ニュース

首都高、首都直下地震を想定した緊急対応訓練を公開

軽量な補修部材を用いた道路啓開の実動訓練を実施

2015年8月28日実施

 首都高速道路は8月28日、防災訓練の一環として首都直下地震が発生した状況を想定して、緊急交通路を確保するための道路啓開訓練を公開した。

 今回、訓練が実施された道路啓開は、災害時に自衛隊や消防隊などの緊急車両が通行する緊急交通路を確保するもの。啓開する路線は、国土交通省など関係機関との情報交換により決定され、比較的被害が少ない路線を活用して放置車両の撤去や簡易な段差補修など応急復旧工事を行い、緊急交通路を迅速に確保する流れとなる。

首都高速道路の代表取締役社長 菅原秀夫氏

 訓練の冒頭、首都高速道路の代表取締役社長 菅原秀夫氏は「首都高は日本経済や社会を支える重要な道路。それに加えて、(災害時には)緊急交通路や緊急輸送路となっており、昨年11月には災害対策基本法が改正されて、これまでに増して迅速で的確な道路啓開が求められる」と、訓示した。

 訓練では、高架橋の支承が脱落して橋の継ぎ目に段差や開きが発生し、道路上には大型車を含む複数の車両が滞留した状況を想定。訓練の中では、乗り捨てられた大型車両の牽引や、道路の継ぎ目にできた段差や開きに対する応急復旧が実施された。

 今回の訓練では、作業時間の大幅短縮と、路肩の狭い首都高の構造を考慮して、応急復旧に用いる土のうや渡し材は人力で運搬できる軽量なもの開発して使用。訓練開始からおおよそ30分~40分程度で、クルマが通行できる状況を確保した。

 訓練終了後、菅原社長は「首都高は路肩も狭く通行が難しいのでマンパワーによる運搬が大事。持ち運びに便利な軽い材料も開発して、従来に増して実践的な訓練になった」と感想を話した。

約50名が訓練に参加した
訓練ではミニバンが横転して道路をふさぐとともに、その先には地震により段差などが発生して通行不能となっている
滞留している車両の最後部にパトロールカーが到着
パトロールカーに積載した折り畳み自転車に乗り換えて先の情報を取得しに行く
路肩の狭い首都高で車両が滞留するとパトロールカーでは先に進めない
自転車を活用することで敏速に情報を集めることが可能となる
訓練では橋の継ぎ目に段差や空間が空いている状況が確認された
自転車に乗った隊員が状況を報告する
滞留している車両の撤去作業ではパトロールカーの「ランドクルーザー」で大型トラックを牽引
ワンボックス車は「ゴージャッキ」と呼ばれるジャッキで車両を持ち上げる
台車のように車輪がついているため人の手で移動が可能
作業車両が通行できる導線を確保
クレーンを使って横転車両を撤去
続いて段差を修復する作業を開始
土嚢や渡し板はいずれも1人で運べる軽量な素材を用いて仕上げられた
おおよそ30~40分程度で作業が完了した
パトロールカーのランドクルーザーであれば容易に走破可能
補修された段差は普通の乗用車が乗り越えられるものになっている
補修に使われる渡し板は重量級の大型トラックの通行も可能
首都高では2014年11月に改正された「災害対策基本法」や「首都直下地震道路啓開計画(初版)」に合わせて、道路啓開マニュアルの改訂作業中
1人で持ち運べる重量約30kgの軽量渡し板を開発
市販品を組み合わせて開発した軽量な土嚢

(編集部:椿山和雄)