旅レポ
りんご料理と雪景色、「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」で冬をのんびり過ごす
2019年2月19日 00:00
夏の期間は深い緑に覆われ、秋には黄葉で多くの人々を魅了する青森県・奥入瀬渓流。十和田湖を水源とし約14kmの範囲が「奥入瀬渓流」と呼ばれ、遊歩道も整備され散策しリフレッシュするのにぴったり。そんな同エリアも冬になると豪雪地帯となり一面の雪景色に。十和田八幡平国立公園は雪化粧をし、静かな空間へとさま変わりする。
この十和田八幡平国立公園の奥入瀬渓流河畔に建つ唯一のホテルが「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」だ。アクセスは、JRの東北新幹線・八戸駅から無料送迎バスで片道約1時間30分。三沢空港利用の場合は1時間40分の場所に位置する。
今回の旅は最寄り駅まで新幹線で向かい、駅からはバスで移動。だんだんと雪深くなる景色を楽しみながらホテルへと向かった。
冬の営業は2017年に続き2期目。雪深いからこその静けさをじっくり楽しむ
まずは苔をイメージしたデコレーションが愛らしい西館カウンターでチェックイン。目の前のラウンジに飾られた全長約10m、重さ7トンのアルミ合金製の岡本太郎氏の遺作「河神」が出迎えてくれた。水の流れが岩にあたり飛沫が妖精になる様子を表わしているそうだ。7体の妖精うち1体が女性で岡本敏子氏と言われている。
水のようにうねる造形美が堪能でき、作品の下の暖炉でハンノキが静かに燃え、周囲を温めている姿にうっとり。パブリックスペースとなっており、夜にはアクティビティ「森の学校」が開催される。フリードリンクも用意され、窓辺から雪が舞い降りる姿を見つめながらまったりするなどの贅沢な時間が過ごせる。
続いては渓流の地形に沿って作られた廊下を包み東館ラウンジ「森の神話」へ。こちらでは同じく岡本太郎氏作の「森の神話」を眺めながらティータイムやバータイムを過ごすことができる。高さ約8.5m、重さ約5トンのブロンズ製で鳥やきのこ、木々と妖精らが踊っている。窓外の景色に溶け込む静けさも感じる作品で、暖炉ではパチパチと音を立てながら薪が燃えゆったりとした時間に満たされる。
今回はティータイムに3月までの提供で1日10食限定の「幸福りんごのミルフィーユ」(1300円)をオーダー。注文を受けてから丁寧にりんご(ふじ)を薄くスライス。サクッと香ばしいバニラの香りがポイントのお手製のパイとカスタード&ホイップで仕上げた濃厚クリームをサンド。シャキシャキ&サクッで2つの食感が楽しめるスイーツだ。上品な甘さでさっぱり味。お好みで周囲の蜂蜜&ミントのソースを付けてもOK。トップのルパーブとりんごチップスもよいアクセントになっていた。
一緒にオーダーしたのは八甲田山の湧き水を使った「湧水珈琲」(740円)。口当たりがまろやかな湧水ですっきりと仕上げた1杯。お茶請け「苔涼」も付く。くるみをメレンゲで包み抹茶をまぶし苔を表現している。
バータイムは昼間とはまた異なるイメージに。暖炉の炎がメインとなり、自宅のようなくつろぎの空間へと変化。ここではオススメの「苔カクテル」(980円)をチョイス。桜シロップと抹茶リキュールにグレープフルーツジュースとソーダを組み合わせた和風な味わいがポイント。ほんのり桜の香りと抹茶味でまったりするのにぴったり。
「青森りんごキッチン」で青森の味を知る。名産品をたっぷり作った贅沢メニューに舌鼓
青森のりんごの魅力を思い切り味わいたいのならば「青森りんごキッチン」へ。日本一のりんご生産量を誇る青森だからこそのメニューが盛りだくさんだ。もちろんりんごメニューとともに青森ならではのグルメも用意している。まずエントランスで驚くのは津軽びいどろ製のオリジナルのりんごオブジェ。レストラン全体で約620個ほど実っており、インパクトとかわいさは抜群。手作りのため1つ1つ色や形が異なる1点もの。漁業用の浮き玉作り技術を応用している。
「ウェルカムりんごセラー」には約1800個もの青森県産りんごが並んでいる。りんごから発生するエチレンガスをカットし、鮮度を保つ工夫がなされた貯蔵庫で1年中美味しいりんごが食べられるように保存。こちらのりんごたちが満を持してキッチンへと運ばれていく。現在は「ふじ」が並べられ、静かに出番を待っていた。
エントランスを抜けるとビュッフェ会場へ到着。輪切りりんごをイメージしたオリジナルの「BUNACO」ランプとズラリと並んだメニューで思わず笑顔になってしまう。会場にはビュッフェ台5卓とライブキッチンの2エリアがあり、できたてを味わうもよし、自分好みの1皿を生み出すのもよしと、ディナーを思う存分に楽しめる。
今回、料理マネージャーの田中直人シェフに話を伺った。ディナーは常に約86種類ほど毎日用意。「青森りんごキッチン」のメニューのこだわりついては、「ホテル全体の魅力と同様に土地のものを使うことを意識しています。青森県産の食材を随所に入れ、青森らしい料理に変化球とを組み合わせています。『青森りんごキッチン』の名前のとおり、りんごをメインに据え、冷製から温製にいたるまで揃えておりますが、できる限り地のものにこだわりながらバラエティ豊かに。そしてホテルらしい上質なメニューを味わっていただけるよう心掛けております」と答えてくれた。
また、お勧めメニューに関しては、「ご当地の名物料理をライブキッチンなどで提供しています。特に『牛バラ焼き』は通常牛バラとたまねぎを甘辛いたれで煮詰めるようにして作りますが、プラスして子大豆もやしとレタスでシャキシャキした食感をプラスしオリジナルに。『帆立の貝焼』は殻ごと焼き上げ、ホテル特製のフレッシュクリームとバターで仕上げています。またともに西洋ワサビを添えて味わう『ローストビーフ』もございます。デザートの『あつあつアップルパイ』はソフトクリームをご自身で落として味わいます。お勧めの食べ方はアップルパイに少しアイスを混ぜて味わうスタイルです。ぜひすべてのお料理をお楽しみいただけたら」とのことだ。
また、ビュッフェ台の並び順に関しては「実は味わっていただきたい順番に並んでいます。まず『生ハムとりんごのサラダ』からスタートしていただけたら光栄です。生ハムの塩気とりんごの甘みのほどよく調和されており、ヴィネグレットを使ったサラダと一緒にビュッフェのスタートにぴったりです」と話してくれた。
なお、上記のオススメとともに外せないのが青森ならではの素材を使ったメニューだ。青森県産桜姫鷄を使った「チキンマスタード」にB級グルメでナンバーワンを獲得した「せんべい汁」。さらに日本一の漁獲量を誇るヤリイカを使った「いかすみのパエリア」に「シーフードドリア」。またご飯ものとして「帆立の炊き込みご飯」にお供に山菜を使った「みずの水煮」や定番の「ねぶた漬け」などまさに青森づくしとなっている。
なお、レストランを出るときにはりんごキャンディを1粒プレゼント。ちょっとした心遣いにほっこり。
朝食ではディナーの品数を超える約114種類を用意。シェフのオススメはライブキッチンの「帆立昆布の朝ラーメン」。日替わりの「ふわふわオムレツ」。そして「りんごのパンケーキ」に「しぼりたてりんごジュース」。
翌日朝食ビュッフェへと足を運ぶとオープン時間直後ながら会場は大にぎわい。オススメの「しぼりたてりんごジュース」はこの日は「サンふじ」を使用。ふわっと仕上げられた「りんごのパンケーキ」はりんごのコンポートやフレッシュクリームとの相性抜群。そして朝ラーこと「帆立昆布の朝ラーメン」はじんわりと帆立貝柱の出汁が体に染み渡りまさに絶品な1杯。「鮪のチーズオムレツ」もチーズと鮪の相性のよさを実感。どのメニューも小ぶりで完食できるサイズのため次々とメニューが味わえる部分も二重丸。ほかにもりんごを使ったジャムに美しいブレッドたちが並び朝から至福の時間が過ごせた。
雪景色を堪能できる間取りがうれしい。モダンで過ごしやすい客室での~んびり
ティータイム&ディナーを終えて、いよいよ客室へ。今回宿泊したのは「モダンルーム」。44m 2 の客室には、青森産の木材を使ったベッドボードが特徴の寝心地のよいベッドに、窓辺に向いたソファを用意。ベッドからもソファからも雪景色が堪能できる間取りとなっている。洋室ながら和の要素もたっぷり。靴を脱いでリラックスできるのがうれしい。
玄関にはスリッパや館内用のサンダルなどを複数用意。ミニ冷蔵庫内にはミネラルウォーターとりんごジュースが1本ずつサービスで冷やされていた。コーヒーと緑茶、ケトルも用意。窓際のサイドテーブルにはお茶菓子も。アクティビティで作ったオリジナルの苔玉を飾るのも楽しい。
44インチの液晶テレビ横には花が生けられ、加湿空気清浄機を配置。クローゼットの中にはセキュリティボックスと作務衣とはんてんが用意され、温泉への行き帰りや館内で着用できるようになっている。なお、温泉へ向かうための湯カゴにはタオルと手ぬぐいがセットで入っていた。
洗面所のアメニティ類はブラシにヘアバンド、歯ブラシセットとコットン&綿棒。そしてシェービングセット。POLA(ポーラ)製のフォームソープに化粧水や乳液が並ぶ。バスルームはユニットバス風。トイレは温水洗浄便座付き。
今回「渓流ツインルーム 半露天風呂付」も見学。「エアウィーヴ」をマットレスパットに採用したベッドが並び、「渓流ごろんとチェア」が窓辺に配置され、足を伸ばしながら雪景色を眺めることができる。もちろん半露天風呂に入りながら降り積もる雪を見てもよい。
インフィニティ露天風呂で雪景色のなかへ。見事な「氷瀑」とともに心と体を癒す
冬の奥入瀬渓流の魅力といえばダイナミックな「氷瀑」。岩壁からにじみ出た水がゆっくりと固まり見事な氷の柱となったり、寒さで凍った滝を指す名称だが、「奥入瀬渓流ホテル」内の「渓流露天風呂」で再現しており、湯に浸かりながら眺めることができるのだ。日本初の人口の氷瀑が楽しめる冬限定の「氷瀑の湯」は3月30日まで実施。現在幻想的なブルーが楽しめる氷がゆっくり成長中。朝6時から24時までいつでも見ることができるのもありがたい。
「奥入瀬渓流ホテル」の温泉は八甲田山に近い猿倉温泉が源泉。低張性中性高温泉で、適応症に関しては筋肉などの慢性的な痛みや皮膚乾燥症、冷え性、うつ状態、疲労回復など。
実際に雪の舞うなか「渓流露天風呂」の「氷瀑の湯」を体験したが、ブルーに浮かび上がる幻想的な姿はいつまでも見ていられるほど。雪で音が吸収されるため驚くほど静かな世界で氷や暗闇に浮かび上がる木々を眺める体験はここだけのものだと感じた。