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ANA、本邦初のストックホルム直行便は異例の予約率に。井上社長「単なる交通手段ではなくスウェーデンとの強い友情の証」
2025年2月14日 18:00
- 2025年1月31日 就航
ANAは1月31日、本邦航空会社として初の羽田~ストックホルム線を就航した。
当初は2020年6月に開設を予定していた同定期便だが、コロナの影響により延期。4年半を経てついに、日本とスウェーデンの首都ストックホルムを結ぶ唯一の直行便が運航を開始した(過去にはスカンジナビア航空が成田~ストックホルム線を運航。現行ではANAのみ)。
出発は羽田空港 第2ターミナルの国際線エリア。週3往復で運航し、機材は全184席(ビジネスクラス32席、プレミアムエコノミー14席、エコノミークラス138席)のボーイング 787-8型機を使用する。
ANAの羽田~ストックホルム線(2025年1月31日~3月29日)
NH221便: 羽田(00時30分)発~ストックホルム(06時20分)着、火・金・日曜運航
NH222便: ストックホルム(09時35分)発~羽田(翌07時20分)着、火・金・日曜運航
既報のとおり、この冬ANAでは羽田~ミラノ線(2024年12月3日)、今回の羽田~ストックホルム線(2025年1月31日)、羽田~イスタンブール線(2025年2月12日)と、新規3路線の開設ラッシュが続いた。
また、2024年7月にパリ線・ミュンヘン線をデイリー化、8月からはウィーン線を週3往復で再開しており、コロナ禍前の水準ではない(成田~デュッセルドルフ線は運休中など)ものの順調に回復。そして3路線が新たに就航したことで、ANAの欧州路線は8か国9都市(ロンドン、フランクフルト、ブリュッセル、パリ、ミュンヘン、ウィーン、ミラノ、ストックホルム、イスタンブール)へ、週49便までに拡充している。
ストックホルム線においては日欧間の接続需要で約7割、接続を前提としたビジネス需要で約5割を見込んでいるという。ANAとインターライン契約を結ぶスカンジナビア航空などを利用して、ストックホルムを起点とした北欧周遊の旅やヨーロッパ各都市へのアクセスが可能になった(ただしANAとスカンジナビア航空はアライアンスが異なり、コードシェアはない)。
2月4日(現地時間)、ANAはストックホルム市街中心地にあるホテルで就航記念パーティを開催。政府機関、観光業、貨物事業、空港公団などが招待され、約160名が出席した。
主催者を代表して挨拶した全日本空輸 代表取締役社長 井上慎一氏は、日本~スウェーデン路線の開設は単なる交通手段ではなく「両国間の強い友情と深いパートナーシップの象徴」であるとし、スウェーデン語の乾杯「Skål!(スコール)」で感謝と敬意を表した。
来賓として出席した駐スウェーデン特命全権大使 水越英明氏、ストックホルムのアーランダ空港を含むスウェーデン主要10空港を管理するSwedavia空港公団 CEO(最高責任者)のヨナス・アブラハムソン氏、スウェーデン インフラ・住宅副大臣で国務長官のヨハン・ダビッドソン氏は就航の喜びを語るとともに、150年以上にわたる日本との外交関係やアジアでは2番目に大きな輸出先であるという日本市場の重要性をスピーチ。
ANAの羽田~ストックホルム線は貨物ネットワークとしても大きな役割を担っているが(日本の医薬品、北欧はサーモンや製薬、自動車関連、精密機器、玩具などのニーズがある)、ヨハン氏によればスウェーデン政府が2025年7月1日に「航空税」の廃止を決定していることからも今後、航空需要の増加とともに競争力が強まり、貿易・商業活動の活性化や旅行コスト削減が期待されるという。
また、昨年12月の日本とスウェーデン両首脳による戦略的パートナーシップに関する共同声明を受けて「安全保障や経済、科学技術など広域の分野で強い協力が推進されるなか、ANA直行便の就航は非常にタイムリーなものである」と水越大使。さらに、大阪・関西万博がいよいよ4月に開幕することに触れ、約150の国が参加するなかでもスウェーデン王国の美しいデザインやサステナビリティを体現したパビリオン「北欧館」に注目したいと語った。
ANAによると、羽田~ストックホルム線の1月~3月予約率は8割。日本人よりインバウンドの比率が高い(6:4)ものの、本来であれば旅行需要が落ち込む冬季に、週3便の運航でありながら、「異例の予約率の高さ」をみせている。パーティ終了後、メディアの取材に応じた全日本空輸 ストックホルム支店長 岡﨑央氏は、「パンデミックによる計画断念で一時は不安もあったが、なんとか環境が整い、しかるべきタイミングで就航を実現できた。お客さまの“待ってました!”という声を聞き、感無量」と話した。
これから春夏にかけてベストシーズンが到来し、過ごしやすい気候になるスウェーデン。日本人旅客に伝えたい魅力はずばり「整然としていて、建物、景観、人々、自然、食事、すべてが美しい。日本人にとっては居心地がよく、心が安らぐようなところ」。一方で、夏は短く、冬が長い国であることから、日本にはない「太陽のありがたみを感じた」と岡﨑氏。
郊外ではオーロラ観測、犬ぞり、アイスホテルに泊まる体験といった冬ならではの楽しみも多く、ストックホルムをハブにしてオスロやコペンハーゲンなど北欧を周遊するのもお勧めという。直行便を活用して、ぜひ何度でも訪れてほしいと呼びかけた。
翌日には欧州メディアを対象にカンファレンスを開き、ANAの機内サービスや各クラス、日本の観光地や季節の過ごし方について井上社長がプレゼン。最後は日本メディアのインタビューにも応じ、「未だホワイトスポットと言われる北欧・スウェーデンだが実はたくさんの魅力があり、生活水準の高さや働き方においても進んでいる国に感じた」とコメント。観光の楽しさだけでなく「幸せな人生を送る」という観点からも学ぶことが多く「可能性を感じた2日間だった」と振り返った。