旅レポ

名物も観光地も充実の山口県西部! 食と絶景を堪能する旅へ(その3)

海底トンネルを歩き、水族館ではペンギンに魅了され、関門海峡沿いで美味しいものをいただく

壇之浦古戦場が見渡せるみもすそ川公園の源義経像とそして関門橋

 山口県西部の魅力を伝えるべく県が実施したプレスツアーのレポートも3回目。前2回では美祢市から長門市、下関市と回ってきたツアー初日の様子をお届けしてきたが、ツアー2日目でめぐるのは下関市と宇部市。今回は下関市でぜひ行っておきたいスポットとグルメを紹介したい。

関門海峡を歩いて渡れる関門トンネル人道

 下関といえばやはり関門海峡の存在を抜きにしては語れないだろう。壇ノ浦の戦い、馬関戦争など歴史的な出来事が起こった場所として有名だし、下関と門司を結ぶ関門橋はランドマークとして印象に残るところ。ところでこの関門海峡、歩いて渡れるのをご存じだろうか。

 というのも海峡の地下を通る関門トンネルは上下二重構造になっており、上に自動車が走る道路、下に歩行者が通行できる関門トンネル人道がある。この人道を利用することで徒歩でも海峡を横断できるというわけだ。トンネルの距離は780mで下関から福岡県の門司まで続いている。

 そんな関門トンネル人道を実際に歩いてみることになったが、通行するにはまずエレベーターでトンネルの入口がある地下約50mまで降りていく。エレベーターを出ると、一瞬、「あれ? 地下鉄の乗り換え?」と錯覚してしまうような円柱が並ぶ空間が目の前に広がり、駅の地下通路といったたたずまいのトンネルの入り口が見える。見た目はありふれた地下鉄駅のような風景だ。

関門トンネル人道の入口
トンネルに入るにはまずこのエレベーターで地下約50mまで降りる
エレベーターから出るといよいよトンネルへ
丸く掘られたトンネルの下側に歩行者用の通路が設置されている

 しかし、トンネルをのぞいてビックリ。向こう側がうかがえず、果てなく続いているように見える。端が見えないのは780mという長距離に加え、トンネルが中間地点の低い箇所へ、ゆるやかなV字型に伸びているため。よく目を凝らして遠くを見てもかろうじてV字の底が見えるかな、といった感じである。果てがないように見える地下の一本道というのは、普段ではちょっとうかがえない景色。これも絶景と言っていいだろう。

長く長く続く関門トンネル人道

 トンネルを歩いていくと何度かランニングする人とすれ違った。トンネルは、観光はもちろんのこと、通勤や買い物といった生活の通路として使われており、雨が降らないなどの理由からジョギングにも利用されているとのこと。また、徒歩での通行は無料だが、通行料20円を支払った上で降りて押せば自転車や原付でも通行が可能だ。

 歩くこと数分。関門トンネル人道の一番の見どころである山口県と福岡県の県境が現われた。床に線が引かれ、「山口県」「福岡県」と書かれている。普通の道路でも県の境界線を見つけるとワクワクするが、ましてやここは海底。ちょっとレアな県境だ。思わずまたいでみたくなるのは人情だろう。

トンネルの道幅はやや狭め
海底トンネルということで壁面には魚やタコなど海の生物が描かれている
歩いていると山口県と福岡県の県境が
誰しもやってしまいたくなる県境またぎ

 今回は山口県のツアーということで門司側まで行かず県境で折り返して帰ってきたが、下関側と門司側でスタンプが用意され、両側でスタンプを押して完成させる横断記念証も用意されている。海底を通って越境するのはなかなかできない体験。ぜひ、下関に行ったらチャレンジしていただきたい場所だ。

横断記念証は下関側と門司側でスタンプを押して完成する
トンネル入り口向かいのみもすそ川公園で上演している「歴史体感☆紙芝居」。壇ノ浦合戦や幕末に興味のある方なら楽しめる内容だ
関門トンネル人道

所在地:山口県下関市みもすそ川町(下関側)
TEL:083-222-3738
営業時間:6時~22時
定休日:年中無休

ペンギンやフグに魅了される水族館

下関市立しものせき水族館 海響館

 続いて訪れたのが海響館。正式名称が下関市立しものせき水族館「海響館(かいきょうかん)」といい、ペンギンやフグなどといった海洋生物や魚の生態を、ユニークな方法で公開している水族館だ。この海響館は、トリップアドバイザーの日本における人気水族館ランキングでは3位にランクインし、現在話題となっている。

 最初に向かったのがペンギンの施設「ペンギン村」の亜南極ゾーン。ここではキングペンギン、ジェンツーペンギン、イワトビペンギン、マカロニペンギンといった亜南極に住むペンギンが公開されている。施設は広々としたスペースなのだが、それにもかかわらず入口付近にはキングペンギンが数羽待機し、人が近づいても動じる様子なくジッとしている。ガラス越しとはいえペンギンが間近に見られ、かわいいもの好きな方ならこの時点でノックアウトまちがいなしだ。筆者も思わずシャッターを切ってしまった。

「ペンギン村」の亜南極ゾーンに入るとキングペンギンがお出迎え
望遠レンズを使わなくてもこのようにキングペンギンのアップが撮影できた!

 そして展示スペースの水槽側に回ると、ペンギンが泳いでいる様子も見られる。水槽の下はトンネルになっていて人が通ることもでき、ペンギンの泳ぎを下から見ることも可能だ。さらに海響館では1日2回、11時と15時30分に「ペンギン大編隊」というペンギンが群れで泳ぐところが見られるイベントも開催。8月~9月はペンギンの羽が生えかわる時期ということであまり水の中に潜らないとのことだったが、実際に見せていただいたところ魚のように泳ぐ群れが見られ、陸上でのよちよち歩きとのギャップに魅了されてしまった。

亜南極ゾーンでは水槽が大きく取られ、ペンギンがのびのび泳ぐ様を観察できる
陸上と打って変わって水中では俊敏だ
「ペンギン大編隊」の様子。取材当時は、海響館の方によると換羽の時期なので泳ぐペンギンの数が少ないとのこと

 また、ペンギンというと寒いところにしか住まないというイメージがあるものの、実は温帯にも生息している。「ペンギン村」では別途、温帯ゾーンを設けてフンボルトペンギンを飼育している。このゾーンは生息するチリのアルガロボ島の環境を再現しているとのことで、こちらも水槽で泳ぐ様が見られるほか、土が掘られた巣では巣ごもりする様子もうかがうことが可能。巣にたたずむ姿は思わずほっこりするはずだ。

生育環境を再現しフンボルトペンギンを飼育している温帯ゾーン
エサを求めて集まるフンボルトペンギン
土を掘って巣を作るということで、巣の様子も再現されている
巣の中におこもりするペンギン

 ペンギンを見てそのかわいさに癒されたあとは、下関ならではのフグコーナー。こちらはトラフグをはじめ世界のフグが集結。毒やトゲがあって怖いというイメージも、近くで見るとこれまた愛嬌があり思わず和んでしまう。特にハリセンボンの仲間のポーキュパインフィッシュはくりくりとした目がキュートで、ツアーの女性陣から「カワイイ!」と評判に。

世界中のフグを展示しているエリア
冷たい海に生息するカラフルなフグたち
今回、女性陣に人気だったポーキュパインフィッシュ。よちよち泳ぎもかわいかった

 海響館見学に設けられた時間は1時間だったが、ほかにもゴマフアザラシやピラルク、イルカとアシカのショー、関門海峡のコーナーなどがあって盛りだくさんで、もう少し時間があれば……という気持ちになってしまった。海の生物がじっくり楽しめるのはもちろん、かわいいと癒しを求めて水族館に行きたいと考えるなら、行って損はない水族館だ。

瀬戸内海の魚を飼育しているエリアでは最大で約5万匹のイワシが群泳するところも見られた
下関市立しものせき水族館 海響館

所在地:山口県下関市あるかぽーと6-1
TEL:083-228-1100
営業時間:9時30分~17時30分(最終入館 17時)
定休日:年中無休
Webサイト:下関市立しものせき水族館 海響館

唐戸市場とカモンワーフでグルメめぐり

週末と祝日に「活きいき馬関街」が開催される唐戸市場

 さて、トンネルと水族館と回ったらお腹が空くのは当たり前、ということで次は「食」の出番。まず向かった先が唐戸市場だ。フグの市場として有名な場所だが、実は毎週金・土・日曜と祝日には一般客向けの店が立ち並ぶ催し「活きいき馬関街」を開催。その日に獲れた魚を使った寿司や海鮮丼などが販売される。活気ある市場の雰囲気を感じながらリーズナブルな価格でいただけるとあって、実際に市場に入ってみると店の前は人だかりができていた。

 寿司の屋台では100円均一や特大サイズのコーナーがあり、好きなものを選んで購入可能。さらにちょっと歩くと、エビフライやフグのから揚げといった揚げ物の店もあり目移りしてしまう。なお、寿司は購入するとトレイに箸と醤油をつけてすぐに食べられる状態で出され、食べ歩きはもちろん、市場内のテーブルスペースで食事をすることが可能だ。寿司を少しいただいたが、獲れたての魚ということで身が締まっていて味が濃く、満足できる内容だった。

寿司の店をのぞくと種類別に並んでいる
揚げ物を販売している店も。ふぐのから揚げもある
寿司を購入。トレイに醤油やワサビと一緒に乗せてあり、すぐに食べられる
「活きいき馬関街」の様子。開いている店には人が集まっている

 唐戸市場で「活きいき馬関街」を体験したあとは、市場のすぐ近くにあるシーサイドモールのカモンワーフへ移動。カモンワーフとは関門海峡に面し、山口県や下関ならではのグルメを取り揃えたレストランとお土産屋の施設だ。今回目指すは「旬彩炙りダイニング からと屋」。山口名物の瓦そばを食べさせてくれるお店である。

今回、瓦そばをいただいた「旬彩炙りダイニング からと屋」

 瓦そばとはその名のとおり、熱した瓦の上にそばや具材などを乗せて焼く料理。下関市豊浦町が発祥で、一説によると西南戦争の際に薩摩軍の兵士が熱した瓦を使って食材を焼いて食べた話が元になっているそうだ。瓦に乗せるのは、茶そばに薄切りの牛肉を煮たもの、錦糸卵、きざみ青ネギ、そして薬味は海苔とレモン、もみじおろしがスタンダードらしい。

山口のご当地グルメ、瓦そば。茶そばの上に牛肉や錦糸卵、きざみ青ネギなどが乗っている

 焼いたそばは温かいつゆにつけて食べるのだが、瓦に面したところのそばが瓦の熱で焼かれパリパリに。つゆを染み込ませると麺がパリパリ半分くたくた半分という得も言われぬ食感が楽しめる。日本そばを使うということであっさりとした印象に見えるかもしれないが、麺はあらかじめ炒めてあり、牛肉や錦糸卵が入っているので食べごたえは十分。

「旬彩炙りダイニング からと屋」では瓦そば1食で2人前。しかも現在、11月30日まで「メガ盛りフェスティバル」を開催。麺を増量してエビとフグの天ぷらがそれぞれ2つずつ乗せた「メガ盛り瓦そば」を提供している。胃に余裕があり余る方はメガ盛りに挑戦してみるのもアリだろう。

左が「メガ盛り瓦そば」で右が普通の瓦そば

 さて、寿司と瓦そばをがっちりと食べてしまったが、1階に降りるとデザートの誘惑が。カモンワーフは1階に軽食やスイーツのスタンドが並んでいる。うにのソフトクリームやふくバーガー、ふく白子焼きなど、ここでしかいただけないグルメが多数。買ったあとはデッキで関門海峡を眺めながらいただくことが可能だ。

カモンワーフの1階グルメその1。ご当地の名産「垢田(あかだ)トマト」のソフトクリーム

 下関でグルメを楽しむなら、週末と祝日の唐戸市場の「活きいき馬関街」に行ってお寿司をつまみ、カモンワーフで食事、そして1階デッキで海を見ながらおやつという流れは最強と言っていいかもしれない。食べすぎが心配されるところだが、せっかくの旅だし欲張ってみたいという方は、この3連の流れを試してみてはいかがだろうか。

その2。左から「ふくバーガー」「くじらバーガー」「ふく竜田バーガー」
その3。ふぐの白子が入った「ふく白子焼き」
その4。左が海をイメージした海ソフト、右がうにが入ったうにソフト
カモンワーフの1階デッキ。関門海峡の風景が楽しめる
唐戸市場

所在地:山口県下関市唐戸町5-50
TEL:083-231-0001
営業時間(活きいき馬関街):金・土曜 10時~15時、日・祝 8時~15時
Webサイト:唐戸市場

旬彩炙りダイニング からと屋

所在地:山口県下関市唐戸町6-1 カモンワーフ2階
TEL:083-229-5640
営業時間:11時~15時、17時~23時
定休日:年中無休
Webサイト:旬彩炙りダイニング からと屋

 今回は関門トンネル人道から海響館、唐戸市場、カモンワーフと関門海峡つながりのスポットを紹介してきた。海峡の風景を見る、海峡にまつわる歴史的な出来事に思いを馳せるだけでもワクワクするが、今回紹介した場所に訪れてみればさらに下関を満喫できるはず。さて、次回で旅も終わり。最後は宇部市のレポートを紹介していきたい。

丸子かおり

フリーライター/編集者。主にIT系の記事を執筆することが多いが、科学系の書籍や料理本を手がけることも。趣味はごはん・手芸・デジタルなどジャンルを問わない自作。著書は「AR<拡張現実>入門」(アスキー新書)、「放射線測定のウソ」(マイナビ新書)など。ブログはhttp://mrk-reco.com/