【イベントレポート】ツーリズムEXPOジャパン2016
「温泉」「食」「ウォーキング」で日本を元気に
ANA総研やぐるなびが観光推進機構を設立。各社のチャネルで海外にも発信
2016年9月27日 16:30
- 2016年9月23日 発表
日本が世界に誇る資源である「温泉(ONSEN)」を核とし、温泉地がもつ「食」と「文化」を、「ウォーキング」などを通じて体感する「ONSEN・ガストロノミーツーリズム」事業を展開するために、一般社団法人として「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」が10月3日に設立される。それに先駆けて9月23日、「ツーリズムEXPOジャパン2016」が開かれている東京ビッグサイト内にて記者会見が開かれた。
ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構は、会長に東京都市大学教授の涌井史郎氏が、副会長に日観振(日本観光振興協会)理事長の久保成人氏と、ぐるなび代表取締役社長の久保征一郎氏が、理事長にびゅうトラベルサービス顧問の見並陽一氏が就任予定だ。
一般社団法人ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構
会長: 東京都市大学 教授 涌井史郎氏
副会長: 公益社団法人日本観光振興協会 理事長 久保成人氏
副会長: 株式会社ぐるなび 代表取締役社長 久保征一郎氏
副会長: 株式会社ANA総合研究所 会長 浜田健一郎氏
理事長(代表理事): 株式会社びゅうトラベルサービス 顧問 見並陽一氏
専務理事: 株式会社ANA総合研究所 代表取締役副社長 小川正人氏
常務理事: 株式会社ぐるなび 常務執行役員 本橋勉氏
理事: 一般財団法人自然公園財団 専務理事 阿部宗広氏
理事: 国民保養温泉地協議会 会長/山口県長門市 市長 大西倉雄氏
監事: 公益社団法人日本観光振興協会 国際交流推進室 室長 中村慎一氏
ヘルスツーリズムとして「ONSEN」が国際語になってほしい
記者会見ではまず、会長に就任予定の東京都市大学 教授 涌井史郎氏からの挨拶があった。
推進機構の設立は、国土と個人双方に重要な役割を果たす試みであり、地方を活性化させ、観光という事業を通じた国内の対流現象を強めていくためのものであると説明。人口が減少し地域社会の維持もままならない地方が増加するなか、かつて「湯治場」と呼ばれていた地域が消滅することは大きな問題であるとして、ここにインバウンドも含めて多くの人があらためて湯治の習慣に触れ、長期滞在してもらえるような交流が起きれば望ましいと、主旨を話した。
そして、「『美味しいものを食べて、癒されたい』というのは国民共通の願望であり、それに対する答え、ヒントとして欧米では、フランスのアルザス地方を中心としたムーブメントに美食学、『ガストロノミー』という言葉にあるように、食や食文化を通じて健康を維持していこうという考えがあります。一方で『カントリーウォーク』といった歩きながら地域の美味しいものを食べ、健康を維持していくというムーブメントもあります。
日本でもその土地ならではのものを食べることが人間の健康にとっていいんだという考えもあり、自然と接して、食文化と接して、自分のストレスをマネージメントしていくことが、歴史的にも培われてきています。これを国土と人間の健康のために『温泉』という日本の資源を活用しながら、活性化していくことを目的としております」とガストロノミーについて説明。
最後に「将来、『温泉』が単なる日本語ではなく、こうした食文化を楽しみ、地域を称揚する日本人ならではのヘルスツーリズムとして『ONSEN』という国際語になっていく未来を私は期待しています」と挨拶を締めくくった。
日本のどこかで毎週末ガストロノミーウォーキングが開催されるようにしたい
続いてびゅうトラベルサービス 顧問 見並陽一氏から機構の事業内容などについて説明があった。
機構が日観振と環境省の協力を得ての設立であることに感謝を述べたあと、「ガストロノミーツーリズム」とは、地域にある食、食材、酒、レシピ、料理人とその思い、食堂・レストラン、そういったものに光を当てて、多くの人に広めていく、その地域をブランド化していく新しいツーリズムの取り組みであり、海外ではあらたなムーブメントであると説明。
日本でも、日観振がUNWTO(国連世界観光機関)と2015年12月に包括的な業務提携を結んでおり、ガストロノミーツーリズムの日本における定着、世界との交流といった取り組みを始めており、そのような流れを踏まえた本機構の設立であると話した。
その流れを受け、日本の観光立国の喫緊の課題であるインバウンド4000万人、5000万人という大きな数字には、東京、名古屋、京都、大阪といったゴールデンルートだけでなく、日本各地に訪れてもらわないと達成できない。地方創生を観光の力で、という大きな運動があるが、この目的を完遂させるには、世界に通用する魅力ある観光地にならなければいけない。魅力ある観光地を作るためにも、日本観光の魅力である「温泉」と「和食」をそれぞれの地域で提供し、アピールしていく必要があると説明。
「温泉と食をウォーキングで、歩いた目線で地域の食や景観、自然そのものを体感していく、そういった運動を推進してくことが目的です。そういったことで、温泉地の価値を滞在型・体験型の観光の宿泊拠点へと転換させていき、日本のすばらしい食を通じたあらたな体験を、インバウンドを含めた観光客に提供し、地域交流を活性化していきたい」と機構の狙いを語った。
機構は、ガストロノミーウォーキングコースを全国津々浦々に設定し、その設定の支援と認定を行なって、情報発信をして多くの参加者を集めていくことが主な事業内容であり、まずは別府市でキックオフウォーキング大会を11月19日に開催するという。今後は日本のそれぞれの地域において向こう5年で100カ所、100の自治体でガストロノミーウォーキングを実施できる体制を目指し、「100カ所それぞれが年に1回開催して、毎週末、日本のどこかでガストロノミーウォーキングが開催されていくような状況にしたい」と機構の目標について話した。
ガストロノミーウォーキングには地方創生の大きなイベントに育ってもらいたい
第1回のガストロノミーウォーキングが開催される大分県別府市からは、市長の長野恭紘氏が挨拶をした。
キックオフウォーキング開催地に選ばれたことに感謝を述べたあと、別府市はインバウンドを含めて年間800万人以上の観光客が来ているが、最近は単なるサイトシーンではなく、体験型の観光を求める傾向にあると説明。それぞれの地域の歴史、伝統、文化、産業を体験できるようなプログラムが必要であり、その核としての大きなイベントとして第1回を開催したいと話した。
そして「今は準備に奔走中ですが、しっかりと準備をして皆さんに喜んでもらえるイベントにしたいと思っています。別府であれば別府のにおいがするでしょうし、今後はそれぞれの地域でさまざまな顔が表われるイベントになっていくと思います。この取り組みは、地方創生のまさに原点になるのではと思っています。各地域の特色が出る素晴らしいイベントに育っていくのではと期待しております」と挨拶した。
ガストロノミーを広げることで日本経済に寄与したい
ANA総合研究所 会長 浜田健一郎氏の代理で出席した代表取締役社長 岡田晃氏は、KADOKAWAやJTB、JAL(日本航空)らが参画して9月16日に設立されたアニメツーリズム協会と本機構の役割についての質問に対し、「老若男女、日本人、外国人、人それぞれニーズが多様化しております。ツーリズムでアニメという切り口があれば、温泉や食、ウォーキングという切り口があり、ツーリズムのすそ野が広がっているわけです。それが地方と力を合わせてやっていくことで、地方創生を進めていく一助になると思っています」と、観光の多様性に対応したそれぞれの役割があると説明。
「さまざまな切り口でツーリズムで多くの交流が広がること、ガストロノミーが広がることで、日本が元気になっていく、日本全体を活性化していけるのでは」と話した。
また、機構の世界に対する認知拡大への施策については、同じような取り組みをしているアルザス、シアトルなど、世界の絶景を扱うアソシエーションと提携して交流を深めることで発信しつつ、世界7カ国で展開しているぐるなびの協力を得て、ANAグループがもつチャネルも通じて世界にアピールしていきたいとした。