旅レポ
名物も観光地も充実の山口県西部! 食と絶景を堪能する旅へ(その1)
梨と地鶏を堪能し、海の上のアルプスを楽しむ
2016年9月15日 00:00
山口県が、県西部の下関市、美祢市、長門市、宇部市を巡り、食と絶景の魅力を伝えるプレスツアーを実施した。本州最西端の地である山口県は名所からグルメまで観光資源が豊富なのは多くの人が知るところ。しかも、先日行なわれた日ロ首脳会談において、安倍総理大臣とプーチン大統領は12月15日に山口県長門市で会談することで合意したという。
観光地としての人気が以前からあるのはもちろんのこと、プーチン大統領の来日で今、改めて注目を集めている山口県西部。果たしてどんな魅力があるのだろうか。4回に分けて山口県プレスツアーの様子をお届けしていきたい。
二十世紀梨の概念が変わる美味しさ「秋芳梨」
今回、最初に訪れたのが美祢市で梨の生産を行なっている秋芳梨生産販売協同組合。梨の産地というと鳥取や千葉のイメージが強いものの、山口においても質のよい梨が育てられている。特に秋芳梨は全国農業コンクールで農林水産大臣賞名誉賞を受賞するほど。なお、この秋芳梨というのは品種名ではなく、山口県美祢市秋芳町で生産された二十世紀梨のブランドを指す。
秋芳梨生産販売協同組合の組合長である永嶺克博さんによると、秋芳梨の美味しさの秘密は美祢市秋芳町の台地にあるという。秋芳町は日本一のカルスト台地である秋吉台のふもとにあることから水はけがよく、盆地であるため寒暖差が激しく美味しい梨が育ちやすい環境なのだそうだ。永嶺さんは「台地特有の石灰岩によって土壌はカルシウムなどミネラル分が豊富なため、秋芳梨は甘みと酸味のバランスがあってみずみずしく、きめ細やかな食感が味わえる」と話す。
二十世紀梨というと一定の年代以上の方ならお馴染みだと思うが、正直言うと筆者は苦手だった。子供のときによく親がむいてくれたのを食べたものの、酸っぱくってジャリジャリしている、そんなイメージがあって、大人になってからあまり食べることがなかったのだ。しかし秋芳梨を試食したところ甘みと酸味がマッチしており、果肉が緻密で食感もシャリシャリと軽い。また、梨を食べたときにありがちなジャリッとした感触が口に残るようなこともなく、溶けるように口のなかに消えていく。今まで食べていた二十世紀梨は何だったのだろう、と思わされてしまうほどの美味しさだった。なお、永嶺さんによると2016年は夏が暑く雨が少なめだったため、果実の糖度がさらに高く甘いらしい。
また、秋芳梨生産販売協同組合では秋芳梨のなかでも樹齢80年以上の木129本から収穫された梨を、果物専門店の新宿高野で「長寿梨」としてブランド化し、販売。敬老の日の記念品やギフトとして好評を得ているとのこと。今回、長寿梨の畑に連れていっていただいたが、ちょうどこれからが収穫時で、至るところに袋掛けされた実がなっていた。
秋芳梨は通常の梨より果実が大きめなのが特徴。しかし実を大きくし、なおかつ質をよくするためには果実が小さなうちから形のわるいものを摘み取る摘果作業を何度も行ない、1本の木になる実の数を制限。組合では着果数や果実の品質を管理しているという。さらに二十世紀梨は果皮が弱いため、成長の度合いに応じて袋掛けを2回行なわないといけない。手間がかかるということで全国的に二十世紀梨の生産量が減ってきているなか、秋芳梨生産販売協同組合ではあえて手をかけて作っているのだ。果物好きならぜひ一度は味わってほしい、秋芳梨はそんな魅力にあふれている。
秋芳梨生産販売協同組合
所在地:山口県美祢市秋芳町別府3639
TEL:0837-65-2221
Webサイト:秋芳梨生産販売協同組合
長門の地鶏グルメと「ながとりめん」
梨の次にいただくのは地鶏。うかがったのは長門市内のレストラン「旬菜ダイニング 金の鈴」だ。もともと長門市は養鶏業が盛んで人口1万人あたりの焼き鳥屋店舗数が日本トップクラス、酒飲みでなくても子供からお年寄りがおかずとして焼き鳥を食べるのが当たり前な土地柄だという。
「旬菜ダイニング 金の鈴」では、山口の地鶏である長州黒かしわを使ったメニューを提供している。長州黒かしわとは地鶏のやまぐち黒鶏にロードアイランドレッド種を掛け合わせて誕生した品種で、歯ごたえがありながら柔らかい肉質が特徴だ。実際に焼き鳥や手羽元焼、和風ステーキなどさまざまな鶏料理をいただいたが、どれも鶏独特の臭みがなく、ほどよい噛みごたえでジューシーかつ味が濃い。食べているとき、長州黒かしわは値段が普通の鶏肉の3倍ほどすると聞いて驚いた。しかしそれもうなずける味だ。
そして長門市で注目のご当地グルメが長州黒かしわのガラを使った「ながとりめん」。太麺と控えめに注がれた薄褐色のスープ、そして具として半熟煮卵と鶏チャーシュー、刻み青ネギ、そして海苔が乗った麺料理。ラーメンとつけ麺の中間といった感じのビジュアルだ。濃厚ながらくどすぎない鶏ガラと魚介のスープとモチモチとした太麺の組み合わせは食べごたえがあり、またチャーシューには甘い地元のたまり醤油を使っていることで鶏の味に深みが加わっている。
この「ながとりめん」を開発したのはプロの料理人ではなく、市役所の職員有志により結成されたチームNGT。“NGT”とはもちろん長門の略。代表の西原秀卓さんによると、地元食材を使った食材で、地域を盛り上げたいという思いで2012年に開発したそうだ。地元のグルメのコンテスト「N-1グランプリ」に出品したところ準グランプリを受賞し、そのことをきっかけに地元飲食店のメニューとして登場することになったという。
「ながとりめん」は西原さんの自宅で試行錯誤のうえ完成したが、開発段階でスープにコクがなかなか出なくて苦労し、鶏の皮を入れて煮ることで解決したという。また、山口のラーメンは細麺が主流なので、「ながとりめん」に使う太麺は県外から仕入れている、という意外な裏話も。
なお、長州黒かしわの値段はお高めと紹介したが、こちらの「ながとりめん」は650円(ハーフサイズは450円)とリーズナブル。お酒を飲んだあとの締めにも、ランチにもよさそうな1杯だ。
旬菜ダイニング 金の鈴
所在地:山口県長門市東深川892-1
TEL:0837-22-2885
営業時間:11時~14時、17時~23時
定休日:昼は月曜日、土曜日、日曜日、祝日 夜は月曜日
Webサイト:旬菜ダイニング 金の鈴
海の上のアルプスを船でめぐる
続いて向かったのは仙崎港にある青海島観光汽船。「食と絶景を堪能する旅」であるからには、やはり次は絶景の出番だ。仙崎港から観覧船に乗って長門市の北にある青海島(おおみじま)の周囲を観光することができる。この島は荒波によって作られたダイナミックな奇岩や洞門、断崖絶壁が連なっていることから、「海上アルプス」と呼ばれているそうだ。
青海島の各絶景ポイントを船で回るコースはいくつか用意されているのだが、今回体験したのは島の北西にある観音洞まで回って折り返す、所要約1時間の「観音洞」コース。実際に港に出てみると、ピンクやブルー、ベージュといったクジラやイルカを模したものなど大小のかわいらしい遊覧船が並んでいる。
船に乗り、いざ出発して10分前後で見えてきたのが、横たわった象のような姿に穴の開いた岩「花津浦」。遠くから見てもかなりボリュームがあるフォルムに圧倒されるが、この「花津浦」には秘密があった。今回のガイドを務めた岡村有菜船長が「岩の左上に観音様がいますよ」というのでよく見てみると、確かに岩の上で誰かが拝んでいるような姿が。自然の造形で岩が偶然、観音様が拝んだような姿になったものだという。
また、青海島は奇岩のほかに洞も見どころである。海上からニョキッと生えたように見える「筍岩」の向かいには洞が3つ並んだ「コーモリ洞」が。岡村船長によると姿が羽を広げたコウモリに似ているのでこの名前がついたとのこと。
そして今回のクルーズの目玉が「夫婦洞」。洞が2つ並んでおり、なおかつ奥でつながっているのでその名がついたそうで、最大幅が13m、奥行きが80mと大きく、船で途中まで入って中をのぞくことができる。今回搭乗した船は大きかったので頭が入るかな、という感じだったが、昔からロールプレイングゲームをプレイしてきた筆者は迫る岩肌を見て、「わー! ダンジョンだ!」と血が騒いでしまった。
途中、暗色の岩が混じった花崗岩が波で削られ、ヘビやウサギなどに見える模様が浮き出た「幕岩」を通過し、ラストの「観音洞」へ。「観音洞」の中には「女性観音」、外には「男性観音」と呼ばれる対になる名所がある。海が穏やかなときの「観音洞」クルーズでは両方見られるとのことだったが、今回は波が荒いため「観音洞」に入れず、上に伸びるよう立っている奇岩「男性観音」のみの見学。
クルーズでは海上を走る爽快さもちろん、さまざまな岩や洞が次々に現われて自然の造形の不思議が十二分に楽しめた。今回、悪天候のあとだったため海が濁っていたものの、天気のよい日なら透明度が高くきれいな海を堪能できるそうだ。
青海島観光汽船
所在地:山口県長門市仙崎字漁港南4297-2
TEL:0837-26-0834
営業時間:8時~17時(12月~2月末は9時~16時)
定休日:年中無休 ※荒天の場合は欠航する場合もあり
Webサイト:青海島観光汽船
最初から美味しいものをいただいたうえ、青海島の絶景を眺め、「こんなに幸せ気分でいいのか」という感じだが、プレスツアー初日もまだ前半。次回もまた、初日の続きを紹介していきたい。