旅レポ

ニュージーランドの北島で自然満喫ドライブ旅(その5)

ヨットで楽しむマオリ伝統彫刻。そして定番のホビトン・ムービーセットへ

ニュージーランド・ドライブ旅のレポートも今回が最終回。レイク・タウポでヨットクルーズ

 ニュージーランド北島のドライブ旅をお伝えしてきたこのレポートも今回が最終回。前回紹介したヒルトン・レイク・タウポを出発して、観光地を巡りながらオークランド空港を目指す。まずは、レイク・タウポ(Lake Taupo)でヨットに乗船だ。

 レイク・タウポは前回少し触れたとおり、火山の噴火でできたカルデラ湖で、ニュージーランド最大の面積を持つ。天気がよければ青い湖からトンガリロ国立公園の火山の眺望を楽しめるようなのだが、この日はあいにくの空模様。そんななかヨットに乗って湖へ繰り出すことになるが、雨は降っておらず、地上ではそれほど風も強くなかったので、目的の達成に大きな影響はなさそうだ

 今回乗船したヨットは、セイル・バーバリー(Sail Barbary)が提供する「マオリ・ロック・カービングス・クルーズ(Maori Rock Carvings Cruise)」というもの。この「マオリ・ロック・カービングス」とは、伝統的なマオリ彫刻を学んだ彫刻家が、レイク・タウポの岸壁に掘ったという巨大なマオリ彫刻のこと。これは地上から見ることができず、湖上からしか見られないことから、船やヨット、カヤックなどでアプローチする観賞クルーズをいくつかの会社が提供している。セイル・バーバリーもその1社というわけだ。

 同社では「バーバリー」「バーバリー2」という2隻のヨットを所有し、3名の船長で運航している。今回はケリー・メイソン(Kerry Mason)船長が舵をとっての運航だった。クルーズ時間は2時間半ほどで、料金は大人49ニュージーランドドル(約3920円、1ニュージーランドドル=約80円換算)となっている。

 ヨットに15名ほどが乗り込み、安全に関する説明が行なわれたあと離岸。じわじわと湖へ繰り出していく。ちなみに、このハーバーはレイク・タウポから流れる川岸にあるのだが、この川こそ、(その2)で紹介したハミルトン市内を流れていたワイカト川である。ずいぶん迂回したが、数日前に見た川の源流を見ていると思うと感慨深い。

 訪れたのが秋だったので色付いた葉がアクセントになったタウポの街は美しく、冬の香りが漂い始めた空気も心地よい(ただし2時間半の航行の後半は、心地よさよりも寒さの方が上まわったが)。

レイク・タウポのハーバー。予約センターでは、マオリ・ロック・カービングスのTシャツも販売していた
こちらが今回乗船する「バーバリー」号
こちらは同社のもう1隻のヨット「バーバリー2」号
バーバリー号の船上。乗客は甲板上のベンチ状シートに座る
この日の船長、ケリー・メイソンさん
いざ出港。ワイカト川からレイク・タウポへ進入する。色付いた木々が周囲を彩っていた。季節によってさまざまな表情を楽しめそうだ
船内。甲板上のシートのほかに、狭いながら船内の客室があり、トイレも備えている。吹きさらしのヨット上はそれなりに冷えるが、温かいドリンク1杯が料金に含まれるので身も心も落ち着ける
湖上には遊覧船や釣り船などさまざまな船
水上機の姿も。航行中にヨットのすぐ脇で飛び立ち大興奮。遊覧飛行は10分109ニュージーランドドル(約8720円)から。トンガリロ国立公園の方へ向かう遊覧飛行なども可能だという

 速度は巡航で5~6ノット(約9~11km/h)、最大でも9ノット(約16.5km/h)程度とのことで、かなりゆっくり。ときどきカモが近くに寄ってきたりする以外はあまり変化がなく、まったりとした時間が流れる。この雰囲気は船旅ならではの魅力だ。

 そして、先行していた他社船待ちが少しあってマオリ・ロック・カービングの目の前へ。やや入り組んだ崖に掘られたその彫刻は、突然現われた古代の遺跡のような威容を放っている。聞くと火山の神を描いたものだそうだ。

 作られたのは20世紀後半だが、古来伝統のマオリの技術で作られたことには高い価値があると思うし、伝統を受け継いでいく意思を形にしているようにも感じられる。ちなみに、もう少し軽い気持ちでレイク・タウポを船で航行するアクティビティとしても楽しめるので、同地を訪れたならばお勧めしたいプランだ。

セイル・バーバリー(Sail Barbary)

所在地:Berth 10, Redoubt Street, Taupo City
Webサイト:Sail Barbary(英文)

スマホのGPSでトラッキングした実際の航行ルート
せり出した崖を回り込んで目的地へ。先客がいる場合は順番を待つ
そして「マオリ・ロック・カービングス」へ。このような複雑な岩への彫刻を、古来伝統の技術で製作したということに敬意を覚える

写真映えする風景が楽しい「ホビトン・ムービーセット」へ

 タウポの街を離れてからは一気に北上。「ホビトン・ムービーセット(Hobbiton Movie Set)」へ向かった。ホビトン・ムービーセットについてはご存じの方も多いと思うが、映画「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ、「ホビット」シリーズのロケ地として使われたセットを、一般に見学できるようにしたもの。

 地理上はワイカト地方、ハミルトンの南東に位置しており、例えば(その2)で紹介したような、ハミルトン観光やワイトモの土ボタル鑑賞とセットでプランが組まれることが多いようだ。

ホビトン・ムービーセット
Shire's Restという受付施設。ここを発着地とするツアーは9時~15時30分発で30分ごとに出発(時期により夕方以降のツアーもある)。このほかに近くのマタマタの街や、少し離れたロトルアからのツアーも提供している
なかにはカフェやショップなど。ショップはロード・オブ・ザ・リングやホビットに関するグッズが多数

 そのホビトン・ムービーセットについてだが、訪れる前の心境を正直に話すと、個人的にはそれほど心躍るスポットではなかった。ロード・オブ・ザ・リングの1作目と2作目は映画館で観たが、当然10数年前の話でそれ以降は見ていないことから、“中つ国”の雰囲気が記憶にある程度でディテールまでは覚えていなかったからだ。すでにトラベル Watchでは(思い入れいっぱいの)ホビトン・ムービーセットのレポート記事もあり、「あの記事へのリンクだけ貼っておけばOKかな……」などと不精なことを考えていた。映画をよく知る読者諸氏は、リンク先をぜひご覧いただきたい。

 そんな気分で訪問した記者であるが、実際に訪れてみると、意外に楽しい。見学は、受付の建物から現地まではバスで移動し、バスに同乗した人たちが一つのグループとなって移動する。グループには1名のガイドさんが付くのだが、そのガイドさんがいろいろと説明をしてくれる。今回、記者が参加したグループのガイドさんは、どうやらロード・オブ・ザ・リング&ホビットの大ファンのようで説明がマニアック。記者はもちろん細かいエピソードが浮かばないのでなんとなく「へぇ~」程度の感想なのだが、多くの参加者はうんうんと反応しており、そのワイワイガヤガヤ感を見ていると自分も楽しい気分になってくる。

 そしてなにより、目の前に広がる光景や、それぞれのセットのオブジェクトのすべてがフォトジェニックで、どんどん写真を撮りたくなる。団体行動を乱さないようにしないといけないので、いろんなアングルを試している時間はないのだが、ちょっと立ち止まってはシャッターを切り、次の場所でもまたシャッターを切り……の繰り返し。仮にカメラというアイテムがなくても、この現実の自然と異世界が交わったなんとも不思議な世界観に釘付けになったと思う。

 また、最後にドリンク1杯が付くのもうれしいところ。ジンジャービールというノンアルコールドリンクはおなじみの飲み物で、この世界観のなかで飲むのはよい思い出になるだろう。ファンの皆さんの興奮には敵わないが、そうでなくても楽しめ、もう1~2度行って、また別の写真を撮ってみたいと思ったりしている。

ホビトン・ムービーセット(Hobbiton Movie Set)

所在地:501 Buckland Road, Hinuera, Matamata
Webサイト:Hobbiton Movie Set Tour(英文)

チケット指定の出発時刻になったらバスに乗って移動。素敵なワイディングロードを通って、5分とかからずにセットへ行ける
ホビトン・ムービーセットへ。ガイドさんの説明を聞きつつ、ホビットたちの家を巡っていく
とにかく撮りまくった写真の一部。フォトジェニックなスポットばかりで、途中から何も考えずひたすら写真を撮りまくっていた感じ
こちらの雰囲気満点のパブで、ツアーに含まれるドリンク、ジンジャービールをいただいた。この写真を見ると、その味が舌によみがえってくる

旅の最後の1泊は空港ホテル「ノボテル・オークランド・エアポート」

 このツアーの観光スポットなどへの訪問はホビット・ムービーセットが最後。このあとは、翌日の帰国フライトに備えて宿へ向かう。向かったのは、オークランド空港の近くにある「ノボテル・オークランド・エアポート(Novotel Auckland Airport)」だ。

 空港の近く……と書いたが、“目の前”といってよい場所で、国際線ターミナルの到着ロビーから1~2分も歩けば到着する。成田行きのNZ99便は出発が09時55分なので、オークランド市内に滞在しても十分に間に合うスケジュールだが、目の前のホテルであればより安心感が高まるというものである。

 しかも、このホテルは客室設備もよかった。ラグジュアリーに過ごすようなタイプのホテルではないが、ビジネス向きな宿泊特化型ホテルに必要なものは一通り揃ってる印象。ホテルにいろいろなものが備わっていれば、自分の荷物をいち早く収納して出発準備を整えることができる点で、とてもありがたい。フライト前に余計な心配から解放され、リラックスした気持ちで旅の思い出にひたれるのではないだろうか。

ノボテル・オークランド・エアポート(Novotel Auckland Airport)

所在地:Auckland Airport(International), Auckland Airport
Webサイト:Novotel Auckland Airport(英文)

ノボテル・オークランド・エアポート(Novotel Auckland Airport)
ロビー
ホテル側から空港を見る。この距離である
宿泊したスーペリアルームの客室。ベッドはキングサイズ
ワーキングデスクやソファ
ユニバーサルAC変換アダプタや、備え付けテレビのビデオ入力端子、ベッドサイドのコンセントなど、宿泊特化型ホテルのトレンドを押さえた設備が魅力
バスルームなど。バスタブがあるのも日本人にはうれしいところ

 以上のとおり、4泊5日(最終日はフライトだけなので観光は実質4日間)をかけ、オークランドを起点にニュージーランド北島のスポットをドライブしてきた。これまでにも何度か書いているが、今回は記者自身は運転していないものの、左側通行/右ハンドルという点は日本と同じ交通ルールということもあって、わりと抵抗なくクルマ旅を楽しめる土地ではないかと思う。

 移動時間は長くなりがちなので、飛行機移動に比べて観光スポットなどで滞在できる時間が少なめになるのは仕方ないが、ふらりと足を止めて新たな発見をしたり、時間をかけなくても移動中にいろいろな街の風景を楽しめたりと、クルマならではの魅力もある。

 特に自然の魅力が人気のニュージーランドでは、クルマで流しているだけでも土地の美しさを満喫できる。こんな旅もいかがだろうか。

本記事での移動ルートは280kmちょっと。ほとんど移動だが、一気に北上してオークランド空港へ到着。翌日朝に帰国の途に就いた

編集部:多和田新也