国内最大級のキャンピングカーイベントにふさわしく300台以上のキャンピングカーが展示された ジャパンキャンピングカーショー2021実行委員会は、国内最大級のキャンピングカーイベント「ジャパンキャンピングカーショー2021」を4月2日~4日に幕張メッセで開催した。
新型コロナウイルスの影響で仕事・余暇ともに新しい生活様式への取り組みが行なわれているが、その流れのなかで密を回避しつつ行動が可能なキャンピングカーへの注目度は非常に高まっている。結果、キャンピングカー保有率は増加傾向にあるという。
こうした市場の活発さもあって、今回では出展台数が300台を超える盛況ぶりとなった。本記事では会場を回って気になった車両を紹介していこう。
自動車メーカーの参入でキャンピングカーがより買いやすく
今回は、自動車メーカーとして日産自動車がブース出展をした。展示したのは日産の関連企業であり、救急車などの特装車を製造するオーテックジャパンが架装した「マルチベッド」仕様車だ。
ベース車両はNV350キャラバン、セレナ、NV200バネットで、それぞれリアスペースにベッドスタイル、ベンチスタイル、そしてフロアスタイルとシーンに応じて使い分けができる「マルチベッド」を装備したもの。キャンピングカー、トランスポーターといった使い方のほか、オプションの可倒式テーブルを付けることで仕事部屋として使用することも可能。
その際、自宅の駐車場に駐めた車内はもちろん、景色のよい場所までクルマを走らせて、開放的な環境のなかで仕事をするワーケーションを実行することもできる。
コロナ後もテレワークの流れは続きそうなので、忙しく働くビジネスマンにとってこうした使い方ができるクルマを持つことは1つの憧れになっていくかもしれない。
日産自動車が出展。NV350キャラバン、セレナ、NV200バネットのマルチベッド車を展示した ラゲッジのボードはベッドスタイル、ベンチスタイル、片側ベンチスタイル、両サイド跳ね上げたフロアパネルスタイルと用途によって使い分けできる セカンドシートを寝かしてベッドフレームにマットを敷くと大人2名のベッドスペースができる。セレナはリアゲートのガラス部のみを開けられる作りだが、ベッドの高さはガラス開口部に合わせてある。ベッド下の収納スペースは高さ395mmあるので大型の収納ケースも入る 昼間だけでなく夜間の検知能力が高いインテリジェント エマージェンシーブレーキを装備するNV200バネットのマルチベット仕様車。ホワイト/ライトブルーの2トーンとホワイト/アイリッシュクリームの2トーンという2つの特別色が用意されている。ベッド部のアレンジも可能で使い勝手のよいクルマ 日産ピーズフィールドクラフトも出展。手前が「セレナ P-SVR」というモデルで、奥が「NV350キャラバン T-7」。日産ピーズフィールドクラフトは日産プリンス東京販売が99%出資する会社で、店舗は日産プリンス東京成城店(世田谷区)に併設 NV350キャラバン T-7。クルージングボートのキャビンをイメージしたインテリアが特徴。4人乗りで4人就寝が可能な作り セレナ P-SVはポップアップルーフ仕様車。ポップアップ部に加えてシート部をベッドにすると4人が就寝できる 暑い時期を意識した断熱&空調の充実度
近年は夏の気温が高くなることから断熱性の高さやクーラーやエアコン装備など、「暑さ」への対応の充実度をうたう車両も多く目に付いた。
ビルダーへ質問したところ、居住性を重視する大型の車両を求めるユーザーを中心に、車載エアコンやクーラーの搭載、ソーラーパネル、リチウムイオンバッテリの採用など、暑い時期でも車内で快適に過ごせる装備の有無を重視する傾向だという。
日差しを遮る木々のない開けたロケーションのキャンプサイトでは、日中の日差しを避ける場所が主にクルマになる。これからキャンピングカーを検討する場合は、暑さ対策にも注目していくとよいかもしれない。
ユーザー専用のキャンプ場も持つキャンピングカーメーカー、トイファクトリーの車両は各種断熱材だけでなく、断熱効果のあるセラミック塗装をボディ内側に施すという徹底ぶり。防音効果も高いという 大手家具メーカー「カリモク家具」とコラボレーションした限定生産車のインテリア。断熱性や遮音性に優れたボディ作りをしているだけに、こうした素敵な空間もより快適になる。エンジンを止めても動作できるクールコンプシステム(空調)もオプションで用意 かーいんてりあ高橋が出展していた「リラックスワゴン」も天井および壁面は断熱仕様。そして200Ahリチウムイオンバッテリ(ステンレス収納ボックス付き)と着脱式クーラー、ルーフの100Wソーラーパネルがセットになったオプションが用意されていた 100Vコンセントもあるのでサーキュレーターを併用すれば室内に涼しい風を効率よく送ることができそうだ ワーケーションなど多用途に使える器用なキャンピングカー
前出のトイファクトリーが出展していたのが「モビリティユニット HACO×HACO」というモデル。
従来のキャンピングカーでは、いったん仕様が決まってしまうと室内家具やベッドの大幅な配置換えや付け外しはほとんどできないが、アウトドア趣味が長くなるとやりたいことはどんどん増えていく。当初便利に感じていた仕様も、使いにくい部分が出てきたりすることもある。そこで、車内の家具を用途に応じて組み替え可能にしたのがHACO×HACOだ。
ブース内では「ワーケーション仕様」にしたHACO×HACOを展示していたが、最近のテレワークからのワーケーションへの関心度の高まりもあって、こちらの車両は来場者に非常に注目されていた。
トイファクトリーが出展していた「モビリティユニット HACO×HACO」 ナローボディのハイエースなら、デスクと反対側の棚をなくせば窮屈さはない。普通の事務仕事であれば、デスクを含む片側の作業スペースだけで事足りそうだ 「モビリティユニット HACO×HACO」のほかのバリエーション 自宅に家具ユニットを置いておく場所があれば、1台のクルマでもいろいろな楽しみ方ができる。長くクルマを所有した際、途中でライフスタイルや趣味、興味の変化があっても対応できる部分も魅力だ 普段使いも兼用したい人のためのコンパクトキャンパー
キャンピングカーにはキャブコンバージョンやバスタイプ、そして日本で人気のハイエース、キャラバンなどをベースにしたバンコンバージョンがあるが、これらのクルマは居住性に優れる代わりに、車体が大きめな傾向にある。そのため、運転する人によっては扱いにくく感じることも。
また、キャンプの途中で観光地を巡る際、大きなサイズゆえに駐車場探しに苦労することもあるようで、山奥の目的地(隠れ家的なキャンプ場や秘湯など)へ行こうとしても、大きな車体では狭い山道に入っていけない場合もある。
そんなことから注目されているのが日産 NV200バネットやトヨタ ライトエース(タウンエース、ダイハツ グランマックス含む)をベースにしたコンパクトキャンパーだ。
このクラスはライトエース系とNV200の2車種が主流で、ここ数年はワゴンであるNV200の人気が高い傾向が続いていたが、ライトエースも2020年にマイナーチェンジを受けたことからベース車の魅力が向上。これによりライトエース系への注目度が高まっているという。
ちなみに2020年のマイナーチェンジでは衝突回避支援システムの「スマートアシスト」が採用された。また、ヘッドランプのLED化やフロントバンパーのデザイン変更、インドネシア仕様のワゴングレードに装備されているウインカー組み込みサイドミラーも採用などもあり、エクステリアの見栄えが向上している。燃費性能にも優れる新エンジンも搭載された。
なお、駆動方式はNV200がFFと4WDなのに対して、ライトエースはFRと4WDとなっていて、行動範囲の広いユーザーにはどちらの車種も4WD人気が高いようだ。
長野県のフロット・モビールが販売する「シュピーレン」。ライトエース、タウンエース、グランマックスはダイハツがインドネシアで生産するモデルがベース。画像はグランマックス。このモデルが大好きというスタッフが製作しているので、シュピーレンはベース車のよさを引き出す作りが細部まで施されている 運転席下にエンジンがあるため騒音が気になるところだったが、ここの遮音性を高める作りもしているという 車体サイズはトヨタアクアとほぼ一緒というコンパクトさ。大きく見えたのでこれは意外。それでいて車内寸法では縦に2050mmの長さが取れるので、身長の高い人でもゆったり寝ることができるそうだ オートバックスが展開するブランド「ゴードンミラーモータース」も出展。ハイエースとNV200バネットを展示していた。これは「GMLVAN C-01」というNV200バネットがベースのモデル。ボディカラーはコヨーテだが、この塗色は日産の生産ラインでゴードンミラーモータース専用色として塗られている 奥行きは184cm。インテリアは天然木を使用し、」床は防水、防汚シートという仕上げ。跳ね上げ式のセカンドシートやカーテンは標準装備 座り心地のよいセカンドシートと広めのテーブル。アウトドアレジャーだけでなくワーケーションをするにも適している作り マリナRVが出展していたスズキ ソリオベースの「キャビン2ミニ ウィッシュ」というモデル。NV200バネットやライトエースよりコンパクトで軽バンより広いというサイズがウリ。さらに予防安全装備もあり、マイルドハイブリッド車なので普段使いと兼用したい人には適したクルマ 大人2名が就寝できる仕様。天井は防音&断熱加工されているので標準のソリオより快適性も向上しているので、キャンプはしないという人でも普段乗りのクルマとして購入してもよいかもしれない 後部にテントを連結することで使い勝手を高める提案。テントは市販品で別売り フィールドライフ販売が出展していたのはスズキのエブリィだが、よくあるバンベースではなくワゴンがベース。バンとワゴンでは装備や遮音性などに差があるので、軽自動車と言えども快適性を重視したいという場合はワゴンベースを選ぶのは正解。なお、エブリィワゴンでポップアップルーフを持つのはこのクルマだけで、スズキからも屋根加工の許可を得ているという ワゴンベースなのでキャンパー的な装備が付けにくい部分もあるだろうが、必要なものはすべて揃っているという印象 ポップアップルーフなので展開すれば室内で大人がかがまずに立つことができる 地域性を活かした個性派キャンピングカー
キャンピングカーメーカーはアウトドアレジャーが盛んな地方に本社を構えていることも多い。そんなことから地元の盛り上げを兼ねて、地域の特色を盛りこんだ商品展開をしているところもあった。その1つが香川県にある岡モータースが出展していたミニチュアクルーズシリーズ内の「ミニチュアクルーズ 遍路」というモデル。
四国八十八か所のお寺を巡る遍路から取った名前だが、最近は遍路といっても徒歩で行程を刻むのではなく、つなぎ区間はクルマで移動するケースが多いという。そうしたことから遍路の途中で「休憩する場所」として使用できる軽キャンパーというコンセプトで作ったのがこの車両だ。
和室的な作りが特徴だが、ただ和のテイストを入れただけではなく、遍路で使用する杖を置く棚やご朱印帳を置くためのスペースなども盛りこんでいる。
ちなみに遍路では、杖(金剛杖)は神仏の化身でもあるので大事に扱うのは当然のこと。そこで乗り込んだ人の頭より高い位置に杖を置く場所を設けている。こうした作りは、遍路に親しんできた地元企業だから考えつくことだろう。
このミニチュアクルーズ 遍路はミニチュアクルーズシリーズ内のバリエーションの1つで、ほかにも個性的な仕様をラインアップしている。
岡モータースが出展していた「ミニチュアクルーズ 遍路」 居室スペースは和室的な作り。もちろん就寝できるが、遍路の途中で休憩をする場所というイメージで製作しているとのこと 遍路で使う金剛杖は神仏の化身である。そのため一人の旅であっても「二人」と表現するのが遍路。そういった大事なものなので置き場所にもこだわっている 遍路で巡ったお寺からのご朱印はご朱印帳に記してもらう。その休憩中にその帳面を見返す際や就寝時に一時的に置いておくための棚も設置 こちらはダイレクトカーズが出展していた「伊勢志摩」というモデル。ダイレクトカーズは三重県の企業で、地元に貢献するためのモデルとして全国的に有名な観光地である伊勢志摩を名前にしている。エクステリアには海をイメージしたグラフィックが入り、インテリアには地元の企業と連携して県内の伝統工芸品を取り入れた(オプション扱い) 軽キャンパーはトラックキャンパーが増加中
ここ数年、高い人気を保っている軽自動車ベースのキャンピングカーだが、今回の開催では軽トラックの荷台にFRPやアルミ材などでできている「部屋」を載せたトラックキャンパーが目立っていた。
この軽トラックキャンパーには、キャンパー部が車体と一体になった8ナンバー登録車のほか、キャンパー部を積載物として積み降ろしができるようになったタイプがある。
8ナンバー車は大型のキャブコンパージョンと同じくキャンパー部も車体の一部とみるので、軽トラックながら乗車定員は4名になる。
キャビン設計の自由度が高いので、小さいサイズながら「まさにキャンピングカー」と言える室内空間を実現。天井高もポップアップルーフを採用することで十分な高さを得ており、小柄ながら十分快適な空間になっていて、見た目もキャンピングカーらしさをしっかりと感じさせるものだ。
一方、4ナンバーのままで乗ることのできる軽トラックキャンパーだが、このタイプはキャンパーシェルのみの販売になるので、すでに軽トラックを持っていればそのクルマをキャンピングカーとして使用できるのが大きなメリット。また、軽キャブコン車を買うより断然安価だ。
ただ、キャンパーシェルは積載物なので、例えイスがあっても乗車定員は2名のままであり、走行中にキャンパーシェル部に乗るのは禁止。また、車検や法定点検時はシェル部を降ろす必要もあるという。こうした手間はあれど、特別な登録を必要としない手軽さや購入価格の安さ、そして意外と広くて使いやすいキャンパーシェルは、小型のキャンピングカーを探している人を中心に注目の存在となっている。
フィールドライフの「バロッコ」。ダイハツのハイゼットトラック キャンパー特装車をベースにしている。この特装車は軽トラックながら運転席、助手席がスライド、リクライニングシートになっていて、パワーウインドや集中ロック、IR&UVカットガラスがオプションで選べる バロッコの室内。本格的なキャブコンバージョン車のような作り バンショップミカミが出展していた「テントむし」。こちらも8ナンバー車になる。ポップアップ部に2名が就寝できるので4名で泊まることが可能 左側のドア部に加えてリア部が大きく開くモデルもあるので、後方にタープなど張ることでキャンプ場ではより広い空間を作れる ギャレーや冷蔵庫は標準装備。セカンドシートのレイアウトは画像の横向きのほか、正面向きの2タイプから選べる ダイレクトカーズの軽キャブコン「AMAHO」はこのイベントで初展示の車両。ベースはダイハツのハイゼットトラック。乗員は4名、就寝定員は3名~となっていた キャンパー架装部は断熱パネル。ギャレーもある。室内の広さも十分に感じる ポップアップルーフ部は就寝するだけでなく、シェードを外してイスを置くことでルーフバルコニーとしても利用できる。ルーフ正面にはソーラーパネルが付いている ダイハツ車販売店のミシマダイハツが出展していたのが、ダイハツハイゼットトラック パネルバンをベースにした「クオッカ」。乗車定員は2名 運転席後ろはパネルバン内とつなげるために壁を切り取っている。この点は構造変更をしているので車検も問題ない。室内は山小屋ふうの作りで会場での注目度もかなり高かった オプションも豊富。スライドドア部にアクリルの2重窓も追加できる。展示車のボディに貼ってあるデカールもオプションで用意されている 軽トラキャビン「カノン・ダニエル」はかーいんてりあ高橋の出展。キャンパーとしての利用だけだけでなく移動オフィスや移動販売車としてのニーズもあるという キャビンはFRP製で断熱施工をしている。室内はパネル張りで、家具は好きなものを選んで積んでおくことも可能。農業を営むユーザーが、繁忙期など田畑に出ているときはここを休憩所にする、という使い方をしているとのこと あくまで積載物なので、走行中にキャビンに乗るのは乗車定員内であろうとも法律上不可。ルーフへの張り出し部を荷物置き場となるので室内が広く使える 京都のメーカー、マックレーが出展していたのが「WILD GEARエルミタ」だ。アルミ枠の断熱材いりシェルにキャンピングカー用のドアや窓を採用。シェルを降ろす際に使用するアウトリガー(自立足)もオプションとして用意している 展示車は運転席部が長いハイゼットジャンボなのでシェルが荷台からはみ出ているが法規の範囲なので違反にはならない。固定は結束金具で行なう 2名がゆったりと過ごせる部屋の広さも十分でエアコンの取り付けも可能。軽トラックキャンパーに注目が集まるのは理解できる そのほか用品など
ショーにはクルマだけでなく用品メーカーもブースを出展していた。これは国産のスポーツシートメーカーであるブリッドのブース 最近はトラック用やキャンピングカー用にシートもラインアップに加えている オフィスチェアとして使うための足も販売している。テレワークの時代にはかなりニーズがあるとのこと こちらはパナソニックのブース。ストラーダカーナビゲーションを中心に展示 展示の軽キャンパーには10V型有機ELディスプレイを採用したSDカーナビゲーションの「F1X」が装着されていた F1XにはDVDモデルのほか、Blu-rayの映像ソフトが再生できる「F1X10BL」がある。HDMIケーブルで接続するとHD対応の市販リアモニターでもBlu-rayの高画質映像が見られる 災害への対応を考える参考展示コーナーのあったのが、アメリカのポラリスというメーカーが発売している「デフェンス MRZR4」という車両。アメリカ軍の特殊部隊も採用している。日本の自衛隊へ納入計画があり、ポラリスの正規ディーラーであるTCL(ホワイトハウスグループ)が輸入し、ナンバーも取得したという。現車を1210万円で販売している オスプレイに搭載することを前提にした車体サイズ。作戦時は車両にパラシュートを付けて空中から放出したりするという フル装備をした兵士が座ることを考えたタクティカルシート。4名乗車が可能。TCLではほかのポラリス製オフロード車両も扱っている こちらもTCLが販売しているEZDOMEという商品。成人男性2名の作業で約90分で組み立てができるとのこと。庭先や駐車場に置いてテレワーク時の仕事部屋とするのもよい。床面積は2.1坪(約7m2)で、高さは2m55cmある 以上が、ジャパンキャンピングカーショー2021で気になった車両たち。新型コロナの影響でアウトドアレジャーやワーケーションに脚光が当たっているだけに、キャンピングカーの注目度はますます高まることだろう。とはいえ、キャンピングカーは1台ごとに手作業で作っていくので、オーダーが殺到すると納期もそれだけ延びてくる。もし気になる車両があれば、早めの問い合わせ・商談をお勧めする。