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東京キャンピングカーショー2025で見た、ひとり旅したくなるクルマを紹介。中古車ベースにも注目集まる

2025年7月26日~27日 開催
たくさんのキャンピングカーが展示される東京キャンピングカーショー2025から、ひとり旅が楽しそうな車中仕様車、キャンピングカーを取り上げてみた

 JRVA(日本RV協会)は、7月26日~27日の2日間にわたり、東京ビッグサイトで「東京キャンピングカーショー2025」を開催した。

 協会が公開しているデータによると、2024年のキャンピングカーの国内保有台数は16万5000台を超えており、この数字は調査を始めた2005年と比べると約3倍にもなる。

 好調な伸びを見せるキャンピングカー界隈ではあるが、昨今は主要車種の納期が生産体制の都合で未定になるなど、「購入希望者はいても販売できるクルマがない」といった状況であり、大きな課題になっている。そのため、キャンピングカービルダーは取り扱い車種を増やすなどして需要に応えようとしている。

東京ビッグサイトで開催された東京キャンピングカーショー2025

「納期が長くなる」という状況のなか、注目を集めているのが中古車だ。特にキャンピングカーベース車として人気のトヨタハイエースや日産キャラバン、それに日産NV200などは、中古車市場に多くあるクルマなので、それらをベースにキャンピングカーへ架装するということであれば、納期はグッと短くなる。

 現在多くのビルダーが中古車ベースのキャンピングカー架装という販売方法を採っていて、ショーに展示するデモカーは新車販売用でありつつ、中古車ベースでキャンピングカーを作りたい人のための見本といった意味合いもあったりする。

 こうした中古車ベースの販売は、架装する中古車込みで取り扱うケースもあれば、ユーザーが自ら中古車を探してきて、それをビルダーに持ち込むというパターンもある。ただ、あまりお勧めできないのはもともとキャンピングカーだった中古車を新しく作り替えるというもの。

 一見すると効率がよさそうに思えるが、キャンピングカーはビルダーごとに作り方が違うので、もともと付いていた装備を再使用できないことが多い。また、ボディが加工されていると、新しく装備するものがつけられなかったりするので、中古車ベースでキャンピングカーを作るのであれば、ノーマルの車両を前提にした方がいいだろう。

リンエイプロダクトの「コンパクトバカンチェス ひとり旅」。新車ベースでの販売のほか、中古車ベースでも同じ仕様の製作を請けている

 こうして中古車ニーズが高まるなか、新たなサービスを開始したのが大手のキャンピングカー販売会社「ホワイトハウスキャンパー」だ。同社は中古住宅に新たな機能や価値を与えるリノベーションをヒントにした取り組みとして、「中古車×新内装」のサービス「リノモビ」(リノベーション+モビリティ)を開始。東京キャンピングカーショー2025でそのモデルとなるハイエースキャンパーを初公開した。

 リノモビはベースこそ中古車だが、架装するポップアップルーフ、ギャレー、給排水タンク、冷蔵庫、テーブル、シート&ベッド、収納、照明、ヒーター、インバーター、走行充電装置、サブバッテリーなどはホワイトハウスキャンパーが扱う最新の装備になる。車内環境は新車ベースのキャンピングカーとなんら変わらないので、他人が使った内装そのままでは抵抗があるという人でも安心して購入できるのでは。

ホワイトハウスキャンパーの「リノモビ」。ベース車の選定もホワイトハウスキャンパーが行ない、そこに最新のキャンピングカー用の装備を架装していく
価格はベース車の程度によって変わってくる。また、架装する都合、ベース車の状態が重要なので車両の持ち込みには対応していない
中古車ベースでの製作は以前からあるものだが、それをブランド化したのはホワイトハウスキャンパーが初のこと
中古車に新品のキャンピングカー装備を施すというジャンルは納期だけでなく、高騰する販売価格に対しても存在感を出しそうだ

ひとり旅を意識したシンプルなキャンピングカーを探してみた

 筆者は、「RVパーク」という車中泊施設を訪ねて、実際に泊まりながら施設の内容をレポートする連載をトラベル Watchで担当している。

 取材に行くときは撮影がしやすいなどの理由から平日を選んでいるが、そんなときに遭遇するほかの利用者は「ソロでの利用」であることが多い。

 クルマ自体もベッドキットを積んでいるくらいのライトな車中仕様車であることが多く、食事や夜のリラックスタイムは車外に展開したチェアに座って過ごしているという感じだ。クルマは主に寝るときだけ入るようなものであるから、車中泊というよりオートキャンプといった方がイメージは近いだろう。かく言う筆者もまさにそのスタイル。

 そのため、クルマに求めるのは大人1人が寝られるだけの空間があること、就寝用のベッドやマットがあること、夜間に車内を照らす十分な明るさがあること、という具合。これだけでもRVパークやオートキャンプ場などのクルマ旅のための施設であれば、何も問題なく、気持ちよく車中泊を楽しむことができるのだ。

 そこで今回の東京キャンピングカーショー2025では、ソロでの利用に適したクルマをピックアップしてみた。

今回はソロキャンプ的な車中泊を楽しみたい人に向いていると思われるクルマを取り上げてみる

 ソロ向きのクルマというと軽自動車ベースの軽キャンパーがまっ先に思い浮かぶ。

 軽キャンパーは車両価格が手頃なことや、取り回しのしやすさから以前から人気のジャンルであったが、ビルダーが想定しているユーザー層はカップルや夫婦が多く、装備も本格派のキャンピングカーユーザーと同じ目線で作られたクルマが多かった。

 しかし、今年の東京キャンピングカーショーを見てみると、これまでどおりの充実仕様があるなかで、キャビネットやシンクといったキャンピングカーらしい装備を省き、ベッドキットを中心にしたシンプルな仕様に抑えているモデルも増えてるように感じた。

ホワイトハウスキャンパーの「N-BOXキャンパーネオ」。ポップアップルーフを装備したモデル
フルフラットモードにした上にエアベッドを敷いている。テントの代わりであればいいということであればこれでも十分だろう。広さも申し分ない

 そして、そんなクルマの究極系?とも言えるのがホワイトハウスキャンパーが出展していたN-BOXキャンパーネオ。モデルとしてはポップアップルーフが大きなポイントであるが、注目したいのが室内の仕様。写真で分かるように一面にマットが敷いてあり、室内すべてがベッドになっているのだ。

 これは同社のエアベッドを敷いたもので、その下のシートアレンジは純正の機構であるフルフラットモードにしただけ。このエアベッドは空気を入れたあとの構造を支える柱が数千本入っているので、段差のあるフルフラットモードの上でもベッドの型崩れがなく、人が寝転んでも不自然に沈んだりしにくいという。

 これから車中泊をやってみたいという人は、このエアベッドの導入から始めてもよいだろう。なお、現在の軽ワゴンは室内の寸法がどの車種もほぼ同じなので、シートがフルフラットにアレンジできる車種であれば、このN-BOXと同じような空間が作れるだろう。

スマイルファクトリーの「オフタイムトラベラー」。リフトアップや外装カスタムで遊びクルマという雰囲気たっぷり。ベースはスズキ エブリィのターボ、4WDモデル
作り付けの家具もあるが、必要最小限に抑えているのでスペースを犠牲にしていない。また、断熱材を追加しているので暑さや寒さにも強い。この状態は2名就寝のモード
テーブルは簡易的なもので使用しないときは壁側へ収納する作り
左側ベッドをしまって2列目シートを出したソロモード。助手席の背もたれを前倒しにするとテーブルとして使えるのが便利なポイント
右側のベッド部は約180cmの寸法なので大柄な人にも対応する

 軽キャンパーの多くは2人でも就寝できる仕様になっているので、会場では機能を見せるために2名就寝モードで展示していることがほとんどだ。しかし、今回はソロでの利用でどうなのか?という部分を見たかったので、「これは」と思った車両の出展者にお願いをして、展示車のベッドモードをソロ用に変更してもらった。

 そこで見えたのが「ソロ仕様にすることでコンパクトな室内ながら居場所が選べるようになる」ということ。軽自動車の場合、2列目シートを畳んでその上にベッドマットを敷いているが、ソロ用であれば片側のシートをたたむ必要がない。すると室内にはしっかり座れる「シート」の部分と足を伸ばして眠れる「ベッド」の部分を作れることになる。

 シートとベッドが隣り合っているので、シートでくつろいだあと、眠くなったらすぐ横になれるというのもいい。朝に目覚めたときも少し体をずらせばシートに座ることができるのも楽だ。

パパビルドが出展していたスズキ ソリオをベースにしたモデル。ダウンライト、UVカットフィルム、天井防音断熱施工、快適マットレス&フロアボックス、スライド付きテーブルが標準装備
2名就寝のモード。オーバーヘッドラックはオプション設定
助手席側のベッドのみを展開した状態。これならベッドモードのまま移動することができる
運転席の背面には折りたたみ式のテーブルがあるので簡単な食事などもできる。ソリオは乗用車なのでシートの座り心地もいい
ホンダのN-VANを使ったルートシックスの「シーク」というモデル。標準仕様は天井断熱、LEDダウンライト、収納、テーブル、ポータブル電源取り込みシステム付き。クーラー付きのパッケージやリチウムイオンバッテリー搭載パッケージもある
車内のモードは4つあり、写真はダイネットモード。テーブルを出した状態のまま運転席側をベッドモードにすることも可能で、その際はテール部付きのイス+ベッドの部屋とすることができる
運転席はシートレールを交換し、回転できるようにしている。運転席で180cm以上のベッド長が取れている
大分県にあるスマートトータルサービスの「STSキャンパー ジャーニー」。N-VAN +STYLE FUNがベース
右側と左側で就寝できるが左側ベッドはフロアにマットを敷くスタイル。リア側のテーブルは縦方向を追加してL字の取り付けも可能
左側を通路と物置にして右で寝るという展開にしてもらった。N-VANで車中泊をしている身として、ソロであればこれが一番使いやすいと思う
L字テーブルにするとベッドから起きて座り直すだけでテーブルで飲み物を飲んだり食事できたりする。仕事でクルマ移動をするときはオフィス的にも使える

充実装備のキャンピングカーも紹介

 最後はここまで紹介してきたクルマとは違った魅力のある、キャンピングカーとして作り込まれたモデルを紹介しよう。見るポイントとして「ソロでの利用によさそう」という部分は変わっていないが、ここから紹介するのは車内で長い時間を過ごすことを前提にした居住性の高いクルマたちだ。

 そしてもう1つ。幅広い車種で快適な車中泊を実現する装備としてポップアップルーフやルーフテントが挙げられる。「クルマの屋根で寝る」という体験は一般的な車中泊とは感覚が異なり、もちろんテント泊とも違ったワクワクを感じられるので、人と違った車中泊を体験したいなら、こうした装備を選んでみるのもよいだろう。

記事の冒頭で紹介したリンエイプロダクトの「コンパクトバカンチェス ひとり旅」。2名就寝のモードも可能だが写真の状態でのソロ利用はかなり使いやすそう
助手席後ろのテーブルは可動式。使わないときやスライドドアから乗り降りする際は天板を助手席に回転させることができる
ソロ利用としてはかなり贅沢だがこちらも。ダイレクトカーズの「モルビア」というモデルで、ベースはフィアットプロフェッショナルのデュカト。全長5410mm、全幅2100mm、全高2590mmというサイズ
デュカトは運転席と助手席が後ろ向きに回転するが、モルビアはその仕組を使わずシートの後ろにシンクや冷蔵庫をビルトインした配置
それにより広めでシンプルな作りのリビングスペースが生まれた。対面シートの真ん中にはテーブルを取り付け可能で、リア側は広いベッドがある
リアから見た様子。上段がベッドで大人も余裕で寝ることができるサイズ。天井側にはエアコンや収納棚がある
ベッド下は大きな収納になっている。このサイズのクルマをソロで使うという贅沢をしてみたいものだ
ミシマダイハツのオリジナル軽キャンパー「クオッカ」。ハイゼットトラックのパネルバン
ベッド長は1840mm、幅が1060mm
内装の木材はヒノキで内壁はホタテの漆喰ペイントを使用したもの。かわいらしい外観とあわせて本物志向の作りは趣味の道具として満たされそう
シングルベッド仕様であれば家具との間に床が残るので車内の移動が楽。また、床があると道具を入れたコンテナボックスなども置くことができる
ホワイトハウスキャンパーのジムニーノマド ポップアップルーフ。現在は先行予約の受付中。車両持ち込みでの架装は行なっていないとのこと
テールゲートにラダーも設定。室内からのほかにここからも出入りできる
ポップアップルーフテントを付けるにはルーフに出入り用の開口部を設ける加工が必要
加工後は専用設計のベースをルーフ全体にかぶせて固定&シーリングする
最新モデルのポップアップルーフテントには日差しや雨を避けるための「ひさし」が付いた
大人2人だと少々狭く感じるかもしれないがソロであれば快適に使える広さ。高さもあるので独特の開放感も得られる
オートキャンプの新しいスタイルとして人気が高まっているルーフテント。こちらはジェームス・バロウドの製品で日本ではコイズミカルコア事業部が総輸入元・販売元となる。車体にあわせてサイズやモデルを多数揃えている
車両は三菱自動車のトライトンでタイ三菱でオプション設定されているAerokias製キャノピーを装着。日本の純正品より強度がある素材を使いつつ、価格は約半分というもの。その上にルーフレールを付けることでルーフテントを装備している