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ANA、3月から機内/ラウンジで提供する日本酒46銘柄。「季節感」や「旨み甘み」重視の選定

2020年2月8日 発表

ANAが2020年3月~2021年2月に提供する日本酒セレクションを発表

 ANA(全日本空輸)は2月10日、2020年3月から提供を開始する日本酒セレクションを発表した。順次、機内や空港ラウンジで提供していく。

 ANAでは例年、3月から翌年2月にかけて提供する日本酒セレクションを発表している。2020年3月から機内上級クラスやラウンジで提供する日本酒は25府県の46銘柄を選定した。

ANAの2020年3月~2021年2月の日本酒セレクション(※は本年初選定の銘柄)

国際線ファーストクラス

黒龍 大吟醸 龍 (大吟醸、黒龍酒造株式会社/福井県):2020年3月提供 ※
大七 純米大吟醸 箕輪門 (純米大吟醸、大七酒造株式会社/福島県):2020年3月~5月提供
農口尚彦研究所 山廃美山錦 (純米吟醸、農口尚彦研究所/石川県):2020年3月~5月/09~11月提供
醸し人九平次 純米大吟醸 別誂 (純米大吟醸、株式会社萬乗醸造/愛知県):2020年4月~5月提供 ※
田酒 純米大吟醸 (純米大吟醸、西田酒造店/青森県):2020年6月提供
農口尚彦研究所 純米大吟醸無濾過原酒 (純米大吟醸、農口尚彦研究所/石川県):2020年6月~8月提供
七賢 スパークリング星ノ輝 (瓶内二次発酵、山梨銘醸/山梨県):2020年6月~8月提供 ※
而今純米大吟醸NABARI (純米大吟醸、木屋正酒造/三重県):2020年7月~8月提供
醸し人九平次 純米大吟醸 human(ヒューマン) (純米大吟醸、株式会社萬乗醸造/愛知県):2020年9月~10月提供 ※
新政 No.6 X-type (純米生酒、新政酒造株式会社/秋田県):2020年11月提供
北雪 純米大吟醸YK35 (純米大吟醸、株式会社北雪酒造/新潟県):2020年9月~11月提供 ※
鍋島 純米大吟醸35% 山田錦 (純米大吟醸、富久千代酒造/佐賀県):2020年12月~2021年2月提供
農口尚彦研究所 山廃五百万石 (純米酒、農口尚彦研究所/石川県):2020年12月~2021年2月提供
松の司 大吟醸純米 黒 (純米大吟醸、松瀬酒造/滋賀県):2020年12月~2021年2月提供 ※

国際線ファーストクラス提供

国際線ビジネスクラス長中距離

七田 純米大吟醸 (純米大吟醸、天山酒造株式会社/佐賀県):2020年3月~5月提供 ※
農口尚彦研究所 山廃美山錦 (純米吟醸、農口尚彦研究所/石川県):2020年6月~8月提供
雁木 純米大吟醸 ANAオリジナル (純米大吟醸、八百新酒造株式会社/山口県):2020年6月~8月提供 ※
南部美人 大吟醸 (大吟醸、南部美人/岩手県):2020年9月~11月提供
五凛 純米大吟醸 (純米大吟醸、車多酒造/石川県):2020年12月~2021年2月提供

国際線ビジネスクラス長距離

満寿泉 純米 (純米、桝田酒造店/富山県):2020年3月~5月提供
久保田 萬寿 (純米大吟醸、朝日酒造/新潟県):2020年9月~11月提供
農口尚彦研究所 山廃美山錦 (純米吟醸、農口尚彦研究所/石川県):2020年12月~2021年2月提供

国際線ビジネスクラス中距離

農口尚彦研究所 山廃美山錦 (純米吟醸、農口尚彦研究所/石川県):2020年3月~5月提供
醸し人九平次 純米大吟醸 山田錦 EAU DU DESIR(希望の水) (純米大吟醸、株式会社萬乗醸造/愛知県):2020年9月~11月提供 ※
山形正宗 藍 (純米大吟醸、株式会社水戸部酒造/山形県):2020年12月~2021年2月提供 ※

国際線ビジネスクラス短距離

乾坤一 純米 (純米、大沼酒造/宮城県):2020年3月~5月提供 ※
純米大吟醸 奈良萬 (純米大吟醸、夢心酒造株式会社/福島県):2020年6月~8月提供 ※
純米吟醸一滴入魂 (純米吟醸、賀茂鶴酒造株式会社/広島県):2020年9月~11月提供 ※
御前酒 純米 雄町 ANAオリジナル (純米、株式会社辻本店/岡山県):2020年12月~2021年2月提供 ※

国際線ビジネスクラス提供

国内線プレミアムクラス

マルマス米鶴 限定純米吟醸 (純米吟醸、米鶴酒造株式会社/山形県):2020年3月~5月提供
越の誉 純米吟醸 清吟 (純米吟醸、原酒造株式会社/新潟県):2020年6月~8月提供 ※
木曽路 三割麹純米吟醸 (純米吟醸、株式会社湯川酒造店/長野県):2020年9月~11月提供 ※
純米大吟醸 鳥海山 (純米大吟醸、天寿酒造株式会社/秋田県):2020年12月~2021年2月提供 ※

国内線プレミアムクラス提供

ANA SUITE LOUNGE(国際線)

農口尚彦研究所 本醸造酒 (本醸造酒、農口尚彦研究所/石川県):2020年3月~5月/9~11月提供 ※
飛良泉 大吟醸 室町蔵 (大吟醸、株式会社飛良泉本舗/秋田県):2020年3月~5月提供
いなば鶴 強力 (純米大吟醸、中川酒造/鳥取県):2020年3月~5月提供 ※
嘉泉 特別純米 東京和醸 (純米酒、田村酒造場/東京都):2020年3月~5月提供 ※
加陽菊酒 (吟醸、菊姫/石川県):2020年6月~8月提供 ※
農口尚彦研究所 純米酒 (純米酒、農口尚彦研究所/石川県):2020年6月~8月/12月~2021年2月提供
澤乃井 東京蔵人 (生もと純米吟醸、小澤酒造株式会社/東京都):2020年6月~9月提供
春鹿 純米大吟醸 (純米大吟醸、株式会社今西清兵衛商店/奈良県):2020年6月~8月提供 ※
高砂 山廃仕込大吟醸 (大吟醸、富士高砂酒造/静岡県):2020年9月~11月提供 ※
玉乃光 純米大吟醸 備前雄町100% (純米大吟醸、玉乃光酒造/京都府):2020年9月~11月提供
純米大吟醸 雨後の月 八反錦 (純米大吟醸、相原酒造/広島県):2020年12月~2021年2月提供 ※
北雪 大吟醸YK35 (大吟醸、株式会社北雪酒造/新潟県):2020年12月~2021年2月提供 ※

ANA SUITE LOUNGE(国内線)

千の福 味わいの純米吟醸 (純米吟醸、株式会社三宅本店/広島県):2020年3月~5月提供 ※
限定 ゆきつばき純米吟醸 (純米吟醸、雪椿酒造株式会社/新潟県):2020年6月~8月提供 ※
酔鯨 純米吟醸 吟麗 (純米吟醸、酔鯨酒造株式会社/高知県):2020年9月~11月提供 ※
大七 純米生もとclassic (生もと純米、大七酒造株式会社/福島県):2020年12月~2021年2月提供 ※

ANA SUITE LOUNGEで提供(写真左寄り4銘柄が国内線、右寄りが国際線で提供する銘柄)

季節を感じられる日本食と日本酒のペアリングを意識した選定

全日本空輸株式会社 CEマネジメント室 商品企画部 部長 原雄三氏
前年に引き続き提供する農口尚彦研究所(石川県)の銘柄
今年新たに選定した萬乗醸造(愛知県)の「九平次」
国際線エコノミークラスではオリンピック・パラリンピック時期に東京都・澤乃井の純米酒を提供する

 2月10日に行なわれた発表・試飲会にあたり、ANA CEマネジメント室 商品企画部 部長の原雄三氏があいさつ。「1年間ずっとお出しするのが難しいお酒もある。そのような希少性のあるお酒も含めて、なんとか機内やラウンジでお楽しみいただけないかと工夫を重ねてきた。319銘柄から46銘柄を選んでいる。選ぶにあたっては専門家に任せるのではなく、専門家と一緒になって選んでいく。お客さまも出張やプレジャーなどで飛行機に乗られる方も多いので、そのような観点で楽しんでいただけるのはどのようなお酒かを悩みながら選んだ」と選定の苦労についてコメント。

 今回のラインアップについては「前年から出している、飛行機ではANAでしか召し上がっていただけない杜氏の神さまといわれる農口尚彦さんのお酒や人気のある而今、佐賀の鍋島さんなど、ご好評いただいているお酒は引き続き出している。また、今年からは愛知の九平次さんや、黒龍さんなど銘柄も拡げている。有名なだけでなく、スタッフとともに酒蔵さんにもお邪魔してお話しを聞いている。鍋島さんも而今さんも九平次さんも、引き継いだ世代のお若い方がすごくご努力され、一生懸命よいお酒を造ってらっしゃる。九平次さんも、洋食に日本酒を飲んでいただきたいとご努力されている」と説明した。

 また、2020年はオリンピック・パラリンピックが開かれる年であることにも触れ、「日本酒は可能性が非常に高いと感じている。今年はオリンピックイヤーでもあり、海外からお越しになる方にも日本酒のよさを味わっていただきたい。ANAも北米線では外国人のお客さまが4割近くになっており、その9割方が和食と日本酒を楽しまれる。和食と日本酒でこのような楽しみ方をされませんかと、CAやラウンジスタッフがお勧めしながら『よかった』とおっしゃっていただけるような日本酒になれば」との思いを述べた。

コンラッド東京 セリーズ/コラージュレストラン マネージャー 北原康行氏

 続いて、ANAの日本酒アドバイザーを務めるコンラッド東京 セリーズ/コラージュレストラン マネージャーの北原康行氏が選定のポイントを説明。北原氏は前年のセレクションから携わっており、「3月からのライナップは昨年の反省も踏まえて選定した」とコメント。

 選定にあたって最も大切にしているのは「季節感」と述べ、「日本という国を世界の方に知っていただくには、その強みである季節を感じていただくこと。日本食は季節によって食材が変わるので、食べる前から視覚で季節を感じる。そして食材の香りを感じて、季節を楽しむ。これが日本食の一つの楽しみ方」と話す。

 ワインブーム以降、料理とドリンクを組み合わせて新たなハーモニーが生まれるという文化が根付いた背景に触れ、「現代の人は、料理と飲料を合わせてはじめて幸福を得る時代になった」と表現。四季折々の料理が供される一方、「日本酒も季節感のあるものがラインアップされている」と視覚、味覚で四季を感じられる選定に配慮しているという。

 そうしたなかで日本酒の強みとして、「日本酒の持っている香味特性を最大限に活かして、さまざまな料理にアプローチできる」という点を挙げ、和食と日本酒のペアリングはもとより、「洋食も日本酒に合うよう寄り添ってきているのが今の時代。洋食との距離感が縮まった」としている。

 また、2020年がオリンピック・パラリンピック開催年であることも踏まえて、「東京の銘柄も選定しているが、オリンピック・パラリンピックがあるからといって入れているわけではなく、東京で美味しいお酒が造られ、それがラインアップに入るべきだと思うので入れているだけ」と話す。東京都の奥多摩に構える澤乃井の近くには清流が流れていることを紹介し、「米は世界に運べるが、水は運べない」と東京・澤乃井ならではの銘酒であると強調した。

株式会社ANAケータリングサービス 和食料理長 森誠剛氏
機内食でも日本酒でも「四季の移ろい」を大切にしている

 続いて、ANAC(ANAケータリング)和食料理長の森誠剛氏があいさつ。「料理を通じて日本の素晴らしさを伝えるにあたって、日本の自然の美しさ、春夏秋冬の四季の移ろい、郷土の特徴、暦の年中行事などを反映してメニューを考えている」とし、「そのためにできる限り旬の食材や新鮮な食材を多く取り入れた料理にしている」という。これには「旬の食材を一番美味しい時期に美味しくいただくとともに、食材が本来持っている生命力が一番強い時期に体に取り入れる」といった恩恵もあるという。

 四季の移ろいについては、「出始めの食材を“走りの食材”、食べ納めの食材を“名残の食材”と表現する。“旬”と“走り”、“名残”をうまく取り入れる」と、料理における四季の表現について説明した。

 機内食ではさまざまな制限があるなか技術の進歩によって、よりよい状態で提供できるようになってきていることなども紹介し、「我々も日本酒と料理でお客さまにほっこりしていただきたく、少しでもお手伝いできれば」と話し、あいさつを締めた。

 このほかに、北原氏は日本酒セレクションの選定について、さまざまな角度から紹介している。

 例えば、「短距離は1杯で美味しいと完結しただけるようなラインアップ」といった具合にクラスや距離などで選ぶ銘柄を変えているほか、「外国人の方は漢字が好きなので、ラベルに漢字が多いものを選んでいる」といった点もポイントとして挙げている。

 1杯目で美味しいと感じてもらうことは2杯目以降につながるポイントにもなっており、「甘口で旨みの強いお酒が中心になっている」と話す。機内という限られた時間なので、辛口の日本酒は印象に残りにくく、甘み旨みの強いお酒で日本酒のよさを深く感じてもらい、次も日本酒を頼んでもらえることを意識しているということだ。

 さらに近年のトレンドに沿った選定でもあるといい、「1年前までは純米大吟醸の香り豊かなものが流行っていた。米由来の香りではない、フルーティで白ワインのような香りとテイストがあるものが流行っていたが今は少しずつ変わってきて、作り手も、香りよりも米の旨味をどう最大限引き出すかにこだわって作っている」と昨今の日本酒の傾向を紹介。

 精米歩合についても変化があるそうで、「30%台や20%台のように磨いた精米歩合が低いものが流行っていたが、今は40~50%ぐらいに落ち着かせるところが増えてきた。今は純米酒や生酛系作りなどが見直されてきている。今のお米はどれも優秀で、技術も発達してきたので、米自体を磨かなくてもテクニックでよいお酒ができるようになった。雑味をうまく使って発酵していくことで、最終的な香味特性のバランスのよいものが増えており、(作り手も)それを目指していると思う」と述べ、ラインアップについても「精米歩合が高いものを増やしたし、結果的に精米度合いが高いものはあるが、これも精米度合で選んだわけではんく香味特性のバランスがよいので選定したというだけ」と傾向を述べた。

 また、外国人利用者が増えるなか、日本人にも外国人にも楽しんでもらえるよう、「上級クラスで2種類ある場合には、知名度が高いものと、今の日本酒ラインアップを楽しんでいただけるものを組み合わせている。有名銘柄は日本の方に向くと思うし、スパークリングや熟成しているもの、貴醸酒は外国人に向くと考えている」と、その組み合わせのこだわりについても紹介した。