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尾道松江線が開通したので尾道をブラブラしてみた(後編)
(2015/4/22 00:00)
中国横断自動車道 尾道松江線が全線開通した翌日の3月23日に散策した尾道。前編では尾道駅から細い小路を通る古寺巡りや千光寺へ向かうロープウェイ、そして尾道~向島を結ぶ航路を陸から見てきた。後編は、記者が尾道水道沿いを歩いて尾道駅前に戻ってきたところからスタートする。
レンタサイクルを使ってタダで因島大橋を渡る
尾道駅に戻ったのは、レンタサイクルを借りるためだ。尾道と愛媛県今治市を結ぶしまなみ海道こと西瀬戸自動車道は、サイクリングコースが整備されており、この沿線の自治体で「しまなみ海道レンタサイクル」を設けている。沿線15カ所にターミナルがあり、例えば先の福本渡船で向島に渡った先にもターミナルが設けられている。しかし、どうせなら起点である尾道駅前で借りたいとの思いで、そちらへ向かったわけだ。
レンタサイクルの料金は、通常の自転車が大人1日500円。電動アシスト自転車が4時間以内800円、タンデム自転車が1日500円などバリエーションがある。通常の自転車なら15カ所のターミナルのどこでも乗り捨て可能だ。ちなみに、レンタル時は1000円の保証料を支払う。これは同じ島内であれば返還されるが、異なる島へ乗り捨てると返還されない。考え方としてはレンタカーの乗り捨て料金を前払いすると言えばいいかも知れない。
また、先ほど千光寺のロープウェイに乗ったが、実は、この乗車券を利用するとレンタサイクルが100円引きになる特典が付いている。今回はこれを利用し、400円で通常の自転車を借りた。
今回レンタサイクルを利用したのは、因島大橋を渡りたかったからだ。因島といえば、村上水軍、ポルノグラフィティの聖地、2014年12月末まで視聴していた瀬戸内の島が舞台のTVドラマ「Nのために」の原作者である湊かなえの出身地などと、いろいろ知識だけはあった。
ただ、今回は因島を訪れることが目的ではなく、吊り橋を自転車で渡ってみたい、そして、その吊り橋=因島大橋を自転車で渡る場合、「2015年3月31日までは無料で渡れる『しまなみサイクリングフリー』を実施している」という情報があり、これは行くしかないと決めた次第だ。
ちなみに、記者が尾道を訪れたあと、しまなみサイクリングフリー期間は2016年3月31日まで1年間の延長が決まっている。
実は、ここまで結構のんびりと歩みを進めたため、自転車を借りたのは15時前後。尾道駅前のレンタサイクルターミナルは18時で閉まる。つまり、3時間で因島大橋を渡って、尾道駅前に戻ってこなければならない。
これは、前日の夜にちゃんと下調べをした。ルートはこうだ。尾道駅前から出ている向島運航の船で向島に渡り、サイクリングルートを走って因島大橋を経由し、因島へ渡る。そして、生口島の瀬戸田港から因島の重井東港を経由して尾道駅前へ戻る船に乗る。因島重井東港~尾道駅前桟橋の船に17時29分発~17時49分着の便があり、これで戻ればキッチリ18時に返却できる計画だ。
逆に言えば、2時間30分程度で尾道駅前から因島重井東港へたどり着く必要があるわけだが、レンタサイクルターミナルの方に確認したら「早ければ1時間ちょっとで行けるよ」とのことだったので、安心して旅の足を自転車へと切り替えた。
レンタサイクルのターミナルから尾道駅前の船着き場はすぐ。ここから出る向島運航の船は、尾道~向島間の3航路で唯一クルマが乗れないのが特徴にもなっている。操舵室が和風とも中華風とも取れる独特のデザインが印象的な船だ。運航間隔は約12分。向島側では水路を少し上って富浜という港へ到着する。料金は大人100円。加えて自転車は10円が必要となり、今回は計110円を支払った。今回はバックパック1つだったので特に何も請求されなかったが、荷物もスーツケースなどを持っていると重量別に別途60円~180円の料金ががかかるようだ。
さて、ここからは、ひたすら自転車を漕ぐ。途中、写真映えする風景を見つけては足を止めることを繰り返しつつ進んでいたのだが、普段それなりには歩いているつもりでも、やはり自転車は使う筋肉が違う。正直少しつらかった。
とはいえ、3月後半という時期もよかったのだろう。海沿いの道が続くので風は気持ちがよく、つらいなりにもサイクリングを楽しむことができた。そして、因島大橋のサイクリングロードは鉄骨のトンネルがまっすぐに伸びる美しい道だった。これを見られただけでも、やはり来てよかったと思える。
そして、原付などであれば因島側にある料金所で支払いをして進むのだが、この料金所も面白く、遠目には灰皿にしか見えないただの箱が置かれているだけ。係員も常駐しておらず、防犯カメラがあるので未払いで通過しようとすると“何か”があるのかも知れないが、性善説に基づいているのであろうシンプルさが印象的だった。
そして、レンタサイクルのターミナルで言われた「早ければ1時間ちょっと」なんてことはなく、最後は間に合うか不安なほど遅れに遅れ、2時間強をかけて因島重井東港へたどり着いた。
重井東港の船着き場も想像しない雰囲気だった。船の乗り場というとターミナルがしっかりしているイメージが頭にあったのだが、ここ重井東港は小屋が1つあるだけ。ローカル線の無人駅や寒冷地のバス停を想像していただくとよい。とはいえ、ここに時刻表などが貼られており、間違いなくここに船がやってくる来ることが分かる。海辺の風は強く、3月後半とはいえ、かなり寒かった。この小屋もなくてはならない存在だ。
そして、定刻より10分強の遅れで、船がこちらへ向かってくることを確認できた。瀬戸内クルージングが運航する「シトラス」だ。船体は全身黄色、客室は全て座席で、1デッキ(フロア)のみという水上バスだ。重井東港~尾道間は大人550円。加えて自転車には300円が追加され、計850円の運賃を支払った。
実は、船内での撮影許可を得るために重井東港から瀬戸内クルージングへ電話をかけておいたのだが、このことが船長に伝わっており、前方の眺めも見せてもらうことができた。しかし、この船は乗客用の座席の窓際の方が、水との近さを感じられて楽しい。船内にはTVも備え付けられており、このあたりは地元の足となっていることも感じられるが、観光という立場で乗ってもこの水際の迫力は思い出に残るだろう。
さて、この船は17~18ノット程度の速度が出るそうだが、潮の流れによっては、遅れることも珍しくないらしい。実際、重井東港への到着は10分強の遅れであった。しかし、尾道駅前へ向かうまでにかなり挽回。17時50分過ぎには到着した。
このあと、乗客の多くが自転車に乗ってレンタサイクルのターミナルへ向かった。考えることはみんな同じだ。重井東港から自転車を載せたのは記者だけだったので、しまなみ海道沿線の生口島瀬戸田港で乗った乗客が多かったということだろう。15台ほどの自転車の列に並んで、無事にレンタサイクルを返却した。
このあとは、お土産物屋さんで購入した甘味で疲れた体に糖分を補給しつつ、再び山陽本線、三原駅を経由して広島空港へ。そして帰途に就いた。
いろいろと反省はあるものの、尾道らしい小路から、向島と因島の海岸線、そして千光寺展望台から見下ろす尾道の街、船の上から見る尾道の街と、たった1日の滞在ながら、この土地のいろいろな顔を見ることができた。だが、入ってみたかった小路や商店街、乗ってみたかった船、もちろんレトロバスと、不完全燃焼気味でもある。いつか再び訪れて、次は1日と言わず、のんびりと時間をかけて巡ってみたいと思う街だった。