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首都高大師橋が拡幅で走りやすくなる! 更新事業で掛け替える橋桁の運搬・回転作業を見てきた
2022年5月16日 14:43
- 2022年5月14日 公開
高速大師橋更新事業
高速大師橋は昭和43年(1968年)の開通時に建設された橋梁。多摩川を航行する船舶を妨げないように橋脚間が長く、加えて軽量化を図った設計としたことにより、もともとたわみやすい構造であったうえ、50年以上が経過するとともに1日およそ8万台が通過することによる負荷が大きく、橋梁全体に1200か所以上の疲労亀裂が発生していた。そこで、疲労亀裂が発生しにくい構造に作り替えるとともに、現行基準にあわせ幅員を拡幅(16.5m→18.2m)した橋梁への掛け替えが実施されることになった。
更新区間構造概要
橋長 :292m
橋桁重量 :約4000t
構造 :
[橋梁形式]鋼3径間連続綱床版箱桁ラーメン橋
[橋脚形式]鋼-鉄筋コンクリート複合橋脚(門型柱)×3基(河川部)、鉄筋コンクリート橋脚×1基(陸上部)
今回の掛け替えでは既設橋桁の横に新設橋桁を用意、スライドして新旧を置き換える「一括横取り工法」を採用。施工は「新設橋橋脚組み立て」「新設橋組み立て」「通行止め、既設橋移動」「新設橋架設」「既設橋解体・撤去」の5ステップで行なわれ、2025年度の完成を目指す。
現在は2番目のステップが進行中で、3つの橋桁に分割した新設橋の組み立てを行なっている。ここでは、中央部および川崎側の橋桁は組み立て済みのものを台船で水上運搬、ジャッキおよび干満差を利用してベント(橋桁移動設備)上に設置。残る川崎側は新設橋上にクレーンを設置、順次架設していく。
1300tの橋桁を回転
続いて川崎側橋桁の作業へと移行したが、台船への積載にあたって「架設位置の関係で後方に積む」「橋脚側が重いためオフセットする」などの制約があったため、左右逆の状態で現地に到着。設置にあたっては向きを変える必要が生じた。
向きを変えるといっても相手は1300tもの橋桁を積載した台船。今回も多摩川スカイブリッジ下を通過した際と同様にアンカーを設置、ウインチ操作による移動となった。現場責任者の指示により作業がスタートすると、台船は音もなく回転を開始。10分足らずで作業完了となった。このあと、架設位置まで移動し、台船のリフトおよび潮位差などを利用してベント上に設置する作業が翌15日にかけて実施された。今後は中央径間との接続、東京側径間の組み立てなどを経て、来年度実施予定の掛け替えに備えることになる。
なお、掛け替えに伴う通行止めは2週間を予定しているが、実施時期については現状では2023年度とおおまかな予定のみ。通行止めになる区間についても検討中とのこと。詳細については今後の発表を待ちたい。
2023年度の掛け替えでは1号線を約2週間通行止め
現場公開前に行なった説明会では、まず首都高速道路 更新・建設局 局長の諸橋雅之氏が、1号線東品川~鮫洲区間、日本橋区間の地下化などの大規模更新事業を進めており、この高速大師橋では2023年度に掛け替えを実施すると説明。その際には1号線を2週間ほど通行止めにする必要があることから、「首都高の利用を控えていただくか、湾岸線に迂回していただきたい」と協力を呼びかけた。
更新・建設局 事業推進部長(神奈川・埼玉地区)の野網孝之氏は、事業概要を説明した。首都高は開通から60年近くが経過しており、「より効果的、効率的な維持管理をするために道路構造物を作り替える大規模更新を実施」しているという。
同橋梁においては1968年の開通から50年以上経過しており、「高齢化、過酷な使用状況」「多摩川の流れを阻害しないため橋脚間が長く、軽量化によりたわみやすい構造」のため、「1200か所以上の疲労亀裂が発生」しているものの、「補修・補強により橋の健全性は保ってきた」とコメント。工事では東京タワーとおおむね同等の長さ、重さである新橋梁を既設橋梁と置き換え、およそ2週間で供用を開始。既設橋梁の解体などを含め2025年度に工事完了となる予定だと述べた。
工事の概要は、更新・建設局 大師橋工事事務所長の松下雅行氏が説明した。2番目のステップでは橋桁を3つのブロックに分けて製作。中央および川崎側の橋桁は東京湾内に設けたヤードで組み立て、台船で運搬。台船に設けられたジャッキと最大で2mある潮の干満差を利用してベント(橋桁移動設備)上に設置。残る川崎側は新設橋上にクレーンを設置、順次架設していく。
そのあと、今年度は橋桁の組み立て後、壁高欄、遮音壁、舗装などを行ない、来年度に実施する2週間の通行止め(掛け替え)に備えると述べた。