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絶景がクリアでダイレクト。箱根ロープウェイ、国内初導入の“窓なしゴンドラ”に乗ってきた!

オープンエア型ゴンドラ「ROPESTER(ロープスター)」

2025年3月10日 運行開始
箱根ロープウェイに、窓なしゴンドラ「ロープスター」登場。春の行楽シーズンに向けてさっそく試乗レビュー

 小田急箱根が運営する箱根ロープウェイは、窓のないオープンエア型ゴンドラ「ROPESTER(ロープスター)」を3月10日に運行開始する。

 箱根ロープウェイの全線開通65周年を記念したもので、普通索道(扉付きの箱型搬器を利用した旅客・貨物輸送)における“窓なしゴンドラ”の導入は日本初の試み。運行開始に先立ちお披露目されたロープスターに、さっそく試乗してきた。

ロープスター(事前予約制)

運行区間: 桃源台駅→大涌谷駅(片道限定)
運行日: 2025年3月10日~14日の5日間、4月~9月に約50日間
※4月以降の運行日は箱根ナビで順次案内
運行本数: 1日4回(10時、11時、14時、15時)
対象年齢: 12歳以上
定員: 最大8名(乗り合い)
料金: 1人5000円(ロープウェイ1日乗り放題券+ロープスター片道乗車)
※「箱根フリーパス」などの企画券を持っている場合は1人2500円
※支払いは利用当日受付時に(桃源台駅1階専用ブース前)
予約方法: 箱根ナビの特設ページから

小田急箱根交通ガイドマップ(旅行予約サイト「小田急トラベル」より)
箱根ロープウェイ、箱根登山バス、箱根海賊船など8つ乗り物が乗り放題の「箱根フリーパス」などを併用するのがお得

 箱根ロープウェイは、箱根山のカルデラと中央火山丘にあたる、早雲山駅~桃源台駅を結ぶ全長約4kmの索道。車窓からは外輪山や芦ノ湖、天気がよければ遠くに富士山などを一望でき、最高到達地点である標高1040m付近では、大涌谷の噴煙が立つ景色も楽しめる。

 2007年から現行まで、3代目のゴンドラ全31機(スイスのCWA社製)を運用しており、今回導入したロープスターはそのうちの1機。既存車の“窓をただ取り外しただけ”のもので、基本的な仕様に変わりはない。空の青、芦ノ湖の青、富士山の青からインスピレーションを受け、そしてドジャース・大谷翔平の活躍にあやかり、ブルーの車両がロープスターに選ばれた。

左が通常のゴンドラ、右が窓なしゴンドラ「ロープスター」
既存車の窓を取り外したオープンエア型ゴンドラは日本初
箱根ロープウェイでは30機(+予備1機)を運用しており、ロープスターはそのうちの1機のみ
早雲山駅~桃源台駅を結ぶ全長約4kmの空中散歩が楽しめる。ロープスターの運行区間は桃源台駅→大涌谷駅

 運行日は3月10日~14日の5日間と、4月~9月に約50日間。通常のゴンドラは18人乗りである一方、ロープスターは8人乗り(+添乗員1人)。輸送力が落ちるため、GWや夏の繁忙期にはロープスターは元の窓付きゴンドラに戻され運行される。そのため、4月以降の繁忙期は平日なか日(火・水・木曜)の運行がメインとなる。

 運行区間は桃源台駅→大涌谷駅の片道限定で、所要時間は約15分間。片道限定としているのは、箱根ロープウェイのハイライトでもある「大涌谷」で途中下車して、観光できるようにするため。大涌谷で降りると、山肌から噴気が立ち昇る荒涼とした風景をはじめ、今もなお活動が続く箱根火山の歴史や仕組みを学べるミュージアム、名物の黒たまごなどのグルメも楽しめる。4月下旬には新たに展望テラスも開業する予定だ。

4月下旬には新たに大涌谷展望テラスが開業
大涌谷で下車して名物「黒たまご」も味わえる

 ロープスターの乗車は要予約。専用サイトからその日の空き状況などをみて予約できる(キャンセルも可能)。当日、乗り場となる「桃源台駅」へ向かうと、ロープウェイ乗車券売り場付近に特設ブースが用意されているので、ここでまず受付と支払いを済ませる。このとき必須になるのが「注意事項の確認」と「誓約書サイン」。

 窓なしゴンドラのロープスターは、安全面から12歳未満(小学生以下)は乗車できず、ペット同伴も不可。運行中は転落事故防止のためシートベルト着用が義務付けられており、ゴンドラ内で離席すること、歩きまわること、車外に手や顔を出すことは禁止。また、飛散の可能性がある手荷物(ハンカチ、ティッシュ、パンフレットなど)や傘(日傘含む)、三脚や自撮り棒は使用できない。運行中の写真撮影は専用ケースに入れたスマホのカメラのみ使用でき、デジカメや一眼レフは持ち込めない。

 誓約書にサインを済ませると、スタッフから専用の「ポーチ」と「スマホショルダーケース」が渡されるので、貴重品はポーチに入れてショルダーベルトで肩掛けし、スマホはケースにしまい首から提げる。それ以外の荷物は、駅にあるコインロッカーに預ける必要がある。

注意事項を確認して、誓約書にサイン
専用ポーチとスマホショルダーケース
ロープスターの乗り場となる桃源台駅
桃源台駅1階の特設ブースで受付する

 全員の準備が整うと、箱根ロープウェイスタッフの誘導で乗り場へ向かい、ロープスターの到着を待つ。そして、いざ乗車。車内では、安全に楽しめるよう添乗員が必ず1名付き、シートベルトの確認や景色のガイドをしてくれる。前述のとおり既存車の窓を外しただけのゴンドラだが、シートベルトが備わるのは特例で、一度装着したら自分では解除できない仕様になっている。

乗り場で「ロープスター」が来るのを待つ
ついに「ロープスター」が到着! いざ乗車

 いよいよ出発。動き出し、駅舎を抜けて景色が広がった瞬間、印象的だったのはキリっと爽快な山の空気。そして、抜群の開放感と臨場感だ。本来ならば、遮熱・遮光加工でうっすら茶色味かかったアクリル製の窓1枚を隔てて見る景色を、風・音・匂いとともに直接楽しめ、自然との一体感を味わうことができた。

 荷物持ち込みの厳しいルールはあるものの、ロープスターではむしろスマホをしまって、カメラ越しに見るのではないダイレクトな絶景と空中散歩に没入するのがお勧め。ぜひ“大人のゴンドラ”を体験してみてほしい。

桃源台駅を出発して、ぐんぐん上昇していくロープスター。太陽できらめく芦ノ湖を一望する
次の姥子駅を通過すると、富士山が見えてきた
大パノラマはもちろん、風・音・匂いを感じながら空中散歩
ロープスターの車内。窓がない分、景色がクリアに見え、山の空気もダイレクトに感じられる
運行中はスマホショルダーケースに入れて写真撮影
通常のゴンドラはアクリル製の窓が全面にはめられている
ロープスター終点の大涌谷駅に到着

 今回ガイド役を務めてくれた小田急箱根 運輸本部 策動部の三宅佳代氏が、窓なしゴンドラを造るに至った経緯を教えてくれた。「数年前に社内会議で、窓のない枠組だけの“作業用ゴンドラ”にお客さまを乗せたら、喜んでいただけるんじゃないか?という話が出たのがきっかけです」。

 これを実現させるべく関東運輸局などの関係所管へ相談に行くと、「日本初の試みで面白い! 我々も協力するので一緒にやっていきましょう」と前向きな回答があり、意外にも大きなハードルはなかったという。

 一方で、箱根ロープウェイは一般道の上空を通過する区間が3か所あり、もしゴンドラから何か物を落下させた場合に走行中のクルマや歩行者に当たり、傷付けるおそれがある。そのリスクについては県土木部と相談のうえ、事故なく安全に運行できるよう乗車年齢や持ち込み荷物に制限を設けることとなった。

株式会社小田急箱根 運輸本部 策動部 三宅佳代氏。箱根ロープウェイのスタッフで、ロープスターのガイドも務める

「今回は、国内で前例のない導入ということで、非常に厳しいルールを設けたうえでの運行となりました。今後、できるものは緩和していき、より楽しめるように工夫していきたい」とのこと。春からの行楽シーズン、ぜひ進化した箱根ロープウェイを多くの人に楽しんでほしいと呼びかけた。