあって、遮るものなく雄大な阿蘇五岳を望むことができる。
この風景を見るだけでも訪れる価値があると思うが、南阿蘇村の観光案内所にはレンタサイクルもあり、周辺の観光を行なう際の拠点としても活用できるほか、前編でも少し紹介した熊本県の「あか牛」を専門にする焼き肉レストラン「あか牛の館」も併設している。絶景に出会いたい人から、お土産を買いたい人、周囲を観光したい人、熊本グルメを味わいたい人、いろんな人にお勧めできるスポットだ。
以上のとおり、1泊2日の熊本旅をお伝えしてきたが、その締めに紹介しておきたいのが熊本空港の展望デッキ。熊本空港の展望デッキは非常に広く、金網はちょっと気になるものの、右を見れば阿蘇、左を見れば雲仙天草を望める、眺めのよいスポットなのだ。夜の便に乗るのなら、ちょっと早めに空港入りすることで、雲仙天草方面に沈む夕日を見ることもできる。熊本との別れが惜しくなるかもしれない点には注意が必要だが。
そして記者は、日が沈んだのを見てからセキュリティチェックを通過。熊本空港内は一般エリアにも「パソコン用デスク」として簡単なテーブルが置かれていて、LCCユーザーにも優しい。ちょっとだけ仕事のメールを読むなどして過ごし、熊本19時40分発~成田21時25分着のGK614便で帰途に。
少々マニアックな話になるが、実は帰りのGK614便で使われた機体は、ジェットスター・ジャパンが20機保有するエアバス A320-200型機のうち、2番目に新しい19番目の機体(登録記号:JA19JJ)だった。これは2014年10月、同社が熊本便を開設したのと、ほぼ時を同じくして使い始めた飛行機だ。ちょっと幸せな気持ちになれる、不思議な縁で結ばれたような出会いが最後に待っていたのだった。
さて、1泊2日という日程で、やや駆け足気味な場所もあったが、1日目の午前中に到着して、2日目の夜に熊本を離れる便を利用したので、ほぼ丸2日間、熊本を楽しむことができた。記者はこの旅で初めて熊本県内を本格的に見て回ったのだが、特に阿蘇周辺はバスに乗って眺めているだけでも「日本にもこんな風景があったのか」という発見があり、一方では、有名な風景や建物を目の当たりにできたうれしさもありで、非常に満足感の高い旅となった。もちろん、あか牛やスイーツをはじめとするグルメもそれぞれ独特の味わいで、この旅がなければ出会えなかったかも知れない。
今回利用したジェットスター・ジャパンの最安値運賃なら1万2000円弱で往復航空券が購入できることを考えると、予算的にも目的地を重視して余裕ある旅ができる。この予算的な気楽さゆえ、「また来ようかな」という気持ちも、同じように気楽な感じで沸いてくる。熊本という土地が一気に身近な存在になった旅として、先々まで思い出に残りそうだ。
【お詫びと訂正】記事初出時、「nimoca」の表記に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。