車中泊の拠点 RVパークを訪ねる

田舎で過ごすのんびり時間が心地いい、常陸太田の田園風景のRVパークに泊まってみた

天下野2区RVパーク捨吉

田舎暮らし的なのんびりとした時間を過ごすことができるRVパーク捨吉(ステキチ)

 今回訪れた「天下野2区RVパーク捨吉」(茨城県常陸太田市天下野町9034)は、オーナーの実家(農業を営んでいた)だった場所を利用して作ったところで、立地は「The 田舎」といった感じの田園風景が広がる。

 少しクルマで走ると観光地として著名な滝などあるが、施設の周辺はまったく観光地っぽさがないので、「のんびりしたい」と思う人は特に気に入る場所になるのではないだろうか。

RVパーク捨吉の全景。のどかな風景のなかにあるRVパークだ
オーナーはパークの周辺に「ひまわり」を植えている。お盆のころに満開になる予定とのことなので、たくさんのひまわりを見ながら車中泊がしたい場合は、この時期を早めに予約しておきたい

RVパーク捨吉の基本情報

 RVパーク捨吉へは主要道路である県道から脇道に入っていくのだが、この道はクルマ1台分の幅しかなく田んぼの間を縫うように通っているので、大型のキャンピングカーでは気を使うかもしれない。だけど道幅や周囲の景色を含めて「田舎にきた」という雰囲気がたっぷりで、筆者にはなんとなくワクワクするものだった。

 RVパーク捨吉は農業を営んでいた古民家とその周辺の土地を利用した施設。この古民家はオーナーの実家だったそうだ。

 施設の敷地は2つに分かれている。メインとなっているのが炊事棟や屋根付きサイトがあるエリアで、こちらは5台分のサイトを用意している。もう1つは古民家横の庭先に設けたスペースで、区画分けはしていないが2台が利用できるようになっている。

 なお、この古民家も宿泊施設として運営していくため、現在はリフォームを行なっている最中。今回の取材ではこの古民家の撮影もさせてもらったので、記事の後半で取り上げている。

 料金についてだが、RVパーク捨吉は「大人1人とクルマ1台」での利用を基本としている。つまり大人2人で利用する場合は「基本料金」にプラスして「大人1人分の追加料金」が発生するということ。追加料金は大人1人1100円、子供(小学生~高校生)1人550円で、小学生未満の追加料金は不要。

 各サイトの基本料金は、屋根付きが2970円、芝生サイトが2750円、古民家横庭サイトが2530円となっているので、複数人で利用する場合はそれぞれに代表者を除く人数×1100円(子供の場合は子供料金)を追加することになる。電源の利用は別料金で1320円。連泊の場合は日ごとに880円が追加。RVパーク利用時に出たゴミの処理は基本料金に含まれる。

複数人での利用でも基本料金で予約をしてしまうケースも多いそうなので、予約時には間違えないように注意したい。車中泊ユーザーはソロや2人単位で行動することも多いので、人数別の料金設定はありがたいものだ

雨の日でも快適な屋根付きサイト(1~3番)

 炊事棟があるメインのエリアはサイトが5つあり、そのうち3つが屋根付きになっている。サイトのサイズは横幅が約4.2m、奥行きが約6m、高さは約3.2m。大型のキャンピングカーやポップアップルーフ付きの車両の場合でも約3.2mの天井高があれば高さ的に足りると思う。地面は締まった砂利引きで、車内で横になったときに気になるような傾斜はなかった。

 また、それぞれのサイト前には雨が降ったときに水が入ってこないようにするための溝が掘られていたので、屋根があるのと合わせて雨天での居心地に不満はなさそうだ。

屋根付きサイト。左側から1、2、3とナンバーが振られている。縦横のサイズはすべて同じだが3番のみ屋根が少し高くなっている

 屋根付きサイトは前方と後方を解放しているので、サイト内にテーブルや椅子を展開した状態でも風景を楽しめるのだが、前方が東向きで後方が西向きになるので、屋根があってもサイト内には午前と午後の一部の時間帯は日差しが入ってくる。

 その時間の日当たりを防ぎたいなら影を作るためのタープなどを用意しておくといいだろう。サイト内に日よけや物置的な意味でテントを張るのはいいのだが、RVパーク捨吉は車中泊用の施設なので、テント内での就寝は不可。

屋根付きサイトには正面にトビラがある。パークの前の道はほとんど人の通りがないがゼロではない。そこでよりプライベート感を出すためにトビラを設けている。また、ついたてもあるので、扉を閉めなくてもついたてを置くだけでも目隠しになる
屋根付きサイトはすべて電源を用意している。電源の使用料金は1320円で、連泊の場合は2日目以降880円
屋根の一部を採光ができるクリア素材にしているので、サイト内が暗くなり過ぎない。これは1~3番すべてのサイトで共通の作り
クルマの後方に十分なスペースが取れるので装備を展開しても窮屈に感じることはなかった
2番サイトの後方からの眺め。サイトの後ろには建物がないので景色はいいが、西向きのため夕方はサイト内に西日が入る。夏の時期は日よけになるタープなどが欲しいと感じた。パラコードと合わせて、屋根の骨組からすだれのように吊るすといいかも
屋根付きサイトの後ろ側には「釜」を作っていて、完成したらここでお米を炊くなどの薪を使った調理ができる。五右衛門風呂も作る予定があるそうなので、より個性的な滞在ができるようになる

開放感がある芝生エリア

 炊事棟の前には「芝生エリア」というオープンスペースのサイトがある。ここは3台分スペースがあるのだが、オーナーいわく「狭い」ということから、3台分のスペースのうち、真ん中になる5番サイトを単独で利用せず、5番サイトを両脇のサイトで半分ずつ使用するようになっているので「2台分」となっている。

 このエリアをどのように使うかは写真で紹介するが、オープンスペースゆえの開放感が得られるのでキャンプ的な雰囲気を楽しみたい場合は、屋根付きサイトよりこちらの方が適しているのではないだろうか。

 もともとのサイトのサイズは幅が4m、奥行きが6mだが、真ん中のサイトを分けるので実際の利用時の幅は約6mとかなり広く使えるのだ。

3台分のサイトがある芝生エリアだが、現在は真ん中の5番を単独で利用せず、両脇のサイトが半分ずつ使うというスタイルになっている。道路側から4、5、6番というナンバリング
炊事棟の正面なのでトイレやシャワーの利用には便利な場所。ただ、芝生エリアは前の道路に面しているので、通行人があるときはけっこう距離が近くなる。ここにもついたてを用意しているので、気になる人はそれを使用する
4番サイトで道路側に停めてみた。N-VANを停めているすぐ横の芝生と、その隣の砂利のスペースが4番で利用できる
6番サイトに停めた。炊事棟側に砂利のスペースがないが芝生の上にクルマを停めていいとのことなので、そのように止めると芝生・砂利・芝生という並びになる
奥行きは約6m。大型のキャンピングカーでは前後の余裕が少ないかもしれないが、横が広く使えるので窮屈さを感じないはずだ
芝生サイトのすぐの後ろには、山からの水が流れる水路がある。水量が多いときは水の音が聞こえて涼しい雰囲気になるという

古民家横庭エリア

 もう1つのサイトは道を挟んだところにある「古民家横庭エリア」だ。ここは2台分の利用を想定しているのだが、サイトごとに区画分けがされていない。仲間同士での利用は問題ないとして、知らない方と隣同士になる場合はお互いに気を使い合って、どちらかが不快に感じるようなことがないように気をつけたいところでもある。

 サイトの奥にはさらに広い庭があり、背の高い木(紅葉らしい)の下にはベンチがあってのんびりするには最適なスペースがある。また、このスペースではバーベキューもしていいということだが、夜は早い時間に静かになる地域なので、周辺にお住まいの方々に迷惑にならないよう利用できる時間などは事前に問い合わせておきたい。

古民家裏からサイトを見る。写真奥が出入り口で、古民家の横と左側の大きな石があるところまでの壁添い(写真左より)がサイトとなる。古民家側に対してはクルマが通れるだけのスペースを取ることがルールなので、サイトでのクルマの停め方は斜めか塀に沿った横向きになるだろう
古民家横庭サイトは地面に多少傾斜がついている。そのためどのように停めてもクルマに傾きが生じてしまうので、ここを利用するときはタイヤの下に置く高さ調整用の板などを用意しておくといいだろう
RVパークの解説文には「古民家横庭サイトだとトイレまで距離がある」と書かれているが実際はこんなもの。共用トイレが基本のアウトドア施設に慣れている方であれば、気にならない距離感だと思う
庭の奥にはこのようなスペースが広がる。予約をしておけばバーベキューをすることも可能
地下50m以上堀った井戸がある。深い所の地下水なのでとても冷たい。飲料用としても使えるとのことで、RVパーク利用者であれば自由に使える。筆者も滞在中の水はこちらの井戸水を使わせてもらった
古民家横庭サイトは電源が1台分になる。電源コンセントは2つあるが1つは地下水汲み上げ用のポンプが使用しているのだ。ここのプラグは絶対に抜かないこと

設備が揃っていて便利な炊事棟

 RVパーク捨吉の利用者が共同で使用できる炊事棟には、男女別のトイレと1つのシャワーブース(有料で1回300円)、そして大型のシンクに食材を保存しておくための冷蔵庫、電子レンジ、トースター、IHクッキングヒーター、さらに洗濯機と乾燥機がある(ともに有料)がある。

 これらはすべて共用なので利用者が複数のときは譲り合って使用したい。なお、シャワールームの入り口には利用時間を書き込んでおくボードがあるので、ほかの利用者がいる状態でシャワーを使いたい場合は利用する時間を事前に記入すること。

炊事棟。オーナーの体験から女性が利用しやすいことを意識して作ってある
入り口から見た光景。真ん中がシャワールームで左側にシンクがある。その奥に女性用のトイレがあり、トイレ入口の部分には化粧ができるスペースがある。右側には冷蔵庫や洗濯機、乾燥機がある
冷蔵庫は家庭用の大型のもの置いている。連泊や旅の途中による場合に便利な洗濯機や乾燥機もある
各サイトの電源から電気を使いたい場所まで距離がある場合に使える延長コードも置いてある
シンクは大きめだが水栓は1つ。このRVパークは山と山の間にあるので風の通りがいい。シンク側はまさに風の通り道なので窓を開けると気持ちのいい風が入ってくる
電子レンジにトースター、IHクッキングヒーターがあってどれも無料で使用できる。ただ、フライパンや鍋などの調理器具は置いていないので自分で用意すること
女性用トイレは炊事棟内にある。手前には大きめの鏡や洗面台、コンセントがある。椅子もあるので化粧などここでできる
シャワールームの使用は1回300円。現地の料金箱に支払う。脱衣所スペース、シャワールームともに広い
スペースが広いので子供づれの場合、子供と一緒に使用することができる
脱衣所には椅子が置いてある。着替えやお風呂上がりの際に座れるところがあると便利だ。椅子はシャワールームに持ち込むことをできる
脱衣所にはサーキュレーターが付いているので、シャワー後の着替えが涼しい。これもありがたい設備だ
オーナーが自身で旅をしていたころに利用したアウトドア施設では、お風呂上がりに使用するバスマットを置いていないことが多く、それが不快に感じていたと言う。そこで自分の施設ではバスマットを用意している
シャワールームの入口には、ホワイトボードに利用時間を書き込めるようになっている。早いもの勝ちなのでシャワーを利用したい場合はパークに到着次第、こちらに利用時間を書き込んでおくといいだろう
男性トイレは外のデッキから入る
トイレ内もきれいだった
薪置き場。薪の種類は主に建築物の解体で出た木材で販売している。たき火台や隣のサイトに爆ぜや煙が行かないよう配慮するための防火板は無料でレンタルしている

田舎の夜は静かで暗かった

 RVパーク捨吉は常陸太田市のなかでも内陸側にあり、周囲を山に囲まれているのだけど、海側の方向は開けているせいかパーク内を通る風は涼しかった。

 特に芝生エリアと古民家横庭エリアは風通しがよく、タープなど張って日陰を作れば「いい風」を感じながらのんびりできそうな印象を受けた。

 筆者は屋根付きサイトの真ん中になる2番を利用したので、炊事棟や横の壁があることからサイト内での風通しは今一つだったが、風向きによっては屋根付きサイトも風通しがよくなるだろうし、なにより雨が降っても車外で過ごせることは大きなポイントで、実際に雨の日を選ぶ常連のお客さんもいるそうだ。

 確かにのどかな景色に人工の音がない静かな環境で、雨音を聞きながら屋根の下でたき火をするという時間の過ごし方は一度体験すると病み付きになりそうだ。

 日が暮れてくると照明をつけるのだが、ここで気がついたのがヤブ蚊が少ないこと。一応アウトドア用の蚊取り線香は焚いていたが、ヤブ蚊が多いところだと防ぎきれない。しかし、RVパーク捨吉滞在中はヤブ蚊に刺されることがなかった。

 RVパーク捨吉の周辺は田んぼや水路もあるのでボウフラが発生しそうだが、それでもいないということは、この地域の水辺は昔ながらの生物多様性が保たれていて、小魚やおたまじゃくし、水生昆虫といったボウフラを食べる生物がいるのではないだろうかと考えたりする。そんな自然界のサイクルがあるのも日本の田舎の特徴であり魅力なので、蚊がいない(少ない)ことからも「いい場所にいるな」と感じてしまったのだ。

取材日は晴だったが、この景色なので雨の日の利用も独特の趣がありそう
たき火は直火NG。たき火台を使うこと。灰が散ったりするのでたき火マットも敷くと翌朝の片付けが楽になる
夜は薄く雲が出ていたが星空はなんとかみることができた。周辺が暗いので晴れていて新月の時期を狙えばもっときれいに見えるだろう
RVパーク捨吉から歩いてすぐのところにドッグランも用意している。ドッグランの利用は無料だが、ひと組ごとの貸し切りで利用時間は1時間以内というルールがある
敷地は広いので運動量の多い犬種でもたっぷりと遊ばせることができそうだ。地面もフラットでケガもしにくいだろう

古民家に泊まる

 RVパーク捨吉はオーナーの実家があったところで、母屋も残っていた。こちらはかなり古い建物で、その昔は葉タバコの栽培をしていたとのことで、収穫後は母屋内の土間への天井から吊し、囲炉裏の煙などで乾燥させていたそうだ。

 この古民家も解体を考えたそうだが、歴史のある建物なので内装の一部を現代の人の利用で便利なようにリフォームして、宿泊施設として貸し出すことにした。

 リフォームはほぼ終わっているので近々、貸し出しを開始するという。田舎の暮らしを体験してもらうことも目的なので、部屋ごとで貸すのではなく一棟貸しになる。料金の設定はまだしていないが、プランを伺ったところ、かなりリーズナブルだったので、貸し出しが開始されると人気が出るのではないのか。貸し出し時期や料金についてはRVパーク捨吉の問い合わせ先から聞いてほしい。

リフォーム中の古民家。雰囲気もいいし庭も広い。田舎暮らしを体験するにはぴったりの宿泊施設になるだろう
土間があったところは絨毯引きになっていて、そこに薪ストーブが置いてある。古民家なので、冬は室内がとても寒いとのことだが、それだけに薪ストーブが気持ちよさそうだ
土間の天井は草タバコを乾していたときのままで残してある。この上に煙を逃がすための換気口が開いているので冬は、そういうところから室内が寒いという。現在は、虫などが入ってこないようにネットを張っているが通気口は開いたままにしている
土間の横にはこのような和室がある。ほかにもリビング的に使える板張りの部屋もある。寝具などは用意している
キッチンスペースはフルリフォーム済み。食事の提供はないので、滞在中、古民家で食事をするときは自炊となるがキッチンの設備が整っているので不便はないと思う。また、バスルームやトイレもリフォーム済みだ