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この技術、未来を動かす! JR西日本の技術展「イノベーション&チャレンジデイ」を楽しんできた

2026年1月27日~28日 実施
JR西日本「イノベーション&チャレンジデイ」に行ってきた

JR西日本の技術、どんどん外部販売できる?

 JR西日本が鉄道会社なのは、言うまでもない。しかしそれだけでなく、人を運び、安全を考えるためのノウハウをさまざまな業界から得つつ、外部にも販売していることは、あまり知られていない。

 グランフロント大阪で1月27日~28日に開催された「イノベーション&チャレンジデイ」では、JR西日本が注力する取り組みや、グループ約30社の技術を目の当たりにする展示を見ることができた。

 JR西日本は、鉄道事業の運営を通じて「街づくり」「MaaS」「環境配慮」といった、さまざまな経験を積んでいる。かつ、高度な技術を持つ企業を次々とグループに迎え入れており、こういったノウハウやイノベーション(革新的な技術)は、ほかの鉄道会社に限らず、さまざまな業界に外部販売できるものも多い。

 来場した企業のなかには、グループ会社が持つ技術に興味を持ち、担当者と延々話し込む姿も。JR西日本はこういった技術展を開催することで、ビジネスの領域を広げることができる。今回の「イノベーション&チャレンジデイ」では、どんな技術や取り組みをアピールしていたのか?

AI画像解析で駅員さんの救護がラクになる?

JR西日本ソリューション本部「生成AIによる画像解析システム」

画像解析AI「mitococa(ミトコカ)」シリーズ

 JR西日本が内製開発している画像解析AI「mitococa(ミトコカ)」シリーズは、鉄道事業で得た経験・ノウハウを活かし、「定点観測の省人化・省力化」「救護活動の迅速化」を目指している。

 例えば、駅を行き交う群衆のなかで「体調がわるい人」「倒れてしまった人」をさまざまな条件から割り出し、アラートを関係者のメールなどに発信することで、駅員がすぐに対応できる体制を取ることができる。周囲の誰かが目視するか、駅員がたまたま見つけて救護、といった手法しか取れなかった従来に比べて、スムーズに救護活動できる意義は大きい。

 また、工場の構内に入る人のなかから「ヘルメットをしっかり被っていない」工員を見分けたり、排水処理装置の工業排水が「泡立っている」「ことさら汚れている」といった状態を確認するなどの用途を想定しており、今回の展示でも「TRUE(正常)」か「FALSE(異常)」を計測していくような用途を想定しているという。

 将来的には、列車の先頭に乗って線路の状態を確認するような、保線区員による「列車巡回」業務を、撮影した画像を解析することで自動化・負担軽減できないか考えているという。画像解析AI「ミトコカ」で、どれだけ現場作業の負担を軽減することができるのか、注目したい。

JRデジタルソリューション「AIデマンドバス」

「のるイコ」車両

 長らく地域交通の足を担い続けてきたバス路線が経営を維持できなくなったり、駅からスーパー・病院などの目的地へ向かう「ラストワンマイル」移動の確保に苦心するようになった。そこで、予約が発生次第AIで最適ルートを割り出し、複数の乗客がいれば立ち寄って乗せていく「AIデマンドバス」が、路線バスの代替手段として開業するケースが、各地で目立っている。

 そのなかで、JR西日本が運行しているのが、既存の「WESTER」アプリから予約できる「のるイコ」だ。現在のところ、導入地域は岡山県新見市・津山市、沖縄県恩納村など、わずかしかない。

 こういったデマンドバス・デマンドタクシーは「mobi」(WILLER傘下)、「のるーと」(西日本鉄道系列)などが広く知られているが、JR西日本傘下の「のるイコ」では、鉄道沿線ならではのサービスも考えているという。

WILLERが運行する「mobi」車両。北海道根室市にて

 最近では自治体から導入検討の声がかかるといい、「鉄道で行けない地域への移動手段の補完」「路線バス代替の交通確保」といった面で、のるイコ拡充に期待がかかる。ただ、mobi・のるーとなどとの競合は避けられないと見られ、鉄道との連携機能などで、後発として差別化する必要も感じた。

広島県東広島市で行なわれた連接バス・隊列走行実験(画像提供:JR西日本)
JR西日本イノベーションズの「没入型体験謎解きゲーム」「立体ロボット倉庫」説明展示

 そのほか、広島県東広島市で行なわれた連接バス・隊列走行実験の様子や、系列企業とJV(共同企業体)を組んで下水道・橋梁などの公共工事に参加する「JR西日本ビジネスデザイン部」のビジネスプラン、Cuebusとの協業による立体ロボット倉庫化で、車両区内の部品管理の省スペース化や無人運搬を可能にする「JR西日本イノベーションズ」、さらにマンション開発、活魚養殖などなど……。鉄道会社としての知見を活かしながら、「街づくり」「バス代替」などの取り組みを行なっているようだ。この会社、事業領域が広過ぎる!

「この技術が素晴らしい!」JR西日本・系列会社の世界

 系列会社に何社かお話を伺った限り、「技術を見込まれて、近年系列会社になった」という会社も数社あるようだ。全国各地の鉄道会社に求められる技術を持つ系列会社の数々を見てみよう。

富士電機製作所「直流主電動機のメンテナンス」

富士電機の交流説明パネル
103系通勤形直流電車の103系は、関西でも少なくなってきた。写真は奈良線(2007年)

 一般的な知名度は少なくても、鉄道業界で知らない人がいない「富士電機製作所」は、架線からとった電気を回転動力に変換して車輪を回す「主電動機」の保守管理に長けている。1951年創業のこの会社は、2019年にJR西日本テクノスの100%子会社化しており、れっきとしたJR西日本の子会社だ。

 ブースの方にお話を伺ったところ、数少なくなってきた「直流主電動機のメンテナンス」で各地の鉄道会社に重宝されているという。かつてはJRなら103系・105系・117系などが全国で走行していたものの、最新の交流型に取って代わられ、主電動機を扱っていたほかのメーカーも次々と生産・保守を辞めてしまい……。各地のローカル線やローカル私鉄のベテラン車両、年季の入った路面電車の車両を抱える鉄道会社にとっては、もはや富士電機のメンテナンス頼みのようだ。

 同社の主要取引先を見ると、JR各社だけでなく「弘南鉄道」「富山地方鉄道」「とさでん交通」などのローカル私鉄も多い。富士電機製作所では2021年に「直流主電動機の検査能力2倍」という製造ラインを導入しており、コイル巻替えなどのメンテナンスで年季の入った車両をよみがえらせる同社のノウハウは、これからもJR西日本に限らず、各地で重宝されるだろう。

アジア航測「鉄道MMS」

鉄道MMSの説明

 調布飛行場(東京都)、八尾空港(大阪)を拠点に、航空機による撮影と空間情報データの取得を生業にしてきた「アジア航測」は、もともと鉄道と関係を持っていなかったという。

 しかし、同社は道路工事用の機器「MMS」(モバイルマッピングシステム)を全国で数多く活用しており、レーザースキャナ・カメラを使った3次元の空間データ取得のノウハウもある。技術を買われて2013年にJR西日本の連結子会社となったタイミングで、急きょ鉄道の勉強をはじめ、今日に至る。

 今では3台の専用MMS機器(線路の上を走れる機器)を持ち、JR西日本の鉄道路線で建築限界測定・ホーム限界測定などを担っているという。また、数十TBもの容量があるJR西日本全線の空間データを、専用サーバーに補完のうえで、JR西日本の各拠点で取り出せる。保線時にはこのデータを照合することで、より迅速で精密な保守作業が可能になるという。

 また、この技術は各地から鉄道会社の問い合わせも多く、外部販売にも向いている。関連会社になってからも技術が広く役に立ち、販路拡大で“WIN-WIN”になれるのも、「JR西日本流・M&A」のメリットと言えるだろう。

「たおれん棒」。実演の方はちょっと手を添えている程度だ

 このほか同社は、ドローンの技術などを活用して、数mの高さまで伸ばしても倒れない「たおれん棒」の実演も行なった。各地の鉄道高架・道路効果のチェックに役に立ちそうだ。

日本旅行「宇宙旅行予約システム」

 古くからJR西日本の系列企業である「日本旅行」は、壮大に「宇宙旅行」を提案した。

 とはいっても、アメリカの打ち上げ施設などと協業のうえで「実現の可能性を探る段階」。現在のロケットは、燃料の燃焼が終わったブースターを切り離す作業が必要になるが、こういった作業を必要としない「Space tour 3.0」が実現すれば、一般人が宇宙旅行に出かけることができる可能性は、一挙に広がる。

 とはいっても、しばらくは富裕層のみの利用を想定しているとのこと。それでも技術が劇的に進化すれば……。ベタに楽しめるツアーが得意な日本旅行だけに、「カリスマガイド平田進也さんと行く! 宇宙旅行ツアー」などを催行する、かもしれない。

WEST EXPRESS 銀河のモケットで制作した家具。100万円を越えるものもある

 そのほか、夜行特急「WEST EXPRESS 銀河」のモケット(座席用の起毛素材)を使用したソファなどの家具、ジェイアール京都伊勢丹の法人営業部が提供する作業着などの展示があった。

 JR西日本の技術展「イノベーション&チャレンジデイ」を1日巡ったところ、鉄道事業者・運輸事業者の担い手として培った、ビジネス領域の広さに驚いた。鉄道に限らず、建設現場などのDX化・効率化に悩むビジネスパーソンは、来年の「チャレンジデイ」に行けば、何か応用できる技術が見つかるかもしれない。

 鉄道マンの技術とノウハウを広く活かし、外販できるか。JR西日本の挑戦を見守りたい。