旅レポ
水際対策緩和で、日本への帰国はどう変わった? 1月帰国時の8時間から1時間半へ大幅短縮!
2022年4月1日 14:20
3月1日0時から政府による水際対策「新型コロナウイルス感染症に関する新たな水際対策措置」が始まり、日本人、外国人に限らず、新しい日本入国時の検疫措置が始まった。
これにより、従来はホテルで待機だった場合でも、厚生労働省が指定するワクチンを3回接種している場合には、自宅での待機も含めて免除する仕組みが導入された。日本人が海外に行く場合の行き先が「水際強化措置に係る指定国・地域」に該当しない場合には、ワクチン接種3回が済んでいれば、帰国後に待機が求められない形になり、より海外旅行に行きやすい環境が整いつつある。
また、以前は関西国際空港でだけ行なわれていた、ITを活用した入国時検疫「ファストトラック」に関しても、羽田、成田、セントレア(中部)、福岡に拡大している。今回、従来よりもスピーディに入国できるという触れ込みのファストトラックを羽田空港での帰国時に利用してみた。
結論から言えば、待機所に連れて行かれるまで8時間もかかった1月の帰国体験からは大きく改善され、1時間半で入国して空港の外に出ることができた。
3月1日から厳しい水際措置が緩和。入国後の移動に関しても空港での検査が陰性なら公共交通機関が利用可能に
2021年の11月ごろから、アフリカなどで最初に発見されたオミクロン株が急速に感染拡大したことで、世界は再び大混乱になったことは記憶に新しいだろう。その結果わが国の政府は、予防的措置として入国検疫の強化を決定し、事実上の「鎖国」などとも言われるような厳しい検疫が行なわれることになった。そうしたさなかの1月に、筆者は米国ラスベガスで開催された世界最大のデジタル家電のイベント「CES 2022」に参加し、1月の中旬に日本に帰国した。
成田空港に帰国した筆者を待っていたのは、帰国後3日間の待機所での待機までに、飛行機が着陸してから8時間もかかるという、これまでで経験したことがないような大混乱の帰国プロセスだった。その模様は以下の記事に詳しいので、詳しくはそちらを参照していただきたい。
そうしたなかで、日本政府は3月1日からそうした世界的に見てもトップクラスの厳しさとなっていた、入国時水際対策の緩和を決定し、すでにその措置が開始されている。詳しくは厚生労働省のWebサイトを参照していただく必要があるが、ビジネストラベラーでもある筆者の観点では以下の3つがとても重要だと考えている。
(1)入国後の待機期間の変更、指定国・地域以外への渡航でワクチン3回接種済みなら待機期間ゼロ
オミクロン株流行初期の段階は14日、そして1月15日からは7日間、と帰国後の待機期間が定められており、帰国時に旅行者が提出する「誓約書」で誓約するという仕組みになっていた。指定国・地域(厚労省が指定する新型コロナウイルスの流行国や地域)から帰国した場合には、検疫所が用意する「待機所」(ホテルや国家施設の寮など)で指定期間待機して、あとは自宅待機するという流れだ。
今回のルール改定でもその基本的なスキームは変わっていないが、有効なワクチンを3回接種していて、その接種証明書を持っている場合には、期間の短縮やそもそも待機なしという仕組みに変更されている。
ワクチン接種3回が終了している旅行者は、指定国・地域ではない国・地域に渡航した場合には待機期間はなしになる。つまり、感染対策に留意しつつ、帰国した日から自由に外出してよいということだ。これまで帰国してから長ければ2週間、短くても7日間は自宅ないしは待機所で待機する必要があったことを考えれば、このことは旅行者にとって大歓迎な政策変更と言える。
(2)入国後の公共交通機関の使用、空港検疫での検査で陰性なら検査後24時間以内は利用可能
依然として帰国時の抗原定量検査は行なわれるが、そこで陰性だった場合には、検査から24時間以内であれば公共交通機関を利用することができるようになった。
これまでは、たとえ空港検疫で陰性であっても、公共交通機関を使ってはいけないというルールになっていた。日本への旅行者はフライト前72時間以内のPCR検査、そして日本の空港での抗原定量検査と少なくとも2回の検査を陰性になっており、言ってみれば確率的には検査せずに公共交通機関を利用している人よりは感染している可能性は低いと考えられるため、妥当な措置だろう。
この措置のメリットは地方の旅行者には大きいと言える。例えば札幌に住んでいる旅行者が帰国する場合、今は新千歳空港の国際線は飛んでいないので、成田や羽田などの国際空港を利用するしかない。しかし、待機期間に公共交通機関を利用できない場合には、成田や羽田周辺のホテルなどで自宅待機期間分を過ごしたあと、自宅に帰る必要があったため、コストが膨大になり過ぎて海外旅行はあきらめるという例が多かったと聞いている。
その意味で、そうした地方在住者もこの新ルールでは、たとえ自宅待機期間であっても、陰性になった検査から24時間以内なら、国内線のフライトを利用して自宅まで帰ることができる。こちらも旅行者にとってうれしい変更だと言えるだろう。
(3)新しいファストトラックを利用できる
これは新しい検疫措置とは別件だが、厚労省が2月から段階的に導入してきた「ファストトラック」と呼ばれる、提出書類などをデジタル化するための仕組みだ。それにより、空港での書類検査などにかかる時間を短縮することができる。
最初は関西国際空港でだけ行なわれていたが、3月1日から羽田、セントレア、福岡にも拡大、3月9日から成田でも導入され、現在国際線を運航している日本の主要空港ならどこでも利用可能になっている。
これに関しては帰国時の検疫でとても重要になるので、後ほど実際に利用してみた感想を含めて詳しく説明していきたい。
スペイン入国はワクチン接種が要件。事前にQRコードを作成し、到着時にかざすだけ
筆者は2月の下旬に世界最大のワイヤレス通信系イベントの「MWC 2022」に参加するために、スペイン・バルセロナへ出張してきた。バルセロナは、スペインの地中海側にあるスペインで2番目に大きな都市で、毎年2月下旬にMWCが行なわれている。一昨年は新型コロナウイルスの感染流行の開始と重なって直前に中止になり、昨年は6月にスライドして開催されたが小規模のままで、本格的なMWCとしては約2年ぶりとなった。
そんなスペインへの入国だが、日本は日本で言うところの「指定国」になっており、基本的には入国拒否の対象になっている(筆者が入国した2月末時点)。ただし、例外措置があり、ワクチン接種証明書を提示することで入国できる(日本のワクチン接種証明書も有効)。
ただし、ワクチンを最後に接種してから少なくとも14日が経過していること、そして最後にワクチンを接種した日から270日を超えていないことが条件になっており、270日を超えている場合には3回目の接種を行なっている必要がある。筆者は2021年7月に2回目の接種を終えていたため、270日という制限には引っかからなかった。また、スペインへのフライトの15日前に3回目の接種を受けることができたため、要件はすべて満たしていた。
現在、日本からスペインへの直行便は存在せず、いずれも日本から欧州のどこかの都市に飛んで、そこからバルセロナへのフライトに乗り換えて向かうことになる。スペインはシュンゲン協定の加盟国なので、ドイツやフランスなどで入国して、スペインへ国内線扱いのフライトで向かうことも考えられたが、こういうご時世でもあるので、乗り継ぎ地で入国せずにスペインへ向かえるロンドン経由を選んだ。
スペインの入国だが、まず通常の入国審査が行なわれたあと、検疫検査となる。
この検疫はブースが用意されており、そこに近づくと自動的に体温が測られる仕組みになっている。仮に体温が規定よりも高かった場合には別室送りになり、検査などが行なわれるようだ(ようだと書いたのは、筆者はそのまま通過できたので、通過できなかった場合にどうだったかは体験していないから)。
そしてそのブースではスペイン入国前に、ワクチンの接種情報などを記録するともらえるQRコードをスマートフォンで示す必要がある。筆者の場合は、メインのスマートフォンにiPhoneを利用しているが、「ウォレット」と呼ばれる電子マネーやチケットなどを登録するiOSの機能にそのQRコードを登録できたので、iPhoneで表示してピッとやるだけで通過することができた。
厚生労働省のファストトラックとデジタル庁のVisit Japan Webサービスという2つのサービスが並立
MWC 2022での取材もほぼ終え、スペインの滞在が終盤に近づくと、帰国のための準備を進めることになる。以前の記事でも述べたとおり、日本へ向かうときの最大のハードルは外国でのPCR検査だ。というのも、日本政府が帰国便のフライトに乗るための条件として、最初のフライトの72時間以前に行なったPCR検査で陰性になったという証明書を提出することを課しているからだ。
このPCR検査は日本政府が書式を用意しており、“原則として”その書式に沿っていないと、受け入れられないとされている。今回は友人に教えてもらった日本の書式で書類を発行してくれるというPCR検査場で検査してもらい、翌日に陰性の書類を受け取ってきた。
その書類を入手すれば、あとは帰国のための準備だ。今回は、帰国時に政府が用意している2つのIT系のサービスを利用することにした。1つは最初の段落で説明した厚労省が提供する「ファストトラック」で、もう1つはデジタル庁が用意する「Visit Japan Webサービス」だ。
ファストトラックは、帰国後の待機中の居場所確認などにも利用されているアプリ「MySOS」を利用する。MySOSから「検疫手続き事前登録」というWebサイトに飛び、帰国時に必要な質問票WEB、誓約書、ワクチン接種証明書のアップロード、そして一番重要な機能としては、PCR検査の陰性証明書(出国前72時間以内の検査証明書)のアップロードができるようになっている(なぜ重要かは後述)。
そしてVisit Japan WebサービスはPCR検査の陰性証明書のアップロード、質問票WEBなどの入力などは同様だが、ファストトラックにはない機能として税関申告のデジタル申請機能がある。このため、今回は両方の申請を行ない、税関の申告だけVisit Japan Webサービスを利用することにした。
筆者が申告した当時は、両者はまったく連携がなく、Visit Japan Webサービスから質問票WEBの申告ができるだけになっていたが、その後Visit Japan WebサービスのWebサイトで確認したところ、Visit Japan Webサービスからファストトラックの申告ができるようになっており、現在は連携している。お役所が違えども、どちらも日本政府のサービスなのだから、こうあるべきだろう。
現状ではVisit Japan Webサービスを利用するメリットは、税関の申告書の代わりにQRコードをリーダーに読み込ませるだけでよいというその一点にあり、筆者のように紙に書くのはできるだけ減らしたいというデジタル大好きな人にとってのメリットでしかない。
実際税関を通った感想としては、QRコードを見せる方がかえって時間がかかる印象だった(リーダーも反応がイマイチなのと、検査官の方もあまり慣れていない印象)だが、将来はもっとリーダーも改善されたりしてもっと素早く通ることができるようになったりすれば、効果があるのではないかと感じた。
航空会社と利用者にめんどうを強いていた陰性証明書の航空会社チェックがなくなることが「ファストトラック」のメリット
今回、厚労省が提供しているファストトラックを利用して感じたことは、すべての旅行者はこれを利用した方がよい、それにつきる。
ただし、ファストトラックのメリットは、帰国時にある検疫審査で迅速に入国できることではまったくない。その効果は正直ほとんどない。というのも、入国時に待たされる一番のボトルネックは抗原定量検査で、その検査結果が出るまでの待ち時間が長いため、その前の書類整理の段階をちょっと短縮できてもあまり大きな効果はないからだ。
じゃあ何がメリットなのかと言えば、帰国前72時間以内のPCR検査の陰性証明書のアップロード機能と、それを厚生労働省の担当者がチェックする機能こそがファストトラックの利用者にとっての最大のメリットだ。
ファストトラックでは、PCR検査の陰性証明書をアップロードすると、インターネットの向こう側の厚生労働省の担当者が、そのPCR検査書類が日本の入国に使えるものかを審査してくれる。その審査にオッケーが出ると最終的にMySOSアプリの表示色がグリーンになり、日本への帰国便に乗るときには、その画面をエアラインの担当者に見せるだけでよいのだ。
このファストトラックの機能を使わないとどうなるのかというと、帰国時の最初のフライトの72時間以内に行なったPCR検査の結果証明書を紙で持っていき、日本への帰国便が飛ぶ空港で航空会社の職員に書類を見せ、その職員がオッケーを出すと飛行機に乗れるという手順になっている。そのため、その乗り継ぎ空港に到着してからPCR検査の陰性証明書に不備が見つかり、帰国便に乗れないということが結構頻発していたそうだ。
PCR検査では陰性になっているのに、書類の不備が問題になるというのもなんとも日本的な話だが、航空会社からすれば、その不備のまま乗客を乗せて日本に着いてから書類の不備が発覚となると、今度は航空会社が責任と問われるという立て付けになっているため、書類を作る医療機関のミスであっても乗客のミスとして指摘せざるを得ない。無慈悲にダメ出しをするしかなかったのだ。その場合は経由地の滞在費など一切は乗客の負担になるだけに、経由地の空港で書類の不備でもめることが頻発していたという。
このため、航空会社によっては、乗り継ぎ便の運航を行なっている現地のオフィスから乗客に対して、「不備がないかを確認するから書類をスマートフォンで撮影してメールで事前に送れ」と指示している場合もあった。そうしなければ、航空会社としては現地についてからダメ出しせざるを得ないため、書類を直すことが可能な現地にいるうちに確認したい、そういうことなのだろう(プライバシーが詰まったPCR検査の陰性証明書をメールで送るのがセキュリティ的に適当なのかどうかはここでは議論しない)。
しかしファストトラックを使えば、そうしたトラブルとは一切無縁だ。審査するのは厚労省自身だから、そのチェックでオッケーが出ていれば、航空会社も利用者もそうしたトラブルに巻き込まれる心配がなくなる。もちろん、書類に不備があれば審査は通らないだろうが、まだ現地にいる間であれば、その書類を発行した医療機関にいって直してもらった書類を発行してもらうことも可能だろう(ギリギリにPCR検査をした場合には難しいかもしれない)。
そう考えれば、利用者にとっても、航空会社にとっても、この仕組みは経由地の空港でもめる心配がないという意味で大きなメリットがあると言うことができるだろう。
空港ではクレジットカードすり替え目的の詐欺師に声をかけられるも無事ロンドンへ
そうして帰国の準備が整うと、あとは当日空港でチェックインして飛行機に乗るだけだ。バルセロナのエルプラット空港でチェックインしようとしていたら、男性が寄ってきて「私の友人の田中さんという日本人が日本行きの飛行機に乗れなくて困っている、助けてくれないか?」と話かけてきた。
この時点でああ、これは日本人を狙った詐欺だなと思ったので、「これ以上話しかけてくると警官のところにいくよ」と言うと、離れていった。そうした内容で声を掛けてきたのは1回でなく、なんと3回も話しかけられた(苦笑)。そんなにメジャーな手口なのかと思って検索してみると、外務省の海外安全ホームページに掲載されているほど、「よくある」詐欺のようだ(エルプラット空港におけるクレジットカードすり替え、不正利用事件の発生)。
依然として日本人はお金持ちで、お人よしと思われているのが現実なので、海外で、ましてや空港で声をかけてくる知らない人はみんな詐欺師ぐらいに思っている方が、自分の安全のためにはよいと思っている。もちろん、新しい出会いこそが旅の楽しみということも否定するつもりはないが、こうした事例は決して少なくないので、日本にいるときよりも細心の注意を払いたいところだ。
空港では念のためPCR検査の陰性証明書なども用意して持っていったが、特に調べられることもなく、東京までチェックインすることができた。
ロンドンまでブリティッシュ・エアウェイズで飛んでいき、再度の荷物検査を行なって、ラウンジに向かっていくと、途中でJALの職員の人が待っていて、そこでPCR検査の陰性証明書などのチェックが行なわれた。
今回は前出のファストトラックの登録を行なっており、MySOSアプリの色がグリーンになっていたため、それを職員の方に見せるだけで「完璧です」と言われて、チェック終了。前回のアメリカからロサンゼルス経由で帰るときには、ロサンゼルス空港で徹底的に書類のチェックをされたのに比べると、あっけないほど簡単に終わってしまった。海外から帰国するときには、MySOSとファストトラックの活用は必須だなと感じた。
なお、ロンドンのブリティッシュエアラインのラウンジでは、スマートフォンでQRコードを読み込んで表示されるWebでのメニューと注文システムを利用して、食事を注文することができた。日本のJALのラウンジでは専用アプリという違いはあったが、やはりスマートフォンで注文する形式になっており、これがこれからのラウンジのスタンダードなのかもしれない。
帰りのフライトは戦争の影響でロシア上空が飛べなくなり、アラスカ上空を利用するルートに変更される
今回のロンドンからのフライトだが、3月4日のJL44便だった。このJL44便は、2月末にロシアとウクライナの戦争が始まった関係で、ロシア上空を飛ぶことができなくなったため、アラスカ上空を経由する新しい航路のロンドン発の最初の便になった。
なお、前日の同便は、戦争の影響でロシア上空を飛べなくなったことの混乱からキャンセルになっており、乗ってみると本来は3月3日の便に乗るはずだった乗客などもおり、コロナ禍とは思えないような盛況なフライトになっていた(エコノミークラスはほぼ満席に近い状況だった)。
通常、ロシアの上空を飛んでいく場合には、フライトは12~13時間程度なのだが、アラスカ上空を飛んでいく場合には、それにプラスして4時間程度となり、16時間という最近ではあまりないような長時間のフライトになった。
乗客として気になったのは、食事の間隔。エアラインに聞いてみると、食事はもともとのフライトと同じ回数(つまり2回)と言われたので、食事と食事の間隔が通常よりも長くなるのではと予想した。
そこで、自分で1食分ぐらいは用意しておく必要があるなと考えて、ロンドンのヒースロー空港にいるうちにサンドイッチなどを買っておき、食事と食事の間にはそれを食べて、ことなきを得た。ただ、食事と食事の間にもちょっとした軽食(今回のフライトではどら焼きとマフィン)は出るので、筆者のように食いしん坊でなければそんなに問題ではないかもしれない……。
機内では、フライトのルートを表示する画面などを見ていたが、機内のマップがこのアラスカ上空を通過するルートを想定していない地図のようで、まるでワープしているようなルートになったりして、改めて、地球は丸いのだなと感じるフライトになった(本稿のトップ写真)。
感想はただ1つ、「16時間やっぱり長い」だ(笑)。
帰国時のファストトラックのメリットは「紙の人を何人か追い抜ける」程度だが、全体では迅速化の効果
もともとのJL44は羽田空港に15時55分到着予定だったのだが、前述のようにロシア上空を飛べなくなり、フライトの時間が増えたこと、そして出発自体もやや遅くなったことで、羽田に着いたのは22時少し前。検疫の準備などを待って、22時に降機が開始された。
そこからまずは検疫があり、書類の審査や抗原定量検査があり、審査や抗原定量検査の結果が陰性であれば、入国審査。そして税関検査を経て、入国することができる。今回はファストトラックで事前に検疫関連の書類をデジタル的に提出していただけに、それがどれだけ早くなるのかが焦点だと考えていた。
ただ、それは正直言って「肩透かし」だったことは否定できない。というのも、ファストトラックで登録していてMySOSアプリが「グリーン」になっている場合でも、別に専用のレーンが用意されているわけではなく、紙の書類を用意している人と同じ列に並ばないといけないからだ。
数か所用意されている誓約書のチェック、MySOSアプリができているかのチェックなど、ファストトラックを使っていない人とまったく同じレーンを通過しなければならない。だから、この検疫検査で唯一のメリットは、検査官の人がいちいち書類を見なくてもよい、それだけになる……。
しかも、せっかくファストトラックでデジタル申請を終えていても、結局、この書類審査を通り過ぎるための「メモ書き」が渡されて、そこにチェックポイントの関係者の人が記入して次に渡していくという、とてもアナログな作業が繰り返されていた。
デジタルの移行を強く訴えているITの取材をする記者という筆者からすると、「もう少しなんとかならないのかな」という感想を持たざるを得ない。ぜひ厚生労働省のデジタル担当の方にはもう少し頑張っていただきたいとエールを送りたい。
ただ、前回1月に成田で入国したときには、書類審査が終わるまで着陸から1時間45分かかったが、今回の羽田では書類審査が終わるまで30分で済んだ。ファストトラックを使う人が増えれば増えるほど書類審査にかかる時間は減っていくと考えられるので、個々人にメリットは薄くても、全体にはメリットがあるとは考えられる。
その観点で言えば、ファストトラックを使う人を増やすために、検疫時に専用レーンを用意するとか、目に見えるメリットを用意してほしいなと感じた。結局それが全体の待ち時間を減らすことにつながると考えられるので、全員にとってメリットがあると思うのでぜひ検討してほしいところだ。
降機から1時間半で税関検査まで終了して入国完了。水際対策の改善を実感
その後、22時30分ごろに抗原定量検査を受け、あとは待機所で待機となった。
抗原定量検査の結果は、待機所にあるモニターで表示され、自分の番号が表示されると次のプロセスに進める形となる。結局、この待ち時間が一番長く、筆者の場合は結果が出るまで約50分かかった。それでも同じフライトの人のなかでは早い方で、その後、10分程度で入国審査、税関を通過して、23時30分ごろに空港の外に出ることができた。
このように、結局の所検疫での一番のボトルネックは、この抗原定量検査であるので、今後より多くの乗客を受け入れるためには、その迅速化、あるいは欧米のように検査自体の廃止が焦点になると言えるだろう。
3月1日からの新しい措置で、スペインなど指定流行国・地域ではない場所からの帰国で、3回ワクチンを接種している場合、従来のような待機期間(宿泊施設での待機や自宅での待機)が必要なくなっており、そのまま電車やバスに乗って帰宅することができる。前出のとおり、筆者は今回の旅行の前に3回目のワクチン接種を行なっていたため、そのまま帰宅した。
今回の帰国では検疫と入国審査、税関と合わせた合計時間は1時間30分で、前回1月に成田で入国したときの検疫、入国審査、税関に約6時間、待機場所までさらに2時間と合計8時間もかかっていたのに比べると、圧倒的に短い時間ですませることができた。
もちろん、今回のフライトが到着ラッシュの時間である夕方から、ほかに到着便がない夜遅くに変更されたことも早く済んだ理由の1つで、単純に比較はできないが、徐々に検疫も改善傾向にあることは間違いないだろう。その意味で、従来のような気軽に海外に行けるような状況まで、あと少しというところまで来ていると感じた。
今回の旅行で感じたことは、2つある。1つは、これからの海外旅行はスマートフォンがなければ、飛行機に乗ることも難しくなるだろうということ。
スペインの入国では事前にWebサイトなどから申告しておいた検疫情報をQRコードにしてスマートフォンで表示し、現地のリーダーに通しておく必要があったし、日本への帰国時にもファストトラックを利用することで、トラブルになりがちなPCR検査陰性証明書のチェックを事前に受けることで、帰国時のトラブルを避けられた。また、ファストトラックを利用することで、紙で引っかかっている前の乗客を、合法的に追い越すことができるというメリットがある。
ほかにも、空港のラウンジで食事を頼むときにも、スマートフォンがないと注文できないなど、もはやスマートフォンがなければ海外旅行はできない、そう言い切ってもよいと思う。
もう1つは平和のありがたさだ。今回は帰りの便は、ロシア・ウクライナ戦争の影響で日米欧の航空機がロシア上空を飛べなくなった影響で、急遽アラスカ上空を飛ぶことになったため、4時間もよけいにかかり、到着が22時近くとかなり遅くなってしまった。その結果、結構早く入国できた筆者でも23時30分、それよりあとの乗客であれば羽田からの終電が終わってから外に出るということになっていた可能性が高い。そう考えると、安心して旅行するためには、平和が大事だと再確認させられた。
月並みな言い方で申し訳ないが、世界平和の実現を切に願い、そして新型コロナウイルスによる騒動も早く落ち着いて、世界中の人たちがあちこちの観光地に行けるような平穏な日々が戻ってくることを切に願って、この記事のまとめとしたい。