旅レポ
お得にフライト、現地は豪華!な一生モノの体験。香港エクスプレスで行くアンコール・ワットの旅(その3)
食事とサービスが充実した隠れ家のようなホテル。市場や調理体験も
2017年2月4日 00:00
世界中から観光客が押し寄せるアンコール・ワットには、ホテルもあらゆるタイプが揃っている。1泊500円のドミトリーから5万円の超高級ホテルまで幅広い。今回ツアーで訪れた「ヘリテージスイーツホテル」は、数十部屋で構成された小規模ホテルで、デザインがよく、ハイクオリティなサービスが受けられる。この回では、高級感がありながらもアットホームなこのホテルの紹介をとおしてアンコール・ワットのホテルライフをご紹介したい。
映画のなかのようなクラシカルな建物とバンガロー
同じカンボジアでも、以前リポートした首都のプノンペンと違ってアンコール・ワットには100室以上あるような大規模ホテルが多い。ツアーの団体客は、世界的なホテルチェーンが運営する4つ星や5つ星の大規模ホテルを選ぶことが多いようだ。
一方で欧米の個人客には、数十室程度の小規模で、デザイン性が高いいわゆる「ブティックホテル」も人気がある。今回紹介する「ヘリテージスイーツホテル」もそんなブティックホテルの1つ。これまで宿泊客のほとんどが欧米系だったが、ここ数年は中国系の富裕層や日本人の個人客も増えているという。基本的にリピーター率が高いそうだが、初めて訪れる宿泊客は口コミやオンラインのホテル比較サイトの高い評価を見て訪れるとのこと。
ホテル全体が、モノクロ映画に出てきそうなクラッシックな雰囲気。「その1」でのリポートにあるように、空港へのお迎えもクラシックカーだ。ホテルに到着すると、レストランやバー、フロントを兼ねるコロニアル様式の建物に通され、まずはウェルカムドリンクが配られた。
セレクトショップや朝・夜使える雰囲気のよいプールを併設
GM(ゼネラルマネージャ)を務めるJamさんによると、ヘリテージスイーツホテルは全26室の小さなホテルだが、その分アットホームでゲスト1人1人の要望に細かく対応できるのが特徴とのこと。メニューにないことでも、例えば観光のアレンジをしたり、ベビーシッターを頼んだりといった相談もできるそうだ。国内のホテルでよくある、詳細なホテルの利用案内が部屋にはないので、いくらでどこまで頼んでよいものか迷うところだが、ここでは「ちょっと無理かなと思ったり、細かいかなと思ったりしたことでも、取りあえず相談してみる」のが正解なようだ。
館内は基本的に英語での対応だが、空港に出迎えてくれた女性のオマさんは簡単な日本語が話せた。スタッフも全員簡単な英語での対応が可能だった。どのスタッフも笑顔。とてもゆったりとした雰囲気のホテルだった。
エントランスの奥には共用スペースがあり、1階左側には喫煙スペースや、カンボジア土産が揃うセレクトショップ、右側にはホテルの系列会社が行なう観光ツアーの「ヘリテージアドベンチャーズ」がある。スタンダードな遺跡の観光ツアーだけでなく、遺跡とグランピングを組み合わせたものや、寺院での瞑想(めいそう)体験など個性的な体験型ツアーが多いのが特徴。
次回の「その4」で紹介するトレンサップ湖で夕日を眺めるツアーもこのヘリテージアドベンチャーズで申し込みができるツアーの1つだ。ヘリテージスイーツホテルでの宿泊とヘリテージアドベンチャーズのツアーを組み合わせたプランもWebサイトから申し込みできる。
共有スペースを抜けると日差しの届くプールがある。プールで泳いだり、プールサイドのバーで飲んだり、デッキで朝食を飲んだりと自由に使える。一角には天蓋(てんがい)付きのエステティックスペースも併設されている。適度に木陰が作られていて、晴れた日にはとてもさわやかだ。このプールを抜けた先にバンガロータイプの部屋が並んでいるので、ホテルへの出入りには、エントランスの建物~共有スペース~プール~部屋への小道を毎日行き来する。
非日常を感じられる広々したバンガローの部屋
ヘリテージスイーツホテルの部屋をそれぞれ紹介したい。部屋のタイプは「クラシックルーム」「バンガロースイート」「エグゼクティブスイート」「ロイヤルスイート(RED POPPY SUITE)」の4種類。どれも寝るためだけに帰ってくるにはもったいない雰囲気のよさで、カンボジア人デザイナーの制作した手作り家具が使われ、調度品や装飾品もクメール様式とアールデコをミックスして雰囲気よくまとめられている。非日常を感じられる空間だ。価格には空港送迎と朝食も含まれている。クラシカルな雰囲気だがどの部屋もWi-Fi完備。インターネット接続も無料だ。
6部屋ある「クラシックルーム」は30m2のワンルーム。共有スペースのあった建物の2階にある。1泊1室125~230ドル(約1万4400円~2万6500円、1ドル=約115円換算)で1室2名まで。今回は満室で室内の様子は写真で紹介できないが、ほかの部屋と似たデザインで天井は高い。
17室ある「バンガロースイート」は55m2。今回宿泊した部屋で、プールの先の小道に作られたバンガロー風の建物だ。中に入ると天井が高く広い空間が広がり、専用の庭に面した一面はすべてガラス張りの窓。リビングルームからバスタブエリアまで仕切りがなく、開放感がすばらしい。
シャワーブースのほかスチームサウナも備えつけられ、専用の庭では屋外でシャワーを浴びることもできる。1泊1室245~395ドル(約2万8200~約4万5500円)。エキストラベッドを入れて3名まで宿泊可能だ。石けんやシャンプーなどのアメニティ類も質の高いものが備えつけられていたので、持ってきたものをほとんど使わなかった。
バンガローのなかでもさらに豪華な部屋が3部屋あるのでそちらも紹介したい。まず2部屋だけの「エグゼクティブスイート」は、75m2という広々した部屋。こちらも広いワンルームで、書斎スペースのほか、広い庭には専用のジェットバスも備えつけられている。1泊1室345~555ドル(約3万9700円~約6万3900円)。こちらもエキストラベッドを入れて3名まで宿泊できる
そして1部屋だけの特別室「ロイヤルスイート(RED POPPY SUITE)」は158m2という子供が走り回れるほどの広さ。リビングルーム、書斎スペース、広い庭の大型ジェットバスが備えつけられている。1泊1室445~655ドル(約5万1200円~約7万5400円)。4名まで宿泊でき、3~4人で利用する際は1人50ドル(約5800円)ずつ追加される。
全体を見るとやはりクラシックルームとバンガロースイート以上の部屋では雰囲気の違いが大きいので、バンガロースイート以上の利用を勧めたい。バンガロースイートは時期によって1部屋200ドル(約2万3000円)程度のこともあり、2人で泊まればひとり1万2000円程度でこの非日常の空間に朝食付きで泊まれると考えるとかなりお得に感じる。
併設の「ボディアスパ」はボディアブランド直営のハイクオリティなエステティック
ホテルには、リラクセーション施設として「bodia(ボディア)」直営の高級スパも併設している。ボディアはカンボジア産の天然素材を使用した高品質なボディーケア商品を製造販売する有名ブランドで、その高級ラインを使ったハイクラスなスパも「ボディアスパ」として全国で展開している。首都プノンペンやシェムリアップの繁華街にも大型の店舗があるが、このホテルに併設された「ボディアスパ」もその直営店の1つだ。
エントランスの建物右側に専用の建物があり、円形の入り口を入ると緑あふれる中庭を囲んでカップルルーム1室とシングルルーム2室がある。受付で説明を受けてから個室に入り、レモングラスの香りが漂う雰囲気抜群の部屋で施術を受ける。中にはシャワーブースやバスタブも備えつけられている。
シェムリアップはマッサージ店がとても多い街だが、そのクオリティは千差万別。そのなかではボディアスパはハイエンドにあたり、価格は「THE HERITAGE CLASSIC」が60分55ドル(約6400円)(プールサイドで施術を受ける場合は10%オフ)など。
今回のツアーにこの60分のマッサージがついていたので体験させてもらったが、日本の高級ホテルのスパと比べても負けない抜群の雰囲気と、質のよいマッサージで値段にも納得。ホテルに併設のため、砂ぼこりを上げる道を移動したりせずに、ベッドに直行してぐっすり眠れるのがなにより快適。シェムリアップの遺跡観光は基本的にアップダウンも激しく、広範囲を歩き回るため夕方にはクタクタという日も多いので、疲れた体を癒やしてくれるマッサージはお勧めだ。
朝食はカンボジア風も洋風も揃うメニューからのオーダーバイキング
ヘリテージスイーツホテルの宿泊は朝食付き。食事の内容はオーダーバイキングで、事前にリクエストすれば部屋やプールサイドで食べることもできる。メニューにはクメール風麺(フォー)やカンボジア風チャーハンなどのほか、エッグベネティクト、ソーセージとハッシュブラウン、コーンフレークなどの洋風メニューのセットもある。
スイーツも充実していて、クレープ、パンケーキ、フレンチトースト、ヨーグルト、フレッシュジュースなど。パン類は隣接するNGOの「BAYON PASTRY SCHOOL」と提携し提供されている。デニッシュやハード系のパンなど豊富な種類があり、本格的。スライスされた温かいパンが自家製ジャムやフルーツと共にサーブされる。
料理は好きに組み合わせできるので、洋食でセットを組むこともアジア風にまとめることもできる。お勧めは、新鮮なフレッシュジュースと、フォー。フレッシュジュースは好きな果物を組み合わせてミックスジュースにもできる。観光での疲れをビタミンたっぷりのジュースが癒やしてくれるようで体に染みた。フォーはさっぱりしつつも、旨みたっぷりで美味。最終日に食べてしまい、もっと早く注文しなかったことを後悔する美味しさだった。
レストランとしても人気のホテルでクメール料理を体験
エントランスの建物は「ヘリテージレストラン」としてシェムリアップで有名な場所でもある。営業は6時から21時30分まで。コースメニューは「クメールディスカバリーメニュー(THE KHMER DISCOVERY MENU)」(28ドル、約3300円)と「シグネチャーメニュー(THE SIGNATURE MENU)」(39ドル、約4500円)の2種類。コース以外のアラカルトも多く、キッズメニューまで豊富に揃っている。特にココナツカレーで白身魚を煮込んだ「アモック」や、エスニックスパイスのよく効いた「クメール風チキンカレー」など、カンボジア名物が揃っている。
デザートもシェフによるオリジナルスイーツの数々のほか、朝食でも提供されたパンの製造元、隣接するNGOの「BAYON PASTRY SCHOOL」から取り寄せたケーキやタルトなどもあり種類豊富。美味しいコーヒーや紅茶と楽しめる。
まずはランチで食べた「クメールディスカバリーメニュー」を紹介したい。メニューは「グリーンマンゴーサラダ」「トムヤムクンスープ」「シーバスの甘酸っぱいソースがけ」「牛肉の伝統料理ロックラック」「バナナロール」の5品のセットで、どれも代表的なクメール料理。カンボジアで1度は食べたい特徴ある料理を一気に食べられるコースだ。どのメニューも1品1品丁寧に作られていて満足感があり、特にトムヤムクンスープは、自分で辛さを調節でき、ライムでさっぱり食べられてとても美味しかった。
ムーディなディナーではライブ演奏のイベントも
夜になると、少し暗めの照明やロウソクの明かりでレストランはとてもムーディに。ロマンチックな、大人のための空間になる。この抜群の雰囲気の中で実施されるのが毎週木曜日の「ジャズナイト」だ。これは通年で行なわれているイベントで、観光客だけでなく現地に在住する外国人にもとても人気があるという。ジャズの演奏は19時~22時までたっぷり実施。ディナーを食べながら演奏を聞ける。
ジャズナイトの日は17時からカクテルパーティーが実施され、フィンガーフードやオリジナルカクテルが楽しめる。フィンガーフードはエビやスモーキーなチキン、チーズなど見た目にもかわいい。その日の観光の感想を話ながらディナー前の時間をゆったり過ごすのにぴったりだ。
ディナーでいただいたのは「シグネチャーメニュー(THE SIGNATURE MENU)」。お店の看板メニューで、地元の新鮮な食材やカンボジア風の調理も使われた、手長エビのグリルとステーキがメインの、高級フレンチの構成。旨みたっぷりのツナのタルタルから始まり、美味しくてうなったフォアグラ、メコン川産の手長海老のグリル、テンダーロインのステーキなど、さすがの美味しさで、結果的には39ドル(約4500円)という価格がかなり安く感じた。ヘリテージスイーツホテルに宿泊する際は、滞在中に食べないともったいないクオリティだった。
ちなみに、11月~3月のハイシーズンにはプールサイドが特設ステージになり、毎週火曜日に伝統的なアプサラダンスが、土曜日にはアコースティックの演奏が行なわれるとのこと。26室という小規模のホテルながら、このレストランの規模とクオリティの高さは人気店ならでは。「ハイクオリティな食事が楽しめるブティックホテル」と言い切っていいだろう。
名物料理「アモック」作りのため、市場へ買い出し体験
ヘリテージスイーツホテルの総料理長、Vibol Boun氏によるカンボジアの名物料理「アモック」の料理教室「HERITAGE COOKING CLASS」も体験した。朝10時に活気ある市場(オールドマーケット)にトゥクトゥクで向かい、食材の買い出し体験からする充実の内容で、できあがった料理はそのままランチとしていただくというもの。
Vibol氏は笑顔のステキな優しいシェフで、市場への買い出しから同行。料理手順も英語で丁寧に教えてくれた。市場では30分ほどの買い出し体験だったが、解説されながらの市場はとても分かりやすく、いろいろと発見があって面白い。午前中のため実際に買い出しに来ている地元の人たちで混雑していて、活気も体験できる貴重な体験になった。
市場では生鮮食料品だけでなくさまざまなものが販売されていて、お総菜や食堂、お土産物屋まで揃っている。買い出しが終わったあと、Vibol氏に勧められて飲んだ「とうきびジュース」(1000リエル、約33円、1000リエル=33円換算)がライムたっぷりでとても美味しかった。さらに行商の女性が売っていた、地元の伝統的なパンケーキだという「ノムソーイ」(1500リエル、約50円)というお菓子も食べたのだが、これが衝撃の美味しさだった。
モチモチの皮でパリパリした板状のパームシュガーやココナッツミルクのフレークが巻いてあるシンプルなお菓子なのだが、食べたことがない食感と美味しさだった。あまりに美味しくて忘れられず、レシピを聞きたくてそのあと空き時間に行商の女性を探しに行ったのだが、滞在中二度と会えなかった。その場で聞いて材料を買ってこなかったことを後悔している。
カンボジアの伝統料理「パパイアサラダ」「アモック」「米粉のデザート」を習う
ホテルに戻り、買ってきた食材で早速料理教室がスタート。1人分ずつ調味料や食材、道具が準備され、解説と実演を見ながら調理していく。まずはメイン料理の白身魚のココナツ煮込み「アモック」を調理。白身魚と刻んだハーブ、ココナツミルクと調味料を泡立て器でよくよく混ぜてなじませてからバナナの皮でできた器へ入れて蒸し器へ。この10分間の蒸し時間を利用して、パパイアサラダと米粉のデザートを調理する。
パパイアサラダは、細かくスライスした食材をすり鉢のような鉢に調味料と一緒に入れ、叩いて潰して混ぜるという独特の作り方。米粉のデザートは、ココナツシュガーの塊を白玉粉で包んで茹でたもの。習ってみるとどれも作り方はそこまで難しくない。調味料を買って帰れば帰国してからも再現できそうだ。
蒸し上がったアモック、美しく盛られたパパイアサラダとデザートをセットしてそのままランチへ。ただ食べるだけよりも当然ながらカンボジア料理に理解できて貴重な体験になった。
ドラマチックな到着から、雰囲気のよい共有スペース、バンガロー風の開放感ある部屋、そしてハイクラスな料理の数々。ブティックホテルとしては十分すぎるほど内容は充実している。ちょっと贅沢して、忘れられない特別な体験がしたい、という人にお勧めだ。