旅レポ

ANAが日本~カンボジア直行便を新規就航、伸び盛りの街プノンペンの旅(その3)

市内南側観光とキリング・フィールド、そして帰路へ

 最終日の3日目は、ロシアン・マーケットで買い物三昧&話題のイオンモール巡り。ローカルフードを堪能してから、最後にキリング・フィールドなどの負の遺産を見学、ANA(全日本空輸)のビジネスクラスで帰路に就いた。

お土産物の買い出しなら迷わずロシアン・マーケットへ。朝イチがお勧め

 最終日は、午前中に市内の南側を、午後に市内から30分ほどかかる「キリング・フィールド」の見学を予定しているため、トゥクトゥクではなくクルマの貸し切りを頼んだ。8時から20時までの貸し切りでチップ込みで50ドル(約5200円、1ドル=104円換算)

 6時起床で荷造りし、朝食を終えてチェックアウト。荷物をクルマに載せて8時にホテルを出発した。最初に向かったのは「トゥール・トンボン・マーケット」だ。通称ロシアン・マーケットと呼ばれる市場で、前日に行ったセントラルマーケットよりもローカル色が強い。ガイドさんのお土産を買うならこちらの方が安い、というアドバイスもあり気になったものを買ってまわった。確かにこちらの方が品揃えが豊富なようだ。この日はクルマで巡っているので買い物三昧で荷物が多くなっても怖くない。

 マーケット内では、セントラル・マーケットよりもさらに現地向けで無理に客寄せされることもなく、値段交渉でもあまり高い金額を示されなかった。逆に値引きもあまり通じない店も多かったが、適度に交渉しながら買い物を楽しめた。英語も簡単なものが通じた。

 コツとしては、衣料品などの場合は良心的そうな店員さんを見つけたら、そこでまとめて買うこと。親戚同士でいくつかお店を出しているケースも多いそうで、その店に在庫がなくても、どこかほかの店から探してきて、グロスで安くなったりする。また、朝早かったこともあり、食事を出すお店は朝食をとる人たちでごった返していた。お土産物を売る店でも、朝イチのお客に親切にするとその一日が儲かると言われているそうで、やや対応も親切に感じた。早めの来場がおすすめだ。

平屋造りのロシアン・マーケット
プノンペンのロシアン・マーケット #theta360 -Spherical Image - RICOH THETA
値段交渉は必須だが、絵画、衣服、お土産物など品数豊富で値段も手頃。市内のお土産物屋でだいたいの値段を把握してから行くとその安さがよく分かる。7時ごろから開いている店も多く、夕方には閉まるので早めの来場がおすすめ

雰囲気のよいリゾートホテルを組み合わせれば女子旅も楽しそう

 今回は、街から少し外れた大型ホテルのインターコンチネンタルに宿泊しているが、実はプノンペンの街中には大型ホテルはあまりない。立地のよい場所には、邸宅や洋館を改築したブティックホテルやヴィラホテルが多いという。

 そのうちの一軒、ロシアン・マーケットからも近い、日本人オーナーの運営する人気ホテル「イロハ・ガーデン・ホテル&リゾート」を見学させてもらった。1000坪ある元中国大使の邸宅を改装して2014年6月にオープンした、リゾート感あふれる雰囲気のよい全27室のブティックホテルだ。街中近くだが、ベトナム大使館裏の治安の大変よい場所にある。

 値段はコンフォートルームが1室2名で72ドルから。2名で泊まれば1人あたり日本円換算すると一泊4000円~5000円で心地よい部屋に泊まれるとあって、ビジネスから観光までリピーターが絶えず、満室のことも多いという。

 格安で受けられる質の高いエステやマッサージ、安くてかわいい雑貨など、プノンペンには実は女子に人気の要素も多くある。長くフランス領だった影響もあり、パンやコーヒーが美味しく、高級フランス料理も安く楽しめる。こうした雰囲気のよいホテルでゆったり過ごし、エステを受けて、フランス料理やクメール料理を堪能して、リバーサイドの遊覧船に乗って川巡り……という癒やしの女子旅もかなり楽しそうだ。

リゾート風の作りで人気のある「イロハ・ガーデン・ホテル&リゾート」。壁の内側は街の喧騒とは別世界のリゾート
中庭に面したベランダ付きの部屋「アイランドデラックス」。1室98ドル(2名、朝食付き、約1万200円)
バスタブ付きの広々としたスイートルーム「フォレストスイート」。1室130ドル(2名、朝食付き、約1万3600円)

ローカルフードはイオンモールなら安全に楽しめる

 さて、市内の南東方向に移動し、今度は「AEON MALL Phnom Penh」へ。外観も館内もどこから見てもイオンモール。見慣れた作りで日本人には安心感でいっぱいの場所だ。プノンペンにこんなに巨大なイオンモールがあることに衝撃を受けた。

プノンペンのイオンモール。店舗の看板も日本でよく見かけるものがあったりと、安心感いっぱい。さらなる出店が計画されているとのこと

 建物は4階建て。作りは日本のイオンモールと同じで、スーパーマーケットや日用品販売のイオンと、専門店が一体になった作り。日本でいう1階となるGFはブランド品、2階となる1Fは家電量販店のノジマやダイソーやキッズパーク、3階(2F)はフードコートやレストラン、シネコンやゲームセンターなど。4階(3F)は駐車場のほか、習い事の教室やレストラン、広いアイススケート場などで構成されている。若者にはSNSの普及率も非常に高く、館内にはLINEサービスセンターまであった。

 年中無休で、営業は9時から22時まで。スーパーは朝8時オープン。映画館などは24時までオープンしている。館内は警備員も多くいて安全で、掃除が行き届いており清潔。スーパーにはイオンのプライベートブランド製品が並び、スイーツにはビアード・パパのシュークリームが、レストランには吉野屋から銀だこ、ペッパーランチまで見慣れたお店がずらりと並び、日本からの赴任者にはオアシスに見えるだろう。

 そんな、日本に戻ってきたかのような錯覚を覚えるほどの場所だが、観光客にとってもとても便利に使える。足りないもののスーパーでの買いだしはもちろん、1階のフードコートが必見。

 市場やナイトマーケットで興味はあっても衛生面が心配で試せなかった屋台料理やスイーツが安全な状態で勢揃いしているからだ。ここでの買い方は、フードコート入り口でチケットを購入し、店舗でチケットを渡して料理と引き替えてもらう方式。チケットの購入時になんのチケットかをいう必要があるので、売り場をぐるっとまわってメモしてからチケット購入するといい。メニューには「D17」などのメニュー番号と英語名、リエルとドルでの金額が併記されているので分かりやすい。ジュースやココナッツも市場と違ってよく冷えた状態で楽しめる。

 ここのフードコートは地元の人にも人気なようで、お昼時は混雑していたが、回転は早いので席は見つかる。気になる物を全部試しても一つ一つは安いので、思い残すことがないようにいろいろ試せる。

フードコードでいただいたクメールの家庭料理。手前は鶏肉とショウガの炒めもの、奥はハスの茎のスープ。一品2.5ドル(約260円)
魚のすり身や肉の入った具だくさんのフォー
椰子の実の中身がまるごとゼリーになったさっぱりしたデザート。1.5ドル(約160円)
ベトナムのチェー風デザート。ココナツミルクをベースに好きな具材を入れられる

 また、3階にある「AMAZING CAMBODIA」がお土産物探しに便利。日本の「ドリームガールズプロジェクト」というNPO団体が運営しているショップだ。アジアの途上国の女性にデザインを学んでもらい、そのデザインを商品化。収益を現地の女性に還元する事業を行なっており、その商品のほか、カンボジア全土から雑貨や小物などの銘品が集められている。

お土産にぴったりのカンボジアの銘品が揃う「AMAZING CAMBODIA」
日本の「ドリームガールズプロジェクト」が運営しており、NPO団体がデザインした商品が並ぶ

1万7000人が殺害された「キリング・フィールド」

 イオンモールをあとにしたは13時頃。ガイドさんとはここで別れ、残りの行程は1人でまわった。意図的に最後にしたプノンペンにある「負の遺産」をまわる。気乗りはしないが、かといって見ずに帰れない場所が2カ所あり、郊外の「キリング・フィールド」と市内の「S21(トゥール・スレン博物館)」だ。

 まずはプノンペン市内から15kmほど離れた、チュンエク村にある「キリング・フィールド」へ向かった。車で30分程度かかる。途中の道路は砂埃がすごかったのでトゥクトゥクで行くのは厳しそうだ。入場料3ドル(約320円)に加えてオーディオガイド3ドルで、オーディオガイドには日本語版音声もある。クメール・ルージュと呼ばれる政治勢力が1975年から3年8カ月間のポル・ポト政権下で大量虐殺を行なった刑場跡で、こうした刑場跡はカンボジア全土に300カ所以上ある。この刑場には、後述する政治犯収容所「S21(トゥール・スレン)」に収容された政治犯とされた人々を処刑する場所として使われていた。1万7000人がここに運ばれて処刑されたとも言われ、発見された8985柱の遺骨が慰霊塔に納められている。

 このキリング・フィールドは学校のグラウンドほどの大きさでそれほど大きくはない。遺体が埋められた穴がいくつかあり、それを取り囲むように整備された歩道沿いにオーディオガイドを聞きながら順路通りに巡っていく。ここでなにが行なわれたか、どうやって惨殺されたか、証言を交えながら説明されている。オーディオガイドを頼りにざっと見て周るだけでも1時間は必要。ていねいに見てまわると2時間程度かかる。

 場所自体は緑の広がる郊外に設置されたのどかな公園のようなところだが、起こったことが凄惨で言葉が出にくい。大勢の観光客がいるが、会話している人がほとんどおらず、ただただオーディオガイドや解説を聞いている。慰霊塔には頭蓋骨が年代別に整理され、安置されている。医者だった、知識人だった、手が白かった……どうでもいい理由で数百万人が、復讐を恐れて家族ごと、年齢問わずクワや殴打で流れ作業で殺害された。それが大昔の歴史上の話ではなく、自分が子供のころの話だ。当時はどれほど報道されたのだろうか。

プノンペン郊外、チュンエク村にある「キリング・フィールド」
オーディオガイドが非常に詳しく、分かりやすい
順路は中央にある慰霊塔の前からスタートする
遺体が見つかった場所は、小屋が建てられていたり、そのままに保存されていたりとさまざま
慰霊塔の中には8985柱遺骨が、性別、死因別に安置されている

拷問の場所に使われた元高校の校舎「トゥール・スレン博物館」

 クルマで市内に戻り、「トゥール・スレン博物館(S21)」へ。入場料は3ドルで、オーディオガイドは3ドル。オーディオガイドには日本語音声もある。塀に囲まれた元々高校の校舎がA棟~D棟まで並ぶ。緑が美しい広い庭も備えていて、喧噪の激しい市内にありながらかなり広々とした空間だ。

 1976年に政権を掌握したポル・ポト政権は、富裕層、知識人を敵対視し、脅威になる前に「反乱分子」としてS21に収容、拷問のあとキリング・フィールドで処刑された。S21には約2万人が収容され、生き残ったのは8名。ポル・ポト政権は3年8カ月続き、ベトナム軍のカンボジア侵略により終わった。

 S21は、建物の外観や庭は撮影可能、建物内は撮影禁止。校舎内には独房などがそのままの状態で残され、記録用に撮られた大量のモノクロ写真の展示や、生き残りの1人である画家の描いた絵とともに当時、なにが行なわれたかが詳しく解説されている。収容されたのは写真で見る限りごく普通の一般人。拷問を行なった看守も普通の人々にしか見えず、10代の少年少女も多い。解説を見ないとどちらが看守なのかわからない。

 教室だった部屋には、トイレの個室程度の大きさにレンガで粗悪な改造がされた様子や、独房のベッドや足かせ、血のりが方々に残されている。天気のよい日中に見学したが、一歩教室に踏み込むと薄暗く異様な光景に思わず「ひっ」と声が出て、全身の身の毛がよだつ。何度も訪ねたい場所ではないが、プノンペンに行くなら一度行くべき場所ではあった。施設はユネスコ記憶遺産(世界の記憶)に登録されている。

 館内の資料が多く、オーディオガイドも非常にていねいに作られているため、隅々まで見てまわるには2時間以上かかる。ルートの最後の記念品などを売るスペースには生き残った8名のうちの1人がおり、本人の話を聞くこともできる。国も人種も宗教も関係せずに行なわれた大量虐殺を検証する冷静な提示が、来場者を内省させる施設だ。

プノンペンの街中にある「トゥール・スレン博物館(S21)」。元々、高校の校舎として作られた場所だ。オーディオガイドを頼りに各棟を進む
STARTの矢印の下には「Pokémon GO」を禁止の提示
拷問に転用された運動器具。白い墓は、ベトナム軍によりS21が解放されたときに発見された遺体のもの

「クラタペッパー」で定番品を購入、アモックを堪能して観光終了

 S21を見学し終えた時点で16時30分ごろ。ANAの22時50分発の帰国便に乗るには、市内をクルマで19時には出発したほうがよいとのことで、残りは2時間半程度。残りの時間でお土産物の購入と夕食をとった。

 行ったショップは、前日の展示会で知った雑貨の店「Daughters」。ここも欧米系の慈善団体が性的な人身売買から被害者を救い、働く場所を提供する目的で運営している。商品の値段は現地としてはやや高いが商品のデザインがとてもよく、ひとつひとつ手作りで丁寧に作られていて、日本でいえば雑貨作家が出店している商品のような、独特の雰囲気がある。場所はリバーサイド南側。同団体が運営する「White Linen Boutique Hotel」という名称の小さなホテルに併設されている。

 続いて、カンボジアの特産品として有名な胡椒の専門店「クラタペッパー」へ。白い一軒家の1階にあり、クラタペッパーの商品と、NGOの取り組むコーヒーや綿製品などカンボジアの特産品が販売されている。

 このクラタペッパーは、かつて“世界一美味しい”と世界中で知られながらポル・ポト派により米以外の栽培が禁止されたことで途絶えてしまったカンボジアの胡椒栽培を、農業復興支援として長年取り組んでいる日本人の倉田浩伸氏が運営するショップ。

 倉田氏は大学生でNGOのボランティアとしてカンボジアへ。そこで難民支援に関わって以来、カンボジアの農業復興支援に20年以上携わっている。現在は5.8ヘクタールの胡椒農園を経営し、クラタペッパーは最高級の胡椒として世界的に認知されている。

 クラタペッパーの胡椒はフルーティでさわやか。肉料理に合う「黒胡椒」、スープに合う「白胡椒」、ドレッシングに合う「完熟胡椒」のほか、ステーキソースなどに最適な「酢漬けの緑胡椒」などが販売されている。ほかのカンボジア特産品はいろいろなショップで手に入るのだが、クラタペッパーはこのショップでしか手に入らない。倉田氏の話を聞くだけでもかなり感銘を受けるが、お土産としても逸品が手頃な値段で手に入る。

 カンボジアでいろいろなショップを巡って分かったことは、一般的なお土産物屋で買えるものは実はロシアン・マーケットにほとんどある。値段も安いので大量に買うなら間違いなくこの市場だ。ただし、かわいいと思うものはベトナム製だったりタイ製だったりと輸入物のことも多々ある。一方で自分のお土産に買って帰りたいと思うようなデザインだったり上質のものは、ボランティア精神とは関係なくNGO関係者の店で見つかることがほとんどだった。

かわいいデザインの小物やバッグが満載の「Daughters」
“世界一美味しい”と言われたカンボジアの胡椒を復興させた、倉田浩伸氏の運営する胡椒の専門店「クラタペッパー」
日本のNGO団体が農業支援に取り組む製品も豊富に揃う

最後の夕飯に「アモック」を堪能

 市内を離れる直前、最後の夕飯にいろいろな人から勧められた「アモック」という魚料理を食べるため、「THE SUGAR PALM」へ。シェムリアップにも支店がある有名な店で、プノンペン支店は2階建ての白い邸宅を改装した雰囲気のよいレストランだ。

 アモックは、白身魚をココナッツベースのマイルドなカレーで煮込んだ料理で、ハーブがたっぷり使われている。白身魚だがチキンのような食べ応えがあって非常に食べやすい。1人での食事だったのでこのアモックしか食べられなかったが、揚げ春巻き、グリーンマンゴーのサラダ、ココナッツスープなど野菜がたっぷり使われ、丁寧に作られた料理が豊富。都内にあったら間違いなく人気店になりそうな、何人かで来てゆっくり食事したい場所だ。

 これで市内の観光を終え、19時過ぎにクルマで空港へ向けて出発した。空港へ行く道は大渋滞。広場ではイスとテーブルを出して大家族で食事する人々がいたり、ダンスの練習をしている人々がいたりと見ていて飽きない。プノンペンはまだまだ各国のNGOが盛んに活動している一方で、高層ビルも続々と建設されている。

 数日しか過ごしていないので大きなことは言えないが、負の遺産から復興中の面はありつつも、クメール文化や「王」がいる安定感をベースに感じる。街中では大声を出したり怒鳴ったりする人も少なくて過ごしやすく、素朴な笑顔を見せてくれる人が多くて、タイともベトナムとも雰囲気が違う。ビジネスではだまされたり盗られたりということも多いようで起業は理想どおりにはいかないことも多いようだが、街のパワフルさと変化の早さにここでチャレンジしたくなる気持ちも分かる。

 観光では玉石混交が激しく、例えば台湾のようにふらっと行ってどこに入ってもある程度美味しい、という奇跡は起こらない。ただし下調べしておけばかなりレベルの高い観光が短い日数でできるし、刺激を受ける物を見たり人に出会ったりすることもできる街だった。

ていねいに作られた良質のカンボジア料理が食べられる「THE SUGAR PALM」
念願の「アモック」を最後に食べられた。フィッシュアモック7.5ドル(約780円)

帰国時は市内19時離脱が必須! プノンペン国際空港の豪華なラウンジ「Plaza Premium Lounge」は必見

 帰国便となるプノンペン~成田のNH818便は、22時50分に出発、成田に戻る。プノンペン市内からプノンペン国際空港までは遠い場所からでも9kmほどで普段なら30分もかからない距離なのだが、前述のとおり夕方のラッシュ時には渋滞が非常にひどく、1時間以上かかることも少なくない。今回は市内を19時に出発して正解だった。これから行かれる方はぜひ参考にしてほしい。

 空港の敷地内、館内の外は出迎えか客待ちか、到着時に見たのと同じでごった返しているのだが、一歩セキュリティのチェックを受けて館内に入ると別世界のように静かで安全。チェックインカウンターが並ぶエリアでは、プノンペン中心部のシルエットが描かれている。

プノンペン国際空港のチェックインカウンター。街のシルエットが美しい

 チェックイン後、エスカレーターでフロアを1つ上がって出国審査を通過すると、すぐに免税店だ。タバコやお酒、化粧品などの免税品のほか、市内で見たカンボジア土産の主要な物がここに揃っていた。アンコールワットクッキーから、胡椒、コーヒー、せっけんなどプノンペンの銘品が確実に揃う。買い忘れたお土産は最終的にはここで十分手に入るだろう。

出国審査後にある充実した免税品販売コーナー
カンボジアの銘品がここに一同に揃っていた

 帰りもビジネスクラスが利用できたので、プノンペン国際空港に2015年にオープンしたばかりのラウンジ「Plaza Premium Lounge」が利用できた。ビジネスクラスの利用がなくても2時間35ドル(約3640円)で有料利用することもできる。オープン時間は朝4時から深夜1時まで。場所は免税店を抜けて右奥に進み、さらにエスカレーターでひとつ上の階に上がった場所にある。免税店などの店舗からは遠い端のエリアにあるが、ちょうどこの日、NH818便の搭乗口の目の前で、直前までラウンジで快適に過ごせた。

免税品エリアを出て右奥にずっと進むと、左が搭乗口、右上がラウンジのスペースに出る
「Plaza Premium Lounge」は広々としたソファスペースを備えたラウンジ
料理がとても充実している。その場で作ってくれるグリーンパパイアサラダは辛いが絶品だった

 ラウンジ内は、オシャレで広々としたスペースにソファやテーブルが並び、ドリンクや料理がとても充実している。ここで食べたグリーンパパイアサラダはまさにハーブ満載。ドレッシングをその場で作って混ぜ込んで作られ、最後に食べたカンボジアらしい料理として大満足の1品だった。

 ラウンジ内では有料でマッサージが受けられるスペースもあり、フロントで強く勧められた。待ち時間が短かったため受けなかったが、ほとんどの席が埋まっている盛況ぶりだった。プノンペンではマッサージがとても安いので毎日受けるビジネスマンも少なくない。市内よりはもちろん高めだったが、1時間20ドル(約2080円)でオファーされたので日本で受けることを考えればまだ格安。受けたくなる気持ちもよく分かる。

 快適で名残惜しいラウンジをあとにして、目の前の搭乗口からNH818便に搭乗した。

軽めの食事後、快適な就寝。朝食でフライトを締めくくる

搭乗を待つボーイング 787型機。行きと違ってノーマルな塗装機だ

 搭乗すると、「到着前のミールオーダーシート」が配られ、朝食を食べるかどうか、種類などを事前に申告する。成田到着は翌日6時40分着となるため、朝食を食べるのは5時ごろだ。到着後そのまま仕事なら、食事をするよりもギリギリまで寝ていたいと思うのも理解できる。

朝食の種類や食事のとき起こすかどうかなど事前に申告

 各座席に配られているのは、行きと同じヘッドフォン、羽毛の掛け布団「コンフォーター」、枕、ヘッドフォン、スリッパ、靴べらに加え、行きではバーコーナーに設置されていたアイマスク、歯ブラシセットなど快眠グッズが一式セットになったアメニティ袋が追加されていた。

アメニティには行きのアイテムにプラスして快眠アイテムが追加される
離陸後見えた夜景。10年後には激変していそうだ

 帰国便は、離陸後、ウエルカムドリンクとアミューズが配られ、希望者は就寝前に軽めの食事が取れる。「青さ海苔うどん」や「小丼(鶏そぼろ丼)」、「パストラミビーフのチャバッタサンドウィッチ」などのほか、行きにもあった「茅乃舎 野菜スープ」や「ミックスナッツ」などがラインアップされ、複数注文することもできる。

アミューズには「エビのマリネと2色のパプリカ ハーブドレッシングとともに」を選択
青さが上にたっぷり乗った、だしが美味しい「青さ海苔うどん」
夜食にぴったりなサイズの「小丼(鶏そぼろ丼)」
「パストラミビーフのチャバッタサンドウィッチ」は食べ応えも十分

 軽めの食事が済むともう日付が変わり、客室はライトダウンして就寝モードに。昼間市内で観光したあとなので疲れもあり、席をリクライニングさせてコンフォーターをかぶったら一瞬で熟睡してしまった。リクライニングも快適だったので途中1度も起きず、気が付いたらもう朝方だった。

 到着前に、最初に選んだ「和食」か「洋食」の朝食が提供される。和食を選んだため、口取りに「梅くらげ」「有頭海老芝煮」「鮎甘露煮」「浜焼きつぶ貝」、主菜に「鮭幽庵焼き」「茸御飯」、そして味噌汁がセットになったものが提供された。朝食とはいえ十分に盛りだくさんで、行きと同じく秋をイメージさせる飾り付けがされている。旅行中、念のため生ものを避けていたので、刺し身やマリネが特に美味しく感じた。

和食の朝食。メインは「鮭幽庵焼き」。朝食としては十分な量
秋を感じさせてくれる口取りの数々
旅行中避けてきた生ものがやっと安心して食べられて美味しく感じた
主菜のごはんは「茸御飯」

 ちなみに、洋食のほうはアペタイザーのほか、メインディッシュが「グリュイエールのオムレツ チキンソーセージ添え」、ブレッドが「クロワッサン ブルーベリーマフィン」、ヨーグルトに「ヨーグルト ストロベリーソース」のセット。チーズがたっぷりのオムレツが美味しそうだった。

 食べ終えるころには着陸も間近。帰りの所要時間は5時間55分と行きよりも短く、今度は時差を2時間進めるため、体感的にはまだ5時頃でかなり眠い。ただし、その分ビジネスで使うことを考えると、時間は非常に有効に使えるだろう。ちなみに成田空港の国際線の到着ラウンジにあるANA ARRIVAL LOUNGEを利用すれば、シャワーも利用できる。ラウンジオープン時間も6時30分~19時30分なので到着時はオープンしているはずだ。

 成田空港に到着したボーイング 787型機は朝日を浴びてとてもキレイに見えた。早朝の入国審査は乗客も少なくごくスムーズ。都心行きの成田エクスプレス「NEX2号」は07時44分発、東京駅着が09時03分。そのまま仕事でも直行すれば間に合いそうだった。

 実際に行ってみるまでと、行ってからではがらりと印象が変わった今回の旅。成田~プノンペン線は、アンコール・ワットへの観光の足がかりとしてはもちろんのこと、激変するプノンペンの街を観光がてら自分の目で見てみたり、ビジネスで行き来したりと、この先10年で大きく変わっていくだろう。今後の街と、成田~プノンペン線の躍進に期待したい。

成田空港に到着。朝日を浴びたボーイング 787型機がキレイだった

西村敦子

1973年東京都生まれ。IT系出版社を経て編集者兼フリーライターに。雑誌やWeb媒体での執筆・編集を行なっている。WatchシリーズではInternet Watchでのお得サイトの紹介や、家電Watchでの製品レビュー等を執筆。5歳男児の子育てに、仕事以上の忍耐力を試される日々を送る。