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首都高大師橋、架け替え直前“新しい橋”の上を歩いてみた
2023年5月18日 14:45
- 2023年5月16日 報道公開
- 2023年5月27日~6月10日 通行止め実施
首都高速道路は5月16日、橋梁更新工事が進行中の1号羽田線の大師橋(東京都大田区~神奈川県川崎市)の工事現場を報道公開した。
なお、同橋では既設橋桁を新設橋桁に掛け替える工事が進行しており、これにともない2023年5月27日5時から6月10日5時までの2週間、「羽田線平和島出入口」「東海JCT」~「横羽線大師出入口」間において通行止めが予定されている(関連記事「首都高大師橋の更新で羽田線を2週間終日通行止め。生麦JCTから大師出口は最大150分の渋滞予測」)。
首都東京の大動脈として1日に100万台以上の車両が利用している首都高速道路。1962年の開通以来、徐々にネットワークを拡大しており、現在では総延長距離約327.2kmを誇るまでに成長している。だが、その一方で約2割が開通から50年以上、そして6割以上(約217km)は30年以上が経過しており、老朽化による損傷などが目立つようになった。そこで「高速道路リニューアルプロジェクト」として、「1号羽田線」「3号渋谷線」「都心環状線」の約8.5kmで大規模更新事業を、3号渋谷線など約55kmで大規模修繕事業を進行中だ。
大師橋の掛け替えもその一環で、1968年(昭和43年)の開通時に建設されたことから高齢化が進み、また通過交通の多さや構造上の弱点などから、橋梁全体で1200か所以上の疲労亀裂が発生するなど、抜本的な対策が必要になっていた。このあたりの詳しい内容については過去記事「首都高大師橋が拡幅で走りやすくなる! 更新事業で掛け替える橋桁の運搬・回転作業を見てきた」で触れているので参照していただきたい。
その記事で取材した時点(2022年5月)では新設橋桁の設置が進行中だったが、それから約1年が経過。メインイベントともいえる既設橋桁の移設、新設橋桁の設置が目前に迫ってきたワケだ。
報道公開に先立ち首都高速道路株式会社 更新・建設局 事業推進部長(神奈川・埼玉地区) 野網孝之氏が工事の概要などを説明した。冒頭、今回の架け替え工事により2週間の通行止めが発生することから、「首都高ご利用のお客さまをはじめ、通行止め区間周辺にお住いの方々には大変ご迷惑をおかけします」と述べ、工事への理解と協力を求めた。
高速大師橋は1968年に建設され「55年が経過してるということで高齢化が進んでいる」と前置きしつつ、「1日約8万台と過酷な使用状況」「多摩川の流れを阻害しないように橋脚の間隔を長く取っている」、そして「当時の経済設計により軽量化したため橋がたわみやすい構造になっている」と現状を説明。それにより現在1200か所以上の非労期裂が発生しており、「日々点検、保守を実施しておりますが、新たな疲労亀裂の発生が確認されておりまして、長期的な安全性を確保する」ために、構造全部を作り替える結論に至ったと述べた。
更新する区間については鋼鉄製の橋梁部分約300m(292m)で、重量約4000tと「ほぼ東京タワーと同じ規模」。橋脚についてもI型から門型とすることで、橋梁全体の強化が図られている。なお、前後区間についてはコンクリート製のため「日々の点検補修で十分やっていける」とのこと。
施工の4ステップ
1. 新しい橋の橋脚を組立てる(計6本)
2. 既設橋の下流で新設橋を組立てる
3. 既設橋と新設橋を上流側にスライド
4. 既設橋を解体
上記のような工程を経ることになり、一番の山場となる「3」においては2週間の通行止めを行ない、「端部橋桁を切断」「既設橋を上流側に約33mスライド」「新設橋を本線位置にスライド」「端部橋桁の架設、位置調整、新設橋の固定」「舗装、区画線等の施工」ののち、安全確認を行ない通行止めが解除となる。橋桁の移動は4台のジャッキによりケーブルを牽引する方法で行なわれ、既設橋は約6時間、新設橋は約12時間を要するという。
通行止め期間については「交通状況に影響が大きい」ことから、「配送日の変更」「電車など公共交通機関を使っての移動」「リモート(会議)」などにより、クルマの利用を控えていただければと要望。また、昼間の時間帯は混雑するため無線通行による割引がきく深夜帯の利用もオススメだとした。
なお、同社では今回の工事に伴う渋滞状況が確認できる専用サイトを開設している。当該区間を利用する際には事前にチェックしておきたい。