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フィンエアーが導入したA350-900型機の最終組み立て工場を見学

5機のテスト機が2600時間超のフライトを実施

2015年10月7日(現地時間) 受領

エアバス工場見学中にたまたま飛行試験を行なっていた、A350-900飛行試験1号機「MSN1」

 フィンエアーがフランス時間の10月7日に、フランス・トゥールーズでエアバス A350-900型機を受領したことはお伝えしているとおりだが(別記事1別記事2)、この際に同地のエアバス工場内にあるA350の最終組み立て工場の見学や、テストフライトについての説明を受けることができた。本稿ではその内容を紹介する。

 エアバスの説明によれば、A350-900型機のテスト機は「MSN1」から「MSN5」までの5機。MSN2とMSN5は客室を装備したテスト機、そのほかの機体は地上やフライトテストに特化したものとなる。

エアバス A350-900型機のテスト機
各テスト機のテストプログラム

 MSN1が初飛行を行なったあと、MSN3がテストに参加。この2機が寒冷地や高温時などの挙動テストを含む基礎的なフライトテストを実施。もう1機のMSN4は騒音テストや耐水性/耐雨性などのテストに供与された。

 キャビン付きの機体では、客室にボランティアの乗客を乗せての長距離飛行テストや、実際の路線に沿って飛行するテストを実施。2014年11月には市場調査の目的で日本にも飛来しているが、この際にはMSN5が使われている。

 テスト項目は多岐にわたっており、(一部前述と重複するが)初飛行前に実施される機外の照明が正しく点灯するかのテストから、飛行中の翼の振動、高高度飛行、氷結した滑走路での離着陸、高温環境、高地での運用/離着陸、エンジンへの水の吸い込み、乗客を乗せての長距離飛行、最大速度から緊急の離陸停止、実際の路線に沿っての飛行など、型式証明を得るまでに2600時間を超える飛行を実施したという。

 なお、A350 XWBシリーズには、機体延長型(ストレッチタイプ)のA350-1000の計画もあるが、こちらも現在飛行テストに向けて機体の設計、製造が進められている。こちらは2016年終盤に初飛行を実施し、2017年第2四半期に航空会社への納入を開始する見込みとしている。

こちらは客室内のテストなどが行なわれた「MSN2」

A350 XWBの最終組み立て工場を見学

A350 XWBの最終組み立て工場へ
各地で製造された部材を「ベルーガ」に載せてトゥールーズへ搬送する

 併せて、A350 XWBの最終組み立て工場を見学した。この工場は、イギリスのブロートン、ドイツのハンブルグ、ブレーメン、フランスのサン=ナゼール、スペインのヘタフェの各地で製造された部品を集約し、飛行機へと組み立てる工場となる。

 部品の輸送には航空機部品輸送専用の「エアバス A300-600ST」、通称「ベルーガ」が用いられ、主翼のための2回を含めて、7回の輸送で1機分の部品が届くという。

 見学したのは3工程。最初に見学したのは「Station 50」と呼ばれるセクションで、3つに分けて製造された胴体を結合する部分となる。ノーズランディングギアの取り付けもここで行なわれる。

 Station 50の作業が終わった機体は、Station 40へと移動し、主翼や水平尾翼、垂直尾翼が取り付けられる。メインランディングギアは主翼に接続する部材となり、この工程で取り付けを行なうほか、客室内の構造部材もこの工程で整備される。

 また、ここで初めて電源のテストも行なわれる。従来機は電源のテストを行なったのちに客室の整備を開始していたが、一部並行して作業をすることで組み立てに要する期間を短縮しているという。

 次にStation 30へ移動し、ほぼすべての構造部材の取り付けや、航行システム(アビオニクス・システム)の実装を含む電気的な配線などを行なう。客室もここでほぼ完成に近い状態になる。

 今回はこの3工程の見学を行なったが、このあとは屋外へ場所を移して必要なテストが行なわれたあと、本体のペイント作業を実施。その後、エンジンの取り付けや客室の仕上げが行なわれ、飛行試験を実施したうえで航空会社へ受け渡される。

3つに分かれて製造された胴体を結合する工程。ここでランディングギアも取り付けられる
主翼、水平尾翼、垂直尾翼を取り付けるセクション。メインラインディングギアの取り付けられるほか、客室の整備も始まる
屋外テストを行なう前の最終工程。航行システムを含む電気的な装備や客室がここでほぼ整備される。A350 XWBの特徴でもある独特の形状のウイングレットは付いていないが、デリケートな部品なため、この工程の終盤で取り付けが行なわれるそうだ

(編集部:多和田新也/Photo:高橋 学)