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キャセイパシフィック航空、“パーフェクトなプラットフォーム”エアバス A350型機の初号機導入セレモニー

48機をオーダーしているA350型機の技術解説も

2016年5月30日 実施

 キャセイパシフィック航空は5月30日、6月1日から香港~マニラ線で就航予定のエアバス A350型機の初号機導入を記念したセレモニーを、香港国際空港に隣接する格納庫で実施した。

セレモニーの会場となった、Hong Kong Aircraft Engineering Company Limited(HAECO)の格納庫
A350型機に関する情報を紹介する看板が立てられた
セレモニーはA350型機初号機をバックに実施
キャセイパシフィック航空の従業員のほか、関係者やファンらが招待された

 キャセイパシフィック航空 Chief Operating OfficerのRupert Hogg氏は、「A350型機によりキャセイパシフィック航空は、よりリッチな体験を提供できる。この航空機は、次のレベルの乗客の体験を提供するうえで、パーフェクトなプラットフォームだ」と述べ、「A350型機は次の世代のリファレンス機」と位置付けた。

 客室の広さ、静かさ、機内の気圧、大きなオーバーヘッドコンパートメントなどのA350型機の特徴に加え、新たな客室使用、機内Wi-Fiインターネット接続サービスなどを提供。また、すでにA350型機の投入が予定されているロンドン・ガトウィック空港など、ヨーロッパへの新たな就航地を実現するものであるとした。

 また、セレモニーには、香港Permanent Secretary for Transport & Housing(Transport)のJoseph Lai氏も登壇。「創立70周年を迎えるキャセイパシフィック航空の新たなチャプターのはじまり」と祝福。同様にニューヨークなどの長距離直行便を運航できることで、香港国際空港のハブ機能の強化、その先にある業界、若者、香港のビジネスチャンスについて述べた。

 また、同日発表した、香港国際空港での新たな取り組みについても触れている。これは3RSシステムの構築に必要な経費をまかなうために、8月1日発券分以降から、空港出発客から追加の料金を徴収するというもの。日本行きの場合は“短距離(Short Haul”に相当し、ファーストクラス/ビジネスクラス使用時で160香港ドル(2300円強、1香港ドル=14.5円換算)、エコノミークラス使用時で90香港ドル(1300円強)を徴収される。詳しくは同空港のニュースリリース(英文)を参照してほしい。

キャセイパシフィック航空 Chief Operating OfficerのRupert Hogg氏
香港Permanent Secretary for Transport & Housing(Transport)のJoseph Lai氏
A350型機をバックに記念撮影
参列者全員で手を振って集合写真を撮影

 このセレモニー先立ち、キャセイパシフィック航空が導入したA350型機の技術説明ならびに客室を説明するメディアブリーフィングが行なわれた。ここでは技術説明ならびに機外の特徴をまとめておく。

 メディアブリーフィングの冒頭で挨拶したキャセイパシフィック航空 Director Corporate AffairsのJames Tong氏は、「ここ2~3日はスリルのある日が続いたが、この先長きにわたってエアラインの標準機となる機体。今日はキャセイパシフィック航空にとって偉大な一日だ」と喜びを表わした。同社は2010年に同機を発注、受領まで6年を経たが、ここ2~3年はA350プロジェクトチームとエアバスが密に連携をとってきたという。

 A350型機に関する技術説明は、そのチームを率いたキャセイパシフィック航空 Head of A350 ProjectのRobert Taylor氏が行なった。同社では、2016年から2017年にかけて22機のA350-900型機を納入予定で、その後、2018年より胴体を7m伸ばした長胴型のA350-1000型機を26機導入。2016年から2020年まで5年をかけて、計48機のA350型機を導入する。なお、2018年導入開始予定のA350-1000型機については、客室仕様の詳細な説明はなかった。

キャセイパシフィック航空 Director Corporate AffairsのJames Tong氏
キャセイパシフィック航空 Head of A350 ProjectのRobert Taylor氏

 ここでの説明は主にA350型機全般にわたることとなる。客室は、

・側面の壁がより垂直に近い角度で設計されているので圧迫感が少ない
・3分間隔の空気の入れ換えを行なうことで常にきれいなエアコンディション
・エアコンの精度の高さ、従来機では8000フィート相当であった機内の気圧が6000フィート相当となり過ごしやすい
・フルカラーLEDで日の出、日の入りなどをシミュレートしたムーディなライティングが可能
・大きな声を出さなくても会話が可能な静かな環境音
・全クラスで広いオーバーヘッドコンパートメントを利用できること

といった利点を紹介した。客室については、実際に見学もできたので、その模様と併せて別記事でお伝えする。

 技術面では、主に効率にフォーカス。軽量で、腐食に強い素材である、カーボンファイバーやチタンとアルミニウムの合金、炭素繊維強化プラスチックなどを広く採用することで、燃費が25%改善するほか、メンテナンスの負担も軽減される。

 航空システムについても信頼性を高めたほか、操作の効率を向上。搭載されるコンピュータモジュールを従来から50%減らしたことによる高効率や、ソフトウェアのアップグレードが可能な点、プライマリシステムに問題が生じても“乗客に気付かれる間もなく”スタンバイしていた別のシステムへ切り替える冗長性の高さも特徴として挙げた。

 エンジンはロールスロイスの「Trent XWB」。燃料効率、静音など、エアバス A350型機の特徴を支えるものとして紹介があった。

3クラス/280席仕様のA350-900型機を22機導入後、長胴型で航続距離も長いA350-1000型機を2018年から導入する
広く圧迫感の少ない客室
大型のオーバーヘッドコンパートメント
フルカラーLED採用でカスタマイズ可能な客室内証明
客室の空気環境、気圧の高さ、エアコンの精度の高さなどを紹介
「25%」をキーワードにA350型機の効率を説明
カーボンファイバーを中心とした素材、アビオニクス、主翼のデザイン、エンジンの4項目を技術的なポイントとして説明
独特の曲線を描く主翼の設計により、より高速に飛べるほか、燃料タンクの設計にも好影響を及ぼしているという
コックピットにはヘッドアップディスプレイも装備
機体の軽量化、エンジン、高効率の空力などで燃費を25%改善
エンジンはロールスロイスの「Trent XWB」
飛行機の電気制御面での優位点
機体の多くにカーボンファイバーやチタン、アルミ合金などを採用
フライトマニュアルはすべて電子化されている

キャセイパシフィック航空のエアバス A350-900型機の外観

キャセイパシフィック航空のエアバス A350-900型機(写真提供:キャセイパシフィック航空)
機首部分。コックピットの窓枠の独特のラインはA350型機の特徴的なところ
機尾部分。当然ながら2015年に導入した新塗装を採用している
機体後方寄りの上部に機内インターネットサービス用のアンテナが取り付けられている
機体左斜め後方から見たところ
主翼のライン
翼端の曲線もA350型機の特徴的なところ。内側にキャセイパシフィック航空の「ブラッシュウイング」が描かれている
ロールスロイスの「Trent XWB」
カウルの側面にロールスロイスのロゴ入り
機体底部
タイヤまわり。ノーズギア、メインギアともにミシュランの「AIR X」を採用している
後部の貨物室。与圧が可能で、ペットなどもここに入れて運ぶことになるという

(編集部:多和田新也)