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「年に1か月、日曜だけ」幻のバスも廃止? 2026年3月で消える名物路線バス
2026年3月31日 12:00
運転手不足の解消にめどが立たず、原油の輸入も不安定。乗客の減少も著しく、地方の路線バスは消滅の一途をたどっている。
本稿では、2026年3月のダイヤ改正で廃止される印象深い一般路線バスを取り上げていく。かつての幹線バスであったり、地域の要望に応えた路線が経営不振のもとになったり、新しい主役に役目を譲ったり……。今年は「3月廃止」があまりに多過ぎて網羅できないが、そのごく一部の路線の状況を見てみよう。
新宿の「免許維持路線」ついに力尽きる
小田急バス 新宿駅西口~よみうりランド(2026年3月15日に運行終了)
「運行は6月の日曜日、1往復のみ」。辛うじて存続していた、新宿直通の「よみうりランド」行きバスが、6月の運行日を待たずに正式に消滅した。
シーズン中には1日3万人、年間200万人以上が来場するよみうりランドにダイレクトにアクセスできるにもかかわらず、運行は年に4~5往復程度。系統番号すら振られておらず、いわゆる「免許維持路線」(認可のために最低限の運行を続けるバス路線)の扱いであった。
乗車難易度が異様に高いせいか、乗っているのはいつもバスファンのみ。新宿から70分をかけて、4区3市(東京都新宿区・渋谷区・杉並区・世田谷区、調布市・稲城市・川崎市)をまたぎ越していた。駅西口・小田急ハルク前のバス停には運行日ごとにおびたたしい行列ができ、乗車できなかった人々も多数いただろう。
こう書くと惜しまれるように見えるが、そもそもよみうりランドへのバスは京王・小田急の各「よみうりランド駅」から頻繁に出ており、京王側からのゴンドラ「スカイシャトル」もある。わざわざ新宿から長時間乗車する理由は何もないわけで、早々に免許維持路線化した理由が、なんとなくお分かりいただけるだろう。
昨年には、出発地点が小田急ハルク前・35番乗り場から隅側の発着場所に変更になっており、廃止を予感した人々も多かっただろう。もう走ることはない「日本一都心を走った免許維持路線バス」を惜しみたい。
なお、「稲城市iバス」もダイヤ改正で、よみうりランドを経由するDコースが運行終了した。これで、「遊園地行きの路線バス」は、ほぼ変わらないものの、多少は減ったことになる。
バス乗り継ぎが、どんどん不可能に……
テレビ東京「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」などで見られた路線バス乗り継ぎも、全国的なバス廃止の流れでルートが途絶えつつある。今回の廃止では、どうなのか。
関東バス石岡・土浦線(2026年4月1日廃止、前日に最終運行)
石岡~鉾田間・竜ヶ崎~佐貫間の鉄道を運営していた「鹿島参宮鉄道」と、土浦~岩瀬間の鉄道線を運営していた「常総筑波鉄道」が合併して誕生した「関東鉄道バス」にとって、石岡~土浦間のバスは、両エリアをつなぐ重要なバス路線であった。
昭和30年代~40年代は、常磐線に限らず国鉄は貨物列車・特急列車を重要視しており、普通列車は1時間に1本も走っていない、俗に言う「汽車ダイヤ」も多かった。石岡・土浦線もそういった国鉄の補完路線の名残であり、国道6号を経由して両都市を結んでいた。
いわば、半世紀以上前の移動需要の名残だ。今や6号の沿線にはトライアル、ドン・キホーテなどの量販店が立ち並ぶ、クルマ社会の象徴のような市街地になっており、向こうに見える常磐線も1時間で数本も走るようになった。もはやバスの乗客を増加させることはできず、よく令和の今まで持った!というバス路線でもある。
なお、ほとんどの区間でバスは廃止となるが、途中の「つくば国際大学付属東風高校」への通学バスは残る。
さて乗り継ぎルートを確かめてみよう。福島県側から徒歩距離5km内で一般路線バスを乗り継げたルートが、石岡で途切れて乗り継ぎができなくなる。実は、水戸駅→茨城空港間の一般道経由バスが生き残っており、ここから「かしてつバス」乗り継ぎで、水戸から土浦まで到達できる。
拙著「路線バスで日本縦断!乗り継ぎルート決定版」では、土浦から「谷田部→守谷→岩井→(利根川渡河)→千葉県・野田→埼玉県・松伏→越谷」という乗り継ぎを提案しているので、ぜひご覧いただきたい。
ジェイ・アールバス北海道 宮65系統 宮の沢駅~小樽駅 ※宮の沢駅~手稲駅間の部分廃止(2026年4月1日廃止、前日に最終運行)
「札樽線」と呼ばれていた旧・国鉄バス時代からの名残をくむこの路線は、かつての「65系統」(札幌駅~小樽駅間)の札幌駅側が地下鉄東西線・宮の沢駅発着となった1999年に「宮65」に改称。札幌~小樽~長万部~函館間までつながる路線バス乗り継ぎルートの一角を担っていた。では、このルートは乗り継げなくなるのか?
実は、札幌~小樽間の一般道乗り継ぎのバスは、すでに手稲駅発着がメインとなっている。宮の沢駅発着のバスはすでに平日1本となっており、バス乗り継ぎには影響もなし。かつ、他系統のバスもあるため、廃止停留所もないようだ。
思い出の秘境路線バス「熊本・内大臣経由」も廃止へ
熊本バス 内大臣線(旧M4-3系統)甲佐~砥用~内大臣入口~浜町(2026年4月1日廃止、前日に最終運行)
昨年10月のダイヤ改正で「熊本桜町バスターミナル」直通が消滅して半年、書籍「秘境路線バスをゆく」(イカロス出版)で取り上げられた「内大臣経由のバス」自体が消滅する。
このバスは、熊本市内から1.5時間もかかる甲佐・砥用のバスターミナルから、1000年近くまえの「源平合戦」の落人が住み着いたとされる秘境「内大臣(山都町)」のあたりに入っていく路線であった。一帯は営林署や森林鉄道、当時は「東洋一」と称された有料道路橋(内大臣橋)などがあってにぎわいを見せていたようだが、そのエリアの入口に向かう道路は、バス1台がギリギリ通れるほどの狭隘なものであった。
杉林に囲まれたうっそうとした山あいを走るバスはファンにも人気が高かったが、豪雨による被災で「内大臣入口」停留所の手前でバスは折り返しとなっており、完全復旧することもないままに廃止となる。
そんな内大臣行きのバスで、筆者は貴重なシーンを見かけたことがある。バス1台分の幅しかない道路での行き違いスペースで、待っている軽自動車の窓から幼稚園児くらいの子供が身を乗り出し、「じじー!」と絶叫しているではないか。バスの運転手さんのお孫さんが会いに来たようで、軽自動車を運転されていたお母さまが「どうしてもお爺ちゃんに会いたいって言うから!」と苦笑いしながら、運転手さんと子供でハイタッチとハグをして去っていったのを覚えている。
十数年前の話なので、運転手さんもおそらく退職されているだろう。のんびりした山あいならではのバス旅の風景であったが、もう見ることができないのは残念だ。
やはり止まらぬ地方の「路線バス多量廃止」
各地の路線バスは1系統、2系統にとどまるが、なかには一挙10系統も廃止になる場合も。それぞれの事情を見てみよう。
函館バス 各路線(2026年4月1日廃止、前日に最終運行)
・46系統/64系統 共愛会病院正門前・循環
・50系統 東山墓園裏~赤川
・58系統/58A系統 亀田支所循環
・59系統 旭岡中学校前~函館バスセンター
など10系統以上
2025年10月改正でも郊外路線で大ナタをふるった函館バスが、函館市内の宅地をゆくバス路線の大幅整理に踏み切った。
ただ、この改正ではほとんどのバス停が残る。住宅街の奥までカバーしていた循環路線を整理し、幹線道路沿いのバス停に運行を集中させるという。
例えば、五稜郭・共愛病院から出発する46系統・64系統だと、43系統・43C系統などでカバーする「清尚学院高等学校前」バス停周辺の運行は確保され、東側の富岡美原通に入っていくルートはバス停が消える。
これらの改正は大ナタに見えるが、実際に廃止となるバス停は各路線の半分以下にとどまる。かつ、廃止となるバス停の乗車人数は1日0人~1人の場合が多く、生活への影響はあまり影響はない。
運転手不足がことさらに進む函館バスならではの、苦肉の策のようなダイヤ改正と言えるだろう。
北九州市営バス 各路線(2026年3月28日に最終運行)
・二島~小倉線(北九州市役所前~折尾駅など)
・小石~渡場・若松病院線(若松渡場・若松病院~若松営業所など)
ほか合計19系統
系統の統合による新ルート開設などの陰で、系統は大幅に消滅する。利用が減少している「若松渡船」への接続系統の大幅削減や、折尾駅~青葉台・ひびきの方面には増便など、かなりメリハリがついた路線整理を行なったようだ。それにしても、ここまで廃止系統が生じているのに、廃止バス停がほとんどないのは驚きだ。
しかし、北九州市営バスには、もう1つ懸念される点がある。イラン情勢による原油高によって、4月分の燃料入札に参加した6社が誰も応札しないというピンチに陥っている。公営バスはガソリン価格が変わったからといってすぐに価格を変更できず、こういった「買い負け」がよく生じる。
今のところ「小口で細かく随意契約」でガソリンを確保するなどの手で、短期のピンチを乗り切ろうとしているが、現状では4月~5月分も不透明だ。増便策での積極策が吉と出るか、凶と出るか。まず、原油価格の推移を見守りたい。

































