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JR西日本、踏切内で列車と自動車の衝突事故を想定した「京都支社 列車事故総合訓練」を公開

現場の状況を参加者が把握し自分で行動する「ブラインド訓練」に現場は緊迫

2015年10月16日 実施

JR西日本が10月16日に実施した「京都支社 列車事故総合訓練」の様子

 JR西日本(西日本旅客鉄道)は10月16日、吹田総合車両所(大阪府吹田市)の構内にて行なわれた「京都支社 列車事故総合訓練」を報道陣に公開した。本訓練は、列車事故時における乗客の避難誘導や救護に関わる社員の対応能力向上と併発事故の防止、そして事故発生時には不可欠な関係機関との連携強化のため、2005年度から警察、消防、医療機関と合同で取り組んでいるもの。

 今回の訓練では、JR西日本 近畿統括本部および京都支社、関係機関からは大阪府警察本部、大阪府吹田警察署、吹田市消防本部、大阪大学医学部付属病院、大阪府済生会千里病院が参加し約230名の規模で行なわれた。

 今回公開された訓練は「お客様救護訓練」と名付けられた、事故発生時から乗客の救護までのもので、実施時間にして1時間強のものだ。その想定は以下の通り。

列車名:金沢駅発~大阪駅行きの上り特急列車 681系3両編成
乗客数:約100名
場所:JR京都線 茨木駅~千里丘駅間
概況:走行中、踏切内に進入してきた自動車を認め、非常ブレーキをかけるも間に合わず衝突し、先頭車両が脱線。列車内では多数の乗客が負傷している。また運転士も腹部を強打し動けない状況。

金沢駅発~大阪駅行きの上り特急列車 681系3両編成を想定
脱線まで再現されているのは公開された訓練の後で引き続き脱線復旧訓練(非公開)が行われるため
運転士は腹部を強打し動けない、という状況だ

 以上の想定された状況下で、列車内の乗客の避難誘導、負傷した乗客への救急処置、自動車内に閉じ込められた乗員の救出、そして負傷者の病院への搬送、その救護のシナリオをあえて設定せず参加者が現場の状況を把握し自分で行動する「ブラインド訓練」という形がとられた。

 訓練が開始されると、列車から発するホーン、そして衝突音、そして付近の列車に異常事態を伝える防護無線のアラーム音が会場に鳴り響き、非常に緊迫した空気が流れる。運転士が動けない状況を確認すると車掌がその現地連絡責任者として大阪総合指令所への報告、発煙筒を使い後続列車への対処、自動車側の乗員の安否確認などを慌ただしくも1つ1つを確実にこなす。その後、警察、消防、医療機関の車両も続々と到着し現地対策本部を設置、救護活動を開始した。事故発生時の初期対応、現場状況の的確な把握、関係機関への連絡と情報提供、負傷者の救護活動から病院への搬送、シナリオなき訓練はそのすべてが非常に緊張感に包まれていた。

状況把握や2次災害防止の対策、総合指令時への報告など運転士が負傷で動けない状況での車掌の役割は大きいが、その1つ1つの迅速な行動にも指差し確認などは忘れない
続々と現地に関係各所の車両が到着する
JR西日本、消防、警察の現地対策本部がすぐさま同じ場所に設営され連携をとりながら救護活動にあたる
現地では直接の情報交換の他、必要な情報がボードに書き込まれ関係各所がこれを共有している。
無傷者を誘導するJR西日本の職員
負傷者を救護するJR西日本の職員
足場のわるい線路内で重傷者を運び出すには細心の注意が必要だ
普通に乗車するには問題ないが、各車両で出口が1個所しかない特急形車両から担架で重傷者を救助するには、出口が狭く非常に大変な作業だ
車両の乗降出入り口から担架を搬出する際は、多くの人数が声を掛け合いながら水平を保ちつつ救護していた
警察が開かないドアを特殊な工具でこじ開け意識不明の乗員を救出。後はDMAT(災害派遣医療チーム)が受け持っていた
重傷~軽傷者の治療優先度を選別(トリアージ)し、現場での手当てや病院への搬送を済ませ訓練は終了。訓練ながら緊迫の1時間強であった

 多くの乗客を乗せ移動する鉄道の事故は、その発生形態も様々だ。例えば今回の想定も、特急形車両ではなく、ドアの数が多くその開口部も広い通勤型の車両であれば、その1点のみでもまったく違う形になったであろうとJR西日本 京都支社長 岩崎悟志氏は語った。訓練終了後、岩崎氏、そして関係各所の連携が重要だと語る吹田市南消防署 署長 下川健次氏も今後もこのような訓練を継続していく必要性を語った。

(高橋 学)