旅レポ
お得にフライト、現地は豪華!な一生モノの体験。香港エクスプレスで行くアンコール・ワットの旅(その4)
シェムリアップならではの食・体験・エンタメをピックアップ
2017年2月7日 00:00
シェムリアップのリポートの最後に、遺跡とホテル以外のシェムリアップの食やショッピング、エンタメなどの情報をまとめてお伝えしたい。
遺跡観光のための街であるシェムリアップは、街自体は小さい。町歩きという楽しみ方ができるのは中心街の「パブストリート」と市場の「オールドマーケット」を中心とした半径100mぐらいのエリアだけで、あとは基本的にトゥクトゥクで移動して目的地に直行する形になる。事前に面白い場所のリサーチが必須なので下記の情報も役に立つはずだ。
NGOのホテルスクール「サラバイ」で食べられる高クオリティのランチ
今回のツアーで到着後すぐランチに向かったのが、今回宿泊した「ヘリテージスイーツホテル」が提携しているホテルスクール「サラバイ(SALA BAI)」。中心地からはやや距離があり、ホテルからは3.5km、車で15分ほどの距離にある。一言で表わせば「ランチに美味しいフレンチを格安で食べられる穴場レストラン」だ。
ここサラバイはカンボジアの若者の自立を支援するため、フランスのNGOが運営している学校。17歳~23歳の学生に対して、約11カ月かけて観光業で働くためのトレーニングを無料で行なっている。毎年400~500人の応募があり、100名程度を受け入れているそうだ。
学生がここで学べるのはレストランでの調理やフロアでの給仕、ベッドメークなどのハウスキーピング、スパでのセラピーなどで、それぞれ選択した職種に応じて専門知識を習得できる。ここでプロになるための知識や英会話を徹底的に学んだあと、シェムリアップに18ある提携ホテルに2カ月間、合計2カ所にインターンシップとして働くそうだ。ヘリテージスイーツホテルでもこのサラバイの学生のインターンシップを受け入れているとのこと。
この学校に併設されたレストランはサラバイの学生たちがトレーニングする場所として作られたもので、一流の料理を手頃な値段で食べられることで知られるレストラン。学生たちのトレーニングが目的のため、営業は主にランチのみで平日の12時から14時まで。ホテルも併設しているため朝食の営業はあるが、ディナーの営業はない。
店舗は全体的にカジュアルフレンチのような雰囲気。ランチメニューは洋食かアジアンの2種類のセットから選べる。前菜、メイン、デザートで12ドル(約1380円、1ドル=約115円換算)と手頃な価格だ。2週間ごとにメニューの内容が入れ替えられ、この日の「Western Set」はアヒルの胸肉のロースト、「Asian Set」のメインがサバのソテーだった。
前菜からデザートまでとても美味しく、なにより見た目がとっても美しい。フロアを担当してくれた学生たちも、笑顔を絶やさず真面目に対応してくれて初々しい。アラカルトも頼めるようなので、近くのホテルに泊まっていたら通ってしまいそうな満足いくクオリティだった。ちなみにこのサラバイ自体にもホテルが併設されている。
雰囲気抜群の高床式建物で名物料理が食べられる「カフェインドシナ」
もう一つ、ディナーにお勧めの雰囲気のよいレストラン「カフェインドシナ(Cafe Indochine Restaurant)」もご紹介したい。場所は中心街に近く、幹線道路のシヴォタ通り(Sivatha Street)沿いで、地元の巨大スーパーで旅行者にも便利な「ラッキーモール」から100mほどの位置にある。
もともとはフランスのユネスコオフィスだったという高床式の木造建築物を利用したレストランで、オープンして10年以上。昔の映画に出てきそうな、抜群の雰囲気のよさのなかでカンボジアの名物料理が食べられる。
レストランは1階と2階に席があるが、2階のテラス席は風もあり開放的。バンガロー風の高い天井にはシーリングファンが回り、古い香港映画に出てきそうなムーディな雰囲気だ。
名物料理は、魚の煮込み「アモック」や、牛肉炒めの「ロックラック」、揚げ春巻きなど。メニュー表は種類豊富で、チャーハンや焼きそばなど食べ慣れたメニューもある。おもなの料理は写真入りなのでとても分かりやすい。2人からは「インドシナメニュー」(17ドル、約2000円)や「クメールディスカバリーメニュー」(13ドル、約1500円)といったコース料理も注文できる。
白身魚の「アモック(Traditional Amok)」はココナツのクリーミーな甘みがある味付けで辛くない。エビの「ニンニクとバジル炒め(Fried with Garlic and Basil)」はハーブたっぷりでバジルがとてもさわやか。「イカの炒め物(Fried Squid with Kampot pepper)」はガーリックのダイスや名物のブランドコショウを利かせた白米が進む味。「焼きそば(Fried Noodle)」はやや柔らかめの“きしめん”で具材たっぷりだった。「空心菜の炒め物(Stir Fried Morning Glory)」はガーリックが利いた中華風の炒め物だ。
価格は現地としてはやや高級店の部類に入るが、代表的な名物料理が気持ちのよいサービスで食べられるので、グループで行ってシェアするのにも便利そうだ。アルコールのメニューも豊富。
伝統工芸品の制作過程を見学できる「アーティザン・アンコール」
シェムリアップは香港などとは違ってそれほど買い物天国な街ではないが、伝統工芸品や高品質のお土産にぴったりな製品を、実際に製造する工房で見学してから買えるようになっているワークショップ型の店舗を選ぶと、観光とも兼ねられておもしろい。
その代表例がカンボジアの伝統工芸を伝承するためのトレーニング施設兼ショップ「アーティザン・アンコール(ARTISANS ANGKOR)」だ。繁華街にも近い便利な場所にある。ここでは6カ月~9カ月間、カンボジアの若者たちに無償で職業訓練を行なっている。石彫りや漆、金属工芸やシルクの絵付けなど、さまざまなトレーニングの様子をガイド付きで間近で見学できるようになっている。各国からの観光客が大勢訪れており、日本語ガイドの方が案内してくれた。遺跡や美術品で見られる伝統工芸の製作ステップも分かりやすく解説されているため、ここで見た内容がそのあとの観光でも役立った。
ルートの最後には大型のショップが併設されていて、工房で作られた製品が販売されている。価格は安くはないが、市場で見かけるのとは違う、デザインのよい一流品が売られているので、気にいった品物が見つかるだろう。
個人的には45ドル(約750円)の生糸の手織りスカーフに一目ぼれして、高いかなと散々悩んだあげく思い切って買ってきた。日本に戻って冷静に見てみたが本当にキレイで気に入って使っている。買うかどうか最後まで悩んだ、日本のグッドデザイン賞を受けたというステキなクッションカバーも買ってくるべきだったとやや後悔中だ。
工房兼ショップの「セントゥール・アンコール」で香りに癒やされる
もう一つ、「セントゥール・アンコール(Senteurs d’Angkor)」という石けんやハーブ、スパイスの工房もお勧め。ここは、ホテルから空港方面へ、幹線道路(6号線)を10分ほど行ったところにある。実際にせっけんやアロマ製品を作っている様子をガイド付きで見学できる。女性の自立支援を念頭に約100人を雇用している工房で、原材料になるべくカンボジア産の素材を使用することで農村部の女性約100人の就労機会創出にもつながっているという。
パームツリーが植えられた雰囲気のよい中庭では、実際に大勢がパームツリーの葉を加工していて、カンボジアのお土産物屋でよく見る、葉で編まれたケースを作る様子も初めて見た。個人的に石けんが好きで、自分で作ることもあるのでとても興味深かった。
ワークショップ見学後は、併設のショップでの石けんやスパイスの物色ができる。カンボジアはもともとハーブが豊富で、お土産には質のよさで有名なコショウやカレーのスパイスもお勧め。香りのよいお土産に最適な小型の石けんや各種スパイスが、工房で作られたケース入りで、1つ300円ほどで購入できる。自分用にと思って石けんを大量に購入したのだが、お土産にぴったりすぎて誰にでも渡しやすく、あっという間に使い切った。
唯一の繁華街「パブストリート」とナイトマーケット
シェムリアップでいわゆる“町歩き”ができる唯一の場所が、「パブストリート」と呼ばれるエリア。パブストリート自体は100mちょっとで、周辺のナイトマーケットと合わせても半径200mほどしかない狭いエリアにシェムリアップの人気レストランやショップが密集している。
レストランやショップは昼間からオープンしているが、夜になると派手なネオンが光り、人でごった返す。繁華街なのでスリなどには要注意だが、夕食を食べたり、エステを受けたりするにはとても便利なエリアだ。
表通りには外国人観光客向けの雰囲気のよいバーが、裏路地にはアモックからピザまで地元のグルメ店が勢ぞろい。日本で調べたり地元の人に聞いたりして、滞在中いくつか美味しいお店を巡ってみたい場所だ。
ナイトマーケットは、いくつか隣接している。お昼頃からオープンしていて、雨でも見やすい約100件の「ヌーン・ナイト・マーケット」、夕方からオープンしはじめ個性的な店が多い約200件の「アンコール・ナイト・マーケット」、9時から営業していて大型バスもよく寄る約300件の「シェムリアップ・アート・センター・ナイト・マーケット」などがある。どのマーケットも23時か24時ぐらいまで営業。マーケットの買い物には値段交渉が必須だが、競争相手も多いので何カ所かで比較すれば納得行く買い物ができる。
完成度の高いアクロバティックなステージ「ファー・カンボジアサーカス」
シェムリアップで見るショーとしては伝統的な「アプサラダンス」が有名だが、舞台で行なう現代風のエンターテインメントもいくつか開催されている。特に有名なのが2013年から上演されている「カンボジアサーカス・ファー(Phare, the Cambodian Circus)」だ。
サーカスという名前のため、象やライオンの曲芸や綱渡りをイメージするかもしれないが、実際はそれとは違うかなりユニークなもの。体だけを使って行なうアクロバティックな技やダンスを、生演奏の音楽とライブで描かれるアート作品を背景にストーリー仕立てで見せていく。
この「カンボジアサーカス・ファー」は、難民キャンプ出身の9人のカンボジア人青年が設立したNGO団体が運営する芸術学校「ファー・ポンルー・セルパク(PPSA:Phare Ponleu Selpak)」が卒業生の活躍の場として設立したものだ。この芸術学校は演劇、美術、音楽などの芸術を学べる無償の学校として1994年から運営されており、内戦で失われたカンボジアの芸術復興と子供たちへのアートの教育機会の提供を目的としている。公演のチケット収入の70%以上はこの芸術学校の運営に使われているという。
「カンボジアサーカス・ファー」は中心街から車で10分ほどの場所に設置された円形の専用劇場「ビッグ・トップ」で毎日公演が行なわれている。夕方6時からはカフェやレストラン、この芸術学校の学生や卒業生が制作した美術品や雑貨を販売するショップも営業している。
レストランでは予約するとコース料理も食べられる。コース料理は2種類あり、ショーのチケットとセットでWebサイトから予約可能だ。訪れた際に「Superior Option 2」のメニューをいただいたが、街中でもなかなかない美味しさでびっくり。特にアモックは絶品だった。料理もスイーツもクオリティが高いので、時間があれば早めに訪れてコース料理からゆっくり楽しむのがお勧めだ。
座席は約330席。座席が中央のフロアを囲んで取り囲む、すり鉢状の配置になっている。チケットは街中の旅行代理店や会場の窓口でも購入できるが、11月から3月のハイシーズンは毎回ほぼ満席だそうなので、早めにWebサイトで購入しておくことをお勧めする。
価格は、最も見やすい中央部分下段の指定席「Section A」が大人(12歳以上)35ドル(約4000円)、子供(5~11歳)18ドル(約2000円)。中央上段の自由席「Section B」が大人25ドル(約2900円)、子供17ドル(約2000円)。左右の自由席「Section C」は大人18ドル(約2000円)、子供10ドル(約1250円)。
ショーの開始は毎日20時からで、ショー開始の30分前から円形会場はオープンする。自由席が多いので観客は早めに入ることが多いようだ。ショー開始後の入場はできないので要注意。
今回見た公演「ソカ」は、芸術を教えながら混乱の時代を生き抜いた女性が主人公のストーリー。出演者自体はセリフをほとんど話さず、要所要所で劇場内のスクリーンに各国語で表示される。日本語の表示もあるので内容はとても分かりやすい。戦争前の芸術学校の授業をアクロバティックな形で表現し、戦争の暗い影と苦悩アーティスティックに表現。戦後を会場も巻き込みながら明るくコミカルなショーで見せる。
約330席と小さい劇場で出演者との距離もほとんどないためすごい迫力で、クオリティの面でもオリジナリティの面でも見応え十分。海外に招致されて公演をする機会が多いというのも納得だ。公演終了後には出演者と記念撮影もでき、行列ができていた。子供から大人まで楽しめるショーとして間違いなくお勧めできる。
雨期は必見! 感動できるトンレサップ湖のサンセットクルーズ
カンボジアの中央に位置する巨大な湖「トンレサップ湖」。乾期ですら約2500km2と琵琶湖の約4倍あり、雨期になるとさらにその4倍、約1万km2以上に膨張するという東南アジア最大の湖だ。
観光ではこの湖で水上生活する人々の暮らしを見たり、夕日を見たりする「トンレサップ湖クルーズ」が人気。クルーズ船乗り場はシェムリアップの中心部から車で30分程度のチョンクニアという場所から多数出ており、1時間半ほどのクルーズで1人30ドル(約3500円)程度から乗船できる。ただし、金額やチップでトラブルになることもあるので、シェムリアップの旅行会社などであらかじめツアーに申し込んで参加した方がより安全だ。
今回は宿泊したホテル系列のツアー会社「ヘリテージアドベンチャー(HERITAGE ADVENTURE)」の主催するトンレサップ湖のツアーに参加した。1グループ175ドル(約2万円)で5人までに乗船でき、フィンガーフードとソフトドリンクの代金も含んでいる。プライベートボートは「Heritage boat」と名付けられた貸し切りのステキな船で、まわりで運航されていた、乗り合いのクルーズ船のクオリティと比べると段違い。かなりお得に感じるツアーだった。
シェムリアップの街中からこのクルーズ船乗り場への道すがらも、伝統的な高床式の住居や生活が見られて見応えがある。日が少し傾きかけた16時30分頃に船着き場に到着し、クルーズ船に乗船。ロマンチックでステキな雰囲気の飾り付けがされた船で、ウェルカムドリンクをいただきながら水上生活の様子を見ていく。
住民のほとんどは漁師で、乾期は湖が干上がるため農業をするという。12月ごろから徐々に水が減り始め、4~6月の乾期は観光船がほとんど運航できないそうだ。途中、ワニの養殖が行なわれている展望台のある建物で周囲の景色を堪能。再度クルーズ船に乗船して湖を進み、まわりに湖面しか見えない開けた場所で、フィンガーフードとシャンパンでサンセットを満喫した。
今回、アンコール・ワットの朝焼けが赤く焼けなかったことがずっと心残りだったが、帰国前日に見たこの夕日はそれを帳消しにしてくれるほどの光景で、「この旅に来てよかったな」と思わせてくれる経験になった。プロポーズや新婚旅行、家族の記念日などに絡んでいたら一生忘れられない瞬間を演出できるはず。本当にすばらしかったので、個人的に家族を連れてまた行きたい。
ヘリテージスイーツホテルのスペシャルオファーに「Classic Heritage Escape」(2泊2名で935ドル、キャンペーン価格797ドル=約9万2000円)というコースがあるのだが、これが今回のツアーに近いパッケージのようだ。具体的にはバンガロースイートの2泊(2名分)の宿泊、クラシックカーでの空港送迎、毎朝の朝食、「クメールディスカバリー」のディナー2名分とワイン付き、トゥクトゥクでのガイド付きアンコール・ワット観光1日、サラバイでのランチ、トンレサップ湖クルーズ(乗合船)と車での送り迎え、ヘリテージスパでの15分のマッサージ2名分がその内容。日本の旅行代理店のツアーではなくLCCとホテルを自分で組み合わせるなら、こうしたホテルが主催するパッケージを利用するのも、お得で充実した内容にできそう。
今回、ひたすら盛りだくさんのツアー内容でレポートも長くなってしまったが、とにかくアンコール・ワットがLCCでこんなに気軽に行ける場所だと気がついたのが大きな収穫だった。
香港エクスプレスの乗客が子連れに寛容だったのも忘れられない。羽田の深夜発着なら、木・金と2日だけ休めば週末を使ってさらっと朝日を行けたのだと、帰り際に気付いた。アンコール・ワットが朝日で真っ赤に焼ける季節に、また気軽にトライしに行きたい。