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「JAL 新・JAPAN PROJECT」でサミット開催を控えた三重県の「食」と「観光」を世界に発信

鈴木 三重県知事とJAL植木社長がセントレアで協定を締結

2015年12月12日 締結

JALは「JAL 新・JAPAN PROJECT」で三重県の「食」と「観光」を世界に発信していく。その1つの取り組みとして国際線ビジネスクラスで三重県の食材を使った機内食を提供する

 三重県とJAL(日本航空)は12月12日、中部国際空港(セントレア)において、「『食』と『観光』に関する協定」を締結した。これは三重県の「食」に関する事項、「観光」振興に関する事項、相互の協議により認められた事項の活性化を図るもので、JALが9月30日に発表した「JAL 新・JAPAN PROJECT」の取り組みの一環となるもの。締結書へのサインは、三重県知事 鈴木英敬氏と日本航空 代表取締役社長 植木義晴氏の間で行なわれた。

日本航空株式会社 代表取締役社長 植木義晴氏(左)、三重県知事 鈴木英敬氏(右)

 この締結による具体的な取り組みは2016年4月から始まる。JALの機内誌「SKYWARD」やJALの機内ビデオで三重県を特集するほか、JAL国内線ファーストクラスで三重県の「食」の魅力を発信。JALのWebサイトで外国人向けに三重県の観光情報を発信していく。

 また、2016年3月からは三重県フードイノベーション課監修の機内食をセントレア発JAL国際線ビジネスクラスで提供。3月からはオマール海老をメインとしたメニューを、7月からはアワビをメインとしたメニューを機内食(洋食)で用意する。また、バンコク線と、天津・上海(浦東)・台北(桃園)線ではメインの食材は同じものの、若干異なったメニューを提供する。

3月から提供されるオマール海老メインの機内食
6月から提供されるアワビメインの機内食

 締結書へのサインは、セントレアで開催されていた「JALわく旅フェア 2015 IN セントレア」のイベントステージで行なわれ、サイン後、みえの国観光大使 萩美香さんが登場。ビジネスクラスで提供する機内食の試食が行なわれ、萩さんはその美味しさを語っていた。

セントレアのセンターステージで開催された締結式
スクリーンで取り組みを解説
取り組み内容
2枚の締結書にお互いにサインをする。途中ペンが書けなくなり、1本のペンで2人はサインを行なった。お互いに「仲が深まるね」と
締結された協定書
協定書を持って記念写真
がっちり握手
その後法被の交換へ
メニューは時期によって切り替わる
JALのビジネスクラスシートを使って試食会。知事の隣に座るのは、みえの国観光大使 萩美香さん
記念写真を撮影
和気あいあいと試食

「JAL 新・JAPAN PROJECT」がもたらすもの

 イベントステージでの締結式終了後、別室において取材時間が設けられ、今回の締結に至った背景が詳細に語られた。

別室でインタビュー

 協定の意義および今後の期待についての質問に、JAL植木社長は「実はサミットが決まる前からお話をさせていただいていた」と、長い期間交渉してきたことを明かした。「我々はさまざまなCSR活動をさせていただいていて、基本的な考え方として本業が航空輸送、ここに関わりのある形でやりたい。つまりJALでなければできないことを考えてきた。そしてもう1つ、社員も一緒に汗をかいて、地域の方とふれあいを作っていく」ことが「JAL 新・JAPAN PROJECT」であるという。

 一方、鈴木知事は「サミット、菓子博、インターハイ、国体、世界的な、全国的なイベントが続く三重県において、食と観光の振興を図っていきたい。そのなかで、私たちの力だけでは足りない部分を世界最高級のホスピタリティとネットワークを持つJALさんに力を借りることで、このチャンスを使うことができるのではないか」「来年、4月からリニューアルする最初のパートナーに選んでいただいた。セントレアは私たち(三重県)の空の玄関ではあるものの、県には空港はない。空港がない県と航空会社が最初に協定を結ぶ。空港がない県を選んでいただいたことは大変ありがたいことだし、JALさんがいかに地方創生に対して本気で思っているのか。その辺りが意義深いのであろうと思っています」と、JALとの取り組みに対する期待を語った。

 話し合いそのものは2014年度から行なわれてきたものの、今回の提携の大きなポイントとなっているのが2016年5月に三重県で開催される伊勢志摩サミットになる。サミットが開催されれば、その開催場所に対する世界の注目は高まるものの、鈴木知事はそれだけではダメだという。

「サミットで間違いなく、三重県、伊勢志摩という認知度が向上すると思います。ただ、認知度が向上するだけではダメで、リアルがないとダメです。“あれを食べたい”“あそこに行きたい”“あれを見てみたい”というリアルがないと“行く”という行動になりません。そういうなかで、今回JALさんがやっていただいた(三重県の食材を使った)“食”という食べ物で、こういう風な食べ物があって、こういう風に食べたら美味しいよというのが伝わる。すると、あれを本場に食べに行こうとか、あるいは『SKYWORD』でかっこよく紹介していただいて、あそこに行こうとか。認知度から一歩踏み出していただいて、三重県に来る、あるいは三重県の産品を買い求めるということのリアルを見せていただくことを期待している」とリアルの大切さを強調。三重県のスタッフ、JAL、三重県の生産者が作り上げた新しい機内食は、そのリアルを実現したものだという。

 機内食のメニューでこだわった点については、「三重県は現在、農福連携というのを頑張っており、障害者が生産した野菜などがメニューに含まれている。障害者の雇用などを確保するためには売れていくことが必要だけど、“障害者が生産しているから買う”ではなくて“いいものだから買う”にならないといけない。今回のメニューが、JALの(国内線)ファーストクラスや(セントレア発国際線)ビジネスクラス、ラウンジで提供されるというのは、間違いなくいいものであるということだから、政策の波及効果がある」とし、特に三重県のイチオシとしては「鹿のジビエ」を挙げた。

 三重県は鹿による被害も大きく、安全マニュアルも作っており、その結果として鹿肉が手に入る。その鹿肉を使ったジビエがメニューに含まれている。「鹿の肉は、先入観で、固いとかくさいとか思っている人もいるだろうが、そんなことはぜんぜんない。衝撃の味が機内で展開されると思います」(鈴木知事)と、その味に自信を見せた。

 観光面の昨今の話題としては、訪日外国人旅行客、つまりインバウンドの伸びがある。その点についての質問もあり、JAL植木社長は「今年1年、昨年度対比で50%近く外国からのお客さまが増えています。中国からのお客さまであればプラス100%になります。よく聞かれるのです。『これはこのまま続きますか?』と。しかし、このまま後4年続くと日本の人口を超えてしまいますので、それはあり得ない。但し、コンスタントに確実に増えていくという自信はあります」「海外にいろいろ行って(海外の人の)お話しを聞いたときに、海外の方から日本の魅力を知らされているような形です。日本は安全・安心で、しかも円安になってきたのでお買い物の面でも、食の面でも、自然の面でも……。世界一の観光立国になるチャンスが今訪れていると思っています。都心を中心に今訪れているお客さまを、ぜひとも三重県に誘致する、それが我々の使命だと思っています」と答え、いわゆるゴールデンルートに集中しているインバウンド需要を、JALのネットワークによって広げていくことが大切だとした。

 インバウンドに関して鈴木知事は、「サミット決定後の訪日外国人伸び率は、7月、8月は全国1位。9月は全国2位。まあ、発射台が低いのではという話もありますが(笑)。そういう伸び率を示し、9月末までで26万人。昨年1年間で17万8000人。平成25年が1年間で13万人ですから、大変ありがたい状況です。これはいろいろな要素があって、1つは我々が重点的に取り組んでいるプロモーションがうまくいっているというのがあります。また、中部圏の都心部や大阪圏の都心部においてキャパが足りなくて、我々の方に流れてきているという面もあります。三重県としては、流れてくるお客さんよりも、“三重県に行きたい”というお客さんがもっともっと増えるようにしっかり取り組んでいきたい」と語りつつ、地元の経済研究所によって1110億円の経済効果が見込まれたサミット関連の需要を現実化していきたいとのことだ。

JAL植木社長の趣味はF1観戦で、三重県には鈴鹿が……

 サミットも世界的なイベントだが、三重県には鈴鹿サーキットがあり、そこでは世界的なイベントである「F1」が開催されている。また、JAL植木社長の趣味はF1観戦で、機内誌「SKYWARD」の植木社長のコラムにもF1について触れられている。

 三重県で行なわれる鈴鹿のF1について聞いたところ、「私は、何十年もずっとF1で鈴鹿に通っています」「残念ながら社長になってからは3回ほどそのチャンスを逃しています。台風があったりとか。帰れないと次の仕事に響くので。そんなことやいろいろな理由があって3回ほどドタキャンしています。(2016年は)はいつくばってでも行くぞと思っていますし、ホンダさんもガンバリ始めるのがちょうど来年だと思っています」と熱い思いを語った。鈴木県知事は地元で行なわれる「F1日本グランプリ」の名誉総裁も務めており、「(今年は)ぜひ招待させていただきます」と、JAL植木社長にF1来場を申し出た。すると、

植木社長「スターターを努めさせていただきたい」
鈴木知事「あー、それはFIAで難しいかな(笑)」
植木社長「チェッカーフラッグのほうは?」
鈴木知事「トロフィー渡す方を。あーそれも……」

と、漫才の掛け合い状態になり、報道陣の笑いを誘っていた。

「(F1は)昔からよく通っています。駅から歩いて向かっているときに、特に昔は12気筒の“キーン”という音が聞こえてくると、なぜか歩いていた観衆が走り出していく。僕はある意味音を聞きに行っている。それくらいF1には入れ込んでいますね」(JAL植木社長)とのことなので、2016年のF1日本グランプリでは姿を見ることができるかもしれない。

 今回の取り組みについては、「航空会社として日本経済に貢献できることは。1つは観光立国の推進、まさしくインバウンドの増加です。そしてもう1つは地方創生です。これが今ちょうどうまく合体した状況です。首都圏はほとんどホテルが取れない状況になっています。これをいかにうまく地方に誘致できるか、これが我々の使命だと思っています。今回のプロジェクトに関しても気持ちが合致したものであり、本気で進めていくために知事と一緒に記者会見させていただいた。これから息の長いプロジェクトにしていくためには、本気になって、なにで三重県を売り出していくのか。これを三重県の皆様と話をさせていただいて、そのなかにしっかりと我々の強みを活かしていきたい」(JAL植木社長)とその方向性を語り、三重県の食と観光の魅力を世界に発信していく。

インタビュー終了後は、フルメニューの試食会に。知事が食材について説明。植木社長「美味しいね」、萩さん「美味しいですね」
生産者と一緒に記念写真

(編集部:谷川 潔)