旅レポ
グルメ、景色、歴史をまとめて味わう山口県1泊2日の旅(その2)
道の駅、角島大橋、角島灯台で海と海の幸の素晴らしさに触れる
(2015/12/9 00:00)
山口県が同県の魅力を伝えるべく実施したプレスツアーレポート第2回目の舞台は「海」だ。“山口県への旅でいきなり肉”という、なんと言うか……意外性のある内容でスタートした同ツアーだが、やっぱり山口県に来たら“海の幸に舌鼓!”的なスポットは外せない。
今回訪れたのは、下関市豊北町にある「道の駅 北浦街道ほうほく」だ。2012年3月にオープンした道の駅で、2015年5月に来場者数150万人を突破。単純計算で年間50万人弱が訪れていることになる。訪問時も、平日の昼間にも関わらず普通車109台の駐車の半分以上は埋まっている状態で、その人気を感じられた。
道の駅 北浦街道ほうほくは、現在、本州最西端の道の駅となっている。山口県の地理的には北西端に近く、国道191号と国道435号との交差点からほど近い。つまり、山陰、山陽、下関など、どの方面からもアクセスしやすい。付近は北長門海岸国定公園に指定されている風光明媚な海や多くの漁港、そして角島と、観光やグルメに適したスポットが多い。
そんな道の駅 北浦街道ほうほくへ来た最大の目的は「わくわく亭」で海の幸を味わうこと。わくわく亭は地元で水揚げされた海産物や野菜などを使った料理が売りのレストランだ。
いただいたのは「海鮮丼」(1650円)。まぐろの幼魚やスズキ、タイ、ヒラマサ(現地ではヒラソと呼ぶらしい)、イカ、赤ウニ、いくら、バナイ海老に、特製の海鮮ダレをかけて味わう。ちなみに、この海鮮丼に使われているイカは、イカ好きのみならず難読地名ファンも一度は口にしたいであろう「特牛イカ」だ。特牛は「こっとい」と読み、特牛漁港に水揚げされた高級な剣先イカを「特牛イカ」としてブランド化している。
見るからにぷりぷりの魚たちは、1つ1つの味が濃厚で、タイのような白身魚も淡泊な感じがない。港町で味わう新鮮な魚には何物にも代えがたい魅力があると再認識した。この海鮮丼は、わくわく亭の一番人気とのこと。1つ1つの味も十分過ぎるほど満足度が高いのに、いろいろなそれを一度に味わえるお得感は魅力だ。このほかにも、長門市の仙崎で獲られたモズクと下関の麦味噌を使った味噌汁など、この地域が海の幸に恵まれていることを、これでもかというほどに感じさせられる料理に「そういえばお肉食べたばかりでは?(注:その1)」と感じつつも、一気に平らげてしまった。海産物はヘルシーさも利点なので何の問題もないだろう。
さて、この道の駅 北浦街道ほうほくの施設は、わくわく亭のほか、地域物産品を販売する「ほうほく夢市場」や、ケーキショップ「パティスリー メゾン ド・ラメール」などのお店がある。そして展望を楽しめるテラスやトイレも見どころだ。
さりげなく書いた「トイレ」については男性読者向けの話しかできないが、海に向かってなにかをするあれのようななんともいえない開放的な気分になれる素敵な設計なので、同地にたどり着くまでガマンするだけの価値があると断言したい。
そして、道の駅 北浦街道ほうほくで忘れてはならない存在が、すでに写真で紹介している、マスコットキャラクターの「ほっくん」である。
この日はプレスツアーに参加した我々を歓迎する意味もあって、姿を見せてくれたのだが、オレンジの巨体に“クリッとした目”という表現では足らないほどの大きな目。そして、申し訳程度に着ている水兵さんのような青と白の衣装。見た目のインパクトからして抜群だ。ちなみにこの衣装は季節やシチュエーションによって着替えているらしい。申し訳程度の装飾なのに芸が細かい。
そして、決めポーズは足の裏にさりげなく書かれたハートマークを見せるべく片足を上げたもの。なのだが、ハートマークがさりげなさすぎて、そこにハートマークがあると言われなければ分からない人も多いのではないだろうか。決めポーズそのものも、その愛敬ある姿のせいでイマイチ決まり切っていないところが愛らしい。
なにより、その巨体。入り口の自動ドアを難なく抜け、「おぉ! さすがに考えて作られている!!」と感心したのも一時のことで、展望テラスに出る扉では見事に詰まる。しばらく、引っかかった状態を維持していたのは、おそらく、これも見どころなのだろう。見ている人が十分に楽しんだところで、柔軟性を活かして力業で扉を抜け、もう一度歓声を浴びる。その間の取り方も絶妙だ……と冷静に分析したかのように書いているが、たぶん見ている人はみんなそういうところに気が付いていると思うのだが、それでもつい頬が緩んでしまうところが、ほっくんの魅力だろう。
ほっくんのデザインは文字どおり丸々としているが、豊北の海岸線で見られる「だるま夕陽」や「豊北梨」「豊北みかん」を融合させたものだという。もっとも、取材時は、収穫されたばかりの大きなオレンジ色のカボチャが展望テラスに飾られており、これ一緒に並んでポーズを決めると、ほっくんもカボチャにしか見えなくなる。でも、たぶん、これも狙っているに違いないと記者は見た。
愛らしいキャラクターに後ろ髪を引かれつつ、次に向かったのは「角島大橋」だ。本州と角島を結ぶ1780mの橋で、2000年に開通。無料で渡れる橋としては「伊良部大橋(3540m)」「新北九州空港連絡橋(2100m)」「古宇利大橋(1960m)」に次いで4番目に長い橋となる。
……といった基本的な話よりも、景色の素晴らしさでその名を知る人も多いのではないだろうか。ベストセラー書の「死ぬまでに行きたい!世界の絶景」で3位にランクインしたほか、旅行口コミサイトのトリップアドバイザーが2015年10月に発表した「口コミで選ぶ日本の橋ランキング」という少々マニアックな香りがするランキングでは見事1位に輝いた。
橋は吊り橋や斜張橋のような大がかりな上部構造のないシンプルな桁橋で、海の上にスマートなラインを描いている。訪問日はあいにくの曇り空だったが、エメラルドグリーンの海の上を走るこの橋の美しさの一端を十分に垣間見ることができる。青空であったならば、このエメラルドグリーンもさらに美しく見えたのだろうと思うと悔しい気持ちがあるのも否定できないが、再訪を誓って同地をあとにした。
この角島大橋を渡った先の角島も見どころは多い。「しおかぜの里 角島」では、角島で獲れるわかめなどの海産物や、同じく角島産の芋100%の芋焼酎、地ビールの角島ビールなど、同島の名産品を購入できる。
また、同施設の目の前にはコバルトブルーの海を楽しめる、その名も「コバルトブルービーチ」があるほか、付近にはビーチやキャンプ場が並ぶ。少し季節外れの紹介と思われるかも知れないが、サーフィンのスポットとしても知られているとのこと。冬の海を眺めるのが好きな人にもお勧めだ。
そして、角島でもっとも目立つ観光スポットが「角島灯台」だ。明治9年に点灯を開始した石造りの灯台で、現在も現役で稼働している。日本の灯台を数多く手がけた、いわゆるお雇い外国人のR.H.ブラントンによる設計で、日本海側では初めての大型灯台で、かつ同氏が日本で設計した最後の灯台でもある。石造りの灯台としては日本で3番目の高さとのことで、塗装されていない、御影石が剥き出しの外観が印象的だ。
また、1874年にイギリスで製造された正8角形のフレネルレンズを採用。フレネルレンズについては筆者も漠然としか理解していないが、レンズを同心円状に配置することで、長焦点を薄くできるのが利点。例えば、同心円の模様が見えるルーペやカメラのフラッシュの前面パネルなどもフレネルレンズの一種だ。灯台では灯りを遠くへ届けるためにフレネルレンズを活用することがあり、焦点距離の長さによって等級が分かれている。角島灯台で使われているフレネルレンズはもっとも長い焦点距離の等級である一等レンズで、これは日本の灯台では5カ所しかないという。歴史的な価値に加えて、レア度でも見逃せないスポットなのである。
しかも角島灯台は現役の灯台でありながら、内部が公開されているのもうれしい。この内部公開を継続するために参観事業に対する寄付金という形で200円を支払うことで、内部を見学できるのだ。5月~9月は9時30分~16時15分、10月~4月は9時~15時45分に受け付けている(受け付け終了15分後に参観終了)。
灯台の高さは30m。内部にエレベータはなく、まずは105段のらせん階段、続いて80度の角度を持つ12段の階段を上がることで展望スペースへたどり着くという、それなりに体力が必要な施設だ。
が、灯台の上に立った瞬間、その疲れを美しい景色と潮風が吹き飛ばしてくれる。繰り返しになるが、この日は天気に恵まれなかった。それでも、灯台の上から見渡す360度パノラマの風景は素晴らしいものだった。緑に恵まれた角島と青い海の対比が素晴らしく、これに青い空が加わったらさらに美しいのであろう。改めて天気のよい日に角島を再訪問しようと決意したのだった。
2回に渡って山口県プレスツアーの端緒を開いた下関市内のグルメ、名所をお伝えした。下関市というと関門海峡や市街地がある南部のイメージが強かったのだが、中北部の山間部や日本海沿岸も素晴らしいスポットに恵まれている。日本で最大の面積を持つ本州の最西端に立つという経験を一度はしておくのもよいだろう。
ちなみに、角島灯台は9月26日~翌2月28日の日程でライトアップを実施している(日没~21時)。さらに11月21日~12月27日のクリスマスシーズンにはふもとの夢崎波の公園もライトアップされており、冬の角島灯台を楽しむ絶好の機会でもある。
さて、1泊2日のプレスツアー初日は、肉、魚、橋、灯台と盛りだくさんの内容だが、初日の行程がまだ続く。次回は場所を長門市へ移して、次なる山口県の魅力を味わうことにする。