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鉄道会社と鉄道ファンが共存するには? 「ファンコミュニティが切り拓く鉄道会社のミライ」講演会に行ってきた
2026年2月2日 12:30
鉄道会社が“推される”ようになるには?
アイドルやアーティストのグッズを買ったり、ライブにいったりといった推し活にハマる人々は多い。では、「鉄道ファン」は推しである鉄道を、どのように応援すればよいのか?
1月27日~28日に大阪・グランフロント梅田で開催された「JR西日本グループイノベーション&チャレンジデイ」のスペシャル講演として、「鉄道ファンと共に歩む未来を考えよう ~ファンコミュニティが切り拓く鉄道会社のミライ~」が行なわれた。
この講演で語られたのは、「鉄道ファンに“推される”鉄道会社のあり方」。鉄道ファンとして知られるタレントの斎藤雪乃さん、鉄道写真家の村上悠太さん、日本旅行の和田晃太さんが登壇した。そして、JR西日本での運転士経験があるJR西日本イノベーションズの岩嶋咲さんからは、運営に携わる鉄道専用SNS「Railil(レイリル)」を通じた、鉄道ファンと鉄道会社の交流の在り方も語られた。
ファンの推しになるべく、鉄道会社も試行錯誤しているようだ。鉄道ファンと鉄道会社、双方の交流でどのような未来が生まれるのか?
鉄道専用SNS「Railil」でJR西日本が得たもの
JR西日本イノベーションズの岩嶋さんは、2022年10月に開設した鉄道専用SNS Raililの運用に関わっている。もともと新快速などの運転士として鉄道運行に携わっていた岩嶋さんは「鉄道ファンの皆さまに新しい鉄道の魅力を発見してもらい、安心安全に楽しめる場所を作りたい。そんな思いで運営を続けてきた」といい、現在では累計約8万件もダウンロードされるほどの、熱量の高い一大コミュニティに成長させてきた。
コロナ前まではいち輸送機関として淡々と移動手段を提供してきた鉄道会社も、人口減少・少子高齢化で利用者の減少に見舞われている。そのなかで、旅行の移動手段として鉄道を選んでくれる鉄道ファンは、JR西日本にとって大切な“お客さま”だ。
鉄道ファンとの関係性を築き、旅行や仕事などで、積極的に鉄道利用の頻度を高めてもらうには、どうすればよいか? 岩嶋さんが必要と考える要素は「お客さまの生の声や使い方を知る」「長く選ばれ続ける関係性を築く」「企業の発信だけに頼らず、口コミで実際に情報を広げる」の3点だという。
この3点を満たすのが、いまRaililで取り組んでいる「ファンコミュニティ」だという。鉄道を通じて楽しい旅の体験を共有したり、ファン同士で思いを語り合ったりするなかで、熱量は上がり、企業を信頼する「ロイヤルカスタマー」となっていく。鉄道旅の醍醐味・メリットをJR西日本が自ら語っても信用されないが、SNSや日常の会話を通じてファン同士での体験談のやり取りなら、自然な形で広まっていく。
JR西日本は広告だけでなく、ファンの信頼を伴った広がり方で、ロイヤルカスタマー(企業を信頼する利用者)獲得を目指している、と言えるだろう。ここまでは、企業目線での話だ。
プライベートでも旅に出る! 斉藤雪乃さんの鉄旅体験
続いては、趣味の鉄道旅行を通じて、関西の各地を巡っているタレントの斎藤雪乃さんが、プライベートでの鉄道旅行を語った。岩嶋さんから「この体験はうれしかったなとか、思い出に残っているなというような体験って何かありますか?」という質問が投げかけられた。
斉藤さん:最近印象に残っているのが、観光列車「うみやまむすび」ツアーへの参加です。
昼過ぎに城崎温泉を出て、餘部駅で一時間ほど滞在して帰ってくるという、全部で3時間ぐらいのツアーを、日本旅行さんの支店で申し込みました。この日はプライベートで、車内はどんな雰囲気で、どんなものを提供するのかを見に行きました。
そこで、ガイドの木村さんという方のおかげで、車内がおもしろい! 田んぼだけの風景でも、「こんな鳥が来ますよ!」とアドバイスして、楽しみ方を教えてくれる。何でもない風景が、いろいろなお話によって、そこだけしかない風景に変わりました。
また、トワイライトエクスプレスへの乗車で、今でも仲のいいお友達もできました。なので、車両が素晴らしいのはもちろんなんですけど、行ってみて、参加しているからこそ得られる人とのご縁っていうのは、大切だなと思います。
鉄道旅行の魅力は、めずらしい車両への乗車体験ではなく、人との触れ合いにもある。JR西日本の岩嶋さんも羨ましがる、「素敵なガイドさんとの出会いによる、新たな気づきの提供」が得られたという、斉藤さんのうみやまむすび体験だった。
なお、この日登壇していた日本旅行の和田さんは、添乗したツアーガイドの木村さんを(同じ社内で)よくご存じで、ガイドとして尊敬しているとのこと。プライベートでの親交も深く「一緒に飲みに行くとボキャブラリーがすごく、6時間くらい帰してくれない」そうだ。
生粋の「ファン目線」はツアーの熱量を高める! 鉄道写真家・村上さんの体験
続いて、鉄道写真家の村上悠太さんが、本業の写真撮影にまつわるこだわりと、ファン目線から見る特急「やくも」引退時のツアーについて語った。
村上さん:「鉄道写真家」と聞くと、走る車両の撮影と思われがちですが、鉄道の現業(現場で作業される方)の方々に密着をして、人を撮影させていただくことが多いです。そのなかで、よく「これ何がめずらしいんですか」「これ、むしろ古くてよくないんじゃないですか」と言われることが多いです。
例えば、日本全国を走っていた「キハ40」(気動車)は、気が付けば活躍の場がなくなっている。僕たちははそこに、価値を見出すことができるのではないか?と思っています。なにげない日常を写真という形で、皆さまに広く魅力を伝えていきたいと思います。いち鉄道ファンとして、「(鉄道に)愛を伝えたい」想いで、取材活動をしています。
そして村上さんも、斉藤雪乃さんと同様に、鉄道ファンとして思い出深いツアーがあるという。
村上さん:2024年4月にデビューした特急・やくもの新型車両(273系)が導入された際に、入れ替わりで381系・国鉄型車両が引退しました。その際のツアーに参加しましたが、過去の「ゆったりやくも」(赤色)塗装を、ちゃんと復刻してくれたのはうれしかったですね。これから引退してしまう車両のために!
「やくも」が走る伯備線の沿線地域のために、JR西日本の現場の皆さんが、まもなくなくなる車両の復刻塗装をやってくださった。僕たち鉄道ファンとして、鉄道への愛を感じることができました。
JR西日本にも日本旅行にもRaililにも、鉄道ファンとしての経験豊富な人々は在籍している。「やくも」の世に、熱量の高い人々を満足させるポイントを織り込んだツアーの開催で、ファンの満足度は高まっていくだろう。
鉄道ファンであり続けてくれる? 呼び戻しに必要なのは「信頼がおけるコミュニティ」
子供のころから鉄道ファンとして育ってきても、就職・結婚などでライフステージが変わるたびに、趣味の時間は減っていく。JR西日本の岩嶋さんいわく、鉄道会社は「変化後も変わりなく、ずっと鉄道ファンでいてもらえるか」といった課題を抱えているという。
ご自身も子育て中の村上さんによると、育児中の間は鉄道ファンであるものの、「この駅のバリアフリーの動線はどうなっているのか」など、「インフラとしての鉄道のとらえ方」という新たな観点に気づいたという。
また、村上さんの子供は、将来は「平日は鉄道の運転士、土日は鉄道写真家」という、2足の草鞋を履く夢を見ているというが、飛行機に興味を持つなど、父親の趣味そのままに鉄道ファンにになるわけではないようだ。とかく、「子育てと鉄道趣味」の両立が大変であるのは、間違いない。
ただ普通の鉄道ファンは、育児や家庭の時間を持つと、どうしても趣味や推し活の時間は減ってしまう。岩嶋さんによると、「鉄道へのロイヤリティ(忠誠心)が高い人々を呼び戻すのに、信頼できるコミュニティが必要」という。
鉄道ファンの「ファンジャーニー」(変遷)を五段階に分けると、子供のころは「認知」、行動力が広くなった時期は「没入・探索」ときて、知らない街を巡りたくなるなどの「体験・参加」とともに、仕事などで趣味の時間は減少する。ここで、「共有・コミュニティ化」で鉄道体験に触れて、再び「ファン化」する。
岩嶋さんによると、Raililはこういった人々を鉄道趣味に呼び戻すのに、役に立っているという。地道なコミュニティ形成が、累計8万ダウンロードやツアーの盛況につながっているようだ。
ほかに東武・阪急も。鉄道会社のファンコミ作り
この講演では、鉄道ファンとJR西日本がRaililなどを通じて、どう関わっていくかが語られた。こういった取り組みは、ほかにも東武鉄道(東武鉄道公式ファンクラブ)、阪急電鉄(レールファン阪急)などでも見られる。
仕事や子育てを経験して、また趣味の世界に戻ってくる鉄道ファンは、岩嶋さんや村上さんが言われたとおり、青年期とはちょっと違った視点を持つようになる。内容を見ると「昭和鉄道高校・見学ツアー」など、ファンなら一度は興味を持ったであろうツアーの開催などもあり、鉄道会社が「大人の鉄道ファン」の在り方を探す取り組みとして、Raililなどに注目していきたい。






























