旅レポ

日本帰国時の最新プロセスを体験。着陸から入国まで15分! ワクチン3回接種で陰性証明不要、検疫通過も格段とスムーズだった

昼便の飛行機に乗る楽しみの1つは美しい地球を眺められること。早くこういう日常が戻ってほしい

 既報のとおり、日本政府は新型コロナウイルスのワクチン接種を3回以上終えている渡航者を対象に、出国前72時間以内の検査証明書(PCR検査ないしは抗原検査)の提示を不要とする新施策を決定し、9月7日午前0時(日本時間)よりその適用を開始した(関連記事「日本入国時の検疫措置、9月7日午前0時より新ルールに。ワクチン接種済なら出国前検査が不要」)。

 筆者は、僚誌「PC Watch」で取材のため、米国、ドイツ、米国と延べ3回の海外滞在を終えて9月7日の夕方に羽田空港に到着し、帰国した。このとき新施策を体験する機会を得たので、本稿ではその模様をお伝えしていきたい。

日本帰国時の検疫、ワクチンを3回接種していれば米国並みの制限に

行きは成田空港から

 9月初日、筆者は米国からドイツへ、再び米国に入国してから日本に帰国するという、ちょっとトリッキーな1週間の旅程を組んでいた。というのも、米国での予定とドイツでの予定が一部被ってしまい、スケジュール的に米国からドイツへ飛ばないと間に合わないということになったからだ。

 コロナ前はこういうスケジュールを割と普通にこなしていたのだが、コロナ以降は渡航条件がいろいろ厳しくなったこともあり、変形スケジュールを組むことは避けてきた。しかし欧米ではすでに「Withコロナ」の生活へシフトし、コロナ対策は継続しつつも移動制限などは課さないという新様式が進んでいる。

 最初の目的地であった米国では、以前課されていた制約(フライト前日から搭乗までにPCR検査の陰性証明書を持参)はすでになくなり、米国市民でない場合はワクチン接種済みであり、なおかつワクチン接種証明書を提示できることが入国条件となっている。また、今回の最終目的地だったドイツでは、ワクチン接種証明書の提示すら必要なく入国できる。

 これに対して日本では、入国時の抗原検査は6月に廃止されたものの、「出国前72時間以内の検査証明書(PCR検査ないしは抗原検査)」を持参しないと飛行機に乗せてもらえないという制限が依然として続いていた【表1】。そして9月7日、規制緩和に伴い帰国時の検疫措置も変更。米国並みの制約で日本に入国できるようになった【表2】。まとめると、日本・米国・ドイツでは以下のような違いがあったということになる。

【表1】2022年9月6日までの要件
日本米国ドイツ
ワクチン接種証明書必須必須
出国前72時間以内の検査必須
【表2】2022年9月7日以降の要件
日本米国ドイツ
ワクチン接種証明書(3回)必須必須
出国前72時間以内の検査

 ただしこのルールは日本人が入国する場合の要件。日本国籍以外の入国に関しては、ツアーでない個人観光客は(コロナ前にビザ免除の対象であった国でも)入国できないし、ツアーであっても1日の入国者数上限は5万人とまだまだ厳しい。旅行業の復活のためにも、こうした制限が早期になくなることを期待したいところだ(関連記事「政府、9月7日から入国者数の上限を5万人に引き上げ~添乗員を伴わないパッケージツアーによる入国も可能に」)。

米国では搭乗前に必要書類をデジタル登録。マスクは州により対応が異なる

 先に述べたとおり、今回は欧米の2つの国(米国とドイツ)に渡航したので、入国時に求められたそれぞれのプロセスやそのときに感じた現地の雰囲気などを説明しておきたい。あくまで筆者自身の体験談であり、地域により異なる可能性があることをお断わりしておきたい。

米国ではテキサス州オースティンに滞在

 まず米国だが、今回はテキサス州オースティンと、カリフォルニア州ロサンゼルス空港(LAX)周辺に滞在した。1週間で2度アメリカに入国したのだが、最初はJAL便で、次はデルタ便名のKLM便を利用した。

 前者(One Worldアライアンスのエアライン)には「VeriFLY」、後者(Sky Teamのエアライン)には「FlyReady」というサービスないしアプリが用意されており、入国に必要な宣誓書(ワクチン接種を行なっているということを米国政府に対して宣誓する書類)、入国者の連絡先情報、そしてワクチン接種証明書を登録し、デジタル的に提出することができる。

 これは日本政府が帰国者に用意している「MySOS」や「ファストトラック」に値する機能が、航空会社のアライアンス別に用意されていると考えればわかりやすいだろう。そうした「VeriFLY」や「FlyReady」で書類や宣誓の電子申告が終わっていれば、何の問題もなく飛行機に乗せてもらえる仕組みになっている。それが終わっていないとそもそも飛行機に乗ることができないのでご注意を(終えていない場合は空港で書類によるチェックを受ける必要がある)。

 米国に入国する制限はこれだけで、あとは通常の入国方法と一緒だ。有効なビザを持っていない人は、渡航前にESTAを取得してビザ免除プログラムに従って入国する。入国審査でおなじみの「米国に何をしに来ましたか?」などの係官の質問に答え、問題なければ入国させてもらえるというプロセスだ。

ホテル内で飼われていたバッファロー

 ちなみに、テキサス州では街なかでマスクをしている人をほとんど見かけず、空港でもマスクの着用は求められていない。すでに誰もコロナのことを気にしている雰囲気ではないように思えた。しかし若干の地域差はあって、カリフォルニア州では空港や建物のなかではマスク着用が義務付けられており、テキサス州よりもコロナに対してやや敏感なのだなと感じた。

欧州では経由地により条件が異なる。必要な書類は事前に印刷を

 次に筆者は米国からドイツへと移動。そのフライトに乗るとき、「オランダで入国する際に必要な書類が足りない」と指摘され、危うく搭乗拒否になりかける経験をした。

 というのも、今回はドイツが最終目的地なのだが、欧州への入国は乗り継ぎ地であるオランダのアムステルダム空港で行なうため、オランダの入国条件が適用される。エアライン側の説明によれば、その必要書類が1つ足りないというのだ。

ニューヨークで乗り換えて一路アムステルダムへ

 EUに加盟している国家の大多数やスイスなどは「シェンゲン協定」という協定を結んでおり、それぞれの国境における入国審査などを廃止し、それぞれの国家でパスポートなしに移動できるようにしている。何がメリットかというと、たとえばドイツの会社に勤めながらスイスに住んで毎日ドイツに通うなど、人やモノの動きを国境を越えて活性化できるということ。

 このためシェンゲン協定に加盟していない国の渡航者であっても、一度入国できればあとは加盟国間をどこへでも移動できる。それは米国に一度に入国してしまえばどこの州へも移動できるのと同じ感覚だ。今回の場合オランダのアムステルダム空港で入国し、その後は国内線扱いのフライトでドイツまで移動するという流れになる。

 したがって最終目的地がドイツであっても、入国時はオランダ政府が決めた条件が求められる。ドイツではワクチン接種証明書とPCR検査の陰性証明書が不要でも、オランダではワクチン接種証明書とオランダ政府のWebサイトからダウンロードして印刷して記入する「宣誓書」(私はワクチンを接種しましたということを宣誓する書類)をエアラインに見せることが必要になるというのだ。

 ワクチン接種証明書に関しては、日本の「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」で発行できるJPGファイル(後述)をあらかじめ印刷して持参していたので事なきを得たが、宣誓書は印刷しておらず、正直かなり困ってしまった(日本のコンビニのように簡単にプリントできるような施設はアメリカの空港ではあまり見かけないからだ)。

 しかし、結局その日は乗り継ぐはずだった便がディレイしてしまい翌朝のフライトに振り替えられたため、その夜に泊まった空港近くのホテルで印刷することができた(ただ、せっかくそうして作成した書類は、チェックイン時に見せる必要はあったのだが、オランダ入国時に提出を求められることはなかった)。

 こうしたトラブルを避けるためにも、シェンゲン協定加盟国へ旅行する場合には、経由地での入国条件が課されるということを忘れないよう徹底的に調べ、“必要な書類はともかく事前に印刷して持って行くこと”、これが大事だと思う。

 エアラインによってはデジタル書類は不可で、紙での提示を求めてくるところも少なくないため、念には念を入れて印刷して紙で持って行くというのが筆者のお勧めだ。

ベルリン中央駅(Berlin Hauptbahnhof)の様子。多くの人が電車を降りるとすぐにマスクを外していたのが印象的だった
ベルリン美食の定番であるカリーブルスト。「Curry36」はドイツで有名なカリーブルストのチェーン店だ

 ドイツの街なかでは、米国と同様にマスクをしている人をほとんど見かけず、ソーシャルディスタンスの取り方などを見ていてもあまり気にしている雰囲気はなかった。

 唯一マスク着用を求められたのは、ベルリン市の列車(日本でいえば山手線や京浜東北線のような都市鉄道のSバーンと都市地下鉄のUバーン)に乗ったとき。一応、FFP2という欧州の安全規格に準拠したマスク着用が必須となっているのだが、筆者の見る限りそれでも装着率は半分ぐらい……。

 ドイツへは「IFA」という展示会の取材で赴いた。その会場でもマスク着用は求められておらず、ソーシャルディスタンスをとってコロナに対応するということは鉄道を除いてすでに過去の話になっているように感じられた。

 なお展示会の詳細レポートについては、PC WatchのIFA 2022 関連記事(9月2日~7日)からご覧いただきたい。

ドイツで開かれた展示会「IFA」の取材へ。会場ではすでにかつての賑わいが戻っていた

ファストトラックでは「出国前72時間以内の検査証明書」を登録しなくても青表示に

出国前72時間以内の検査証明書を登録していなくても「青」になっていることに注目

 そんなこんなでドイツから再び米国へ(チケットが日米往復と欧州往復に分かれていたためこうしたルートに)。1日をロサンゼルスにある空港近くのホテルで過ごしたのち9月6日に米国を出発、9月7日夕方に日本へ着くフライトで帰国した。

 フライトの数日前、帰国のために必要な「MySOSアプリ」から「ファストトラック」の登録を行なった。ファストトラックでは、以下4つの登録を行なうことができる。

〈1〉質問票WEB
〈2〉誓約書
〈3〉ワクチン接種証明書
〈4〉出国前72時間以内の検査証明書

 このうち〈1〉では、自分の情報(パスポート番号、フライト番号、座席)などの入力を。〈2〉では日本政府が定める感染拡大防止のガイドラインを守ることに同意する。画面上に表示される指示に従って内容を記入し、「同意する」などを選択する。

日本政府が公式に提供する「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」から海外用の証明書(詳細を表示)を開く。すると下部に「この証明書を画像として保存」というボタンがある。これを押すと端末(iPhoneであれば写真ライブラリ)に保存される

〈3〉はワクチン接種証明書のアップロード。紙の証明書を持っていればそれをスマホカメラで撮影すればよいが、日本政府が公式に提供する「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」(要事前登録)の画面上でしか証明書を持っていない場合には、証明書の画像データ(JPEGファイル形式)としてダウンロードし、これをファストトラックにアップロードすればよい。

 筆者の知る限りこれが最もスマートな証明書のアップロード方法になるので、海外に行く機会があればぜひその方法をお試しいただきたい。

9月7日午前0時(日本時間)になる前の「MySOSアプリ」や「ファストトラック」の色。出国前72時間以内の検査証明書を登録していないので「黄」になっている

 そして以前までなら〈4〉の「出国時72時間以内の検査証明書」をアップロードする、あるいは紙の証明書を写真を撮ってアップロードするという手順に入るところだが、検疫措置の緩和によりこれが不要となった。

 新ルールは9月7日午前0時(日本時間)の入国から適用のため、システムの切り替えもその時間以降に行なわれたようだ。そのため筆者の「MySOS」および「ファストトラック」も、午前0時を越えるまでは“ワクチン接種証明まで終わっている”という意味を表わす「黄」だった。0時を越えたタイミングでもう一度確認してリロードしてみると表示は「青」になり、「入国への検疫準備完了」という表示に。今後は3回以上のワクチン接種の証明書を登録していれば、帰国前の検査で陰性証明せずとも「青」になるというプロセスだ。

 あとは、飛行機のチェックイン時にこれをエアラインの係員に見せるだけで問題なく飛行機に搭乗できた。今回は「ファストトラック」の提示を求められたので、空港でスマホからインターネットにアクセスする手段を何か確保しておく必要もあるだろう。

若干の時差はあったものの、日本時間の9月7日午前0時(米国時間の9月6日午前8時)以降は「出国前72時間以内の検査証明書」を登録せずともこのような「青」表示に切り替わった

2022年1月には8時間、3月には1時間半かかった入国が、9月7日にはわずか10分に大幅短縮

飛行機を降りたところでもらった青いカード。「MySOS」が「青」になっていることを示す紙をもらうことができる

 筆者が乗った便が羽田空港に到着したのは17時30分ころ。着陸してから「しばらく待機して欲しい」というアナウンスが機内に流され、皆が自席で待つことになった。だいたい5分くらいしたところで、「日本に入国する乗客から降りてよい」というアナウンスがあり、もちろん日本帰国組の筆者もここで降りることができた。

 ボーディングブリッジを通過してゲートに到着すると、係官の人が青いカードを配っている。これは「MySOS」の表示が「青」になっていることを見せるともらえるカードで、その先にある青とそれ以外(黄と赤)が別れるポイントで、青い列に並ぶために必要となる。

 カードを持って入国審査場の手前に来ると、そこに設置されている検疫のための臨時ブースへ並ぶ。6月に海外から帰国した際には検疫の手続きに延々と歩かされたが、今回それはまったくなかった(関連記事「水際対策緩和で、日本への帰国はどう変わった? 1月帰国時の8時間から1時間半へ大幅短縮!」)。

 筆者がそこに着いたときほかの便の処理はもう終わっていたのか、同便だった人たちが並んでいる程度ですぐに受付してもらえた。やったことは2つ。1つはパスポートを係官の人に渡すことで、もう1つはファストトラックで表示される「QRコード」をリーダーに読み込ませることだ。

「この用紙を入国審査官にお見せください」と「健康カード」の2枚が渡される。なお検疫、入国審査場、税関はもちろん撮影禁止なので、この写真は税関を出て到着ロビーに出てから撮影した

 それですぐ確認が済んだのか、2つの書類をもらって終了となった。その書類とは1枚が「この用紙を入国審査官にお見せください」と書かれた青い用紙で、これを見せないと入国審査のところに進ませてもらえない。もう1枚は健康カード(厚生労働省からのお知らせなどが書かれた紙)。これまでもコロナ以降は入国時に渡されていた書類だ。

 その2枚をもらってゲートにいる係の人に見せると、羽田空港ではおなじみの顔認証ゲートを通過し、入国となる。今回は預け入れ手荷物がなかったため、そのまま税関申告のレーンに向かう。「税関アプリ」上であらかじめ済ませておいた関税申告のQRコードをかざし、問題がなければそれで税関検査も終了。晴れて空港の到着ロビーにたどり着く。

 飛行機を降りてから到着ロビーまでにかかった時間は約10分程度、飛行機が着陸した時間から数えても約15分だった。もちろん同時に到着したフライトがなかったために、検疫検査も入国審査も税関も並ばずに済んだことは大きかったと思う。

 それでも1月に海外から帰国したときは隔離所まで8時間かかったし、3月に隔離が廃止されてすぐの時期に帰国したときには抗原検査の終了待ちなどで1時間半かかった。それを考えれば、この9月7日からの規制緩和によって圧倒的に時間短縮がされたといえるだろう(関連記事「米国は入国15分、日本は待機所まで8時間。落差に驚いたコロナ禍の日米入国事情」)。

日本への帰国は圧倒的にハードルが下がった

 政府が定める有効なワクチン接種を3回終えていることが条件とはなるが、「出国前72時間以内の検査証明書」の提示がなくなったことで、帰国時の大きなハードルは一挙に下がったといえる。

 この検査証明書を得るために、100ドル(約1万4000円)~数100ドル(数万円)単位のコストがかかっていたこと、そして検査のために遠方のクリニックまで行かなければならないという時間や手間が取っ払われたことで、日本人が海外に行っても帰国しやすくなったことは間違いない。

 中国や台湾、香港など、未だ入国時の隔離などを行なっている地域に渡航するのは依然として難しいが、欧米や東南アジアなどこれまでの制限を撤廃している国は増えつつある。年末には海外で過ごしてみよう、海外にいるビジネスパートナーと対面でミーティングしようと、具体的な渡航計画を立てられる段階に近づいているのではないだろうか。

笠原一輝