旅レポ

毎日が感動でいっぱい! アウトドア天国ニュージーランドの旅(その2)

ホビットの世界へようこそ編

 映画「ロード・オブ・ザ・リング」3部作、「ホビット」3部作のロケが行なわれたニュージーランド。6作すべてのメガホンをとったピーター・ジャクソン監督がニュージーランド人だというのはご存知でしたか? 何を隠そう私ゆきぴゅーはこの映画シリーズの大ファンで、今回のツアー行程表に「ホビトン・ムービーセット」の文字を見たときは飛び上がって喜んでしまったほど。今思えば、恐怖のアクティビティ“スカイウォーク”は、翌日ホビトンに行けると分かっていたので頑張れたのだと思うのです。

映画の世界そのままのホビトン・ムービーセット。この風景を目の前にしたら思わず涙が!

 ニュージーランド航空の機内エンタテイメントには「ロード・オブ・ザ・リング」と「ホビット」の全6作がラインアップされていました。もちろんファンとしては何度も観ているのですが、憧れの“中つ国”に行く気分を高めるために「ホビット」2作を鑑賞。そのおかげでかな~り寝不足での到着となってしまいました。

日本語吹き替え版が用意されていたのは「ホビット」で、「ロード・オブ・ザ・リング」は英語バージョンのみでした

“ホビトン”とはホビット村のこと

 ホビトン・ムービーセットがあるのは北島ワイカト地方にあるマタマタという小さな街の郊外。オークランドからは南へ約160km、車で2時間ちょっとの場所です。ホビトンは「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビット」の主人公ビルボ・バギンズやフロド・バギンズの種族“ホビット”が暮らしている村のこと。身長90cm程と背丈が低いホビットたちは傾斜に掘った穴に住んでいるという設定です。そのホビット穴、このホビトン・ムービーセットには現在44個あるんですの。

このようなホビットの住居が44個あります。ただし中には入れず外観のみ

 ピーター・ジャクソン監督は今から18年前の1998年、ロード・オブ・ザ・リングを撮るにあたってニュージーランド中をヘリでまわりホビット村のロケ地を探しました。そしてついに頭に思い描いていた場所をマタマタに発見! しかしその土地はアレキサンダーさんという人の私有地(牧場)でした。そこで「あなたの土地で映画を撮りたいから少しの間だけ一部を貸してほしい」と交渉し、撮影が終わったら元に戻すという約束でホビット村造りがスタートしたのだそうです。時が経って2010年。映画「ホビット」の撮影のために新たにセットを再建。その際は前回使っていた樹脂素材ではなく、長く保存できる材質を使って作り直し今に至っています。

 ガイドさんの話によると、映画制作側が最初に交渉の電話をしたときアレキサンダーさんはラグビーの試合をテレビで観戦中でうわの空な返事だったんだとか。そのときはまさか近い将来、自分の土地に世界中から多くの映画ファンが訪れることになろうとは夢にも思わなかったでしょうね。

ニュージーランドらしく田舎道に控えめに現われる「ホビトン・ムービーセット・ツーリストファーム」の看板
映画ファンからすればここは“聖地”。今や世界各国からファンが訪れています
駐車場の隣にはカフェやグッズショップが。今回は時間がなくてショップ滞在時間はわずか5分(泣)

イブニングパーティーツアーに参加してきましたの

 今回参加した「イブニングパーティーツアー」は水曜日と土曜日の週2回のみ開催されている夕方16時からのツアーで、料金は大人190ドル(約1万4000円、1NZドル=約74円換算)。ガイドさんによるホビトン・ムービーセットのツアー料、パブでの1ドリンク、そしてディナー料金が含まれています。昼間とは違った夕暮れどきの美しい景色が見られる人気のツアーなので予約は必須のようですよ。

駐車場からは専用バスで1.5kmほど移動(ほんの2、3分)。現在もアレキサンダー家の私有地の一部なので、行けば誰でも“あの景色”を見られるわけではなくツアー参加者のみなのです
バスを降りるとこの看板が出迎えてくれます。心臓のドキドキは最高潮
「この景色、ファンなら分かりますね?」とガイドさん。こ、ここはもしかして!
このシーンの場所ですの!(似てなくてごめんなさい)

「ホビット」の1作目でビルボが右手に冒険の契約書を持って「I'm going on an adventure!」と叫びながら走ってくるシーンがまさにココ! 「ロード・オブ・ザ・リング」の1作目の冒頭では馬車に乗ったガンダルフとフロドがここを通ります。この石垣の道を抜けると目に飛び込んでくる景色はまさにホビットの世界そのもの! 映画ファンでなくても感動するステキな場所なのです。

映画のシーンが今、目の前に!!!
池には水鳥がいて遠くの牧草地には羊の姿も
その場に馴染みすぎていて違和感がまったくない小物。うなぎも食べるホビットはやっぱりグルメ
池の周りはきっと漁師のホビットのおうち
本当にこういう家があったらいいのに! と思うほどよくできています
一つだけ玄関の中に入れる住居がありました
こちらはハチミツ屋さんでしょうか

 冒険に出ると決めたビルボが大急ぎで駆け下りた斜面を、ツアーでは上がりながら進みます。しばらく歩くとホビット村を見渡せる丘の一番上にあるビルボやフロドの家の前に到着です。袋小路屋敷と呼ばれるこの家は数あるホビット穴のなかでも特に立派で、バギンズ家が位の高い家系だったことが想像できます。ちなみにフロドの親友サムはこのバギンズ家の庭師だったんですのよ。

ビルボとフロドの家。緑の扉も映画と同じ! フロドがこの郵便受けを開けるシーンがありました
ここがホビトン・ムービーセットのなかで一番人気の撮影スポット。玄関に掛かっている「No Admittance except party business」のサインも映画とまったく同じ
ほぼ同アングルでベンチにビルボが、歩道にガンダルフが立っているシーンがありました
たまたまドアが開いていますが中へは入れません。そして、もちろん中は映画のようには作られていません

 ピーター・ジャクソン監督がこの土地をロケ地に選んだのは3つの特徴が決め手だったそう。まず、1本の印象的な木があること、小さな湖があること、そして袋小路屋敷にぴったりの丘があること。真っ平らな土地ではなくある程度起伏のある丘陵地が理想だったようですが、この丘の上に立つとそれがよく分かりました。眼下に湖とシンボル的な大きな木、おまけに遥か遠くにはカイマイ山脈という山々の峰が見えて、360度どこにカメラを向けても人工物が入らない広大な自然。まさにここはホビット庄(シャイア)にあるホビトンそのものなのです。

 ちなみに私の好きなシーンの一つが、まさにこの場所。「ロード・オブ・ザ・リング」の冒頭でガンダルフとビルボが玄関先のベンチに座ってパイプをふかしながらホビット村を眺めるという場面です。湖の畔に立つ大きな木“パーティツリー”の下の広場で、ビルボの111歳のバースデーパーティーが盛大に行なわれました。ビルボが指輪をはめて姿を消すのもその場所です。シーンを思い出しながら歩くと感動もひとしお! 胸がいっぱいになって涙が出てきちゃいました。

“袋小路屋敷”のある丘からの風景
袋小路屋敷から再び坂を下っていくとサムの家があります
壮大な6部作のラストはこのサムの家の黄色いドアのシーンで幕を閉じます。その家の前に立っているなんて!
だんだん日が暮れてきました。この雰囲気もなかなかロマンチック
目指すはあの明かりのグリーン・ドラゴン。とってもいい雰囲気!

おまちかねのホビットディナー

 いよいよ楽しみにしていたグリーン・ドラゴンでのディナーパーティーの時間です。グリーン・ドラゴンというのはホビット村にあるという設定のパブのような酒場のことで「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」では旅から帰ってきたフロド、サム、メリー、ピピンの4人がここで帰郷を祝って静かに乾杯するシーンで登場します。そしてここで働いているロージーにサムが速攻アタックして……と映画の話は長くなるのでこのへんで。とにかく、内装が劇中のシーンとそっくりな雰囲気に作られているのでファンとしてはたまりません。ビールの酔いが回って、映画のなかなのか現実なのか、はたまた夢なのか分からなくなってしまいました。

ホビット憩いのパブ、グリーン・ドラゴンの外観
中はこんな感じ。大きさはホビット仕様ではなく人間仕様です
ツアー代金に含まれる1ドリンクを飲みながらパーティー会場の準備を待ちます
フリードリンクは樽サーバーのあるこちらのカウンターから
一番ホビットっぽいビールを!と言ったら注いでくれたのはトラディショナル・イングリッシュ・エールという黒ビール
フロドたちが飲んでいたカップと似ている!
壁はホビット掲示板。売りますとか求人とか
看板のフォントに注目。作品の世界感を大切にしているのが分かります

 お隣のダイニングルームでディナーの用意ができたようです。カーテンオープンの演出も「さぁ皆さんお待たせしました。今からホビットディナーです! ここを開けると皆さんの目の前には夢のような景色が飛び込んでくるはず! 今日は誰にカーテンを開けてもらおうかな。あっ、そこのガンダルフ!(※ガンダルフに似た背の高い男性がいた)君にその大役をお願いしたいんだけどいいかい?」という感じで盛り上げる演出をしてくれます。そしていよいよカーテンが開いて感動的なホビット料理が目の前に!

ご覧ください! この素晴らしいテーブルコーディネート
完璧なホビットの世界観の演出に脱帽。これが映像ではなく目の前にあるという奇跡に感無量!
食いしん坊で1日6食も食べることがあるというホビットらしい料理
そうそう、こうやって撮りたくなるんですのよね
色々な国の人達と一緒に食べるのも楽しい旅の思い出に
どれも美味しくてあちこちに手がのびます
これは通常メニュー。エールビールで煮込んだ牛肉パイ6ドル(約450円)など。美味しそう!

 木の切り株などで演出したテーブルコーディネートがとってもステキなディナー。食器もどっしりとした素朴な雰囲気のもので統一されていて、いかにもホビットが使いそうな感じでした。そしてお料理はたっぷりのサラダにチキンの丸焼き、グリル野菜、マッシュルーム、ベイクドポテト、豚肉の煮込み……etc。パンや青りんごやパプリカなどが無造作に机の上に置かれているところなどもいい感じ。美味しい料理をたっぷり時間をかけて食べることを大切にするホビット。あぁ毎日こんなことしてたら太りそうです。

 もうお腹いっぱい、なんにも食べられませんと思っていたら豪華なデザートプレートがっ! アップルクランブルやシフォンケーキ、チョコレートマフィンにパブロバ、そしてフルーツ。これが不思議なほどにまったく別腹で、私たちのテーブルに来た絶品パブロバは私はほぼ一人で平らげてしまいました。ホビットがお腹がぷっくりしている体型なのが身をもって分かったのでありました。

デザートがこれまた美味しい! 右の白いのはニュージーランドの代表的なスイーツ「ハブロバ」
その名も「MIDDLE EARTH(中つ国)」というワイン
ディナーが終わるころにはすっかり暗くなったホビット村

ニュージーランドには他にもロケ地がたくさん

 ニュージーランド国内にはこのホビトン・ムービーセットのほかにも「ロード・オブ・ザ・リング」や「ホビット」のロケ地が150カ所以上あるそうです。南島でも「ここでロケをしていたよ」という言葉をあちこちで耳にしました。それだけ国内全土で撮影ができるのは自然豊かなニュージーランドならでは。映画のメイキングのなかでキャストの誰かが「オールロケでもいいと思ったほど美しい国」と言っていましたが、旅行するとそれがとってもよく分かります。

南島のプカキ湖。ここでは「ホビット」に出てきた湖畔の町が撮影されました

 今この原稿を書きながら私はまた映画を観返しているのですが、ニュージーランドから帰ってきてもう一度観ると「あぁこんな風景あったなぁ~」と感慨深くさらに楽しめます。ちなみに私が次に行ってみたいのは「ロード・オブ・ザ・リング」の2作目、3作目に出てくるローハンの王都エドラスのロケ地と、それから……と、長くなりそうなのでこのへんで。

「ホビトン・ムービーセット」へは、オークランドやロトルア、ハミルトンなどの主要都市から各社ツアーがあります。

ホビトン・ムービーセット・ツアーズ

所在地:501 Buckland Rd, Hinuera, Matamata 3472
TEL:+64-7888-1505
Webサイト:ホビトン・ムービーセット(英語)

翌日行ったハミルトン空港にいた灰色の魔法使いガンダルフ

ここも必見!ツチボタル見学ツアー

 北島ワイカト地方にあるもう一つの有名な観光スポットがワイトモ洞窟です。英語では「Waitomo Glowworm Caves」と言って、Glowwromとは発光性のツチボタルのこと。ホタルといっても日本の“蛍”とはまったく別物で、ニュージーランド固有の珍しい昆虫です。湿気の高い場所に生息して洞窟の壁からネバネバした糸を無数に垂らし、餌となる小さな虫を自ら発光する青い光でおびき寄せるという……と書いているとあまり筆が進まなくなってくるのですが、とにかくその青い光がとっても神秘的で魅了されてしまうんですの。そしてこのワイトモ洞窟、今から126年前にオープンした歴史ある観光地でもあります。

ワイトモ洞窟ビジターセンター。昨年2015年はオープン125年の記念イヤーだったようです
洞窟内は飲食、撮影、喫煙禁止

 ワイトモ洞窟へはガイドウォークでしか入れないので必ず見学ツアーを申し込むことになります。内部は撮影禁止なのでここからは広報写真をご覧くださいませね。まずはガイドさんに連れられて鍾乳洞の中へ。ここは大昔は海の中だったところで、その後隆起して水の流れによってできた巨大空洞です。階段でずんずんと下に降りていくのですが、その深さなんと30m以上! 辿り着いた場所は高さが16mもある大きなホールのような空間でした。そして気が遠くなるような長い年月をかけて成長する鍾乳石の神秘を目の当たりにします。

このような鍾乳洞の中をガイドさんと一緒に歩きます(写真提供:THL)

いよいよ見学ツアーのハイライト、ツチボタルの見学です。小さなボートに乗り込むと天井には青白い光が無数に見えてきます。ボートがゆっくり奥の暗い方に進むと、次第に目が慣れてきて、気づけばプラネタリウムの中にいるみたい! 青い光は点いたり消えたりはせず、ただボーッと幻想的に光っています。

ボートに乗って天井を見上げれば、まるで小宇宙にいるみたい!(写真提供:THL)

 ワイトモには、ほかにもいくつか洞窟があって、さまざまなアクティビティが用意されています。なかでも「ブラックウォーター・ラフティング」は真っ暗な洞窟内の川をタイヤチューブに乗って進んでいくというニュージーランドならではのアクティビティ。ツチボタルも見てスリルも味わいたい人はオススメです。

ボートはゆっくり進みます。これは出口付近(写真提供:THL)
ブラックウォーター・ラフティングはヘルメットにウェットスーツ着用。これもやってみたい!(写真提供:THL)
同行の政府観光局の担当者さんの「これがワイトモケーブ限定の“ツチボタルくん”です」という言葉につられて思わず買ってしまったナゾのぬいぐるみ。以降私の写真に時々登場する旅の相棒に
Waitomo Glowworm Caves Visitor Centre

料金:ワイトモケーブツアー 大人49ドル(約3630円)
所在地:39 Waitomo Village Road, Waitomo
TEL:0800-456-922(ニュージーランド国内フリーダイヤル)
Webサイト:Waitomo Glowworm Caves Visitor Centre(英語)

ワイトモに行ったらぜひプレミアムBBQを!

 ワイトモ洞窟に行く前にランチで立ち寄った「ローズランド」。本当にこの先にレストランなんてあるの? という原生林に囲まれた道をドライブしていくと、ありました! 昔ながらのBBQランチを楽しめる人気のファームレストランです。ここのバーベキューランチで食べることができるニュージーランド産プレミア肉のステーキは絶品! サラダバーのほかに自家製デザートもいろいろ用意されていましたよ。

魚か牛か選べます。私は迷わず牛を!
焼き方はミディアムで。う~ん、美味しそう! 緑色の飲み物はキウイジュース
まったく牛肉の臭みがなく、そのうえ柔らかい! ぺろりといっちゃいました
ローズランド(ファームレストラン)

料金:プレミアムBBQビュッフェランチ(またはディナー) 大人36ドル(約2670円)
所在地:579 Fullerton Road Waitomo Caves 3981
TEL:+64-7878-7600
Webサイト:ローズランド(英語)

 さて、次回はいよいよ南島のレポートです。これぞニュージーランド! という風景がたくさん出てきますのでお楽しみに~♪

ゆきぴゅー

長野生まれの長野育ち。2001年に上京し、デジカメライター兼カメラマンのお弟子さんとして怒涛の日々を送るかたわら、絵日記でポンチ絵を描き始める。独立後はイラストレーターとライターを足して2で割った“イラストライター”として、雑誌やWeb連載のほか、企業広告などのイメージキャラクター制作なども手がける。