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ANA、2018年3月から機内とラウンジで提供する日本酒の選定会開催
33銘柄をすべて試飲、珍味も選定
2017年6月1日 15:37
- 2017年5月23日 開催
ANA(全日本空輸)グループの機内食を担うANAケータリングでは、年に1度、機内やラウンジで提供する日本酒や珍味を、ANAグループの社員が選ぶ選定会を実施している。5月25日にANAケータリングで行なわれた選定会では、2018年3月から2019年2月までの期間に提供される日本酒や珍味の選考が行なわれた。
外国人利用者にも好まれる日本酒を選ぶ
ANAの機内では、路線やシートのクラスによってさまざまな酒類を提供しているが、CA(客室乗務員)の感覚では、外国人は日本酒を、日本人はワインを選択するケースが目立っているという。国際線では約半数近くが外国人になりつつあるなかで、外国人や日本酒に慣れていない人にとっても飲みやすく美味しい日本酒を揃えることが選定会の狙いとなる。
ANAの日本酒アドバイザーである太田和彦氏に選定のポイントを聞いたところ「日本酒の最前線の銘柄を載せて、“ANAの日本酒がうまい”となることが第一。外国人に好まれるのはとても意識していて、根っからの“のんべえ”はあまり重視していない」と答えた。今回の選定会に用意された銘柄については「どれをとっても、日本酒の一番新しいものを選んでいると思う」と評価した。
最近の日本酒の好まれる傾向として、「今はフレッシュな生酒タイプでやや甘口。淡麗辛口は人気がない」とし、機内については「芳醇は機内に合わない。バランスは大事」とした。そのなかでも「女性に美味しいと言ってもらえるもの」「日本酒って美味しいなあって思うもの」という点をポイントとした挙げた。
また、外国人の日本酒の飲み方はワインのように一気に口に含む。日本人の愛好者のようにちびちびと口を付けるようなことないため、飲み方の違いも考慮した選定を心がけているという。
4カテゴリー、合計33銘柄を全員で試飲
選定会では、ラウンジ、搭乗クラスや4つのカテゴリーに分けて試飲を行なった。「ラウンジ(国際線・国内線スイートラウンジ)」「国際線ファーストクラス専用」「国際線ファースト・ビジネスクラス兼用」「国際線ビジネスクラス短距離・国内線プレミアムクラス」。国際線の短距離や長距離などの区分は、路線のフライト距離のほか、運航時間帯などで区分しているという。
この日、出された日本酒はカテゴリーごとに7~11銘柄で、4カテゴリー合計で33銘柄。当初360銘柄が集まったが、価格や供給体制などを書類選考し、33銘柄に絞った。このなかから各カテゴリーごとに2または4銘柄が選ばれる。
選考者はANAグループから集められた社員たちと役員、さらにCA、ラウンジのコンシェルジュ、ANAケータリングの担当者も加わった30名近く。選定会の時間帯も17時過ぎに終了とし、業務に影響のないようにしている。銘柄を隠した瓶が置かれ、すべての日本酒を試飲して点数を付ける。
選定会の開始にあたって、CS&プロダクト・サービス室商品戦略部長の原雄三氏が、「ANAは、有名なお酒だけを揃えているだけでなくて、こういうのがあったんだと知っていただけることが大事」「お客さんの身になって、これいいんじゃないかと思ったら、積極的に評価をお願いしたい」とポイントを述べた。
また、ANAの日本酒アドバイザーである太田和彦氏は最近、飛行機に乗った体験を紹介。「機内で飲むと気圧のせいで軽くなる。燗酒をいただいたが、感動的に美味しかった。お燗をすると酒は軽くなるんですが、機内ではさらに軽くなって、まさに雲の上をいくという気持ち」と機内でいただく日本酒の特徴を話した。また、「お燗もジャパニーズスタイルの名物になる。東京オリンピック・パラリンピックで、日本酒を世界に知ってもらえるチャンスが近づいていて、我々の使命は大きい」と意気込みを語った。
実際の選考は4つのカテゴリーで時間を分け、各選考者が、すべての日本酒を口にして、味や香りを確かめて順番に点数を付ける。それぞれのカテゴリーで選考基準が決められており、ラウンジでは「軽快で滑らか」、国際線ファーストクラス専用では「ふくよかな香りとコクのある味わい」、国際線ファースト・ビジネスクラス兼用では「華やかな香りと爽やかな味わい」、国際線ビジネスクラス短距離・国内線プレミアムクラスでは「軽快で滑らか」とされた。
選考者は各基準に沿って上位5銘柄に5~1点の点数を付け、味や香りについてのコメントも詳細に記載していく。テイスティングということで、日本酒を飲み込まずに済むよう吐き出し用のコップも用意された。
機内で提供する珍味も選考
途中、ANAケータリングが試作した酒のつまみとなる「珍味」の選考も行なわれた。合計10品が出されたが、さらに多い20種類程度試作したなかから選ばれたものだという。
10品のなかには保存に冷蔵庫が必要になる7品と、日本への戻り便のために、待機時に冷蔵庫の電源が切られた場合でも問題ない常温保存の3品を用意した。このなかから冷蔵を3品、常温を1品が選定される。
ANAケータリングの担当者によれば、日本酒と同様、外国人にも提供されるため、魚の目が付いていることを嫌うといった外国人向けの料理の注意点も考慮しながら珍味を開発したという。また、「和食の伝統は崩さず、バランスを考えながら、全体を気にしながらいろいろな変化を入れたメニュー」とし、機内食として気圧が低いところで食べる制約については「珍味は甘みが強いものが多い。上空に行くと、塩味をあまり感じなくなり、はっきり分かりやすい味を選んでいる」とし、機内というさまざまな制約に合った料理を開発しているとした。
なお、珍味は日本酒と違って見た目も重要。実際の提供を想定した盛り付けで試食が行なわれたが、見た目のきれいさや美味しそうに見えるかどうかについても、判断していた。
選定結果は後日明らかに
今回の選定会の結果については当日は発表されず、後日、明らかにされる。選定にあたっては、選考者が付けた点数だけでなく、コメントや選考者の味覚に関するスキルなどの点から総合的に判断していく予定という。